魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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21話 新生

 

 私はキスされた口元を急いで拭う。

 

「ちょっとぉ!? そんなに嫌だったの!?」

 

「……うん、嫌……。キスする必要あった?」

 

「我の生命力を奪い取る方法はキスだけなのよ!」

 

 レフィは大口を開けてキャンキャンと吠える。

 

 ……ああそうだった……レフィは生命力を奪う時はキスして、そこからエネルギーを吸い取るんだった。

 

 ……なんだこの記憶は……。

 さっきから頭の中でぐるぐると私が怪人だった事である事実が突きつけられて頭が痛い。

 

「は、ハタヒメ……って呼べば良いのかしら?」

 

 レフィもおずおずといった形で私に聞いてくる。

 

 彼女も、私の記憶に関することには蓋をしていたようでとても困惑しているみたいだ。

 

 そうだ……私はハタヒメ……1800年前……原初の巫女の側に居て、巫女から告げられる神託を代わりに民草に伝えていた存在……。

 

 昔の隣の国のお偉いさんには男と間違われていたけど……。

 

「……その方も怪人……だったと言うのか……?」

 

 コノハも急な事により、殺気を抑えて、こちらに問いかけてくる。

 

 目の前にいるこの怪人のことも知っている。

 

 私が……昔、修行をつけていた者だ……。

 

 あの時は……この子は泣き虫で弱かったのだけれど……強くなったんだな。

 

 しかし、今の最優先事項……忘れてはいけない。

 

 早く東江さんを助けてあげないと。

 

「……レフィ……この場は任せても良い? 説明をしてあげて」

 

「……! 分かったわ、ハタヒメ、行きなさい東江が待っているわよ」

 

「うん、ありがとう」

 

 そう言って、私は東江さんの気配に向かって走り出した。

 

 コノハの横を通り過ぎる時、仮面の奥から瞳が見える。

 

 コノハの方も私に思うところがあるようで、その目はなんだか寂しそうな目をしていた……。

 

 ────ー

 

 レフィーヤとコノハは去った十を見て、お互い向き直る。

 

「不思議なものだ……先程までただの人間としか思えなかったが……雰囲気が一気に怪人側に変わった……何者だ奴は」

 

「……あの子は、ハタヒメ……300年前、琉球王国を襲った我たちを止めた、魔法少女の一族と手を取った唯一の存在よ」

 

「……聞かせろ、レフィーヤ。私たち怪人とは一体なんだ? さっきから1800年前とか300年前とか……先ほどから何を話している? ……某は……一体どういう存在なのだ?」

 

 コノハは握り拳を強く握り、レフィーヤに問いかける。

 

 その後、レフィーヤが怪人について話し始めた。

 

 1800年前に作られた人型戦闘兵器。

 

 300年前に琉球王国を襲い、自分達の祖国を取り戻す為に戦ったこと。

 

 その記憶を持つ怪人と、持たない怪人が生まれた事。

 

 そして、混乱が起きないように、記憶を持つ怪人と持たない怪人を分け、秘密にしていた事。

 

「某がアルタノギアに勧誘されたのは5年前……通常の人間と違う力を持っていた事で差別され、山に放られ、死地を彷徨っていた時……。お前が救ってくれたな」

 

「記憶を持たなくても……同じ仲間には変わりは無いわ。だから我は記憶を持たない怪人を庇護する目的で、勧誘していた。一席は不服だったようだけどね」

 

 レフィーヤはアルタノギアの勧誘役を行っていた。

 

 最初は普通の人間として生まれてくる怪人達。

 

 記憶を持ったものは使命を思い出した瞬間、その使命を果たすべく、家族と別れ動き出す。

 

 しかし、記憶を持たない者は、力が発現した時、制御することが出来ず、人からも掛け離れた姿をする者もおり、そのどれもが悲惨な結末を辿る事になった。

 

 アルタノギアを作った一席は、最初は記憶を持つものだけで組織するつもりであったが、レフィーヤがそれを受け皿として活用したのだ。

 

 なのでレフィーヤを慕う者は組織内に多い。

 

「……一席はこの事を?」

 

「知ってるわよ、どういう理屈で我を追放したかっていう理由は我にもよく分からないけどね」

 

「そうか」

 

 コノハは握り拳を解き、だらんと体を脱力させる。

 

 どうやら戦闘の意思は無くなったようだ。

 

 レフィーヤは内心安心して、コノハに近寄る。

 

 しかし、急にコノハの内包される生命力が爆発的に増幅する。

 

 あたりに風が巻き起こり、そのとてつもない圧で、周りにあった建造物にヒビが入る。

 

「……!? コノハ!」

 

「某は、まんまと乗せられていたという訳だな」

 

「何を?」

 

