異形の七草   作:メダカにジャム

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まゆみんが入学編諸悪の根源であるブランシュを前年度にぺんぺん草の一本も残らない程にヒャッハーしてしまい、まゆみんの遺産を使って十文字先輩がお兄様をオペ席に封印してしまったので、呆れるほどに平和な新歓です。原作エピソードを9割吹っ飛ばしたのに文字数が膨らむ不思議。


入学編9

 光井ほのかと北山雫。司波深雪に次ぐ優等な成績で第一高校に入学を果たした彼女達は、この新入生歓迎週間において、前世紀風に一言で言うならば、特売の目玉商品である。新入生総代の司波深雪が生徒会に取られてしまった以上、何故か流出している新入生の成績表一覧においては、五十嵐鷹輔、森崎駿、明智英美、十三束鋼、弓草昌枝といった錚々たる面々の中でもトップピックに入るべき人物たちのうちの一人である。

 

「で、多分最優先ターゲットである貴女達があの中に無策で突っ込んだら大変なことになっちゃうけど、いいのかなーって?」

「うえっ!?ど、どうしよう雫……」

 

 そんな事を二人に語るのは、1-Dの弓草昌枝であった。此処の先輩が知り合いだから何故か出回っている新入生の成績表を横流しして貰ったと言う彼女は、光井ほのかに近い色合いのサイドテールが似合う小柄な美少女であった。忠告されたほのかはあわあわと怯えるが、幼馴染の北山雫は泰然としていた。

 

「確かにちょっと凄い勢いかも知れない。でも、私達だって折角入学したのだから、何か部活をやってみたい」

「そう?なら、折角だしここで会ったのも何かの縁、私もついていこうかしら。これでも、ちょっと荒事の心得はあるのよ」

 

 シュッシュッシュッと堂に入ったシャドーボクシングをしてのける昌枝に二人はクスリと笑い、同行を快諾した。結論から言えば、荒事の心得があるという昌枝の言葉に嘘偽りは全くなかった。

 

「きゃあっ!?」

「あっつ!?」

「同性だからって、ちょっとおさわりが過ぎるんじゃないかしら、先輩方」

 

 何人かが弓草昌枝を引き入れようと手を伸ばして触れた次の瞬間、灼けるような痛みが6本以上の手を纏めて弾き、次いで伸びる彼女の手が北山雫と光井ほのかを捕まえようと言う手も灼いて弾く。そして。一同が一旦引いて場が開けた所へ。

 

「隙ありっ!」

「いただきっ!」

「「って、きゃあぁぁぁぁ!?」」

 

 スケートボードに乗った女子二人が北山雫と光井ほのかを攫おうとするが、その結果は、何故かバランスを崩して二人そろって転倒。

 

「じゃ、逃げましょ」

 

 いつの間にか霧が立ち込めて視界が悪くなり、一人が魔法で風を起こして吹き飛ばしたときには、新入生の有望な女子3人は影も形もなく、通報を受けて偶々近くにいた渡辺摩利が、攫おうとしてスピードを落とし尚且つ受け身を取っていたとはいえ、転んで怯んでいたスケートボードに乗った女子二名もといOG二人をここで逃がしたらまずいと強襲。ボッコボコにして捕まえたが、肝心の勧誘の手を魔法で撒いたと思わしき女子3人は行方知れずであった。

 

「…………さっきの、弓草さんの魔法、だよね?」

「私は古式系の術者なの。手品師と一緒でタネが全部割れたら商売あがったりだから、細かいことは内緒よ?」

 

 一方、勧誘の波から抜け出すことに成功した三人。連れ出されたほのかと雫は躊躇いなく魔法で脱出した昌枝の技量に感嘆しつつも、何が起きたのかはほとんど理解できないそれに畏怖を感じていた。

 

「古式魔法……?」

「統一的な教育プログラムが全く整備されていないから知らない人はホント知らないのよね。まあ少なくとも、初見殺しの不意打ちが色々あるって頭の片隅に入れて置いたら?」

 

 尚、仮に弓草昌枝の古式魔法を1-Eの古式魔法、中でも精霊を使役するSB魔法の専門家である吉田幹比古にじっくりとタネ明かしして見せた上で、古式魔法師ならこんな事も出来るんだという感想を言おうものなら、彼は顔を真っ赤にして否定するだろう。やっていることは小規模なSB魔法*1だが、隠密性と精度が病的に違う、と。

