魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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17話 筆頭会議

 

 十がレフィーヤと東江に修行をつける前の事。

 

「レフィーヤが人間側に寝返ったというのは本当なのか、一席」

 

 アルタノギアのアジト。

 

 薄暗い空間に、円形状のテーブルに囲うように椅子に座る怪人達。

 

 一席と呼んだ、天狗の仮面を被った怪人は腕を組み、仮面の中から鋭い目つきを彼女に向けながら、怒気を孕んだ声でそう質問した。

 

「ああ、奴は魔法少女に味方し、新たに現れた仲間の指示を受け、五席に倒された魔法少女を守っていた」

 

 一席───。アルタノギア一番隊筆頭は、椅子に深く腰をかけ目を瞑りそう告げる。

 

 その答えに、周りに座っている怪人達はどよめきの声を上げた。

 

 彼女達はアルタノギアの筆頭達。

 

 数は総勢で六名。

 

 今は、レフィーヤの処遇についての筆頭会議を行なっている。

 

「五席ちゃーん、それってホントーなの〜? レフィーヤちゃんが裏切るなんて事、ボクにはあり得ないんだけどな〜」

 

 五席と呼ばれた怪人、着物姿の少女、クルリは少し目線を逸らしながら答える。

 

「ええ、そうよぉ……。魔法少女の後に現れた人間にいいように命令されて守ってたわ、私の奴隷達も確認済みよ、それとも私の言うことが信じられないの? 三席」

 

 逸らした目線を三席と呼んだ、行儀悪くテーブルに足を乗せ、棒付きの飴を齧りながら、ニヤニヤとした表情のホットパンツに英字プリントされたふざけた柄のシャツを着ている背の小さい、少女の方へ向ける。

 

「ふぅん。そっか〜じゃあ仕方ないね〜」

 

「何が仕方ない、ですか! レフィーヤさんは私達が怪人として生まれ、力を持て余した時に力の扱い方を教示してくれた方! 三席! 貴女もそうでしょう!」

 

「うえ〜耳元で叫ばないでよ四席〜」

 

 気の抜けた返事に苛立ったのか、テーブルに手をバンっと大きな音を立てながら、立ち上がり、三席の耳元で叫ぶ、黒髪長髪、俗に言う姫様カットをした、スーツ姿の女。

 

 三席は心底嫌そうな顔を浮かべながら耳を塞いだ。

 

「で、でも……一席……な、なんで私達に何も言わずに、レフィーヤさんを追放しちゃったのですか……?」

 

 ビクビクと身体を震わせながら、オドオドした表情で、一席の顔色を窺っている少女。

 

 その場には似合わない、大きな兎のぬいぐるみを抱いて、所々跳ねた栗毛の癖っ毛が特徴的な身長が優に3メートルを超える巨女、六席が体格に合っていない小さな声量で一席に問う。

 

「ああ、そこが某も納得がいかん。追放するにしても何故我らに一声掛けなかった? 納得のいく理由を聞かさん限りは、某とて……」

 

「五席の戦った相手……葉荼芽と言うそうだ」

 

 天狗の仮面を被った二席が握り拳を震わせながら問うと、一席は言葉を遮りそう話した。

 

 その瞬間、二名の筆頭が、一席の放った葉荼芽という名前に体を硬直させる。

 

「誰ですかそれは、一席のお知り合いで?」

 

「その者とレフィーヤが追放された理由……何も繋がらんぞ。どういう事だ? 一席ッ……!」

 

 一席のふざけるどころか、納得のいかない理由に遂に一触即発の雰囲気を醸し出す、二席と四席。

 

 確かに、何も知らない怪人からしたら、急に面識もない、新たな敵の名前だけを言った一席に苛立ちを覚えるのも当然の事。

 

 しかし、三席と六席の反応は違った。

 

 三席は飄々とした表情を、真剣な表情に変え、虚空を鋭い目つきでコロコロと口の中で転がしていた飴を噛み潰し、六席はオドオドとした表情を辞め、正気の無い顔で兎のぬいぐるみを撫でている。

 

 そして、その変化に二席と四席が気づくことはなかった。

 

 それらに気づいたのは、五席であるクルリのみ。

 

(……奴の名が出た瞬間、二人の雰囲気が変わったわね……。あの子……何かあるのかしらぁ?)

