今回と次回は割とストーリー遵守になっちゃいそうなんで番外編のストーリー考えておこうかな、アキラとも絡ませたいけどニヤニヤ教授も捨て難いんだよね…
「痛くないかい?」
「あぁ、悪いなサクラ…」
大将のモコモコだった毛が水で全身ペッタンコになるまで公園の水をかけ続ける、流しても流しても黒い煤が止まらない。
他の通りすがりの通行人たちも全身ベチャベチャになりながら救急車の到着を待っていた、全員体に軽い火傷や擦り傷が出来ていたが軽症で済んでいる、直撃したものはいなかったのが不幸中の幸いか。
爆弾自体も周囲への被害を見るに連鎖配置では無く柴関を狙ったものだった、起爆したのはおそらくあの紫髪の少女、自分たち諸共の起爆や動機は分からないが微かに聞こえてきた話の流れ的には間違いない。
4人の特徴から見てゲヘナの生徒、顔も覚えているし照会にはささほど時間はかからないはずだ。
「それにしても店があんなことになって災難だったね、原因が分かれば保証とかもできるんだろうけど…」
「いいんだ、こうして命が助かっただけでも充分さ…サクラのおかげでみんな軽傷ですんだからな」
「ボクはここまで運んできただけだよ、ヴァルキューレ生としてこれくらいはしておかないと後で何言われるか分からないし」
蛇口の水道を止めてわしゃわしゃと毛を逆立てていく、所々毛が焦げてしまっているのが手の感触でわかる。
「それに遅かれ早かれお店ももう少しで畳む予定だったからな、予定かちょっと早まっただけさ」
「ん?やっぱりどこか体でも悪いの?」
「いや、ちょっと前から退去通知を受け取っていてな、どの道あそこでこれ以上店は出せなかったんだ」
「退去通知って…アビドスに土地代でも収めてたの?」
「いや、数年前にあそこの土地と建物のほとんは所有権が移ったんだ、確かカイザー…何とかっていう名前だったはずだが」
「カイザーか…なるほどねぇ…」
アビドスへの借金や武力行使についてはだいたい把握していたつもりだったがボクの知らないところであいつらも動いていたらしい。
しかも数年前からとなるとボクが現場を離れる前からの可能性もある、よくもまぁ巧妙に手回ししたもんだ。
カイザーの努力に感心していると救急車のサイレンが近づいてくるのが聞こえてきた、皆軽傷で済んでいたためアビドス自治区内の病院を手配したため到着が早い。
「んじゃ救急車も来たしボクは行くよ、みなさんも救急隊員の指示に従って落ち着いて動いてください!」
「おう、サクラも気をつけてな」
「ありがとうヴァルキューレのお姉さん!」
ここにいて同行を求められても面倒くさい、内心を隠した満面の笑顔を作り出して手を振り返してその場を後にする。
実際のところは今にでも飛んでいってあの4人を殴り飛ばしたいところではあるがギリギリでボクの良心と面倒くさいという感情が勝っている状態。
とはいえ本当にギリギリ、お気に入りのラーメン屋が潰されたんだよ?マザーテレサとガンジーもドン引きするレベルで慈悲深いボクにも限度というものがある。
あの血気盛んなアビドス組のことを考えれば今頃はあの4人組と合流している頃だろう、ホシノがいることを考えればアビドス側が負けるとは思えないがあのおじさんの事だし不在の可能性もあるため一応現場に戻る必要がある、少なくとも今ここで現状を大きく動かされるのは困る。
アビドスの案件ということもあり本来であればボクの出る幕ではないが今なら先生の指揮とやらも見れるかもしれない、カンナの手土産にでもすれば喜ぶだろう。
元いた柴関ラーメン付近からは銃声が響き続けている、それに加え先程複数の爆発音と地響きが公園にまで伝わってきた。
あれだけの爆発物を用意するのは簡単では無い、そのうえ爆発に乗じて逃走せず今も戦闘が続いているところを見るに別の勢力がいる可能性がある。
現場まではまだ遠い、状況確認のために耳をすませる。
柴関ラーメンの跡地から西側、響く銃声の数が尋常ではない上その弾幕が途切れることがない、編隊行動を取り射撃と装填を効率よく行えている証拠、それも中隊以上の規模で。
