旅の跡 The past of the glory   作:鯱(しゃちほこ)

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人の痛みがわかる国 ーI see You.ー

緑の海の中に、茶色の線がのびていた。

それは土を簡単に固めただけの道で、西へ向かってまっすぐ走っていた。辺り一面には脚を覆うほどの高さの草が、風の通り抜けるさまを示すように、緩やかに波打っている。近くにも遠くにも、木は一本も見えない。

道の真ん中を二台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばない物だけを指す)が走っていた。後部にあるキャリアには、両方とも鞄がくくりつけてあるが、片方には鞄のしたに剣のような物が置かれていた。

二台のモトラドはエンジン音を響かせて道の通りにかなりのスピードで走っているが、たまに小石を踏んでバランスが崩れる度に運転手がハンドルを切り、進路の修正をした。

運転手の体躯は二人とも若い青年のようで、黒い髪の青年は黒いパーカーをたなびかせて、ベルトにはハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)のホルスターをつけている。後ろに剣のあるモトラドに乗っている青年の髪は黄色く、黄土色のジャケットを着ていた。そして腰のベルトにはには二丁のハンド・パースエイダーのホルスターが二つあり、フルオート式とリボルバーが入っていた。顔には二人とも同じようなゴーグルがあり、風から視界を守っていた。

 

「なぁ、射抜!もう少し速度をもう少し落とさないかい!?もう次の町は見えてるんだよ!?」

 

黄色い青年がモトラドのエンジン音に負けじと声を張り上げる。

 

「別にいいだろ、流夜!この次の町が見えるときが一番長く感じるんだよ‼︎近くて遠いってやつだ‼︎」

 

射抜と呼ばれた黒髪の青年が同じように声を張り上げて答える。

 

その瞬間、いきなり地面にある段差から弾かれ、射抜のモトラドがちょっとだけ宙に浮く。これにはたまらず少しだけ速度を落とした。流夜もやれやれと言った感じて速度を落とし、口を開く。

 

「まったく。旅の途中に大怪我しても治せないよ?この町にも入れてもらえるかわからないんだからね?」

 

「悪かったって。でも、おかげてもう目の前だ。」

 

悪びれた様子もなく射抜が答え、もう大きくなった城壁を見上げる。城壁の周りには堀があり、少し回り込むと跳ね上げ式の橋があった。射抜と流夜はその手前にある小さな小屋に目をつけ、モトラドから降り、中に入る。

 

その建物の中には誰にもいなかった。

代わりに大きな自動販売機のような機械が置いてあり、それは二人が入ると同時に作動し、幾つかの簡単な質問をし、あっさりと入国許可を出してしまった。橋が降りる。

 

「随分とハイテクなんだな。機械で判断するなんて少し危ない気もするが。」

 

小屋から出て、素直な感想を射抜が口にする。

 

「町に入っても、誰もいなかったりしてねー。」

 

流夜がからかうような感じで言った。

そして、そのとおりになった。

 

射抜と流夜が街に入ると、そこには誰もいなかった。町は立派で、よく整備されていた。

 

「これは…あれか?文明が発展しすぎて人が消えて機械だけ残ったとかそんな感じか?」

 

流夜の言った通りになって少し驚く射抜。

 

「う〜ん、変だねぇ、それにしては店ばっかりだ。もしかしたら住んでる場所は固められてるのかもよ?」

 

辺りを見回して流夜が言う。それもそうか。と射抜が歩を進めようとした瞬間車が走って来て、中からまた四角い機械が出て来て入国歓迎の挨拶を述べた後、町の地図を渡して来た。射抜と流夜の二枚を受け取ると、車はすぐに何処かに走って消えた。地図に目を通すと、この辺は『東ゲート・ショッピング街』と書かれていた。

 

とりあいず近くの燃料ステーションでモトラドの燃料補給をしに行くと、やっぱり誰もいなかった。整備を機械がしてくれるそうだから、ここは任せてレストランで食事を取ることにした。どれもタダ同然の安さだった。

 

日もくれてホテルを探し、行ってみると、やっぱり誰もいなかった。そして当然の如く機械があり、全ての仕事をテキパキとこなしていく。値段もやはり安かった。

 

機械に案内されて部屋に行くと、ハンパなく豪華な部屋だった。洗濯サービスもしてくれるそうなので、二人は風呂の後に着る寝巻きと今着ている服以外を出した。明日の朝には終わるそうだ。

 

風呂からあがり、明日の予定を考えるべく地図を最大まで絨毯の上に広げて見る。町の中央に『中枢・政治エリア』と書かれていて、その南に湖があり、はずれの北に『工場・研究所』があって、それら以外は全て『居住エリア』だった。

