狐のおまわりさん   作:無名の作者

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お気に入り100突破!皆さんいつも見てくださりありがとうございます!

番外編何にしようかなと悩んでるんですがとりあえず7月に初の番外編投稿しようと思うので首を長くしてお待ちください。


第九項

 

「嘘だろ…私たちが負けたのか…?」

 

戦闘が始まってから数分、決着は思いのほか早く着いた。

余裕の勝利とは言い難いものの場の荒れた混戦となった戦場では土地勘があり統率の取れたアビドスに軍配が上がった。

 

風紀委員会からの銃声は止み皆一様に負傷している、奥で負傷者の手当てをしていた見覚えのある生徒が駆け寄ってくる。

 

"久しぶりだね、チナツ"

 

「お久しぶりです…まさかこんな形で再びお会いするとは、先生がいらっしゃるとわかったタイミングで素直に引くべきでした」

 

「アビドス対策委員会の奥空アヤネです、所属はゲヘナ学園風紀委員会で間違いありませんか?」

 

「それは…」

 

「私から答えさせて頂きます」

 

突如としてアヤネの前に1人の生徒の姿が映し出された。

他の生徒に比べ些か特殊な服装をしているが今は気にしないでおこう…いや、やっぱりおかしくないかな?

 

「今の状況について少し説明させて頂きたいのですが…そうですね、皆さん、銃を下ろしてください」

 

その声に応じ背後にいた風紀委員たちはすぐさま指示通り銃口を下ろす、周囲を先程までとはまた違う緊張感が支配していた。

でもやっぱりその服装はおかしい気がするよ。

 

「まず初めに、先程までの風紀委員会による愚行を謝罪させてください」

 

「なっ!私は命令通りにやっただけなんだけど!?」

 

「無差別に砲撃、発砲しろだなんて命令した記憶はありませんが」

 

「状況に応じた火力支援と歩兵の投入、それに対象の離脱を確認したあとの戦術だって基本通りに…」

 

「他自治区の付近なのだからそれくらいするのは当然です、それに私は例の対象が自治区を離れてからと指示したはずですが?」

 

「いや…でもそれだと便利屋が…」

 

「反省文のテンプレートは私の隣の机の引き出しに入っています、ご存知ですよね?」

 

「…はい」

 

先程まで威勢が嘘かのように静かになる。

他の風紀委員達も先程までよりも表情が固く緊張した面持ち、それはこちらも一緒ではあるが。

 

「申し遅れました、私は風紀委員会行政官を務めている天雨アコと申します」

 

「行政官ということは風紀委員会のナンバー2…」

 

「行政官と言ってもそんな大したものではありません、主な仕事は委員長の補佐のようなものですから」

 

「本当にそうならそこにいる風紀委員達がそんなに緊張するとは思えないけど」

 

「…素晴らしい洞察力ですね、砂狼シロコさんでしたか?アビドスには生徒会の面々だけが残っているとお聞きしていました皆さんのようですね」

 

「いえ、私たちは生徒会ではなく対策委員会です…生徒会は既に解散しておりまして私たちが代理として活動しています」

 

「そうでしたか…であれば簡単に今状況についてお話させていただければと思うのですがよろしいでしょうか?」

 

「はい、お願いします」

 

「私たちゲヘナの風紀委員会はあくまでゲヘナ学園の校則違反者を捕らえるために来ました、多少強引な手段となってはしまいましたが街の修繕等はこちらで負担させていただきますのでご安心いただければと思います。それにまだ確実な違法行為とは言い切れないでしょうし…ここは穏便に済ませて風紀委員会の活動にご協力しては頂けませんか?」

 

事務的な文章ではあるが嫌味がない、物腰が柔らかい態度で表情も穏やかではある。

しかしながら私たちを取り囲むように展開している風紀委員、この話に拒否権なんてない。

便利屋の捕縛に関しても協力要請なんかでは無く警告、邪魔するようであれば便利屋諸共排除する、丁寧な対応であっても趣旨に違いは無い。

 

「先程もお伝えしましたがそうは行きません!」

 

「あら?」

 

「そうよ!街をこんなボロボロにしておいて!絶対に許さないんだから!」

 

「他の学校が私たちの学校の敷地内で戦闘行為をするなんて…明確な違反行為です!」

 

「…なるほど、どうやら私たちとそちらで多少認識のズレがあるようですが…まぁ構いません」

 

アコがわざとらしくため息をつきこちらへと視線を送る。

湿気を帯びた視線がまとわりつく、品定め…と言うよりは懐疑的な感情を帯びた視線。

 

「これだけの兵力を前にして怯まないなんて…やはり信頼出来る大人がそばにいるからでしょうかねぇ、先生?」

 

"だと嬉しいかな"

 

「先生も対策委員会と同じご意見ですか?」

 

"そうだね、目的があったとはいえこれは少しやりすぎかな?"

