お隣さんのギャルが僕を惚れさせたくて全力すぎる   作:枩葉松

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第22話 んにゃぁああああ!?

 

「あっ、おーい!! 昴ちゃーん!!」

「こ、声が大きいよ……! 変に騒がれたら面倒だから……!」

 

 昼下がり。

 

 今日は真白の家で忘年会。

 その買い出しのため、駅前で有咲ちゃんと待ち合わせをしていた。

 

 私を見つけた有咲ちゃんは、いつもの調子で大喜び。手を大きく振りながら、すごい速さで駆け寄ってくる。……可愛いな、大型犬みたいで。

 

「そっか、ごめんごめん! 以後気をつけます!」

「本当に頼むよ……んで、買い出しってどこへ行くのかな?」

「佐伯はご飯、あたしたちはお菓子とか担当だから、そこのドンキでいいかなって思ってる。軽く遊べるボドゲとかも買いたいし。他に行きたいとこある?」

「ううん、どこでもいいよ」

 

 言いながら、目と鼻の先のドン・キホーテへ。

 大晦日というのもあってか、店内は大盛況。ただでさえ狭い通路はひとで詰まっており、中々どうして思うように進めない。

 

「真白に聞いたよ。キミ、明日は彼の実家へ遊びに行くんだって?」

「うん! 佐伯をあたしにくださいって言いに行くの!」

「ぷっ、くくっ……それは、とても面白いことになりそうだね」

 

 真白の慌てふためく顔が目に浮かぶ。

 どんな正月だったか、あとで桜蘭ちゃんに聞いてみよう。

 

「でも、キミは実家へは帰らないのかい? 今日だって私たちと大晦日を過ごすみたいだし。ご家族は心配してないのかな」

「うちのママ、年末年始はずっと仕事で忙しいの。休めるのは四日からだから、あたしもその日に実家帰るつもりだよ。昴ちゃんは、お正月どうするの?」

「どうも何も、明日から学校が始まるまで仕事漬けさ。ありがたい話だけどね」

「人気者は大変だなぁ……ちょっと羨ましいけど……」

 

 何て言いながら、まずはボードゲームを物色。

 トランプやUNOを手に取ったところで、「あっ!」と有咲ちゃんは駆け出した。

 

「メイド服だ! これ、そのうち買おうって思ってたんだよねー!」

「そ、そんなもの、何に使うんだい……?」

「昴ちゃんに言われてから、あたし、たまに佐伯のとこで家事やってるの。その時にこれ着てたら、ご主人様にご奉仕するメイドさんって感じで可愛くない? 佐伯もドキドキして惚れてくれるかも!」

 

 あの男がそんな単純なわけはないが、一切へこたれずに何でも試そうとするこの子の姿勢は本当にすごい。常人には真似できないと思う。

 

「いいんじゃないかな。絶対に似合うよ」

「そう? へへっ、そうかなぁ~♡」

 

 メイド服が入った袋を抱いて、デヘデヘと笑う有咲ちゃん。

 この子、同性ながら本当に可愛い。真っ直ぐで、嘘がなくて、陽だまりみたいに温かくて。こんな可愛い子が、こんな可愛いメイド服を着たら、そりゃあ似合うだろう。

 

「……ん?」

 

 有咲ちゃんが表情を一変させ、首を捻った。

 

 私とメイド服を交互に見て、頷いて。

 もう一度交互に見て、ふんふんと勢いよく頷く。

 

「昴ちゃんもお揃いのやつ買おう!」

「な、何で!?」

「有咲ちゃんセンサーが反応してるの! これ、絶対に似合うやつだって! ちょー可愛いって!」

「いやいや! いやいやいや! わ、私はこんなフリフリなの、柄じゃないし! 変になるだけ、だし……!」

「そんなことないよ!!」

「ちょ、顔近い……っ!」

「可愛い!! 絶対に可愛いから、一緒に着よっ!!」

「声大きいって……! ひとが、沢山見てる……!」

「あとついでに、この猫耳も着けて!! 絶対に似合うから!!」

「いや、だから――」

「似合うからっ!! あたし、ちょー可愛い昴ちゃん見たいっ!!」

 

 ミラーボールみたいに輝く双眸に迫られ、あっという間に壁際まで追いやられた私。

 結局、最終的には「うん」と頷くほかなくなり、真白が日頃どれだけこの子に苦労しているか思い知らされた。

 

 

  ◆

 

 

「――ってことで、メイド服買って来たの! どう、可愛いでしょ♡」

「は、はあ……はい、可愛いですね」

 

 状況を把握して、天城さんに感想を伝え、そして昴に目をやった。

 ベッドに座る彼女は、スカートの短さが気になるのか、ずっと裾を握って落ち着かなさそうにしている。

 

「ねえねえ、昴ちゃんも可愛いよねっ!! すっごく可愛いよね!?」

 

 普段の昴は、誰もが羨むイケメンキャラ。

 制服以外ではほとんどスカートを穿かないし、こんなフリフリのやつなんてもってのほか。当然、猫耳を着けたところも初めて見た。

 

「……真白、私に気をつかう必要はないよ。変だって遠慮なく言えばいいさ」

「変、っていうか……」

「何だい? 相当酷いってことかな?」

「いや、普通に可愛いけど」

「びゃっ!?」

「何着ても似合うのは知ってたけど、そういう系もありだね」

「うぐぅ!?」

「すごく可愛いと思う。見違えたよ」

「んにゃぁああああ!?」

 

 ベッドにうずくまって悶絶する昴。

 別に貶してるわけでも、お世辞言ってるわけでもないんだから、もっと胸張ればいいのに。変なやつだな。

 

「ほらほら、佐伯もこう言ってるじゃん!! 昴ちゃんはちょー可愛いんだよぉ♡」

「……そう、かなぁ……?」

「そうそう! おかえりなさいませご主人様って言ってみて!」

「お、おかえりなさいませ……ご主人様……っ」

「もっと声を張って!」

「おっ、おかえりなさいませ、ご主人様……!」

「いい感じ! んじゃ次は、笑顔でお願い!」

「おかえりなさいませ、ご主人様っ!」

「そう! 完璧だよ昴ちゃん! 今の昴ちゃん、宇宙一可愛いよ!」

「ほ、本当……?」

「ほんとほんと! あたし、嘘の可愛いだけは言わないって決めてるから!」

「そっか……へ、へへ……っ」

 

 普段のイケメン面が見る影もない、だらしのない顔。

 楽しそうだなぁ、二人とも……。

 

 さて、僕は夕飯の準備に取り掛かるとしよう。

 

「佐伯ぃー♡」

「……あの、何ですか、手に持っているそれは……?」

「執事服だよ。ついでに買って来た!」

「い、いいですね。そのうち着てるとこ見せて――」

「佐伯の分だよ」

「……はい?」

「佐伯の分!」

「どうして、僕の分があるんです……?」

「んー? 着たら似合うと思って!」

「…………」

「あたしの部屋使っていいから、ちょっと着替えて来てよ!!」

 

 おそらく昴もこの目に迫られたんだろうなぁ、と思いつつ。

 僕は大きなため息を一つ落として、それを受け取った。

 

 何で大晦日にコスプレ大会やらなくちゃならないんだろうなぁ……まあ、いいけど。天城さんが楽しそうだし。

 

 

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