魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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11話 修練

 

 東江さんと、レフィーヤが私の家で住むことになってから一週間が経った。

 

 あの後、東江さんが引っ越し家財を魔法少女の力で運搬して来たりして、家の中が騒がしくなった。

 

 もちろん私も手伝った。

 

 タンスとか運んだし、偉い。

 

 レフィーヤもぶつくさと文句を言いつつも何だかんだで手伝っていた。

 

 彼女も彼女で家を放り出されたら死ぬしかないと言っていたので、案外共同生活に協力的だ。

 

 私の家も無駄に広いので、一人ずつ部屋もある。

 

 私が片付けるのが面倒で、荷物置き場にしていた場所はレフィーヤが。

 

 東江さんにはキッチンに近い部屋を希望したのでそこを開け渡している。

 

 しかし……私って私生活、一人でも上手くやれてると思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。

 

 東江さんは現在料理とか、暇があったら部屋の掃除をしてくれたり、レフィーヤに至っても、あらゆる家事をできるようで、雑用をテキパキとこなしていた。

 

「アンタって、完璧超人に見えても、私生活はてんでダメダメね」

 

 私の服を着てまともな格好になっている、レフィーヤからの一言が心にグサッと刺さる。

 

 いや、私みたいなのが普通多いだろ……。

 

 案外、掃除とかついついサボっちゃう人の方が多いって……。

 

 二人が異常なだけだ。

 

 え? 私の方がマイノリティ? 

 

 マジで? 凹む。

 

 そんなこんなで、案外平和な共同生活を送れている。

 

 この前は食器を片付けようとしたら、力加減間違えて、お皿割っちゃって、東江さんには心配かけて、レフィーヤには呆れられてたけど……。

 

 凹む。……私ももっと家事頑張ろう……。

 

 学校の襲撃事件以来、怪人の攻撃はパタっと止んだらしく、魔法少女に搭載されている怪人を察知できる力も、反応がないらしい。

 

 もしかしたら、大きな攻勢を仕掛けて来るかもしれないと、東江さんは警戒していた。

 

「ククク……アルタノギアもバカじゃないのよ……。

今に見てなさい、アンタもコテンパンにされるのだから! …………はあ……何で追放されちゃったのよ……」

 

 もうコイツ摘み出そうかな。

 

「十さん! お待たせしました! よろしくお願いします!」

 

 東江さんが修練場にスパッツとスポブラ姿で入って来る。

 

 長い髪は後ろで括ってポニーテールだ。かわいい! 

 

 なんかこう……全体的にぷにぷにである。

 

 胸とお尻は小さいが、それでも小さい子特有の柔らかい身体の感じが東江さんから感じられる。

 

 東江さんは私と同い年のはずだ、なのになんだこの犯罪臭は。

 

 これ以上見ても良いものなのか? 

 

 いきなり警察がやって来て捕まったりしない? 

 

 ゴクリ。

 

「……なんかアンタから、一部の筆頭みたいな気持ち悪さを感じられるんだけど……

気のせい?」

 

 黙ってろ。

 

 私はロリコンではない。

 

 ただ小さい子が好きなだけなのだ。

 

 そして、これから何をやるのかと言うと、東江さんと一緒に特訓をやる事になった。

 

 家事をやってくれる代わりに、私が東江さんの修行を受け持つ事になったのだ。

 

 断じて私が家事ができないから、お返しできるものがこれしか無いと言うわけでは無い。

 

 違うのだ。

 

 レフィーヤは面白そうだし、暇だからと言う理由で見学するらしい。

 

 なんだかんだ言って、この共同生活を一番楽しんでるのコイツだと思う。

 

 怪人がそんなんで良いのか。

 

 こうして、修行が始まった。

 

 一先ず基礎練からだ。

 

 急に体を動かすと危ないし、しっかりと柔軟しておかないと。

 

「むむむ…………」

 

 東江さんが必死に開脚前屈をやっている。

 

 これには注意点というか、三個意識しなければならないことがある。

 

 呼吸を止めない。

 

 反動をつけない。

 

 痛みがないように気持ちのいい所まで開く。

 

 これが普通のストレッチ方法。

 

 しかし、武術の世界ではそうはいかない。

 

 股関節の柔らかさは、そのまま攻撃への柔軟性に直結する。

 

 なので、今のペースでは間に合わない。

 

「東江さん……もっと足開いて」

 

「十さん!? これ以上は……! い、痛い……!」

 

 私は東江さんの足を、後ろから抱きつき、私の足で、押さえてググッと開かせる。

 

 ごめんね東江さん……。

 

 でもこれは痛みに耐える修行でもあるから……! 

 

 決して私が東江さんに抱きつきたいわけではない。

 

 だって犯罪だし。

 

 これは合法だ。

 

 いい匂いする。

 

 そして、5分続けた後、インターバルを取るために休憩する。

 

 これを後10セット続けるのだ。

 

 多分、一週間後には完全に開き切れるんじゃないだろうか。

 

「ハァハァ……も、十さん……厳しい……」

 

「ククク……無様だな魔法少女、そんなの我だって簡単に出来るぞ? 