 

 まず、霧を発生させた現象の正体は、殺到する生徒たちの頭上に多重展開された魔法――飽和水蒸気量を疑似的に大幅に水増しするSB魔法『霧積』の()()によるものであった。

 この魔法は、空間の温度を変えずに、通常よりも大量の水蒸気が存在できるように改変する。多数の小規模魔法を高所に展開し、エイドスの改変による反動を最小限に抑えることで、魔法師の感覚でも気付かれにくい極めて高い隠密性を実現していた。

 

 しかも、生徒たちは新入生という“獲物”を目当てに周囲を注視しており、天井を見上げる者などいない。そこへ現れたスケートボードの女子二人の進路上に、粘着質に地面の摩擦係数を変える放出系統魔法『スティッキー・ゾーン』をピンポイントで設置。片輪だけが引っ掛かるよう仕込まれたそれに引っかかり、見事に転倒。注目が一瞬で集まったその隙に――。

 

 水の独立情報体(精霊)を介して張られていた湿気吸収領域は、魔法の()()と同時に現実世界へ引き戻され、設定された領域形状に応じて生徒たちの頭上から足元へと、霧を指向的に噴出させた。

 

 こうして、「発動したことすら気付けなかった魔法の終了」によってもたらされた“現象”を前に、誰も何が起きたのか真相を突き止める術はなかった。過去をすべて遡って検証できる者(司波達也)がオペレーター席に封印されている以上は。

 

 かくして、現場に居合わせた者から証言を聞いた渡辺摩利は、秒で犯人が誰なのかを悟った。第一高校に限らず、魔法が関与する事件において、“How done it?”──どうやったか、は往々にして無意味だ。“Who can do it?”──誰がそれを為せるのか。高度な魔法技術の世界に入り込むほど、可能性の範囲はむしろ絞られていく。

 

「達也君、全体に繋いでくれ。総員、傾注。多分、奴だ」

 

 渡辺摩利の声音が、風紀委員の全員の耳を打つ。淡々とした口調に、しかし妙な迫力があった。奴と言われれば、風紀委員において該当する者は一人しかいない。

 

「正面Aブロックで使用者不明の魔法行使の証言が多数。使用目的は1年A組、光井ほのかと北山雫。両名への強引な勧誘への牽制として魔法が行使されたと見られる。怪我人は新歓に乱入してきたSSボード・バイアスロン部のOG二人。転倒したものの受け身を取ったため怪我は擦り傷程度で済んでるが――問題はその直前についての証言だ」

 

 一拍の間を置き、摩利は続ける。

 

「手を伸ばした瞬間、火傷するような熱さに襲われて、条件反射で手を引っ込めた……だとさ。

よーく見覚えがある。接触した相手に“灼熱の錯覚”を与えて、脊髄反射で手を離させる古式魔法『火鰻(ひうなぎ)』──あのバカが編み出した、捕縛制圧用の魔法の一つだろうな」

 

 通信先がざわつく。何人かは「あー……」と声に出して頷いていた。摩利が“あのバカ”と称した時点で、誰を指しているかは風紀委員にとって既知のことだ。

 

「雰囲気も状況も、十中八九、奴の仕業だ。ただし……」

 

 摩利はわずかに顔をしかめた。

 

「問題は、『火鰻』が今や奴の“売り物”の一つでもあることだ」

 

 通信越しに、風紀委員の沢木碧が呻き声をあげる。

 

『うちの悪ガキ共もそうですけど、マーシャル・マジック・アーツ界隈では、『火鰻』って“相手の接触魔法ごと接触行為をメタれる魔法”として密かに人気なんですよ。噂じゃ校外の連中も買っている奴がいるくらいですし……』

 

 後にマーシャル・マジック・アーツ界隈では、この魔法が「接触魔法という術理の天敵」として認識され、大炎上することになる。

 

 『火鰻』――仕込んだ対象に触れた者の触覚情報に、「熱い」という偽の感覚情報を割り込ませる、幻術に分類される古式魔法である。現代魔法化するなどの素早い発動も難しくない。

 

 接触魔法の術理――すなわち、“触れた部位の情報を魔法の変数に直結させ、処理を簡略化・高速化する”という手法に対して、『火鰻』はその情報取得プロセス自体に欺瞞情報で割り込みをかける。

 