 コノハは静かに自分の顔に被せてあった天狗の仮面に手をやり、仮面を外した。

 

 下からは、切長の目にシュッと綺麗に伸びた鼻筋。

 

 側から見れば、それは端正なモデルのような顔だろう。

 

 しかし、目の前で対峙していたレフィーヤは顔を顰める。

 

 それはコノハの顔が何かを覚悟したかのような目だった。

 

「某は、アルタノギアに入り一つの目標ができた。それは某のような弱い怪人の存在を掬い上げ、こんな理不尽な運命に抗う為の力をつけ、横暴な人間共を鏖殺する。

 そこには魔神などの不確定な存在は必要ない、魔神を復活させる為に無意味に人間を生き存えさせる必要などない。

 某は、一人でこの世界を壊し、怪人が悲しい想いをしない世界を作る為に、行動する」

 

「……そんな……我達はそこまで望んではいない! ただ祖国を取り戻し……!」

 

「ヌルい、人間は殺さなければならない。某達をこんな目に遭わせた、人間共をこの世界から一匹残らず、駆除せねばならんだろう。

 その為だけに、某は力をつけたのだ」

 

「圧倒的物量の前に怪人達は全滅するわよ」

 

 人間を遥かに超えた力を持つ、怪人であろうとも、人間の持つ圧倒的な物量を誇る軍事戦力には太刀打ちは出来ないことは明白だった。

 

 だから、秘密裏に人間の生命力を奪い、命までは奪う事はしなかった。

 

 しかし、コノハの思想信条は他の怪人達のそれとは違う。

 

 コノハは世界を壊そうとしていた。

 

 全てを奪った、人間達から。

 

「戦いの中で死ねるのならば、本望だ」

 

「……! 誰もそんな事、望んじゃいない……」

 

「もういい、話は終わりだ。

 すまんなレフィーヤ、某は貴様が人間と共謀したと思って勘違いしていたようだ。

 しかし、考え方が某と貴様では違う。貴様を倒し、前に進ませてもらおう」

 

 レフィーヤは思った。

 

 こんな無茶な行動を起こすコノハはこれからのために、倒さなければならない。

 

 そうしないと、祖国を取り戻すどころか、怪人達が全滅してしまう恐れもある。

 

 またバラバラになった怪人達が一緒に集まる事が出来るのか。

 

 こんなわだかまりを作って、また手を取る事が出来るのか。

 

(この子は……この子で……優しい子なのよね……)

 

 個の怪人を救うため。

 

 祖国を取り戻すため。

 

 二人の考えが、対峙して溝を作る。

 

 破滅の道へ向かおうとしている、同胞は止めなければならない。

 

 そう、心の中で覚悟を決め。

 

 レフィーヤは片手を上げた。

 

「いや〜コノハちゃんは過激思想だね〜? もうちょっと穏やかに生きてみない? ねぇ? レフィーヤちゃん」

 

「私……は、この子と居れば充分……だから……その場所を作ってくれた……レフィーヤさんには感謝してます……」

 

「……貴様ら」

 

 建物の影から二人の人影が姿を現す。

 

 それらは余裕そうな表情を浮かべ、口からガムを膨らませる三席と対照的に体がデカく、その身長用に作られたぬいぐるみを持つ六席。

 

「そうか、貴様らもそちら側か……」

 

「それだけじゃないわ、記憶を持つ怪人は勿論、記憶を持たない怪人達もまた」

 

「レフィーヤさん!! お待たせしました!!」

 

 空から浮遊し、現れたのはアルタノギアを離反したはずの四席。

 

 その四席は後ろに部隊の仲間である怪人を引き連れて登場した。

 

「シリア、ありがとうね」

 

「はい!」

 

 シリアと呼ばれた四席は嬉しそうな笑顔を浮かべて、レフィーヤの横につく。

 

 そして、ここにレフィーヤを助けるために集まった怪人達が集結した。

 

 この怪人達はレフィーヤが十の家で情報の共有できる怪人達と裏で糸を引き、仲間に引き込んでいた。

 

 レフィーヤは二席と話していくうちに、節々に感じられる思想から、危険視していた。

 

 危険思考を持つ二席が動き出した時のため、そして……一席がもし、暴走した時の抑止力のため。

 

 レフィーヤの人徳に惹かれた者達が集まった集団。

 

 

 言うならば、新生アルタノギア。

 

 

「……そうか、なるほどな、個の力が強大であっても、集団の力には抗えないということか……なるほど、良い! 良いぞ! 世界を敵に回す前哨戦だ! 貴様らを打倒せねば、世界など壊せぬ!!」

 

「来なさいコノハ、我の力が及ばずとも、我達がアンタを止めて見せるわ」

 

 

 

 

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