白銀の騎士は黄金の姫に呑まれる 作:15巻まだ?٩(๑•ㅂ•)۶
長年続いたDMMORPG、ユグドラシルが終わりの時を迎えようとしていた。
それはただのゲームのサービス終了なのかもしれない、しかしモモンガにとってそれはひとつの世界の終焉だった。彼にとってユグドラシルこそが青春であり、世界そのものだった。
そんな彼は一人寂しく、最終日市場を彷徨っていた。市場には様々なアイテムが当時では考えられないような破格の値段で取引されている。当然だ、もうこれらのアイテムに価値などないのだから、モモンガはそれらのアイテムを手に取り次々と購入する。
「うわっ!これがこの値段か!投げ売りじゃないか!」
嬉しそうなしかし、同時にどこかで寂しそうなモモンガが市場には存在していた。
今日が終われば、モモンガは消滅し、後には鈴木悟という孤独な人間が残るだけだ。
「ぇっ!これは……」
そんな彼はひとつのアイテムと出会う。『強欲の種子』これはステータスを維持したまま、キャラクターのアバターを変更するアイテムで、現在のキャラに飽きたプレイヤーにロールプレイ目的で使用される。
もちろんアバターを変更してもステータスはほとんど変わらないため、魔法使いが戦士のアバターを選んでも実際の同レベル帯の戦士とは戦いにならないだろう。いい所自分のレベルの八割、つまりモモンガの場合であれば、80レベル相当の戦士職としてが限界だ。
しかし、モモンガにはそれで十分だった。今日だけはギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルド長モモンガとしてではなく、別の誰かでいたかった。
「うぉ!すご!流石はワールドアイテム、ワールドチャンピオンのクラスまで選べるのか!」
アイテムを使用し、自身の見た目を弄りながらモモンガはあれこれと試行する。見た目はどこか自分に似た20代の青年に、そしてクラスは憧れだったギルドメンバーのものを。
「といってもスキルは使えないし、お遊びアイテムなんだけどな」
しかし、その中身は空虚なものだ。見た目こそ、かつてのたっち・みーにそっくりだが、その実は魔法職が少しだけ、近接にもステータスで張り合えるようになった程度。スキルや実際の技術を加味すれば、同レベルの戦士職と戦えば即座にやられてしまうだろう。
「戦士化中に魔法も使えるのは『完全なる戦士《パーフェクト・ウォリアー》』の上位互換だよな」
しかし、モモンガにとってはそれで良かった。かつてのたっち・みーの装備を身につけ、憧れにひとつ近づく、それだけで、本当に良かったのだ。
彼の最後にはこれが相応しかったのだ。しかし、その最後はいつまで経っても訪れなかった。
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