 

「人がいるな。」

 

当然のように書かれている地図を見て、呆気なく感じる。

 

「これだけの機械を作って全てきちんと作動してるもんね、誰かいないとおかしいよ。この前みたいに一人しか残ってない。ってことはないといいけど。」

 

「なんで外に出ないんだ?」

 

「それはわからないけど…やっぱ人に聞くしかないね。『工場・研究所』にも行ってみたいけど居住エリアに行こう。」

 

「決まりだな。」

 

二人は頷くと、それぞれのベットに寝転がる。布団はフカフカで、すぐに眠ってしまった。

 

朝になって居住エリアにモトラドを押して歩いて行ってみた。が、結果から言って誰一人として出会うことは無かった。ただ、いないと言うわけでは無かった。大半どころか全ての人間が二人を見かけた瞬間家の中に消えていった。

 

「一体なんだってんだよ?コミュ障か?」

 

徐々に射抜の機嫌が悪くなっていく。

 

「そうだとしたら国中の人が障害だよ。病気じゃあるまいし。それに、皆がみんな一人暮らしになってる原因がわからないよ。」

 

流夜が憶測を立てると納得がいかないのか射抜はうなだれてしまった。

 

それから『工場・研究所』エリアまでモトラドで飛ばして、全自動制御の工場を見て回った。丁寧に説明してくれたガイドは、やはり機械だった。

 

結局その日は元のホテルまでわざわざ戻り、一泊した。

 

 

 

次の日、食料、弾薬、燃料を補給すると西のゲートへ向かった。居住エリアにモトラドの騒音が響くが、どうせ人は会おうとしないなら別にいいかと考えた。そのうち森に入り、森の中を走ってると丘に出て、横を見ると町が一望できた。が、すぐに通り過ぎた。

 

「お。」

 

もうすぐ西のゲートというところで、射抜が道沿いのベンチに腰をかけている男を見つけた。モトラドのエンジンを切り、ゆっくりと近づく。男はヘッドフォンをしていてこちらの様子に気がついてない様子だ。

 

「ここまで来ると、かなり珍しい生き物に感じるね。他の国では考えられない。」

 

流夜がまるで珍獣を見つけたかのような言い方をする。

 

男は三十歳後半の黒縁の眼鏡をかけた男だった。

目の前まで気がつくと男は喜んだ様子でヘッドフォンを取り飛び跳ねた。

 

「やっぱり‼︎僕の予想は当たってたんだ‼︎」

 

「なぁ、全く話が見えないんだが。なんでこの町の奴らは誰も外に出ないんだ?」

 

男が歓喜の声を上げたが、射抜が聞いてないかのように間髪入れずに聞いた。

 

「すまないね、つい嬉しくて叫んでしまった。そうだなぁ、君たちは誰かから言われたり自分で思ったりしなかったかい?【あの人の気持ちが、考えが分かればいいのに。】って。」

 

「あるある‼︎」

 

流夜がモトラドから身を乗り出して言った。射抜は手を強く握って軽く俯いた。

 

「二人ともちょうどいいや、いまから僕の家に来なよ。歓迎するよ。」

 

男はすぐ横の家に入って行き、玄関から身を乗り出して手招きをした。二人もモトラドを停めて入っていく。

家に入ると、明るくて広い部屋に案内された。しゃれた造りの木の椅子とテーブル。綺麗に縁取られた窓の向こうには木が綺麗に配置されていて、木漏れ日を作っていた。地面にはあちらこちらで花が咲いている。

 

射抜は無駄に緊張して椅子に座り、流夜は辺りを見回した後、すんなり椅子に腰掛けた。

 

「どうぞ。何のお茶かわかるかい?庭で採れた植物で作ったお茶なんだけど。」

 

男がマグカップをテーブルに置いた。

二人は顔を見合わせて話し合う。

 

「麦茶?」

「違うと思うよ、香りも色も違う気がするし。緑茶ってわけでもなさそうだね。」

「じゃあなんだ?烏龍茶?」

「庭からは取れないんじゃないかなぁ。よく知らないけど。」

「あとは…」

 

「「カモミールティー?」」

 

二人がハモると、男は声を高くして笑い声を上げた。

 

「いや、すまない。あまりに面白かったから。これはドクダミ茶って言うのさ。知らないかい?」

 

男は目尻を拭くと向かいの席に腰掛けて言った。

 

「「ああ、なるほど。」」

 

また二人がハモると、男は同じように笑った。

 

