魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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13話 手からなんか出たり剣が地面から生えてくるヤツ

 

「貴女は警戒しないといけないわね」

 

 ヒヨリと呼ばれた怪人が、腰を落とし、腕を天に掲げ、手のひらを開く。

 

 すると、そこには光の球みたいなのが出てきた。

 

 なんだあれ。

 

 東江さんのビームと似たような感じである。

 

「悪いけど、最初から全力で行かせて貰うわ【光滅波(こうめつは)】!」

 

 女が叫ぶと、光の玉が光線状になり、一直線に私の方へ伸びてくる。

 

 波だ! 波が出てきた! 

 

 すごい! 

 

 どういう原理か分からないけど、武術を扱うものなら、一度は夢見たことあるんじゃ無いのか? あの技。

 

 さて……本来なら躱すのが定石かもしれないが、躱したら何かを仕掛けてくるような雰囲気を感じた。

 

 ならばここは……! 

 

 私は波に合わせて、両手を掌を開いた状態で前に出す。

 

 そしてそのまま私は、光線を受け止めた。

 

 熱を持ってるようで、掌がじりじりと焼けるように熱い。

 

 しかも結構な威力だ。

 

 ギリギリと骨が軋むような感覚。

 

 これは……地面に受け流したら、ヤバそうだ。

 

 私は、そのまま柔術のスイッチに切り替えて、下から掬い上げるように、光線を受け流した。

 

 受け流された光線はそのまま空へ飛んでいき、一つの雲が光線に当たった瞬間弾け飛んだ。

 

 フッ──。

 

 やはり最初見た感じ、強いと思ってたけど、予想以上だな。

 

 私は肩を回して、女に近づく。

 

「ッ! 【光滅剣(こうめつけん)】!」

 

 女は、地面から生えてきた光剣を私に構え、振りかぶり、切り掛かる。

 

 私はそれを右に躱し、右拳を女の腹目掛け、繰り出す。

 

 女はそのまま躱された剣を地面に突き刺し、拳が届く前に左へ飛んだ。

 

「……クソっ……!」

 

 頭に青筋を浮かばせ、歯を軋ませる女。

 

 ふむ、今のも躱されるか。

 

 まあまあ素早いやつだ。

 

 それに、見切る能力も長けている。

 

 前にレフィーヤが武術に長けている怪人が居ると、仄めかしていたが、もしやコイツがそうなのだろうか。

 

 ……でも、剣の持ち方に知っている流派が感じられない。

 

 動画とかで見たことのある、関東七流や、一刀流系統とも違う。

 

 まさか我流か……? 

 

「……君の剣の流派はなに?」

 

 私は興味本位で聞いてみる。

 

「……流派……? 何よそれ」

 

 どうやら、武術を扱う怪人とは違ったらしい。

 

 しかし、流派を持たない剣術か……。

 

 いけない、それはいけない。

 

 武術や剣術にも流派というものがある。

 

 私はいろんな流派を取り入れすぎて、ごちゃ混ぜになっている半端者だけど、それでも型というのは大事だ。

 

 それに剣術の流派ってカッコいいじゃん。

 

 さっきの波と、この剣術組み合わせたらもっと強くなると思うんだけどなぁ。

 

 ああ、駄目だ。

 

 私の悪い癖。

 

 いろんな流派を取り入れすぎて、すぐに組み合わせとか考えたくなってしまう。

 

「なんなのか知らないけど、考え込んでる暇があるッ?」

 

 女が踏み込み、私に迫ってくる。

 

 足の動き、目の位置から察するに、胴に一閃した後に、唐竹割(からたけわ)りか。

 

 この怪人は強い。

 

 多分、並の人間なら剣の立ち上がりから、軌道すら見えないのでは無いだろうか。

 

 目の奥に感情の焦りが見て取れる。

 

 彼女、おそらくこの剣が奥の手なのだろう。

 

 流派は感じられないにしても、長い間、剣を振ってきたと思われる軌跡がその体、速度から感じられた。

 

 横凪に私の腹目掛けて切先が飛んでくる。

 

 私がバックステップで躱した直後に、女はそのまま体を回転させ、片手で剣の柄を最大まで長く持ち、縦に一刀を放ってきた。

 

 

怪人剣流(かいじんけんりゅう)一閃唐竹割(いっせんからたけわり)

 

 

 敢えて、名付けるならばこんな感じだろうか。

 