攻撃の要は柔軟性だ」

 

 そう言いながら、得意げにレフィーヤが開脚を披露する。

 

 ……ふむ、まだ開きが甘いな。

 

「もっと、開いて」

 

「あ!? 痛ぁ!?!?」

 

 私が、レフィーヤの足を蹴飛ばすと、その勢いでゴキっと股関節から音が聞こえ、完璧に180度の開脚になった。

 

 あっ、骨が外れたか。

 

 私はそのまま、また足を蹴飛ばし、骨を元に戻す。

 

「あああああぁぁぁぁ!!!!?!?」

 

 そのまま、痛みに悶えてレフィーヤは修練場の中を転げ回り、奇声を発していた。

 

 根性のない奴め。

 

 私なんか、骨が外れても、骨が折れても修行を続けたというのに。

 

「じゃあ……東江さん……続き……やろうか」

 

「あ、あの十さん……これは本当にストレッチ……なんですか……?」

 

「……うん? ストレッチ、だよ。この後限界まで身体を追い込むからね……。

安心して……動けるようにはするから……」

 

(あっ……私死んだ)

 

 よぉし、期待に応えて、東江さんをもっと強くさせちゃうぞ! 

 

 ────

 

 あの後は初日ということもあり、控えめな修行ができたと思う。

 

 とにかく本格的な武術の訓練に入る前に基礎を叩き込むことが大事なので、取り敢えずその場で持久力を上げるためにシャトルラン100本と筋力バランスも考えて、腕立て伏せや腹筋などを繰り返した。

 

 東江さん一人でやらせるわけにもいかないのでレフィーヤにもやらせた。

 

 私もやったよ? 100キロの重りをつけて。

 

 その後、軽めのメニューにしたにも関わらず、基礎練だけで死屍累々となった二人は仕方がないので休憩させた。

 

 明日からも同じメニューをやって、そこからどんどん負荷を掛けていく予定だ。

 

 東江さんは才能があるので、二週間も経てば、武術の訓練をしてもいいかもしれない。

 

 私は、修練場に設置してある木人椿(もくじんとう)で、自身の武術の型を繰り返し練習していた。

 

 突き、受け、蹴り、捌きなどの基本の方を反復して行う。

 

「十さんは、そんなに強いのに……なぜ基礎練を反復して行うんですか?」

 

「……そうだね、武術って基本的に、一日休んだら三日技術が落ちちゃうから……かな」

 

「そ、そんなにですか」

 

「基本は大事だよ……全ては……完成された型から始まり、型で終わる」

 

「でも、派手な攻撃の方が強いような気もしますけど」

 

「それも……一つの考え方だね。でも、やっぱり私は基礎を練り上げて、

洗練された技にこそ意味があると思ってるから……」

 

「ふふ」

 

 東江さんが手に口を当てて小さく笑う。

 

 え? 何かおかしなこと言ったかな? 

 

 それとも、普段喋らない人が饒舌になったから笑われてるのか……? 凹む。

 

「十さんは……武術を愛してるんですね」

 

「そう言われれば……そうかもね……。でも、私は武術に愛されなかったんだよ」

 

「え?」

 

「武術は弱い人間がどうやったら強大な敵に立ち向かえるかで、考えられた……

言わば()()()()()()だから……。私は……」

 

 いつのまにか、私は人智を超えた力を手に入れてしまっていた。

 

 おそらく、武術の技を使う前に、相手をその腕っぷしで倒してしまうほどに。

 

 だから私は、武術に愛されなかった方の人間だ。

 

 強者が扱っていい技術ではない。

 

 そう、私は武術に倒される方の人間なのだ。

 

「弱者の為の技……」

 

「……武術は……弱い人間が使う事によって、その本領を発揮する……。

漫画やアニメとかで、みんな勘違いしてるんだよ」

 

「でも十さんは、そんな弱い人たちを助けてくれてたじゃないですか、

それって十さんが好きな武術の精神性を受け継いでるって事じゃないですか?」

 

 精神性……か。

 

 そういえば、考えたことも無かったな。

 

 ずっと一人で基礎練を繰り返すだけの日々だったし。

 

「……武術って厄介ね……。我の部隊の筆頭も似たような技使ってたけど、

……あれも怪人の範疇を超えていたわ」

 

 レフィーヤが横から口を挟んでくる。

 

 ……? 怪人にも武術を扱う奴が居るのか。

 

 それなら……厄介な話だ。

 

 東江さんの攻撃手段は今の所ステッキからのビームだけらしい。

 

 達人ならその攻撃を掻い潜ることも難しくないだろう。

 

「……では、泣き言を言ってる暇なんてありませんね! 

十さん! 私頑張ります!」

 

 心配は……まあ、東江さんなら大丈夫かな。

 

 精神は私なんかよりずっと強いと思うし、東江さんがピンチの時には私が助ければいい。

 

「じゃあ……明日から修行……もっと頑張ろうか」

 

「……お、お手柔らかに……」

 

「我はもうやらないわよ……」

 

「レフィーヤも付き合ってください!! 何逃げようとしてるんですか!」

 

 こんな騒がしい家も悪くはないな。

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