魔法少女の隣にいる私   作:しらいうつほ

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3話 一人で戦っている

 

 え──っと……その……。

 私は目の前で大の字になって目を回しているアタマノギア? 外れてる? レ……何とかを見下ろしながら頭を抱えていた。

 

 真正面から突っ込んできたので、反射的にはたき倒してしまったのだ。

 後、なんかハァハァ言ってて気持ち悪かったので、取り敢えず気絶してもらっている。

 

「……えっと、怪人だよね……これ……」

 

 魔法少女と昨日戦っていた、怪人……。

 まあ、人を超越している力はあるようで、突っ込んできた時のスピードはオリンピック選手レベルの反射神経を遥かに超えていたと思う。

 

 私は、人智を超えた力を持っていることが分かり、それ以来、特殊な修行をしていたので、対応できたけど、これって普通に警察とか軍人とかでも対処不可能なレベルの強さだ。

 手加減していたとはいえ、私のはたき落としで、コンクリートにめり込んでいるが、骨などは無事だと見て取れる。

 

 東江さん……変身込みだとしても、こんな化け物と一人で戦っていたんだなぁ……。

 魔法少女……案外大変なのかもしれない。

 

 もしかして、これまで人知れず……か……。

 

 昨今のニュースで行方不明者が多数出ているとあったが、おそらく怪人の仕業なのだろう。

 ニュースになるということは、東江さんの対応が間に合っていないという事だ。

 だから、お昼休みに「私と一緒に、怪人から困っている人を守って欲しい」と、言っていたのか。

 

 

 私は魔法少女とかいうものでもないし、なったつもりも無いが……。

 

 私はこれまで、自身の力を恐れて、頑なに一人で生きようとしていた。

 それに対して東江さんはどうだ? 

 

 人知れず、闇に紛れて戦い、誰からも認めてもらえず、一人で足掻き続けながら、戦い続ける。

 

 カッコいいな東江さん。

 昨日の今日だというのに、気がつけば東江さんの事しか考えていない。

 どうやら、私はあの小さな魔法少女のファンになってしまっていた。

 

 私も勇気が出せたら、あんな風に、周りの人を元気つけられる様な存在になれるのかな。

 

 ……いや、根暗な私には無理だ。

 だけど、せめて……ファンはファンなりに……私は裏から……。

 

 

 

 

 ───────裏世界の武術の真髄を怪人共に刻み付けようではないか。

 

 

 

 

 ────

 聖理佳side

 ────

 

 十 葉荼芽さんは不思議な人だった。

 

 紺色のショートヘアに制服の上からでも分かる、スレンダーかつ繊細に鍛え抜かれた長身長躯。

 顔は中性的な美形で、その辺りの俳優やモデルが霞むくらいの圧倒的なオーラを入学初日から出していた。

 おかげでクラスメイト達は、湧き上がっている。

 

 沖縄県から都会に出てきた私は衝撃を受けた。

 

「ふわぁぁ……! あんなカッコいい人が居るんだぁ……!」

 

 私はちんちくりんなので、すぐに十さんは憧れの対象になった。

 

 超絶美形の新入生。

 その噂は一気に学校内へ駆け巡る。

 女子校であるこの学校は、男子に耐性がない人達も多く、遠目から見たら男子とあまり変わらない、十さんを一目見ただけでも、あまりの美しさに倒れてしまう人も居るぐらいだった。

 

 でも、十さんはあれだけ人気なのにも関わらず、依然として一人でいる事を貫いていた。

 ご飯を食べる時も、教室を移動する時も、放課後の時も徹底的に一人。

 

 他人を寄せ付けない、有無を言わさないオーラが漂っていたので、みんなが話しかけられなかった。

 

 私はちんちくりんなせいで、何だか学校のマスコット的な立ち位置にいるらしく、よくクラスメイトから撫でられる。

 むー! 好きでちっちゃくなった訳じゃないのに! 

