……でこの作品は何なんですか? 作:こばみご
「しかしねえ……今回のゲームはとにかくアイデアを詰め込んだいわゆる実験作なのだから……」
「その言い訳で許されるならTSCはクソゲー判定をされてませんよモモイ」
「うぐ」
やんややんやと室外まで聞こえる声量で口論をする少女たち。といっても日常茶飯事であり、かつ周辺には当事者以外にいないので迷惑と言うほどでもない。部屋の扉の上には「ゲーム開発部」と手書きで書かれていた。その名の通り、ゲームを開発する部活である。……開発せずゲームばっかりやっているという噂もあるが、今回は触れないでおこう。
ともかく、彼女たちは作ったゲームの批評をしていた。ジャンルはRPG、思いつく限りの発想を詰め込んだ意欲作である。……出来が悪くて今現在揉めている最中なわけだが。特に、アイデア兼シナリオ担当の才羽モモイにヘイトが集中している。
「ボスをシンボルエンカウントにしたのは良い試みだと私も思います……でも肝心の報酬がキノコや葉っぱってなんですか!?舐めてるんですか!?舐めてるんですよね!?」
「いやその……ボスをいっぱい配置したのは良いけど報酬の方に手が回らなくって……」
「ならボスを減らせばいいでしょう!見た所色違いばかりだしパターンも似通っているしで『またコイツか』という感想が先に来ますよ!」
その理由は至極単純、モモイの考えた部分が大体クソだからである。ちなみにほとんどモモイが主導して作ったので、つまりそういうことだ。
声を荒げながら天童ケイの言った問題点の他にも、武器の強化に必要な素材がバカ多かったり、イベントフラグがアホほど分かりにくかったり、ストーリーがふわふわしていたり……
まあ最初にモモイが言った通り、色々と詰め込みすぎたのだ。結果、要素がとっ散らかりどれもこれも中途半端になったというわけである。要素は絞ろうね。
「いっぱい立ち絵は書いたんだけどね。半分くらい却下されちゃった、お姉ちゃんに」
「いやっ聞いて欲しいんだよ、あれは容量削減のために仕方なくね……」
「無駄に広いマップと無駄に作ったクラフト要素削っていればそんなことにもなりませんでしたよね?」
「グワーッ!」
モモイとて自覚はある。言葉のナイフで28箇所を刺されしめやかに爆発四散した彼女をジト目の才羽ミドリがつつくなか、花岡ユズがケイとモモイの間に入った。
「ふ、二人ともそこら辺に……ほら、私も魔法を作りすぎちゃったし……」
「アリスも光の剣の調整をミスしてしまいました……超究武神覇斬並の攻撃を連発は流石にバランスが崩壊してしまいます……」
「む……」
自分たちにも責はあるとかばう二人。かくいうケイも止められる瞬間は何回かあったことを思い出し、言葉に詰まった。まあそうだよね、少なからずみんなに非があるよね。そういった雰囲気が流れ始める。
「そ、そうだよ!私だけを攻撃するのはおかしいって!連帯責任だよ連帯責任!」
「……(怒)」
「あわわ……」
しかし余計なことを言うのが才羽モモイという人間である。クソガキという言葉はモモイのためにあるのだ。ケイのこめかみに血管が浮き出るさまを見てあたふたしながら、ユズはどうにか穏便に済むようにと脳みそをフル回転させ……そんな時、部室のドアが開かれた。
「なんや偉い騒がしいですねえ」
「あーっアリサお帰り助けて!」
「あっコラ後ろに隠れるんじゃありません!」
現れたのは第三の天童、拳術の達人アリサ。誰なんだ
ゲーム開発部六人目の部員は、そろそろ一区切りつきそうということで打ち上げ用の菓子を買いに行っていたのだ。モモイを一瞥してなんとなく状況を察した彼女は、呆れ顔をしつつケイの方を向く。
「…でゲームは出来たんですか?」
「出来たからケイちゃんが怒ってるというか……」
「理不尽な怒りだよ!……あそうだ!ここはほら、アリサにもプレイしてもらってからにしようよ!ちゃんとみんなから意見を聞かないと!」
ちょうどいい矛先のそらし方を思いついたモモイ。少なくともアリサのプレイ中は口論をうやむやにできると考えたのだ。いざとなれば逃げればええやろと、出入り口近くに陣取るのも忘れない。
実際正論ではあるので、ケイも不承不承ながら頷く。アリスが菓子と飲み物を並べる間にミドリがゲームの準備をし、あっという間にぐーたら空間が完成した。
「不思議やな、不穏さがにじみ出てるのにワクワクする。怖さの前に面白そうと思ってしまうのは何でや」
「絶っ対錯覚ですよそれ」
「コラぁ!やってもらわなきゃ分かんないじゃん!自分でプレイしてなんぼだよ!」
「お姉ちゃん静かに」
「アリス分かります!パッケージを見て、カセットを見て展開を想像するのもゲーム醍醐味ですよね!」
「そうだね。説明書がついてるやつは読み込んだり……」
わいわいと、ソファに集まって談笑する。いつもの光景だ。彼女たちの前にあるモニターには、作りあげたゲームのスタート画面が。どんなゲームだろうと、この瞬間は心が躍るものだ。ほほ笑みながらアリサはコントローラーのボタンを押し、そして──
「クソ……ゲー…」
「アリサーッ」
そしてアリサは絶命した。ダイイングメッセージは「ふざけんなよボケが」だったそうな。