魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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14話 桜花

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 聖理佳side

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 私は身体のデカい鬼の様な怪人と相対する。

 

 遠目から見た様子から恐ろしいほどの圧力だが、目の前に立ってみて否応にも感じてしまう。

 

 相手の身長は優に2mを超している。

 

 対する私は低身長。

 

 とんでもない重圧が私にのしかかっていた。

 

 十さんは迷わず、あっちの線の細い怪人と戦うことを選んだ。

 

 うう、もしかして、十さんは私に試練でも与えたのだろうか……? 

 

「……フン、相手にとって不足なし……だな!」

 

 鬼の怪人、あの怪人はメギと呼んでいた。

 

 メギは鼻を鳴らしながら、手をポキポキと鳴らしながら私に近づいてくる。

 

 先のクルリと呼ばれていた怪人との戦いを経て、私と怪人との間に実力の差が途方もない事は分かっていた。

 

 魔法少女は……どんな時でも挫けずに笑顔で人を守らないといけない。

 

 だけど、先の戦闘で思い知った圧倒的実力差に慄いて、足がすくんでしまう。

 

 十さんが私に託した相手……私は……勝てるのか? 

 

 二週間で十さんから学んだ事は、基礎と正拳突きのみ……。

 

 この短期間で……強くなったとは……到底思い難い。

 

「ん? 来ないのか? ならば俺から行くぞ!」

 

 メギが動き出す。

 

 一直線に私に向かって、体当たりを仕掛けてくる。

 

 身体のデカさも相まって、まるで猛獣が突進してくるかの様な重圧感……! 

 

 そして何より立ち上がりが速い! 

 

 ニライカナイの力を借りてようやく見えるぐらいの瞬発力。

 

「くぅ!」

 

 私はなんとか、横に急いで飛び、その場をゴロゴロと回りながら、回避する。

 

 そして、宙に浮き、牽制で何本かのビームを放った。

 

「ヌルいぜぇッ!!」

 

 メギは体をその場で回転させ、片手を振り、ビームを霧散させる。

 

 とにかく、今のビームは囮! 

 

 一か八か……! 十さんに習った正拳突きで……! 

 

 ビームが霧散したことによって、地面に散らばったあたりに土煙が巻き起こる。

 

 私はそのまま煙に身を突っ込ませ、メギの懐に潜り込む。

 

 体が小さいのが功を奏した、メギは一瞬で消え、懐に現れた私に面を食らっていた。

 

「ぬぅ!?」

 

「はぁぁッッ!!」

 

 私は十さんに習った型を思い出しながら、拳を放つ。

 

 腰を捻る様に、肩の力を抜いて、撃ち抜く……! 

 

 そして、メギのお腹真正面に、拳を突き出した。

 

 ドッという鈍い音が聞こえる。

 

 や、やった……! 技が……届いた……! 

 

 私が技が通用したことに、喜びを露わにした。

 

 だが、その喜びはすぐに消え去ることになった。

 

「効かんなぁ?」

 

「なっ!」

 

 メギが私を見下ろす様に、ニヤりと笑う。

 

 ッ! 効いていない!? 真正面を撃ち抜いた筈なのに……! 

 

「ガハハ! そのか細い腕で、俺に拳で立ち向かってくるとは、素晴らしい根性! だが筋力が足りん! パンチとはこう放つのだッ!」

 

 メギが拳を振りかぶり、撃ち下ろしてきた。

 

 腕を振った瞬間、空気が爆ぜ、ボッという衝撃音が聞こえる。

 

 私は咄嗟に生命力をバリアーに変換したが、すぐに悟った。

 

 これは受けたら、防御ごと貫かれる……! 

 

 バリアーを貼るのをやめ、私は反射神経の赴くままに、必死に回避行動をとる。

 

 空ぶった拳が地面にぶつかり、その瞬間、地面が爆ぜた。

 

 飛んでくる石などの破片で、服は所々切り裂かれ、生傷を作る。

 

 私はえぐれた地面を見てゾッとした。

 

 これを受けていたら……私は……。

 

 そんな事を思っていたら、次の攻撃が飛んでくる。

 

「オラオラオラオラァ!!」

 

 次から次へと拳が飛んでくる。

 

 思い切った大振りの殴り方。

 

 だけど、十さんと修行した今なら分かる。

 

 この攻撃は一個でも当たったら致命的だ! 

 

 飛んでくる拳を私はなんとか紙一重で躱す。

 

 しかし……この攻撃……。

 

 当たったら、とんでもないが、避けられている。

 

 十さんとの短い修行期間だったけど、私の身に付いている! 

 

 柔軟が大事だと、十さんもレフィーヤも言っていた。

 

 上からくる拳は、開脚の要領で足を開き、躱す。

 

 下から飛んでくる蹴りは、飛んで躱す。

 

 す、すごい……! 

