魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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15話 アルタノギア次席

 

「やりました! 十さん!」

 

「うん……頑張ったね」

 

 戦いの終わった東江さんが、私の元へトコトコと駆け寄ってきて、魔法少女姿でぴょんぴょんと跳ねて喜びを露わにしている。

 

 かぁいい……。

 

 思わず口元が緩みそうになった私は急いでキュッと口元を締めた。

 

 危ねぇ危ねぇ……変な顔を晒すところだった。

 

「さて……怪人……貴女の名前は……?」

 

 東江さんが真面目な顔をして、私が拘束(と言っても剣を顔の方に突き出しているだけだが)していた怪人に話しかけた。

 

「……ヒヨリ」

 

「ヒヨリ……貴女はここで何をしていたのですか? 見たところ……私たち以外に人間の姿が見えませんが」

 

「なぜ貴女に話さなくてはならないのよ」

 

「……不思議なんです……最近、怪人が行動していない事……そして人気のない所で私たちを待ち伏せていたかの様な」

 

 まあ確かに不思議な所ではある。

 

 私たちが来た時も倒れてる怪人が来たぞ! とかなんとか言ってた気がするし。

 

 まあとはいえ、私は横から口を挟む訳にはいかない。

 

 おい、口を挟まないじゃなくて挟めないんだろ? とか思った奴出てこい。

 

「……はあ……このまま口を割らなかったら帰してくれそうに無いわね」

 

 ヒヨリと名乗った怪人がため息を吐きながら、渋々答え始める。

 

「……がしてるのよ」

 

「え?」

 

「探してるのよ! 私たち一番隊の次席を!」

 

 そう言ったヒヨリが次々に口を開き始める。

 

 どうやら、最近組織を追放された部隊の次席とやらを探している最中だったらしい。

 

 最近組織内でゴタゴタがあり、そのせいで一部の怪人たちが反乱騒動を起こし、内部分裂をしている。

 

 そのせいで、生命力集めとやらも満足に出来ていないとの事。

 

 そのために隊同士の仲をなんとか取り持っていた一番隊の次席を探しているとのことだった。

 

 ……そっか……最近追放された怪人か……。

 

 なんか一人家に居たな……そんな奴。

 

「アイツら……! 誰の隊が一番アルタノギアに貢献しているのかも知らないで……! 言いたい放題言って……! 挙げ句の果てには……新たな組織を形成して……人間共を滅ぼすですって!? 奴らは私たちがどんな目的で動いてるのかも知らない癖に……!」

 

 口が乗ってきたらしく、怒り始めるヒヨリとやら。

 

「それで、貴女達、魔法少女なら何か手掛かりがあると思って……」

 

 そうして、私たちを待ち伏せていた……という訳か。

 

 ……怪人側にも私が魔法少女だって思われてる……? マジで? 

 

「……? 目的……貴女たち怪人は魔神を復活させる為に一致団結して人間を襲っていたのではありませんか? その目的に……齟齬があると?」

 

「……喋りすぎたわ」

 

 東江さんが、口走った怪人の目的について問うとヒヨリは罰が悪そうにそっぽを向いた。

 

 そ、そうだったのか……怪人って魔神とやらを復活させる為に動いてたんだな……! 初耳! 

 

 そういやレフィーヤも魔神がどうとか言ってたし……。

 

 っていうか東江さんも知ってるなら教えてくれてもよかったのに……。

 

 あ、そういえばまだ私の事、魔法少女って勘違いしたままだったっけ? 

 

 なんか最近楽しくて普通にその辺りの事忘れていたし、流されてたな……。

 

 しかし、今更空気も読まずに「私、魔法少女じゃないんですよ〜! 笑!」とか言える気がしない。

 

 誤解を解くのって……難しいね……! 

 

「十さん……これってもしかして……」

 

「……多分……そうだと思う……よ?」

 

 東江さんも薄々気づいたらしく、なんか冷や汗を流している。

 

 うん、この怪人達の言っている次席って奴はレフィーヤの事で間違いない。

 

 し、しかし……今の、この弱ってるだろう怪人達にレフィーヤの、人間の生活に慣れきった腑抜けた姿を見せて良いものなのだろうか……? 

 

 なんか……かわいそうに思えてくるな……。

 

「十さん……今、かわいそうとか思いませんでした……?」

 

 東江さんがジト目を向けて私に注意を促してくる。

 

 思いましたごめんなさい。

 

 っていうかなんで、私の思ってる事が分かるんだ? 

 

 そんなに顔に出やすいのだろうか……という事はさっきのニヤケそうになった時の顔も……!? ……凹む。

 

 さて……レフィーヤの事をどう話せば良いものか……。

 

 その時だった。

 

「あー! 見つけた! 十〜! 東江〜! 帰ってくるの遅いじゃないのよ!」

 

 私たちの体が同時に硬直する。

 

 聞き覚えのある、今この場で一番聞こえちゃダメな声が聞こえた。

 

 待て? なんでコイツ外出歩いてるの? 大人しく家で居ろって言ったはずだよね? 

 

 恐る恐る振り返ると、そこには案の定ニコニコ笑顔のレフィーヤがそこに立っていた。

 

 両手には私たちがいつも使っている買い物袋に何やら具材が入っている。

 

 っていうかお金は? 何やってんの? 

 

「ふっふーん! 凄いでしょ! 我! 一人で買い物も出来るようになったわよ!」

 

 そう言いながらデカい胸を張るレフィーヤ……いや何回目だよこれ。

 

「今日ね〜暇だったから家にあったチラシ見てたら、近所のスーパーでタイムセールって奴やってたらしいの! でね! 見て!」

 

 レフィーヤがバッと買い物袋を広げる。

 

 そこにはネギやら白菜やら豚コマなどが入っていた。

 

「全部安かったから、買ったのよ! 凄いわね! タイムセールって! 今日はお鍋よ!」

 

 いや……安いのはありがたいけど……え? 

 

 ほんとに何やってんのコイツ。

 

「……それは……よかったね…………で、お金……は?」

 

「あ〜なんか十のクローゼット漁ってたら、出てき……痛い痛い!?!?」

 

 私は思わず、目の前のアホにアイアンクローをかます。

 

 おいコラ、それ私のタンス貯金じゃねーか。

 

 何してくれてんだコラ。

 

 それになんだその服、デカい胸に押し出されて左右に引っ張られている、【秋刀魚】と書かれたシャツ。

 

 存在自体がふざけている。

 

 やはりコイツはここで消しといたほうが良さそうだ。

 

「あぁぁぁぁッ!!! 頭がッ!? 頭が! 割れるッ!? 我の!!」

 

「……は! 十さん! 十さん! やりすぎです!」

 

 怒りで我を忘れていた私は、東江さんに静止されて、パッと手を離す。

 

 危なかった……ついグチャっていく所だった……。

 

「レ、レフィーヤ……さ……ま……?」

 

 か細く震えた声が私の後ろから聞こえる。

 

 あ! やばい! アホのレフィーヤのインパクトがデカすぎて、ヒヨリとやらの事、完全に忘れてた! 

 

「あー! あの! これは! その!」

 

 東江さんが必死に小さな体をぴょんぴょんさせながら、レフィーヤの姿を隠そうとする。

 

 身長が違いすぎて全然隠れてない! 

 

 それにそうだよね! なんか! 見せちゃダメだよね! 理由は分からないけど! 

 

「……え? ヒヨリ……? アンタ……何をしてるの?」

 

「……それはこちらの……セリフですが……」

 

 私と東江さんは顔に手を当てて同時に天を見上げる。

 

 どう、収拾つけるの……これ……。

 

 

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