 

 そうやって思考を巡らせていた所、二席はテーブルを拳で叩く。

 

「話にならんな……! その葉荼芽とやらに五席が手も足も出なかった事は知っている、だとすれば、レフィーヤですらも勝てる相手ではない。その人間に脅されて言いなりになってしまっているのであれば、救出に向かうのが道理ではないか!?」

 

「いらんな、レフィーヤは怪人としての矜持を忘れ、人間に味方した。アルタノギアの掟を忘れた訳ではないだろう? 二席よ。裏切り者には制裁を……貴様がよく声高らかにいつも言っていたではないか、それによく考えろ……。その人間に私たちも勝てる保証がどこにある?」

 

「……ッ! そこまで弱腰になったか……! 一席ッ……!」

 

 二席が凄まじいオーラを放ち、あたりに大きな風が舞う。

 

 それを涼しげな表情で一席は目を瞑ったまま、静かに事の成り行きに身を任せている。

 

 怪人というのは基本、コミュニケーションが上手く取れない。

 

 それは連携せずとも、基本一人で戦力は事足りてしまうからだ。

 

 それは末端といえど同じだった。

 

 しかし、その上でアルタノギアを結成した理由は、生命力を効率よく奪うために一時的にソリの合わない、連中と足並みを揃えているだけ。

 

 何百年と人間達に勝てない、怪人達がようやく辿り着いた、ヒビだらけの答えだった。

 

 そして何より、怪人としては異質な方の、コミュニティを重要視するレフィーヤの存在も大きいといえる。

 

 アルタノギアの内部で潤滑油として上手く立ち回っていたレフィーヤは、こうして話の噛み合わない筆頭達の話し合いですら上手くまとめてしまう能力を持つ。

 

 なので、今までの筆頭会議も上手く回っていたのだが……。

 

 今回ばかりは、組織が崩壊する足掛かりを作ってしまっただけだった。

 

「貴様には失望した。少しは見所のある奴だと某は思っていたのだがな……某はこれよりアルタノギアを離反する! さらばだ!」

 

 二席が力強く吠えた。

 

 そしてそれに呼応するかのように、四席、五席も席を立ち、二席の元へ向かう。

 

「私は、レフィーヤさんがこの組織の本当のリーダーだと思っていました。なのでレフィーヤさんの居ないこの組織に用はありません」

 

「まあ、私は? もう飽きちゃったのよねぇ〜。それにここに居たってアイツにはいつまで経っても勝てないでしょうし、好き勝手やらせてもらうわ。じゃあね」

 

 こうして、二席、四席、五席は組織を離反することになった。

 

 二席の隊はそのまま解散。

 

 残った隊に吸収されることになった。

 

 四席の隊はそのままアルタノギアから引き抜かれ、一番数の多かった隊であったため、アルタノギアの人数を大幅に減らした。

 

 そして五席の隊は……。

 

 隊員の生命力が全て抜かれ、その場で怪人達が生きる屍と化し、再起不能となった。

 

 部屋の中で去っていく、三人を眺めながら、何をする訳でもない、一席、三席、六席。

 

 そう、ここに残った怪人は全て、太古の記憶を持つ怪人のみだった。

 

 三席が静かに一席に向けて口を開く。

 

「……ねぇ、葉荼芽が出てきたって……本当なの?」

 

「情報から特徴的に間違いないだろう」

 

「そうですかぁ……あの人が……ですかぁ……」

 

「ああそっかぁ……それでレフィーヤを……死地に向かわせたね〜エゲツな」

 

 三席が呆れ笑いを浮かべながら肩をすくめる。

 

「レフィーヤの事だ、奴の適応力は計り知れない。おそらく葉荼芽を抑え込める鍵となる筈だ」

 

「最初から、そのつもりだったって訳だ……しかし……なぁんで、この時代かな」

 

「私は……あの人と戦いたくはないですねぇ……」

 

 重い空気が、あたりに立ち込める。

 

 あまりにも強い存在に対して絶望しているのか。

 

 それは否だった。

 

 一席は隠す気もなくなったのか、口角を少し上げ、高揚感に身を任せる。

 

 急に膨れ上がった一席のオーラに、冷や汗を一滴流す、三席と六席。

 

(葉荼芽……ようやく君に会える。私は……私は待ち侘びたぞ……。今度こそ絶対に離したりしない……。300年前……忌々しいノロに君を奪われたあの日から……! 私は葉荼芽を取り戻す……! その為には……東江……魔法少女……! 貴様は殺すッ)

