街中を疾走する。
壁から壁へ、東江さんの気配を辿り最短距離で近づくように、街を駆ける。
後ろの方では怪人の気配も増幅した。
なんだろうか、レフィに記憶を戻してもらってから、気配の感じ取り方が、いつもと違っているように感じる。
先ほどのコノハという怪人……。
おそらくレフィや他の怪人が束になってかかって、ようやく勝機の目が見えてくる程の相手……。
そして、それとは他にコノハと同等……いや、それ以上の圧を感じるのが二体いる。
私は壁をつたってビルの屋上へと足を運ぶ。
そこから街を一望する。
突如として、巨大な爆発音にビルの倒壊、色々な事が起こりすぎて、人間達が逃げ惑っている。
……記憶を取り戻した今なら分かる。
私は怪人だ。
しかし、1800年前……あの子と約束した。
私たちの国が攻められ、原初の巫女が魔神に成り果てた時、それを封印した、たった一人の少女。
私はその子と約束したのだ。
何があっても人間を守る事。
その子は、そのまま敵国に囚われたが、魔神を封印したことにより、原初の巫女を継ぐ女王に。
間で私が、国を建て直そうとしたが、巫女の神託を告げるだけの存在に着いてくる者など居なかった。
その子は原初の巫女の、たった13歳の一人の跡継ぎ、みんながみんなその子に着いて行った。
でも……最終的には。
『ハタヒメ……貴女はずっと優しいままでいてくださいね? 復讐に身を焦がしてはダメですよ? せっかく私のもう一つの名前を貴女にあげたのですから』
『……分かった、
『貴女に……全てを包み込むような優しさの豊穣の名を……私はもう一つ……海神の娘としての力を持つ名を……』
女王は最終的に別の政治勢力にその座を追われ、南の方に。
私は困っている人間を助けながら北に。
その他の怪人達もバラバラになってしまった。
こうして、私たちの国……【邪馬台国】は歴史から姿を消した。
……耽っている場合では無い。
レフィがコノハを抑えてくれている今、早く東江さんを見つけ出して、助けなくてはならない。
東江さんは台与に似ている。
顔も声も、雰囲気も全て。
おそらく、私がこれまで東江さんに対して、庇護するような行動を取っていたのは、これが関係しているのだろう。
もう私は離したりしない。
あの時のように、間違えたりはしない。
あの子を助けたい……!
私は高濃度になっている生命力を見つける。
一つはドス黒く、もはやその存在が決壊寸前となっている怪人の姿。
そしてもう一つは、心を包み込んでくれるかのような暖かい力。
この気配は、東江さんだ!
よかった! 無事だった!
どうやら、東江さんは強大な力を持つ怪人と戦っているようだ。
そして感じ取れるのは、東江さんの力が更に上がっている。
それこそ、先ほどのコノハに匹敵するほどの力。
しかし、その隣にいるのはそれ以上の化け物だ。
なんだあれは……生命力を吸い取りすぎて、最早怪人を凌駕した存在になろうとしている……?
まさか……! 魔神になろうとしているのか!?
まずい! アレが復活したら封印できるのは台与の力を受け継いでいる者だけだ……!
その前に叩かねば……!
しかし……!
私が足に力を入れた瞬間、横から膨大な生命力をぶつけられる。
それを私は手を振り相殺する。
「……流石だなハタヒメ……いや今は、葉荼芽……だったな。私の気配に気づくとは」
「……君が出てくると思ったから、ツクヨ」
「おお! 記憶が戻ったのか! 流石レフィーヤだ、私が見込んだだけのことはある」
そこに立っていたのは、記憶の私が良く知る人物。
私と同じような背格好。
そして、私と瓜二つの顔を持つ目の前の怪人。
「……今度は私の顔なの?」
「やはり君の顔は馴染みがいい……愛する君の顔だ、良いだろう?」
「反吐が出る」
コイツは様々な背格好、女になったり男になったり、顔も変幻自在に変えられる。
その気になれば、内面、性格だって変えてくる。
生粋の
アルタノギアは恐らく、コイツに取ってはただの暇潰し。
1800年前、国はコイツによって遊びで滅ぼされた。
300年前、琉球王国で遊びで魔神を復活させた。
コイツは国を取り戻すなど考えたことは無い。
何年も、何百年も、私の事しか考えていない、
「あの時、私に苦渋を舐めさせた東江を殺すと思ったが、まあ、それはあちらに任せよう」
「お前……!」
そう言ってアルタノギア第一席、ツクヨは下卑た笑みを浮かべ、私に向かってきた。