 

 

 …………そう、好きでちっちゃくなった訳ではないのだ。

 

 

 私はとある使命の為に沖縄から、都会の中でも数段にセジ(霊力)の強いこの地へやってきた。

 その使命とは、怪人達による、魔神の復活を阻止すること。

 その為に、魔神復活には最高のセジが集まる、この地へとやってきた。

 

 魔神復活の鍵となるのは、大きく二つ、この地の莫大なセジと、人間から吸収する生命力。

 

 人間は生まれた時から、人それぞれ生命力というパワーを持っている。

 個人でその量は変わっていくが、生命力を抜かれたが最後、吸われる前に漲っていた生への活力が枯渇し、生きた屍になったり、最悪の場合には自死を選択する。

 

 ……そんなことはさせない……! 

 

 私はその為に、お婆様から教わった、生命力を具現化し、その身に宿す力。

『ニライカナイ』を習得したのだから。

 

 私の一族は琉球王国時代から怪人と戦ってきた、一子相伝のノロの一族だ。

 300年前、魔神が突如として現れ、当時、セジに満ち溢れていた琉球王国は格好の的となって、滅亡の寸前まで追い込まれた。

 

 しかし、私の一族の始祖が、命懸けで魔神と戦う術を編み出し、ニライカナイが誕生した。

 海底の奥深くにある、神の国へ供物として身体の成長を捧げ、代わりに生命力を具現化させる力を受け取る。

 

 その力を受け取った始祖は、生命力を武器と変え、もう一人の戦友と共に魔神を封印したのである。

 

 すなわち、思い描いたイメージが武器として、防具として、その場に具現化し、体に定着させ、神の力を体に宿し、身体能力を底上げさせる。

 その力は、怪人の中では弱いと称される奴なら苦戦することなく、一撃で倒せるものだった。

 

 私が、選んだのは小さい頃、見ていたアニメの魔法少女達。

 世界を破壊させる様な強大な敵にも臆することなく、何度も、何度も、傷ついても、心が折れることなく、弱い人達、困ってる人達を笑顔で助けていく存在。

 

 そう、私はそんな高潔な精神を持った魔法少女に憧れていたのだ。

 

 ────

 

 怪人との戦いから一年が経ち、私は高校二年生となった。

 毎日の様に出てくる怪人達を倒してはいるが、一向に減る気配がない。

 

 それどころか、私の力では太刀打ちできない様な、怪人さえ現れてしまっている始末。

 

 怪人達は結託し、魔神を復活させるための組織、『アルタノギア』を結成し、人間を攫い、生命力を組織的に集めている。

 

 それに、怪人達も生命力をパワーに変える術を独自に編み出してしまい、最初の方は私が一人で圧倒していた怪人達も、手に負えない程に強くなってしまっている。

 

 私はこのまま一人で勝てるの? 

 

 漠然とした不安が、脳裏をよぎる。

 でも、魔法少女として……困ってる人たちを笑顔で助けないと……! 

 

 その想いとは裏腹に、私は笑顔が減っていった。

 

 孤独に戦い続ける日々、使命への重圧、日々強くなる怪人達。

 

 私が遅れるたびに、助けるはずの人が、一人、また一人と攫われていく。

 嗚呼、私は何て無力なんだ。

 

 そんな、心の隙を突かれたのか、ある日、アルタノギアの幹部であるレフィーヤが私の目の前に現れた。

 

「ククク……無気力な顔して、トボトボ歩いている羽虫を見つけたと思ったらアンタね」

「っ! レフィーヤ!」

「今日こそ、アンタをぶっ倒して、アンタの莫大な生命力を貰い受けるわ!!」

「っく! そうはさせない! 変身! ニライカナイ!」

 

 私は即座に変身してレフィーヤを迎え撃つ。

 手に持ったステッキから、生命力を技に変換させたビームを打ち、牽制しながらレフィーヤの出方を伺った。

 しかし、それは間違いだった。

 

「何? 今の攻撃は、なんの信念も乗っていないじゃないの、そんなので我に勝つつもり?」

 

 ビームをまるで、煩わしい蠅を叩き落とすかの様に、難なく片手で弾かれる。

 これまで、こんな状況になったことのない私は困惑する。

 

 レフィーヤとはこれまで幾度となく戦ってきた。

 最初は私の圧勝だったが、あと一歩のところで逃げられた。

 徐々に、レフィーヤの力が増していき、最後に戦ったのは、4ヶ月前……。

 あの時も、強かったけど、私の敵ではなかったはず……。

 

 でも、今のレフィーヤから感じられるプレッシャーは前の時とは比べ物にならないほどに圧倒的だった。

 この強さ……間違いない、沢山の人の生命力を奪い、自身の力に変えている! 