 

「便利屋についても、まだお話を聞かなければならないことが沢山ありますから引き渡す訳には行きませんね」

 

「そういうわけで交渉は決裂です!あなた方に退去を要請します!」

 

「なるほどなるほど…こうなってしまっては仕方ありませんね…こちらとしては穏便に済ませたかったのですが…」

 

振り上げられた右腕と共に風紀委員が一斉に銃を構える、私自身へと向けられた銃口は無いものの180度全てが銃口で覆い尽くされている。

もし仮にこのうちの1発でも狙いを外れて私の方に飛んでくるだけで大怪我は免れられない、尋常じゃない量の汗が背中に伝うのを感じながらシッテムの箱へ手を伸ばす。

 

「許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!」

 

「な、なんだ!?」

 

「!?」

 

「いだい!ちょっ待っ…」

 

一触即発の空気の中、展開された風紀委員の壁の一角が爆発と共に吹き飛んだ。

視線を向けるとハルカがイオリに向けてショットガンを乱射しているところだった、近距離からの連続での発砲、イオリはそのまま後ろに倒れ込んだ。

 

「嘘をつかないで、アコ」

 

「思っていたよりもお早いお目覚めでしたね…カヨコさん」

 

「初めから穏便に済ます気なんてない、あんたが狙っていたのは最初からこの状況だった…違う?」

 

「ハルカちゃんナーイス♪」

 

「す、すみません!助けに来るのが遅くなりました!」

 

「あいつらいつの間に…」

 

「やるね」

 

「申し訳ありません行政官、もう一度包囲を…」

 

「いえ、大した問題ではありませんよ。それより、続きをお聞かせいただけますか、カヨコさん?」

 

「…最初はどうしてこんなところに風紀委員会がいるのか理解できなかった、ましてやわざわざ私たちを追うために1個中隊規模の戦力を割くなんて非効率的な運用は風紀委員長の指示とは思えない。ここに風紀委員会がいるのはアコから直接指示を出したから、違う?」

 

「………」

 

「とはいえ、私たち相手にこれだけの戦力を出す必要は無い、アビドスも全校生徒が5人しかいないことを考えると答えはひとつ…アコ、あんたはシャーレの先生を狙ってここまで来たんだ」

 

「な、なんですって!?」

 

「先生を…ですか?」

 

"え、私?"

 

「ここまで言い当ててしまうとは、流石はカヨコさんですね⋯先日、トリニティのティーパーティーに先生に関する報告が上がったとお聞きして我々も少し調べさせていただきました。シャーレの先生、失踪した連邦生徒会長が残した正体不明の超法規的な組織を担当する大人…どう考えても怪しいとは思いませんか?」

 

それはそう、ぐぅのねも出ない。

自分でも同じ立場ならそう考えるだろうし同じ考えを持つ学園も少なくはないはず、現にそのせいで未だに生徒との壁を感じることも少なくは無かったがここに来てそれが重大な浮き彫りになるとは思ってもいなかった。

 

「ただでさ条約を控えているこの忙しいタイミング、条約にどのような影響を及ぼすか分からない不確定要素は排除しておきたいのですよ。もちろん、条約が無事締結された後は解放いたしますしシャーレの業務についてもお手伝いさせていただきますよ」

 

「先生を連れて行くって言われて私たちがはいどうぞとでも言うと思った?」

 

「お世話になった先生をそう易々とお渡しすると思ったら大間違いです!」

 

「それに、それだけじゃないでしょ?」

 

「…と、言いますと?」

 

「いくら先生が脅威だと判断してもわざわざこんな場所で行動に移す理由がない、もし動くにしても近隣の学校や自治組織には口封じくらいの根回しはするはずなのにそれすらもしなかった…そんなに狐が怖い?」