 具体的には、触れた瞬間に「熱い」という誤認を与え、脊髄反射的な逃避行動を誘発しつつ、誤認によって接触魔法の発動条件そのものを破壊する。つまりこれは、相手の接触に対するカウンターであると同時に“接触魔法に必要な接触点の定義を破綻させて潰す対抗魔法”でもある。

 

 この“術理そのものへのアンチテーゼ”としての性質を持つ古式魔法に対し、幻術に関して伝統と権威を誇る古式魔法の伝統派の一部や、接触魔法を得意とする現役・引退済の魔法師たちから、激しい反発が巻き起こった。

 

 結果として、主に伝統派の一部による()()()()()()への冴種真由美からの反撃を主要因として直接・間接を問わず両手で数えきれない死人が出るという、いかにも魔法師社会の暗黒面らしい惨劇に発展するが――それはまた、別の話である。

 

「つまり、滅茶苦茶怪しいが奴である決定的な証拠にはならない。そして、だ。誰も奴を目撃していない。まあ、いつものことだな」

 

 溜息を堪えるような摩利のまとめに、2,3年生を中心に溜息が木霊する。魔法の巧拙や精度でもうこいつしかいないだろうと推測は出来るが、それでも“誰でも使える可能性”を盾にされて、出頭させても無意味なことは目に見えている。

 

 そもそも、もうとっくに帰って学校にいない、雲隠れしてしまった可能性すら否定できないのだから、直接見つけることが出来ていない以上はどうしようもない。

 

 本気でよからぬことを企む冴種真由美とは、鰻より手を滑り霧より掴めない、そんな災害である。幸か不幸か彼女がいるときに風紀委員になってしまった者の多くは何故か狙撃手などの隠れた相手には滅法強く、それで寿命が延びた者もいたのだが、誰も推定される原因に感謝することは無かった。

 


 

 司波達也にとって、オペレーターという立ち位置は初めて就くポジションであった。妹を守る最終防壁たれ、決戦兵器たれとあくまで一兵卒として苛烈な鍛錬を積み重ねてきた彼にとって、誰かを使うという経験はとんと縁がないものであった。そんな彼が、勧められたとはいえオペレーターを引き受けたのは、自分の力を隠しつつ妹に助力するには都合のいい立ち位置であったことと、自分がそういう経験が足りていないことを自覚していた事にある。

 

 だが、実際に彼女のマニュアルに目を通してオペレーター席に座って感じることは、冴種真由美の異様さだ。才能ある魔法師、それも血統に『万能』なんてつくほどに何でも雑に強い魔法師としては驚くほどに自分で全てをやることに拘りがなく他人に頼るのが上手い。

 

 実際には、彼女の腕ならば機材を用いた間接照準でオペレーター席から直接騒乱の現場を狙撃できることもいざという時の安心感につながっているのだろうが。そして、配備されている機材の種類と緊急連絡先の軍の窓口について、達也はそれがどこへ通じているのか少しばかり心当たりがあったので当たってみていたのであった。

 


 

『特尉か、君から連絡があるとは珍しいな』

「少佐、第一高校で風紀委員のオペレーターに就くことになったのですが」

『ああ、お察しの通り、アレはうちからの払い下げ品だ。とはいえ、話を持ってきた彼女は結構拘りがあってな?カスタマイズ性について真田と藤林を相手に熱く議論をしていたよ』

 

 マニュアルに目を通した日の夜に心当たり、彼が秘匿回線を通じて特尉として所属する国防陸軍第101旅団の独立魔装大隊の隊長である風間玄信少佐に連絡を取れば、本人はあっさりと関与を認めた。

 

「……先輩がそちらと関係を持っているとは知りませんでしたよ」

『向こうも特尉の存在は察しはするかも知れんが知らんぷりだろうよ。あくまで彼女は便利屋職員で、我々は一依頼人、ただの報酬交渉の話だったさ。それはそれとして藤林君と冴種真由美は彼女がまだ十師族だった頃からの知り合いではあるがな』

 

 独立魔装大隊は、十師族を頂点とする民間の魔法師戦力に対抗する戦力の確立を目的とした国防陸軍第101旅団において所謂実験兵器の運用を担当する大隊である。そんな秘密部隊の付き合い先として冴種真由美というのは中々のグレーゾーンである。

 

 元十師族であり、十師族を頂点とする現行の体制からは逸脱しているものの、その在り方自体は完全な民間である。知らなかったと恨み言を吐けば、そんなに深い付き合いではないと風間は受け流した。

