魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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12話 戦いの幕開け

 

 東江さんが修行を始めて、一週間が経った。

 

 私が思っているより早く、東江さんの身体はだいぶ仕上がっている。

 

 これなら予定を早めて、武術の基本の型なら教えても身体は壊さないだろう。

 

 すごいな、本来ならみっちりと鍛えていく予定だったけど、東江さんの成長速度は速い。

 

「じゃあ、まずは空手の正拳突きから……反復してやってみようか……」

 

「はい!」

 

「ねぇ、これ我もやるの?」

 

 修練場で東江さんとレフィーヤが一緒に構える。

 

 レフィーヤの方は渋々と言った感じだが、コイツもコイツで怪人なので体の仕上がりは元々しっかりしていた。

 

 最初から型を教えても良かったくらいには、頑丈である。

 

 でも、東江さんと基礎練を付き合ってきたので、もしかしたら面倒見のいい方なのかもしれない。

 

「正拳突き……はまず、肩幅に足を開いて、両手を握る。そこから片方の手を胸の中央に突き出してみて」

 

「こうですね」

 

「うん、それが【突き手】、そしてもう片方の手を脇腹あたりにつける、これが【引き手】。引き手側の肘はしっかりと背中の方へしめる……それを瞬時に交互にやってみて」

 

 東江さんは身体を伸ばし、交互に拳を繰り出す。

 

 体の軸がぶれてるけど。

 

 うん、一生懸命やってて可愛い。

 

 おっと、私が集中力を乱してどうするんだ。

 

 レフィーヤの方は……こっちは教えなくていいか。

 

 なんか、きっちり型になってるし。

 

「東江さん……ちょっと触るね」

 

「は、はい!」

 

「突きを突き出す時は、引き手が邪魔にならないように、強く引いて、そして腰を捻りながら前に突きを繰り出す。

 これを意識して繰り返すと、慣れたら速くなる」

 

 私は東江さんの小さな腰に手を添えて、補助で腰を捻らす。

 

 すると、先ほどは腰の入ってなかった突きが数段に速くなった。

 

「……! これが……正拳突き……」

 

「うん、いいね、肩の力も抜いて、繰り出すともっといいよ。

 じゃあ、これを500回やってみようか」

 

「ご、500ですか!?」

 

「……? 50回を10セット、簡単でしょ?」

 

「……は、はい!」

 

「……体がブレたらその時点で最初からやり直しだから、ゆっくりやろうね……」

 

「ひえ……は、はい……」

 

「レフィーヤは……2000回ね」

 

「なんで!?」

 

 ─────

 

 こうして、二人は正拳突きを始め、その場で体がブレたら容赦なくやり直しをさせた。

 

 そのおかげか、最初に比べたら、二人ともちゃんと上達している。

 

 東江さんは何度かやり直しながらも、きちんとした姿勢の正拳突きを続け、500回を達成した。

 

 その場で手を置いて、肩で息をしている。

 

 レフィーヤは……まだ続けている。

 

 正直、すぐに音を上げて辞めるかと思いきや、何故か真剣になって、汗だくになりながらも、ずっと続けている。

 

「……1999……2000! ……しゃあ! どうよ! 十! 我、やり切ったわよ!」

 

「……うん、驚いた。すごいね」

 

「ふっふーん!」

 

 デカい胸を張り、堂々と腰に手を当てて得意げに鼻を鳴らす。

 

 最近、コイツのことが分からなくなってきた。

 

 普通に共同生活に乗り気だし、これまで家を空けても人間を襲うことなく、家で大人しくしてるし……。

 

 あれ? 人間の敵だったよね? 

 

「……レフィーヤ……貴女……なんで真面目にやってるんですか……」

 

「……あ」

 

 東江さんが息を切らしながら、問うと、レフィーヤは忘れていたと言わんばかりに間抜けな顔を晒す。

 

 まさか……夢中になりすぎて、今の現状を忘れていたわけじゃないよな? 

 

「レフィーヤ……私……貴女の事が分からないです……」

 

「あれれ? なんで我、大人しく修行してるの?」

 

 ……組織を追放された理由がなんとなく分かったような気がする。

 

 まあ、人間の生活に慣れ切った、腑抜けた怪人は置いておいて、このまま修行を続けていけば、また次の段階に移れるような気がする。

 

 そんな日々が、続いていた時だった。

 

 ─────

 

「十さん……怪人の気配です……!」

 

「……ん、分かった」

 

 学校からの帰り道、いつものように不幸の手紙をお焚き上げしてもらって、東江さんと一緒に帰っていた時だった。

 

 遂に怪人が現れたらしい。

 

 私は変身した魔法少女姿の東江さんの後を追いながら、怪人が現れたらしい場所へと向かう。

 

 近づけば近づくほど、確かに、怪人特有の気持ち悪いオーラが増幅していた。

 

 なるほど……気配的に何体かいるな。

 

 そして遂に、現場へ辿り着く。

 

 そこには二体の怪人が居た。

 

 片方は筋骨隆々の身長の高い女、鬼のような角が生えている。

 

 もう一人は線の細いワンピース姿の少女。

 

 見て直感する。

 

 線の細い少女の方が、オーラの出が尋常ではない。

 

 彼女の方が身長の高い鬼より強い。

 

「怪人達! 悪さはそこまでです!」

 

「ガハハ! ヒヨリ! おい来たぞ! 魔法少女が!」

 

「……油断しない事ね、メギ、一人……とんでも無いのが居るわ」

 

 そう言いながら、ヒヨリと呼ばれた少女が私の方を見る。

 

 どうやらあちらも、私が敵だと認識したようだ。

 

「東江さんは……あの体のデカい方を……。私はアイツをやるから」

 

「……! はい!」

 

 こうして、東江さんが修行を積み、初めての怪人との戦いが幕を開けた。

 




活動報告にて東江 聖理佳のキャラクターデザインを公開しました。
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