 

「ご存知だったんですか?」

 

「私も初めは見間違いだと思ったけど、一瞬だけ見えたあの顔は間違いなくあの狐だった」

 

「そうですねぇ⋯トリニティに先手を取られただけであればここまで強硬な手段に出なくても良かったかもしれません、しかし彼女が動き出したとなれば話は変わります」

 

「随分警戒しているんだね」

 

「えぇ、今となっては信じて貰えないかもしれませんが本来であればもう少し慎重に盤面を動かす予定だったのですよ?わざわざこれだけの戦力を動かしたのもシャーレの先生と狐を相手にすることを想定してのこと、委員長の不在を考えればこれでも不安は残りますがね」

 

2人の会話にでて来た狐という単語に一部風紀委員の生徒たちがざわつき始める、狐と言えば厄災の狐のワカモが記憶に新しいがおそらくは別の人物。

アビドスのみんなも知らないのか互いに目配せをしあっているが便利屋のムツキだけは静かに驚愕の表情を浮かべていた。

アルに関しては先程から自信満々…と言うよりは何やら楽しげな表情をしているので分からない。

 

「⋯こうなると思って初めにカヨコさんを狙うよう指示を出したのですが、まぁいいです」

 

「皆さん気をつけてください!12時の方向と6時の方向…3時、いえ!9時の方向からも風紀委員会の部隊が集結しています!」

 

「くっ、囲まれてる…」

 

「まだこんなにいたなんて!」

 

「あくまで目的は先生を庇護下に置くこと、そのため今は少しでも時間が惜しいのですよ…奥空アヤネさん、ゲヘナ風紀委員会は必要と判断すれば戦力を行使することも躊躇いません、それでもまだ引く気はありませんか?」

 

「はい、どんな理由があろうとも私たちの街で戦略行為を行ったことは許せません!」

 

「それに!先生だってあんたたちになんて絶対渡さないんだから!」

 

「という訳だけど…社長、逃げるならアビドスが気を引いている今しかないけどどうする?戦闘が始まったらもう後戻りは出来ないよ」

 

「ふふっ、ふふふっ」

 

「社長?」

 

「こんな状況で三流悪党みたいに背中を向けて逃げるなんてこと私たち便利屋が出来るわけないじゃない!」

 

「やっぱそうなるよね〜」

 

「アル様…っ!」

 

「…まぁ、それはいいけどあの戦力相手に戦ってもアビドスと力を合わせてもギリギリ、そもそもアビドスが力を貸してくれるとは考えにくい…」

 

「ヨシ!便利屋!挟み撃ちにするわよ!あの風紀委員会をコテンパンにしてやらないと気が済まないわ!」

 

「あなたたちには先生の盾になってもらう」

 

「えぇ…」

 

「先生をみんなで守り風紀委員会を撃退します!いいですね?」

 

「当たり前よ!信頼には信頼で報いるわ!…と言うよりこの展開、すごくアウトローぽくないかしら!?」

 

「どこが…?」

 

「あら⋯これはこれで想定していた展開ではありますが…ここまで意気投合するとは思っていませんでしたね…仕方ありません、それでは風紀委員会、攻撃を開始します。先生はキヴォトス外の方ですので怪我をさせないよう十分に警戒してください」

 

「了解!」

 

「さっきはよくもやってくれたな!覚悟しろ!」

 

「先生!指揮をお願いします!」

 

"うん!みんな、気を引き締めていくよ!"

 

「えぇ!任せとい…っ!?」

 

一斉に駆け出そうとした所で地面が爆発した…いや、上から何かが高速で降ってきたのか、落下の衝撃で周囲に土煙が立ち思わず咳き込んでしまう。

想定外だったのは風紀委員会も同様だったらしく一気に離れていくのが音と気配で感じられた、ならこれは一体?

 

「くっ、今度はなんなんだ!?」

 

「正義のヒーロー登場〜」

 

「…思ったよりも到着が早かったですね」

 

「黒峰さん!」

 

「やっほ、昨日はありがとうね♪」

 




そろそろ2日に1話ペースきつくなってきたので週2ペースになると思うのでよろしくお願いしやす
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