 

『……特尉も知っての通り、三年前の沖縄事変と佐渡ヶ島侵攻、この二つを退けたのは彼女だ』

「戦略級魔法師が完全な民間、それもほぼ一匹狼でいられるという事実には驚きましたけれどね」

 

 通信先で風間は眉間をつねり唸る。苦虫を噛み潰すどころか頬張らされでもしたかのように。

 

『彼女はその辺について相当にやらかしている。結果、軍も十師族も、彼女に首輪をつけることは出来なくなった。敷地を与えて放し飼いしか手が無くなったとうちのトップがぼやいていたよ』

「自分が全容を知らない、という事は本当に相当なやらかしだったんでしょうね」

 

 断片的に拾える情報はあるし、彼女が戦力としてはそこら辺の十師族を一人で凌駕してしまえる超級の怪物であり、何処か一つの派閥に着けばそれだけで大人達の騒ぐパワーバランスが行方不明になる類の存在であることは達也も把握している。が、決定的なピースが足りない。そんな感覚を残して少佐との会話は終わっていた。

 


 

 ともあれ、そんな超人が潔いほどに自分以外の戦力を当てにしてオペレーターとしての立ち回りを確立させた努力の跡は、誰かに頼るという経験に乏しい今の司波達也にとっては得難い糧である。

 

「第一体育館で剣術部と剣道部の間で喧嘩が発生との通報を受けました。……関本先輩は先にDエリアの演出魔法同好会と古文書解読同好会の諍いの仲裁をお願いします。現場にはエリカ、飛べるか?」

『任せてちょうだい!』

 

 餅は餅屋へ。剣道部と剣術部の喧嘩という時点で荒事になるにしても剣術周りになるだろうし、それならば千葉エリカは適任中の適任だろう。千葉エリカが剣術の事で高々魔法科高校レベル程度に嘗められる程度ならば、風紀委員に推薦など受けていないだろうし、本人も魔法師としては商売上がったりになる可能性が高い。飛行魔法を取り入れた剣術を研究中だから飛べるものとして是非ともこき使ってくれと自己申告があったのだから、オペレーターとしては当てにしてスタミナにだけ気を付けつつ運用するまでである。

 

 だからまあ、エリカならば相性負けしていない以上大丈夫だろうと達也は半ばキラーパスを投げ、当のエリカは現場に文字通り飛来し、見事にそれを受け取った。剣術部の一部は二科生の風紀委員にしてやられたことにプライドを傷つけられたとムキになった者もいたが、生きのいい獲物は全員エリカにこてんぱんに伸されて保健室送りにされた。

 

 後にこの事件は、二科生が一科生をコテンパンにした事が納得できない一年生の一科生を中心に反発が起きたが、何故か何処からとも無く"千葉エリカは剣術にのめり込みすぎて筆記で大ポカやらかしただけ、実態は風紀委員長すら真っ向からの接近戦は避ける剣術ゴリラ"と言う言い草以外は大体合っているとしか知っている人ほど言えない噂が流れ、エリカの誉れと何か西城レオンハルトが巻き添えを食う事と引き換えに不満の声が鎮火することになったのは別の話である。

 


 

 一方、ぬるりと強引な勧誘攻勢をすり抜けてきた光井ほのかたちは、テント列を外れて狩猟部に辿り着いていた。狩猟部に既に入部を決めていた一年B組、明智英美(エイミィ)と出会って話が盛り上がり、見ていくだけ見ていってと言う話になったからである。

 

「へぇ~!先輩達を煙に巻くなんてすごーい!?それじゃ、昌枝ちゃんってニンジャなの?」

「古式魔法で隠密的に使っているからってその認識は流石に雑すぎないかしら?まあ、忍者をやるにもそこら辺の三流よりはマシだと思うわよ。とはいえ、親父が才能無かったし、そんな親父に自分が割と似ている自覚はあるから一流だなんて口が裂けても言えないけれどね?」

 

 これまでのことをほのかと雫が話す中で、昌枝が勧誘の攻勢を丸ごと出し抜いた武勇伝にエイミィが興味を示し、感心したように言うも昌枝の返答は斜に構えたものだった。

 