騒ぎを聞き付けたカイザーのPMC辺りの可能性が高いが動かないよう伝えてある事を考えれば他の同規模の戦力を持つPMC、もしくは学園勢力という事になる、いずれにせよ面倒なことには変わりない。
それに対し店を挟んで東側に位置する勢力は圧倒的少数、銃の種類もバラバラで寄せ集めの集団であることが分かる。
どちらかにアビドスの生徒が紛れているのだろうが現状を考えるとこの東側勢力がアビドスなのだろう、何があってそんな大規模な部隊と戦う羽目になっているのかは知らないがどのみち少し急ぐ必要がある。
肩にかけていた416式自動小銃を持ち直す。
スコープにサプレッサー、フォアグリップなどのアタッチメントはSRTの宿舎で放置していたままの姿。
てっきり誰かに使われているもんだと思っていたがかなり年季の入った外観のため誰も使いたがらなかったのだろう、メンテナンスはしていたし中身は新品よりもよく動くはずだ。
差し込まれているマガジンには5.56×45mm弾がピッタリ30発装填されている。
チャージングハンドル引くとガチャりと音を立てチャンバーへと5.56×45mm弾が装弾された、動作に異常は無し、親指でセレクターレバーをセイフティの位置に戻す。
バックアップには防衛室長からの贈り物のP9式のみ、スライドを引き薬室に装填されていることを確認、弾倉を抜き9mmパラベラム弾が並んでいるのを見て再度嵌め直す。
以前使用していたハンドガンと同メーカーのためか口径が変わっても使い心地に違和感がない、単純な火力は落ちたが装弾数が5発増加し若干軽量化されているためサイズ感の割に取り回しもいい。
SRTにいた時は新機種の選定も頻繁に行われていたが入学当初から使っていた45式拳銃しか使うことは無かった、結局ハンドガンは手に馴染んだものを使うに限る。
仕掛けられているGPSに関しては後でミレニアムで取ってもらう必要があるがそれを加味しても十分な性能、昨日の実践でも十分に使えた。
最後に小型のケースから薬を1錠取り出し自販機で買ったコーヒーで飲み下す、カフェインと一緒に摂取するなと言われていた記憶はあるが構わない。
かなり強力な精神安定剤、最近は交番勤務だったおかげか症状は軽い、それなり大規模な部隊を相手にする可能性があるためお守り程度だが念の為。
軽く深呼吸をして歩みを早める、先程よりも視界がクリアだ、体も軽い。
このまま道なりに行けば通りを迂回して行かなければならないため遠回りだ、横に並ぶ5階建て商業ビルの窓枠を観察する、これくらいなら問題ない、最短ルートで現場へと向かう。
「皆さん伏せてください!」
アヤネからの警告の直後、便利屋の周辺で地面が爆ぜる…いや、地面が爆ぜたと言うよりは何かが降ってきたようにも見えた。
爆発地点から距離があり、すぐさまシロコが私に覆い被さってくれたためこちらへの被害は無い。
砂埃が晴れ、便利屋のみんなを確認すると直撃はしていないものの爆風で怪我をしているのが見えた。
便利屋のみんなじゃない誰かの仕業か、アロナに周囲の様子を見てもらうよりも先にアヤネが声を上げる。
「砲撃です!ここから3kmの場所に多数の50mm迫撃砲の部隊を確認!狙いは便利屋のようですが…」
「50mm迫撃砲と言えば…」
「はい、確認も取れました…ゲヘナ風紀委員会、1個中隊程の部隊規模です」
「くっ…やっぱり…!社長!ムツキ!ハルカ!奴らが来た!ここまで追ってくるなんて…!」
「カヨコ!危ない!」
「っ!?」
段々と精度が上がっていく砲撃が便利屋の1人に直撃する、周囲が再び砂煙に覆われる。
付近にいるのはまずい、まだギリギリ原型のある建物へみんなと避難し状況を整理する。
「くっ…!何なのよ!風紀委員会が便利屋を捕まえに来たってこと?」
「分かりませんが…私たちに友好的とは言えないかと」
「範囲内には私たちもいた、それに今は先生もいる…こっちを狙ってないにしても危ない」
「ですがゲヘナの風紀委員会も下手に動けば政治的な紛争の火種になることは承知のはずなのに…アヤネちゃん、ホシノ先輩とは連絡は着きましたか?」