 

 一席は心の内で、禍々しい独占欲を沸々と煮えたぎらせていたのだった。

 

 ──────

 一方その頃……十家。

 ──────

 

 私は唯一マトモにできる家事をなんとか手伝っていた。

 

 それは洗濯である。

 

 衣類を入れて洗剤を入れてスイッチを押すだけ。

 

 少し緊張するけど、一人でもできていた事だ、何も問題はない。

 

 しかし……洗濯量が増えたので少し大変だ。

 

 シワにならないように太陽が気持ち良い時間帯に、濡れた衣類を干していく。

 

 しかし、一つ問題が発生した。

 

 私が今現在持っている、下着……! 

 

 桃色のサイズの小さいリボンの付いた布のパンツ。

 

 こんな可愛らしいパンツを履くのはこの家では東江さんしか居ない……! 

 

 ウホホッ! いただきます!! 

 

 ってオイッッ!!! 今、何をしようとしたんだ……!? 私は!! 

 

 あまりにも自然な動作で、東江さんのパンツを嗅ごうとしていた。

 

 ダメだろ、犯罪だ。

 

 いくら友達だからと言って、ロリのパンツを嗅ぐのはロリコンじゃなかろうと犯罪である。

 

 ……そうだ、私と東江さんは友達だ……。

 

 私は友達が居なかったから分からないけど、友達ならパンツの匂いを嗅いだっていいんじゃないかな? 

 

 世間一般の友達もそのぐらいのことはしてるでしょ。

 

 そうだ、これは友達としてのちょっとしたお茶目なスキンシップ。

 

 良いじゃない、ちょっとだけロリのパンツを嗅いだって。

 

 私はロリコンじゃないが、パンツには興味津々である。

 

 それに前、東江さんが泊まった時、私の下着を東江さんが履いていた。

 

 間接キッスどころの話ではない。

 

 それはもう大人の階段を登ったのと同じことである。

 

 うん……嗅ぐくらいどうってことないような事してきた。

 

 よ、よし……! 行っちゃうぞ! やっちゃうぞ!! 

 

 私は恐る恐る、東江さんの下着を鼻につけ、少し吸ってみる。

 

 私のいつも使っている洗剤と同じ匂いがした。

 

 ……これはやばい……。

 

 何がやばいって……東江さんから私と同じ匂いがするという事だ。

 

 いや、東江さんの方が若干ミルクのような香りがする。

 

 これは────。

 

 宇宙の真理が……見える……! 

 

 その瞬間、私の後ろからドサっと何かの荷物が落ちる音がした。

 

 後ろを向いてみると、そこには口を大きく開けて、とんでもないものを見たと言わんばかりの表情をしているレフィーヤがそこに立っていた。

 

 足元には片付けの最中の段ボールが落ちている。

 

 静寂の時間が二人を包む。

 

 片や、驚愕している怪人。

 

 片や、友達のパンツを嗅いでいる人間。

 

 静寂が。

 

 レフィーヤの手によって破られる。

 

「あがりえぇぇぇぇぇ!!! もぎ……!」

 

「やらせるかァッ!! 忘⚪︎⚪︎衝撃ッッッ!!!」

 

 私は瞬間でレフィーヤのこめかみ辺りを両手で挟み、脳を揺らす。

 

 その衝撃により、レフィーヤは一瞬で意識が刈り取られ、その隙を付いて私は東江さんのパンツをレフィーヤの頭に被せた。

 

 この技は、昔読んだ漫画の中のキャラクターが使っていた技だ。

 

 任意の記憶を消し飛ばせるらしい。

 

「は〜い、レフィーヤ、なんです……か!? え!? 何この状況!? え!? 私のした……!」

 

「東江さん……危なかった……レフィーヤが……急に……東江さんのパンツを被って暴走……した、それ……を私が止めた……うん……」

 

「え!? な、なんで私の下着がっ……! って! レフィーヤ! 起きなさい! レフィーヤ!!」

 

 その後、起きてきたレフィーヤは、顔を真っ赤にした東江さんにコンコンと怒られていた。

 

 レフィーヤは何が理由で怒られているのかは知らない様子だ。

 

 ……危なかった……! 

 

 もう今度から東江さんのパンツは嗅がない。

 

 拝むだけにしておこう。

 

 私はそう誓わざる得ないのだった。

 

 

 

 

 

 




レフィーヤのキャラクターデザインを公開しました。
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