何百回、いや何千回と繰り返してきた時間の中で――
これほどまでに人に囲まれた記憶は、一度としてなかった。
しかも、俺の周囲にいる者たちは、かつてのように俺を恐れているわけでも、忌み嫌っているわけでもない。
彼らの目に映る俺は、恐ろしい化け物ではなく、ただの“仲間”だ。
この場所にはぬくもりがあった。
剣を抜く必要も、気を張る必要もない。
まるで、呪いなどというものが初めから存在しなかったかのように思えてしまう。
この手に得た繋がりは、すべて――
ルーデウスという異質な存在が、俺の世界に現れなければ決して得られなかったものだ。
あの男が、俺の運命を変えた。
幾千のループの果てに、ただひとつ差し込んだ確かな光だった。
……だというのに。
それほどまでに導かれ、手を取ってもらっていたのに、俺は、またしても……肝心な場面で過ちを犯した。
気づくべきときに、気づくことができなかった。
見誤り、そして失敗をした。
守るべきものを守れず、掴んだはずの未来を指の隙間からこぼれ落とした。
ナナホシも、ルーデウスも――
おそらく、今回だけの“例外”にすぎない。
この因果の輪の中に差し込まれた、奇跡のような断片。
もしも今、俺がループを選べば――次の周回には、彼らはもういない。
再びあの、暗く冷たい世界に逆戻りだ。
……もう、耐えられそうにはなかった。
すべてを失うその感覚に、心が軋んだ。
ヒトガミは――まだ終わっていなかった。
奴は、自らが封印されたその先をも見越していた。
たとえ自我を失っても、自分が勝つための“種”を世界のどこかに蒔いていた。
――死霊魔術。
すでに絶えたはずの身体を復活させ、使役する術。
ヒトガミは、まだ策を残していた。
自身が封印された後ですら、なお自らの勝利へと至る道を――抜け道を――巧妙に仕込んでいた。
死霊魔術を用いて――の肉体を蘇らせ、――がそれを乗っ取り、――の記憶を利用し、俺のループを終わらせるために――
……長い、あまりにも長い旅だった。
何もかもが色褪せ、意味を失うほどに繰り返された歳月の中で――
その最中、ひとつだけ鮮やかに燃え上がった命の光があった。
その輝きが、あまりにも強烈に、この心に光と影を刻み込んでいった。
あの出会いを、ただの幻にしてはいけなかった。
この絆を、手放してはいけなかった。
必ず、この周回で終わらせる。
そう――俺は、そう約束したのだ。
どんな手段を使っても、何を犠牲にしても。
終わらせなければならなかった。
ナナホシが積み上げた研鑽の歳月も。
アキが命を賭して選び取った決意も。
ララが起こした、あり得ざる奇跡も。
……そして、ルーデウスがすべてを投げ打って捧げてくれた、あの献身さえも。
俺の愚かさひとつで、すべてを無に帰した。
水面に石を投げ込んだかのように、波紋ひとつ残さず、静かに、消えていった。
何もかもを賭けてくれた者たちの思いを、俺は救えなかった。
信じ、託してくれたその未来を、俺は守り切ることができなかったのだ。
――もう、俺には、耐えられなかった。
社長視点です