「いえ…普段ならここまで連絡が取れないなんてことないのに…」
「あーもう!ほんと何がどうなってるのよ!」
一歩間違えば大事にもなりかねない、3年生のホシノが居ない以上ここで判断するのは難しい。
最悪の場合は私が仲裁に入る手もあるが未だ各学園からの不信の目を向けられている現状、下手に権力を使うのも避けたかった。
「分からない…けど、風紀委員会がアビドスの街。巻き込んで迫撃砲を使ったのは事実」
「きっとこれは便利屋とゲヘナ学園の問題なんだと思います…ですが!他の学園の風紀委員会が私たちの町でこんな暴挙をしていい理由にはなりません!」
「その通りだわ!便利屋にはしっかり柴関の弁償をしてもらわないと!」
「ですが、彼女たちと正面から戦って勝てるのでしょうか…」
「問題ない、こっちには先生が着いてる」
「そうでしたね、今の私たちには先生がいます♪」
みんなから期待の視線を送られる中シッテムの箱を起動する、まずは攻撃を止めてもらい話し合う場を作ることにする。
アロナに算出してもらった付近にいる風紀委員会の戦力数はこちらの5倍以上、 今まで以上に気を引き締めていく。
「行くよ、みんな」
「「「「はい!」」」」
「命中、目標の沈黙を確認」
「よし、第2小隊はCポイントまで前進」
芝関ラーメンから1km地点、風紀委員会所属の部隊は便利屋捕縛の命令を受け着々と準備を進めていた。
迫撃砲部隊に加え中隊も動かす大きな作戦、各々緊張した表情を浮かべている。
部隊を率いる銀鏡イオリは無表情なまま指示を送る、2年生ながらこうした市街地での戦闘や不良たちの相手は慣れ切ってしまっており今回もそんな面倒事のひとつだとため息すら吐いている。
「イオリ、あの方たちはどうしますか?」
対して横に控える火宮チナツは違和感を感じていた。
便利屋捕縛のための緊急の出撃とはいえ付近に自治区を置くアビドス学園への申告を行っていないうえこの部隊規模、便利屋は手練が多いとは聞いていたがそれにしても過剰戦力すぎた。
それに加え先程の住宅街に放った砲撃、住人は少ないとは聞いていたが負傷者の反応がない。
元々無人だったのか…それとも他の誰かが…?
「ん?あぁ…確かアビドスだっけ?公務の執行を妨害するなら全員敵だ」
「なら大人しくしていてもらいたいものですね…先に事情を説明しておくのが先決では?」
「説明?今はうちの厄介者どもを捉えるので忙しいし、もし邪魔するなら部外者であれ叩きのめすだけ」
「そうですか…」
「アビドスの生徒も臨戦態勢に入りました!」
各自戦闘体制を整えアビドス生を迎え撃つ準備をする。
迫撃砲による広範囲の砲撃と物量による制圧、ゲヘナ側の勝利はほぼ確定しているようなものではあるが依然として緊張の色が見られる。
慣れない他自治区での活動によるものかこの異様な空気感によるものなのかは分からない。
「はぁ、たかが4人で…面倒だな、いっそのこと迫撃砲部隊で一掃してもいいか」
「目標補足、迫撃砲部隊に座標伝達します!」
目標となるアビドス側の勢力がスクリーンに映し出された。
情報にあったアビドス生が3人、本来であればもう1人在校生がいるはずだが代わりにグレーのスーツを纏った大人が立っている。
このまま迫撃砲を使用すれば巻き込んでしまう可能性がある、咄嗟にチナツは声を上げた。
「ちょっと待ってください!」
「ん?」
「アビドス側に民間人が映りました、すぐに確認を…って、あの方はシャーレの先生!?」
「シャーレ?」
「シャーレの先生があちらにいるとすれば…この戦闘を行ってはいけません!」
「それってどういう…」
「アビドス生がこちらに接近中!発砲されました!」
「ちっ、仕方ない…行くぞ!」
「あっ!」
先陣を切って飛び出していくイオリ、こうなってしまってはもう止めることは出来ない。
肩にかけていた医療キットを展開していく、この戦闘がどのような形で終わったとしても自分の出番が来ることになる。
チナツは一つため息を吐き黙々と準備を進めた。
次の夏イベはどこなんだ…!?
個人的にはお茶会組か山海経辺りだったら嬉しいな。