 

 重圧で体が潰されそうになる。

 でも、私の心はまだ! 負けてない! 

 

「その強さ……一体どれだけの生命力を奪ったんだ! お前はぁぁぁぁぁ!!」

「ククク……やはりアンタは、そうじゃないとなぁぁぁぁ!! 

 

 怒りで生命力をありったけ放出し、特大のビームを球状にして、複数個出し、ありったけを放つ。

 私が今、放てる最大の大技……! 

 

 しかしレフィーヤは、無数のビームを縫う様に躱し、私の目の前まで接近して、蹴りを放つ。

 咄嗟に生命力をバリアーに変え、耐えようとするが、その蹴りはバリアーを粉々に破壊して、私の腹部に強烈な一撃を見舞った。

 

「グフゥ!!??!?」

 

 強い! 強すぎる! 

 勝てない!? 

 でも……! でも! ここで立ち向かわなきゃ! 

 私の憧れた魔法少女になんかなれない!! 

 

 数メートル飛ばされたが、咄嗟に浮遊し、地面の激突を防ぎ、攻撃に反転する。

 

「絶対に負けないんだから!」

「クク、ここが年貢の納め時だ! 魔法少女よ!」

 

 弱くったって! なんだって良い! 

 とにかく私の持てる限りの全身全霊をコイツにぶつけるしかない! 

 

 レフィーヤに向かって連弾を放つ。

 これも、難なく防がれるけど、これは目眩しだ! 

 

 私は連弾を放出する最中、本命の一本の極太ビームを放出した。

 

「な!?」

 

 連弾に気を取られていた、レフィーヤはそのままビームに激突する。

 持っていた鞭を、目の前で回転させ、ビームを受けた後、上へと弾き飛ばされる。

 

 これを防がれるなんて!? 

 今のは私のとっておきの技だったのに……! 

 

「ぐっ! まだまだぁ!」

「チィ! なかなかやるな!」

 

 レフィーヤから、放たれる、蹴りや鞭での無数の攻撃を紙一重で避けていく。

 でもこのままじゃジリ貧だ……! どうやって勝つ!? 

 そもそも私は勝てるのか!? 

 

「ククク、胸もショボければ、技もショボい、ショボいぞ! 魔法少女!」

「……! 胸は関係ないでしょ!」

 

 好きでちっちゃくなったわけじゃないもん!! 

 お前らなんかいなければ、もっと成長してたんだもん! 

 

 ダメだ! 怒りに呑まれるな! 冷静になれ! 私! 

 攻撃を見切ってなんとか反撃の糸口を見つけないと……! 

 

 その時だった。

 

 カシャアァァンという甲高い音が周囲に響く。

 咄嗟に、音の鳴る方向へ目線をやると、そこには人がいた。

 

「え!? 人!?」

 

 まさかこんな時に人が通りがかるなんて……! 

 最悪だ! レフィーヤにこれ以上生命力を吸われたら……! 

 

「…………ククク……ハハハ! 天は我に味方セリ! そこの人間! 生命力を貰おうか!」

 

 レフィーヤがその場から知覚できないほどのスピードで人の方へ駆ける。

 まずい! 一歩遅れた! 

 ダメだ……! 間に合わない……! 

 そう思った瞬間だった。

 

 ドコォ!! という大きな音と共に、私の横をレフィーヤが凄い勢いで吹っ飛ばされていった。

 私が恐る恐る、後ろに視線を向けると、そこには地面に倒れているレフィーヤと、“いつの間にか移動した“人がそこにはいた。

 

 え? 何が起きたの? 

 

 何が起きたのか分からなくて、私は危険を承知でそれを確かめにいった。

 そして、気づいた。

 

 私と同じ学校の制服。

 スレンダーかつ繊細に鍛え抜かれた長身長躯。

 紺色の髪を風にたなびかせながら、十葉荼芽さんが、そこに立っていた。

 

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