「側にいてもいつ魔法を使ったのか全然気付けなかったし、出し抜く手際が鮮やか、二流未満じゃなかなか出来る事じゃないと思う」

「うん、私も魔法を使っているのか使っていないのか全く分からなかった。光波ノイズには敏感なのに。お兄さんや冴種先輩みたい」

「そりゃあ、ヨーイドンで先んじて勝つのが現代魔法の腕の見せ所なら、いかに手遅れになるまでバレないようにフライングするかがレトロな魔法の腕の見せ所よ?真っ向から不意打つぐらいできなきゃ、人前でタネがバレたら終わりの手品は使わないわよ」

 

 が、昌枝の手際は古式が専門外という事を差し引いても、自分達がそう簡単に真似出来るようなものではないとほのかも雫も感じていた。単純に、干渉力を発揮するための力みとでも呼べるものがまるでなく、魔法発動に力を先鋭化させるような力の使い方はまるで司波達也や冴種真由美のようだと特に感受性の高いほのかは俄かに弁に熱がこもる。対する昌枝はそれが古い魔法なのだと涼し気な顔で受け流す。

 

「ところでさ、そんな手品を使っちゃって、実家からなんか文句とか言われたりしないのかな?そういうのって、結構本気で出し惜しみするものだと思っていたけど?」

 

 そんな彼女の言動に、同じくタネがバレたら終わりとまでは行かなくてもかなりキツイことになる、英国の名門、ゴールディ家の本家の一員として文字通りの隠し玉を相伝しているエイミィ*2はふと思った疑問を口にする。

 

「ああ、別に問題無いわよ。別に家の秘術でも何でもなくて、人が正規のライセンスを持っていないのを良いことに嘗めた真似をしてきたカスをとっちめて違約金取れそうにないから代わりに徴収したものをコネコネしたオリジナルだから雑に切って良い手札なのよ」

「「え」」

 

 返答は三人の想定以上にバイオレンスな入手経緯だった。ほのかと雫はつい怯んでしまうが、名門の血を引くだけにエイミィは「まあ、そういうこともあるよね」と、入手経緯そのものには全く怯まず平然としていられた。ただ――。

 

「……いや、そういう過程で入手したものだとしても自前のアレンジが有るなら普通は家の財産になるはずじゃ」

「だって私、家を見限って出ていったし。ああもうこいつら駄目だ、何でこいつらの尻を拭いてやんなきゃいけないんだろうってなって、取り敢えず身内全員叩きのめして病院送りにして出て行ったから、今更どうこう言える度胸なんて残ってないでしょ」

「え……えぇ……」

 

 戦利品の管理に突っ込もうとしたら、もっとヤバ過ぎる実態、明らかにその時ブチ切れたことが伺えるやらかし過ぎた話がお出しされて流石にドン引きするしか無かった。

 

 そもそも血統管理が重要になってくる魔法師社会において、血統の管理人、即ち家長にはそれなりの権力が集まるものである。そうでなくてもフリーセックス時代が終わり、結婚まで純潔を守るのが一般的な社会通念となっている二十一世紀末、子供が親の意向を完全に逸脱して好き勝手やる事例は著しく減少している。

 

 そんな最中で気に入らないから家の人間を纏めて叩きのめして出て行ったとは、ロックどころの騒ぎでは無い。とっ捕まって少年院にぶち込まれていない辺り、面子とかの問題で泣き寝入りさせたんだなというのが目に浮かんでしまう。

 

 業界で直近起きたその手の有名過ぎる実例?普段パワーを担保に超法規的な権力をブンブンさせている所が内側からさらなるパワーでぶち抜かれた場合、法律というセーフティーネットを自らすり抜けてしまっているので、本当にどうにもならないことが証明された惨劇である。これにはおっかない事件だったね戸締まりしておこうとえんがちょするのが魔法師社会ではごく普通の対応である。

 

 兎も角、あ、こいつブチギレさせたら何やるか分からない危険人物だ、とか。冴種真由美の親戚かな?などなど。三人は昌枝をそのようなヤベー爆弾として認識しつつも、まあ別に怒らせない限りは多分いい子だよねということで、四人で部活巡りを続けるのであった。

*1
精霊、式鬼、使い魔、霊獣など、非物質存在を媒体とする魔法の総称。それらを使役して事象改変を起こすため、誰が使ったかは非常に分かりにくい。

*2
ゴールディの血を引くクォーターの彼女は家の魔法、『魔弾タスラム』を祖母から相伝している




弓草昌枝、一体何者なんだ……()

ツッコミは思う存分感想で宜しくです。
6/29: 最初の火鰻にひうなぎのルビ追加
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