私は、十さんの背中の温もりを感じながら、目を閉じて考える。
まさか……十さんが完全に人との関係を断ち切ってまで、私のまだ見ぬ、強い怪人たちとの戦いを繰り広げていたとは知らなかった。
それに私は見てしまった。
十さんがお風呂から上がった時に、ラフな格好になった事で見れた、引き締まった身体に無数の傷跡がついている事を。
それにご飯も、あんなに寂しい食事をこの広い家で一人で食べていたなんて。
私は私の不甲斐なさに、またもや涙ぐむ。
ダメだ、ここで泣いたらまた十さんが心配してしまう。
十さんのクローゼットの中には、必要最低限の衣類しか無かった。
彼女はこれまでの戦いの中で、自分の楽しみや学校での生活を削ってまで、大きな戦いに人知れず身を投じていたのだ。
一人暮らしだと聞いた時の十さんの表情が、少し曇っていたのも、もしかしたら戦いの中で両親に何かが起こってしまったのだろう。
十さんは、表情をあまり表に出さない人だ。
それは、私が学校生活を続けて来て、十さんの事を一年間見て来たから分かってしまう。
……彼女は強い人だ。
戦いでもそうだし、心も強い。
でも、何かがキッカケで、彼女の心が壊れてしまうのではないかと、不安に駆られる。
私が、強大な敵に魔法少女としての矜持も忘れて、心が折れかかっていた時のように。
でも、こうして十さんと過ごしてみて分かった。
彼女にはちゃんと心がある。
感情を表に出さないけど、その心の中では、笑ったり、悲しんだり、怒ったり出来る人だ。
あたたかいご飯に、あんなに夢中になって食べる十さん。
あの時、微かに微笑んでくれたのを私は見逃さなかった。
「……おいしい」
彼女は、小さくそう呟くと、少し口角を上げる。
十さんって笑うと、こんな表情なんだなって、少しドキドキした。
私のご飯で笑ってくれた。
その事実が、私の心の中で何かが揺れ動いたような気がする。
あの時、顔が赤くなったのを十さんに見られてなくて本当によかった。
十さんは今日、私を助けに来てくれたのかな?
それとも、生徒たちがピンチになっていたのを助けに来てくれたのかな。
どっちでも良いし、多分後者のような気もするけど、ほんのちょっとだけ、私の事も考えてくれてたらなって思ってしまう。
なんだろう、まだ二日しか経ってないのに、十さんとは濃密な時間を過ごしたような気になる。
これも、魔法少女同士、お互いシンパシーを感じているって事なのかな。
嬉しいな、十さんも魔法少女で。
……私の憧れの人。
今は、まだ彼女もぎこちないけど、これからもっと時間を共有して、助け合っていけたらいいな。
考えると、ずっと十さんの事ばかり考えてしまう。
それに前よりも、十さんの顔を見ると、心が浮き足だって、まともに目が見られなくなる。
まるで……こ、恋……してるかのような……。
…………いやいや! 私達女の子同士だよ!?
絶対ありえないって!
……ありえない……のかな……?
私は十さんの背中におでこをくっつける。
体がビクッとしたので、驚かせてしまったみたい。
おでこに十さんの体温が伝わってくる。
そして、大きくて、安心感の感じられる硬い背中。
この背中で、これまでいろんな人を守って来てくれてたんだな……。
ありがとう、十さん……。
これからは私も、もっと頑張って、十さんの人生が笑顔で溢れる物にしてあげたい。
幸せに……そして、望むのならば……私も隣で。
これからもよろしくね。