「……! 十! この気配!」
家に帰らなくなった東江さんの事を心配して、捜索を続けていたとある日のこと。
レフィーヤと共に街に繰り出し、東江さんの行方を追っていた時に感じた、強い気。
街中を包む空気が、一変し、あたりに暖かくも落ち着くオーラが私たちを突き抜けた。
この感覚は……!
間違いない、東江さんのオーラだ!
「ッ! レフィーヤ! 行こう!」
「東江ッ! 生きてたのね!」
その瞬間、レフィーヤと共に駆け出す。
レフィーヤも日々の修行で身体能力が向上しており、私の走るスピードに着いてきた。
しかし、気がかりな事が一つ。
東江さんの他にも強いオーラが複数感じられる。
東江さんのすぐ近くに一つ……それに、他の場所にも、強大なオーラが感じられる。
中でもその一つは……抜きん出ていた。
私たちは警戒を強め、駆ける。
待っててくれ! 東江さん! すぐに助けに……!
その瞬間、横から強いオーラを感じ、レフィーヤも気づいたらしく、同時に頭を下げた。
横から斬撃のようなものが飛び、私たちの背後にあった、ビルが爆ぜる。
周囲にいた人たちは急は爆発で慌てふためき、その場から大きな声を出して、一斉に逃げ始めた。
「お母さんッ!」
……! 逃げ遅れた人が!
瓦礫の下敷きになったであろう女の人の前で、子供が泣いている。
私は、急いで駆け寄り、大きな瓦礫を持ち上げ、人のいない所に投げ飛ばす。
良かった、体は潰れていない、運良く何かに引っ掛かっていたようだ。
その次にまた強い殺気を感じ、子供と女の人を横に抱えて、すぐに回避行動を取る。
「ッ! レフィーヤ!」
「……!? こんな街中で……! まさか人を殺すつもり……!」
「あ、あの……ありがとうございます……!」
「……大丈夫です……! 早く逃げてください」
私は女の人と、子供を離し、逃げさせる。
そして、レフィーヤと共に攻撃してきた、元凶に向き合った。
「レフィーヤ……人間に味方しているとは本当だったのだな」
「……! 二席筆頭……! コノハ……」
コノハと呼ばれた人物が土煙の中から姿を見せる。
天狗の面に、作務衣姿。袖を捲り上げて、見えるのは筋骨隆々の腕を持った女。
そして手にはボロボロになったヒヨリとメギと呼ばれた怪人が首を掴まれて、苦しそうな顔をしていた。
「レ、レフィーヤ様……申し訳……ありません……」
「ぐぅ! はな……しやが……れ!」
「某はレフィーヤが寝返ったとは到底思えなかったのだが……この者たちの動向を追っていたら……そこにいる人間と共存生活を送っていると分かった……どういう事だレフィーヤ? 脅されているというのならハッキリ言ってくれ……返答次第では某は……どうにかなってしまいそうだ」
「……コ、コノハ……アンタ……この惨状……アンタがやったの!?」
「質問を質問で返すなぁッ!!!!」
コノハが怒気を孕んだ声で大声を出す。
ビリビリと辺りに声が反芻し、コノハの体からオーラが噴出し、風が巻き起こりあたりの土煙が霧散する。
レフィーヤはその声に怯み、一歩後退りをした。
怖気付いたようだ……が、目はコノハの目線を捉えて離さない。
「そ、そうよ! 我はアルタノギアを離れた後、この人間に世話になった! 怪人であろうと、我は……我は……! 恩は仇では返せない! それが1800年前から続く怪人としての矜持よ! そしてこれは我の自己判断! その子達は何も罪はない!」
「……1800年前……何を言っているのか某には理解ができない……しかし、貴様がこの瞬間から怪人ではなく人に成り下がったと判断した! レフィーヤ、覚悟は良いな?」
コノハはとてつもない威圧を放ちながら私たちに近づく。
しかし……コイツ話が長いな。
私は急いでいるんだ。
圧を放ちながら私は一歩前に出る。
しかし、レフィーヤが片手を出して私を止めさせる。
「……レフィーヤ?」
「十、コノハは我に任せて先に行きなさい」
「……多分、今のレフィーヤじゃ……アイツには勝てないよ?」
「でも、やらなきゃいけないのよ。我の仲間を救う為、それに家に居候させてくれたアンタに借りを返さないとね?」
レフィーヤはウインクをしながら、私に微笑みかける。
その表情を見て私はあることに気づく。
勝ちを確信している顔だ。
そういうことならば……そうだな……言葉に甘えよう。
いつでも、出られる家から勝手に出て行かなかった、そして真面目に私の修行をこなしていた。
今この瞬間、私はレフィーヤに全幅の信頼を置いた。
「……分かった、でもレフィーヤ、最後に一つだけ。私の生命力を吸って良いよ」
「え?」
「怪人は生命力を吸うことで強くなるんでしょ? 勝ちを確信してるようだけど……それを、確実なものにしたら良いんじゃない?」
「…………え、でも……その……アンタの生命力を吸うってことは……あの……」
急にレフィーヤが汗をかきながらあわあわし始めた。
ん? なんでこんな局面で渋ってるんだ?
「いいから……さっさとやって、アイツもいつまでも待ってくれないよ」
コノハは私とレフィーヤが話をしていると、様子を伺うようにこちらを見ている。
いや、私をを警戒しているのか、迂闊に踏み込んでこない。
「えっ! で、でも……その……」
「いいから!」
「……わ、分かったわよ! その代わり、後になって文句言うんじゃないわよ!」
レフィーヤが顔を赤くして、私の前に立つ。
そして、レフィーヤはそのまま私の顔を両手で挟んで……。
「んっ……」
キスをした。
………………。
………………。
ん!?!?!?!?!?
は!?!?!?!?!?
何やってんだコイツ!?!?!?
私は突然の事に、
「グボラっ!?」
急にキスされて頭の中が混乱する。
って言うかちょっと待てコラ。
え? これ私のファーストキスじゃん。
おいおいおいおい……なんて事しやがるこの、
鬼道で封印されてた、記憶が一気に頭の中に駆け巡ったじゃねぇか……!
…………?
え? なんだこれ……?
なんか、
「いたーい! ちょっと
レフィの方も、鼻血を流しながら困惑している。
そして私たちは顔を見合わせて、顔を引き攣らせた。
「えっ……アンタ……ハタヒメ?」
「……嘘でしょ」
そう、私は怪人としての記憶を、こんな雑な形で取り戻してしまったのであった。