 ならば、剣の技は剣の技で返すのもやぶさかでは無い。

 

 私は、振り下ろしてきた剣の横に滑る様に入り、左腕を相手の顔に当てる、右手で、剣を持ってる手を叩き、そのまま流れる様に、相手の剣を奪う。

 

 そして、私はそのまま、脚を蹴飛ばし、転ばせ切先を逆手に、相手に向けた。

 

 

新陰流(しんかげりゅう)無刀取(むとうど)り】

 

 

 かつて、剣豪【上泉 信綱(かみいずみ のぶつな)】が考案し、その弟子の【柳生 石舟斎(やぎゅう せきしゅうさい)】が完成させた、新陰流の徒手技術。

 

 人の間合い、タイミング、距離感。

 

 全てが極致に達した時、人は刀を持たずとも、その波動を追え、相手の刀とも一つになれる。

 

 一つの剣術の答えとも言える技術。

 

 まあ、これは柔術が主な技だけども。

 

 カッコいいから、覚えておいてよかった。

 

 自分で作った、真剣を勝手に振り下ろしてくれるマシーンで傷だらけになりながら、修行した甲斐があったというものだ。

 

 切先を突きつけられた怪人は、私を睨みつける。

 

「……くっ殺せ!」

 

「……なんで?」

 

 なんか、えっちな本の姫騎士みたいなこと言い始めた。

 

 よく見ると、お姫様みたいな綺麗な顔立ちに、黒く長いロングヘアの姫様ヘアーの、少し幼い体付き。

 

 しかも服装は、白色の動きやすいワンピース。

 

 私が転ばせたせいで、汚れちゃったけど。

 

 なんか、どっかのお城を抜け出してきたお姫様みたいだな? この怪人。

 

「私は負けた! 貴女は敵よ! 生き恥を晒すくらいなら、怪人として潔く死ぬわ!」

 

「……死んでも何も残らないよ」

 

「……生命力も満足に奪えず、何が怪人よ!」

 

 前から思ってたんだけど、生命力って一体なんだろ。

 

 東江さんも生命力が云々とか言ってた様な気もするけど、あんまりその辺り分からないんだよなぁ。

 

 怪人がなんで人襲ってるのかも理由不明だし。

 

 そういえばレフィーヤが魔神とかなんとか言ってたっけ。

 

 後でちゃんと話聞いておこう。

 

「……悪いけど……私は活人主義だから……殺すとか……しないんだ」

 

「ッ! 愚弄するの!」

 

 怪人が怒りを露わにして吠える。

 

「……そんなんじゃないよ……私が受けた教えは……『生かし更生させる』だから……ね。

 だから……どんな悪人でも……私は手を下さない……手を下すのは……この国では……司法だから」

 

 まあ今まで手を下した事もないけど。

 

「フッ、怪人が国で裁けるとでも?」

 

「……国じゃ難しいだろうね、だから……その辺りは……魔法少女に一任するかな」

 

「……甘いわね、こんな甘い子に負けるなんてッ……!」

 

「……なんか、ごめんね……」

 

 まさかこの状況で、説教に近いことを言われるとは。

 

 ごめん、覚悟も信念も無い奴でごめん。

 

 これまで人と関わってこなかった弊害なんだ。

 

 それに聞こえがいい様に言ってるけど、たとえ人とは違う生き物だとしても、同じ言語とか言葉喋ってる時点で、殺すとか無理。

 

 勘弁して。

 

 え? 前に学校襲ってきた奴はなんかめちゃくちゃ痛そうな技放ってたけど、いいのかって? 

 

 あれは……あの程度で死なないと思ったし……頑丈だと思ったから……ゴニョゴニョ……。

 

 ちょっと思いっきり技ぶつけられると思ってテンション上がってましたごめんなさい。

 

 あ、そういえば東江さんの方はどうなったかな……。

 

 場合によっては、怪人を気絶させて手助けに行かなきゃ……ほう。

 

「……ガハハ……!」

 

「ハァ……! ハァ……!」

 

「天晴れ……! って奴だな!」

 

 私が見た光景は、ボロボロになって所々血を流している東江さんが拳にピンク色の光を纏い、私の教えた正拳突きで鬼の怪人を倒していた瞬間だった。

 

 怪人は東江さんの肩に手を置いて、満面の笑みで崩れ落ちたのであった。

 

 え? めちゃくちゃ盛り上がってるじゃん、アッチ。

 

 

 

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