 

 前の私なら絶対に躱せなかった攻撃も、今では見切れる事が出来ている! 

 

 だけど……このままじゃジリ貧……。

 

 いつか私の体力も無くなって、攻撃が当たるのも時間の問題だ……! 

 

 どうする……? 

 

 どうする……私!? 

 

「ハァハァ……なかなか、ちょこまかと動くじゃねぇか……! やっぱ、俺の見立ては間違ってなかったようだなぁ!」

 

 拳を繰り出しながらメギが話しかけてくる。

 

 こんな状況でも話せる余裕があるなんて。

 

「見立て……? 貴女は、私の何を見ているの!?」

 

「……初っ端、見て分かったぜぇ! 俺とテメェは対等にやりあえるってなぁ!」

 

 対等……? ふざけないでほしい……! 

 

 今は私は躱すので精一杯……! 

 

 だけど、当の相手は息を切らしながらも、致命傷の拳を連続で繰り出してくる……! 

 

 こんなのじゃあ……いつかは……! 

 

 ……? 

 

 息切れ……? 

 

 そうか……! 私の体力が無くなるのならば、相手の体力が無くなるのも同じ事……! 

 

 なんでこんな当たり前のことに気づかなかったの私! 

 

 ……怪人は生命力を身体強化に回して、能力を上げていた。

 

 だから今まで戦ってきた怪人はどれもスタミナが無尽蔵だと思っていた……! 

 

 私が倒せていた間は大丈夫だったけど、どんどん怪人が強くなってきて……そのスタミナと攻撃は私の脅威になっていた。

 

 だから……私は怪人は全員が体力が無尽蔵にあるものだと勘違いしていた。

 

 しかし……その事が分かったからって、私の圧倒的不利は変わらない……! 

 

 二週間で十さんに鍛えられたけど……私もスタミナが……! 

 

 ……? 

 

 その瞬間、私の体にとある違和感が芽生える。

 

 これだけ連続で繰り出してきている攻撃の前に……私は息切れを起こしていない。

 

 集中力も……落ちていない……? 

 

 ……! 

 

 この二週間……私は持久力と集中力をメインに鍛えていたことを思い出す。

 

 持久力は常軌を逸した走り込みを……。

 

 集中力は、途切れたら全てやり直しになる正拳突きの特訓を……! 

 

 これは……! 全て……! 

 

 ゾクゾクゾクと体の内から何かが湧き上がってきた。

 

 十さんは……実践を見越して……私の現状の弱点を把握して私を鍛え上げてくれていたのか……!? 

 

「武術は弱者の為の技……基礎を練り上げる……!」

 

「ハァッ……! さっさと当たれよぉ!」

 

「そんな攻撃なんか……! 当たりませんッ!」

 

 正面に繰り出された、拳をバックステップで躱し、その反動で私は前に出る! 

 

 攻撃を恐れるな! 私は! 十さんに鍛えてもらったんだから! 怪人に負ける訳にはいかない……ッ! 

 

 私は正拳突きを再度繰り出した。

 

 その流れはスムーズだった。

 

 十さんは500回と言っていたが、私が打ち込んできた正拳突きはやり直しを含めて2000回以上。

 

 脚を肩幅まで開き、肩の力を抜き、腰を捻り、その反動で拳を放つ……! 

 

「グオオッ!?!?」

 

 メギは腹部に拳を受け、後ろによろよろとお腹を押さえながら後退した。

 

 フッ───! 

 

 で、出来た……! 

 

 効いた……! 

 

 だけど……これじゃまだ足りない……! 

 

 その時の私は無意識だった。

 

 追撃を加える為、もう一歩踏み込んで、腹部に拳を放つことに一点集中する。

 

 その攻撃はいつも私がビームを放つ時に生命力を変換し放つ時の感覚だった。

 

 私の拳の周りに桃色のオーラが咲き乱れる。

 

「うおおおおおおッッ!!!!」

 

 無我夢中で、真正面に私は拳を突き出し────。

 

 

 

 その拳は花が咲くかの様に。

 

 

 

 ────爆ぜた。

 

 

 

桜花拳聖拳突(おうかけんせいけんづ)き】

 

 

 

 後に横で技を見てくれた十さんが名付けてくれるこの名前。

 

 メギは私の拳を受け、その場で仁王立ちして私を見下ろす。

 

「……ッ!」

 

 まさか……これでも効かない……!? 

 

 そう思っていたのだが、メギは片手を振り上げ、勢いよく振り落とすと、私の肩に手を置いてこう言った。

 

「天晴れ……! って奴だな!」

 

 ニッと笑った彼女はその場に崩れ落ちる。

 

 こうして私は、十さんの力も借りずに久しぶりに単独で怪人を倒す事が出来たのであった。

 

 

 




11話で十が皿割った時の様子


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