魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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19話 魔法少女、ここに見参ッ!

 

 あの約束を交わした日以降。

 

 東江さんは私の家に帰らなくなった。

 

 1日だけだったら、家の人と会う機会でもあったのかと思うが、それならば、心配かけさせないように私に事前に連絡を入れてくれるはず。

 

 最近の怪人の活動の活発化。

 

 それが気掛かりだ。

 

 東江さんの身に何かがあったに違いない。

 

 私はレフィーヤに、家に怪人を呼んでも良いから何かしら情報を聞き出してほしいと頼んだ。

 

 レフィーヤは難しい顔をしていたが最終的には。

 

「我が手分けをすれば良いって言ったのが元凶よ。我は怪人だけど、ここまでお世話になった人間はいなかった……。ここでこの恩を返さないと、怪人どころか、ただの外道に成り下がる。信用してほしいわ、十……我はこれから貴女に協力してあげる、何かあったらすぐに知らせるから」

 

 と、真剣な表情で言っていた。

 

 あの目は嘘は言っていなかった。

 

 元々敵だったので、最初は勘繰っていたが、あの目は嘘をつく目じゃない。

 

 それに今、レフィーヤしか頼れる者は居ない。

 

 私は色々あった感情を飲み込み、レフィーヤを信じる事にした。

 

 それから、街中を飛び回り、東江さんの痕跡が何処かにないか、血眼で探す。

 

 街中で人間を襲っている怪人を見つけては、倒し、尋問を繰り返す。

 

 この時の私は、気が立っていたせいか、荒々しく尋問を怪人に繰り返した。

 

 しかし、怪人が口を開くのは。

 

「魔法少女……? そんなのは知らん……ヒッ! やめてくれ! それ以上は……!」

 

 すっかり怯え切った表情で涙目で許しを乞うてくる怪人共。

 

 私は今どんな顔をしているのだろう。

 

 東江さんが姿を消して早、一週間。

 

 焦ってはいるが、頭の中は酷く冷たく、冷静になっていた。

 

 今日も手がかりが見つからない。

 

「……東江さんッ!」

 

 私は気がつくと唇を自身で噛み切り、血を流していた。

 

 時間が経つにつれ、東江さんの身が危険だ。

 

 自分でも驚く。

 

 東江さんと、喋ってから短い時間しか経ってないのに、東江さんの姿がないと、こんなにも心が揺さぶられる。

 

 心のどこかで、人と関わり合いたいって思っていた。

 

 それを棚に上げて、自分の力のせいにして、自ら人との関わりを遠ざけていた。

 

 そんな冷たい私に、暖かい心をくれた、一人の少女。

 

 こんな時、心の支えになるはずの武術は役に立たない。

 

 近くにいる時でしか、東江さんを守れない。

 

「……ああ───あああッ───! うあああッ!」

 

 何が……支えるだ……! 友達も一人助けれないで、私はッ!! 

 

 近くにあった壁を殴り、大きなクレーターを作る。

 

 肩に雫が落ちる。

 

 今日は雨の日。

 

 強くなる雫を一身に受けながら、私は。

 

 ───涙を流していた。

 

 

 

 

 

 ──────

 聖理佳side

 ──────

 

 ───ここは? 

 

 私は気がつくと見知らぬ場所にいた。

 

 十さんの家では無く、ジメジメした薄暗い部屋。

 

 徐々に覚醒してくる意識、私はハッキリと今の状況を確認する。

 

「……!? 何……これ……!」

 

 私の手首と足首に鉄の鎖が繋がれていて、身動きが取れない。

 

 必死に身体を揺らすが、その抵抗も虚しいだけ。

 

 そうだ……! 変身して……! 

 

 そう思い立って、集中して自分の生命力を確認する。

 

 ……!? 変身出来るだけの生命力が足りない! 

