……でこの作品は何なんですか?   作:こばみご

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異 常 銀 行 愛 者

「いやーついに来たのおアビドス」

「ですねえ」

 

 日中のアビドスはアホ程暑かったんや。その温度…500億。

 

 ともかく、アリサとケイの二人はアビドスまで観光に来ていた。目的はネタ集めだ。ダイスを振って出目の対応した場所まで行き、ゲームに使える何かしらのネタを回って集めてこようという企画である。発案者はもちろんめちゃくちゃモモイ。

 

 まあ、肝心の本人は新作のロボットゲームにかまけているのだが。決めた、やっぱり殺そう…となるところを二人が踏みとどまったのは、前にミドリと行ったというおいしいラーメン屋を教えてもらったからだ。

 

 その名は「柴関ラーメン」。アリサも知っている場所で、絶品であるらしい。それを聞いた彼女が久々に行くかと飛び出して行ったので、ケイもそれについてきたような形になる。最悪ラーメンだけ食べて帰ればまあええやろの精神だ。

 

「ケイちゃん、熱々のラーメンは美味いやろ?」

「……はい。ここのラーメンは美味しいです」

「ははっ、嬉しいことを言ってくれるじゃねえか!」

「ウム…大将のラーメンは美味すぎるんだなァ」

 

 看板メニューらしい「柴関ラーメン」を啜りながら、二人はこれからの予定を考えていた。コレがまあ美味い。モモイへのヘイトが霧散する程度には美味だった。文句も言わずがっついているケイを見れば美味しさが伝わるかもしれない。

 

 大将と談笑をしながら、ラーメンを啜る穏やかな時間が流れる。一応の目的を思い出したのは、7割ほど食べ終えた後のことだった。

 

「街並みは写真に撮っておいてください、寂れた雰囲気の参考になります。私はラーメンの記録を詳細に記しておきます、いつか使うかもしれませんし」

「それよりケイちゃん、“列車砲シェマタ”って知ってるか?」

「それよりってなんですかそれよりって。……んむっ。名前を聞くに兵器でしょうが、どうせ大したことないでしょうに」

 

 一応ただ遊びに来たわけではないというに、それよりの一言で片付けられてしまったことに不満をこぼすケイ。なまじ自分が超古代兵器なため、現代のそれにいまいち惹かれないのもあるが。

 

「クククク……シェマタは自走可能かつ500kmの射程を持つ砲台が搭載された完全週末兵器だァ」

「週末じゃないですか。500kmって言うのも、キヴォトスの大きさを考えれば大したことありませんし」

 

 シェマタのスペックを説明するアリサだが、やはりケイの反応は芳しくなかった。予想通り大した性能ではないのだ。(ケイ基準)

 

「……でそれがこのアビドスにあるってことですか?」

「ハイデース」

「欲しいんですか?」

「別にィ……ただ資料としての価値は十二分にあると考えとるだけや」

 

 しかし、アリサも別に実物が欲しいわけではない。データだけぶっこ抜いてゲームの足しになればと考えた次第である。誰も使ってないしまあええやろの精神だ。ケイも納得したようで、ゆらりと首を縦に振った。

 

 曰く、生徒会の谷とかいう人の寄り付かないような所に隠されているそう。ケイはそこにシェマタが置かれるに至った背景に思いを馳せ……少し興味が湧いていた。少し弄ればゲームに使えそうではないかと、そう考えたのだ。

 

 

 

「ん、その話詳しく聞かせて」

「なにっ」

 

 しかしそこで、二人の横の席から声がかかる。そちらの方を向けば、ぬるっと出てきた銀髪犬耳の少女。が、二人。何も知らない人が見れば、彼女らは姉妹に見えるかもしれない。

 

「……砂狼シロコですか」

「そういう貴方はアリサの妹の……アリス?」

「ケイです。妹ではなく姉です」

「アリサ?」

「ケイです。同名だったら怖いでしょうが!」

 

 その正体はアビドス高校所属の砂狼シロコ。二人ともシロコだ。同一人物である。ややこしい。ケイとも、一応の面識はあった。片方は味方として、もう片方は敵としてだが。ちなみに、話しかけてきたのは小さい方だ。

 

「そっか。アトラ・ハシース以来だね。アリサも久しぶり」

「ヴへへヘヘ どうもお久しぶりです ゴアです」

「ゴアも久しぶり」

「違うでしょうがッ」

 

 適当言うゴアに一発食らわせてやりつつ、二人の方を見やる。聞くと、町内を散歩してたら偶然バッタリ会ったらしい。若干気まずそうにするデカい方を、小さい方が半ば無理矢理ここに連れてきたのだとか。散歩してたらラスボスに会うなんて、アビドスってのは結構鬼畜だな。

 

 いきなり世界を滅ぼそうとした存在に出くわし驚いたが、彼女にも哀しき過去があったので本当に仕方ない。それに、アリサとしてもアビドスから引率が欲しかったので渡りに船である。

 

 ある程度話を聞いていた二人は、そんなものがあるならと、シェマタの所有権を主張した。対するアリサたちも、別にシェマタ自体が欲しいわけではないので、好都合だと考える。実物は彼女らアビドス高校に渡す約束をし、ここにシェマタ捜索班が組まれた。両陣営が固い握手を交わす。

 

「あざーす」ガシッ

「全く……しかし、アビドスにあるんだからアビドスの人を連れて行くのは当然でしょうが……手に入れてどうする気です?」

「銀行を襲う」

「お変ク」

 

 やけに輝いた目でとんでもない発言をしたシロコ(小さい方)。暑さで脳みそがやられているのかも知れない。ケイは引いた。ところがどっこい、彼女は正気である。大きい方もうんうんと頷いていた。ケイは恐怖を覚えた。

 

「シロコさん あなたの悪い噂を耳にしました それは口にするのもおぞましい鬼畜の所業…

 異 常 銀 行 愛 者」

 

「銀行だけじゃないよ。お金を持ってる所は大体好き」

「コワ……」

 

 シェマタを手に入れた後のことを考えているのか、小シロコの耳は激しく動いていた。な…なんやこの動きは…(ピコピコ)

 

 コイツはおそらく本当にやる。そう考えさせるだけのものを目の前の 異 常 者 は持っていた。

 

「でも…………どうやって知ったの?そんな所に、アビドス生も知らないようなものがあるなんて」

 

 と、大きい方のシロコが訪ねてくる。その瞳には疑念が……そして、アリサを計るような感情を感じる。しかし、そこにシェマタの実在を疑うものは無かった。やはり曰くつきなのかとケイが考え……そしてアリサが口を開く。

 

「ミレニアム生徒は自前のデスクトップ・パソコンでアホほど企業情報を抜いてるんや その数…500億」

「ええ……」

 

 少し、いや大分無理があるのではとケイは考えたが、大きい方のシロコは「そう……」と言って、深く踏み込むことはしなかった。聞いておいてだが、彼女にとって「何故」はこの際あまり関係がないのだ。やるべきことは、かの列車砲を──

 

 それぞれの思いを胸に、アビドス砂漠へ歩き出す。眩い日差しが、あらゆるものを照りつけていた。

 

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