「いろんな茶を知ってるんだね。君たちが言った中には僕にも知らないのがあったよ。旅人と話すとこう言った違いが見えて面白いね。前の旅人はドクダミ茶のことを毒があると思って最初心配して確認して来たよ。」

 

「そろそろいいですか?この町で人が外に出ない理由を。」

 

流夜が尋ねる。

 

「いいよ。さっき聞いただろ?人の気持ちが分かれば…ってね。この国は、元々機械が仕事をして僕ら人間はやることが無かったのさ。食べ物も豊富でなにをするにしても資材に困らないような。そこで皆は暇を色々な事に挑戦するとこで埋めていった。科学研究、音楽、文学…あるとき脳研究の医者グループが画期的な発明をしたのさ。簡単に言えば、テレパシーができるようになる薬さ。皆はより互いを分かり合えると言って飲んだ。どうなったかわかるかい?」

 

男のパスを流夜が受け取る。

 

「知りたく無いところを知ってしまい、知られたく無いところを知られてしまった。それで本当に本当の、想像なんかじゃないストレートな対人恐怖症になった。かな?」

 

男は一瞬驚いた表情を浮かべ、すぐに嬉しそうな表情になった。話が続く。

 

「その通りだよ。それと全く同じことを前に来た旅人に説明したなぁ。懐かしい。そうそう、一週間ほどは国中でパニックさ。そして僕らは自分や他人の考えが分かるという恐ろしさに気がついた。さらにその解決方法は遠く離れるしか無かった。治療薬を作るにしても、制作班が成り立ってないからね。この国ではここのところ数十年の間子供が生まれていない。そのうちに滅びるだろうね。」

 

男は思い出したかのように立ち上がると後ろにある機会のスイッチを入れた。すると曲が流れ出した。電子フィデルが奏でる穏やかな曲だった。

 

「いい曲だな。」

 

しばらくして射抜が言った。流夜は目を瞑って聞いている。

 

「だろう?前の旅人もそう言っていたよ。僕はこの曲が一番好きだ。前にここで流行った曲なんだけどね、彼女もいい曲だって言ってくれたけど、本当のところはわからない。実際のところ、君たちがどう思ってるのかももうわかりたくないけどね。」

 

そして、男も目を閉じ、射抜も続くように閉じた。

 

曲が終わる。

 

 

 

 

「じゃあ、二人とも、道中気をつけて。」

 

家のガレージの前で男が言った。二人ともモトラドにまたがり、いつでも出発できる状態だった。

 

「いっそのこと、お前も旅に出たらどうだ?そもそも、生きてる人間全てとうまくいこうなんて考えてるからそうなるんだよ。んなもん捨てて、どっかいってみろよ。何かが変わるかもよ?」

 

射抜がふと思ったことを口にする。その通りだが、男は顔を横に振った。

 

「僕はもうこの国で生きて行くよ。もう楽しみを見つけたからね。それに、その点君たちはバッチリだね。何回もハモってたじゃないか。」

 

男が言うと射抜と流夜は顔を見合わせて

 

「まぁな!」

「まぁね!」

 

少しズレたが、ハモった。

 

「それじゃ、さよなら。」

 

男が寂しげに言う。

が、二人ともキョトンとして今度は射抜と流夜が大声で笑った。そして男がキョトンとし、一緒に笑った。

 

「じゃあな‼︎」

 

射抜が言うと、二人合わせてエンジンをかけ、西ゲートに向かう。

 

「それじゃあ、さよならー‼︎」

 

男は今度は手を口に当て笑顔で言い、手を振った。

すると射抜がモトラドをフラフラと運転させながら、振り返って手を振った。

 

「じゃあな‼︎」

 

少し遅れて最後の言葉が男の耳に届いた。




始めまして。初投稿です。
この小説なんですが、構成上かなり原作と似ることになるんですよね。一応、省略したり変えたりはしているんですが、「原作の大幅コピー」対象にならないか心配です。
実は結構文章隠してたりするんですよ。キーとなるところは
「やっぱり‼︎僕の予想は当たってたんだ‼︎」
もう楽しみを見つけたからね。
綺麗に縁取られた窓
の三つです。最後のは原作と比べないとわからないかもしれません。
まぁ、文章力とかは無いことは自覚してるんでそこのとこの了承はオナシャス( ̄Д ̄)ノ
あ、でも〈ここが違う〉〈ここはこうした方がいい〉等の指摘がありましたら、ドンドン言ってください。ただし、ガラスのハートなのでソフトにお願いします。
ではでは( ̄^ ̄)ゞ
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