 

「……ああ……そうだ……私……あの時」

 

 次第に思い出してくる、眠っていた前の記憶。

 

 そうだ、私はあの時怪人に襲われていた、人達を助けようとして、そのまま怪人に戦いを挑んだ。

 

 そして、その怪人にはなんとか辛勝した。

 

 そう勝ったはずなのだ。

 

 その後、私は油断して、周囲の警戒を怠ってしまった。

 

 急に後ろから鈍器で頭を殴られたような痛みが走り、そのまま私は気絶してしまったのだ。

 

 そして現在の状況……。

 

 おそらく私は怪人に捕まってしまったのだろう。

 

 十さんと離れて戦ったのが原因なのだろうか。

 

 私は不安ではあったが、しかし、日々迫り来る脅威に対抗できる手段はこれしかなかった。

 

 これは私の弱さが招いた失敗だ……。

 

 私が十さんのようにもっと強ければ……こんな事には……! 

 

 そう悔やんでいると、部屋の奥から足音が聞こえてきた。

 

「ふふふ、いい格好ね。魔法少女」

 

 それは、あの日、学校が怪人に襲われてしまい、私が手も足も出ずに完敗してしまった怪人。

 

 私の心を、魔法少女としての気概が砕かれかけた、私の心に、怪人への恐怖の植えつけた元凶。

 

 一見普通の少女にも見える、彼女から発せられるオーラはあの日とは比較にならないほど力強い。

 

 クルリが恍惚な表情を浮かべ、私の前へと姿を現した。

 

「……ッ! ここはどこなの!?」

 

「あらぁ、そんなに大きな声出してどうしたのかしら? もしかして……怖いのぉ?」

 

 クルリが私の目の前まで近づき、顔を近づけて、人差し指で私のアゴを撫でる。

 

「ふふ、いいわねぇその顔……。怖いけど、それでも、私なんかに負けてたまるかって表情……! そそられるわ」

 

「や、やめて!」

 

「いやよぉ? 前にも言ったでしょ? 私は可愛い女の子が絶望の表情を見せるのが好きだって」

 

 クルリは下卑た非情を浮かべ、顔を高揚させ私の耳に吐息を吹きかける。

 

 気持ち悪い……! 

 

 何も手出しができない、この状況に私は自分への苛立ちが募る。

 

「変身さえ出来ればッ……!」

 

「無理よ、だって貴女が呑気に寝てる間に、貴女の生命力をほんの少しだけ頂いちゃったのだから」

 

 そのせいか……。クルリの怪人としてのオーラは以前出会った時とは比べ物にならないほどに肥大化している。

 

 あの時手も足も出なかった……でも、十さんに鍛えてもらって、強くなったと思っていた。

 

 だから、変身さえ出来れば、この怪人にだって絶対に負けないと思っていた。

 

 でも……改めて対峙して分かってしまう。

 

 クルリにはどう足掻いても勝てるビジョンが浮かばないッ! 

 

「貴女の事、あの時からずっと考えてたのよ、可愛いらしい顔で必死になって私に食らいつき、それでも届かないと分かって心が折れる顔……あの時の顔が忘れられないのよ、身体が疼いて仕方がない……! あの時邪魔さえ入らなければ……! 貴女は私のものに出来たというのに…………!」

 

「な、なにを……」

 

「でも……もう邪魔は入らない……貴女が消えてアイツ……今頃焦ってるでしょうねぇ……! アハハ! いい気味!」

 

 クルリは自身の身体を抱きながら、恍惚の表情で私に話しかける。

 

 心底楽しそうな顔で……私の置かれている状況を楽しんでいる……! 

 

 レフィーヤや他の怪人に感じた、どこか普通の人と思わせられるような感性……。

 

 それが、クルリからは一切感じられない……! 

 

 真性の……怪人……! 

 

「魔神のために生命力を集めるつまらない日々はもうお終い……これからは私のために生命力を使い! そして! 全ての人間を私の奴隷にしてやるわ! そして……私が……魔神に成り変わるッ……!」

 

 歯を剥き出しに笑う、その光景は……とてつもなく悍ましいものだった。

 

 十さん……! 

 

 ごめんなさい……! 

 

 私……! 何も出来ないよ……! 

 

 どうして……? 

 

 なんで……私には力が無いの……? 

 

 十さんのような……圧倒的な力が……! 

 

「ふふふ、ふははは! その為に……まずは魔法少女、貴女を快楽と絶望で屈服させて、奴隷にしてあげる……! さぁ……楽しみましょ♡」

 

「ヒッ……!」

 

「大丈夫よ……次第に慣れて、気持ち良くなっていくわ……♡」

 

 クルリは自身の指を舐め、私のスカートを捲り、ふとももの隙間に手を入れてくる。

 

「ひゃっ!? や、やめ……」

 

「ふふふ、さぁ私に身を委ねて……」

 

 こうして、この日以降……私は、全身を余すとこなく弄ばれてしまうのであった。

 

 助けは……来ない……。

 

 気持ち悪いのに……変な感覚だけは……感じてしまう。

 

 怖い。

 

 笑顔も忘れて、敵に捕まってしまい、遊ばれて……私は……。

 

 一体、私が捕まって何日経ったのだろう。

 

 トイレとお風呂には入らせてくれるけど、その時もずっとクルリが付いてくる。

 

 そしてずっと身体を触られる。

 

 もう……なんだか……嫌という感情も薄れてきてしまった。

 

 これならば、生命力を全て奪われて、生きる屍になった方が良かった。

 

 いや……もうなっているのかもしれない。

 

 人形のように……私は……。

 

 そんな時、私の胸元で何かが光る。

 

「あ……」

 

 あの時の、十さんとお揃いで買ったペンダント……。

 

 十さんを一人にさせない為、十さんを笑顔にしてあげる為。

 

 そして、私たちが心でずっと繋がっている事を証明するための証。

 

 ああ、あの時は楽しかったな……。

 

 いろんな服を着ている、十さんが新鮮でとても盛り上がった。

 

 可愛らしい肩出しのワンピース……十さんにとても似合っていたな。

 

 それに一緒に暮らしている日々……修行はキツイけど……それでも十さんは優しくて……カッコいい。

 

 好きなものを語る時の十さんは少しだけど、表情を柔らかくさせている。

 

 そんな顔をする十さんの新たな一面を見れて誇らしかった。

 

 友達と話している時、十さんが私を奪い取るかのように、私の肩を抱いてくれた。

 

 ……もしかして……嫉妬してたのかな……? 

 

 そうだったら……嬉しいな……。

 

 なんでだろ……女の子同士なのに……十さんの事が頭から焼き付いて離れない。

 

 それはまるで、出会った時間よりも遥かに……濃密に十さんの顔が……脳裏に焼き付いて離れない。

 

 十さん……。

 

 十さん……! 

 

 

 

 そっか……私……十さんに……。

 

 

 ───恋してるんだな。

 

 

「ふふ……」

 

 気が付けば笑みを浮かべていた。

 

 こんな状況なのに……十さんの事を考えると……愛おしい気持ちが溢れて止まらないッ! 

 

「……? 何が可笑しいのかしらぁ?」

 

 私の耳を舐めていたクルリが怪訝そうな顔をこちらに向けてくる。

 

 その目線に合わせて、私は……口角を上げて、こう言った。

 

「絶対に……貴女には負けませんッ!」

 

「……!? な、なんだ……これは……生命力は抜いたはず……それなのに何故ッ!? 生命力が溢れてきている!? あり得ない! 生命力は元来、人の喜び、生きる希望で溢れてくるもの……! その状態を奪った現状で……! 何故!?」

 

「理屈なんかじゃない! ……大切な人が……居るから……! 私はッ! 何度だって立ち上がれるッ! 喧嘩を売る相手を間違いましたね! クルリ! これが! 私たちの絆! 愛です!」

 

「……愛……!? おのれ……アイツめぇ! またしても私の邪魔をするか!!」

 

 私は拘束された腕から、生命力を漲らせる。

 

 そして……笑顔で声高らかにこう叫んだ。

 

 

 

「ニライカナイ! 変身! ……桃色に輝く高潔なる魂! 神の力を借り、愛する人の力を借り! 魔法少女! ここに見参ッ! 怪人クルリ! 貴女の野望はそこまでです!」

 

 

 

 手首、足首に嵌められた枷を破壊して、今過去最高に完成させた魔法少女が爆誕した。

 

 

 

 

 ──私から溢れてくる愛はもう止まらないッ! 

 

 

 

 

 

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