お隣さんのギャルが僕を惚れさせたくて全力すぎる   作:枩葉松

63 / 63
第31話 午前六時

 

「天城さん、起きてください。そろそろ帰りますよ」

「んぅー……? あーい……」

 

 公園を出たあと。

 

 急いで帰宅するという選択肢もあったが、もう少し二人っきりでいたいという天城さんの要望で、僕たちは二十四時間営業のマックに身を寄せた。

 二人でセットを頼み、一度ポテトを追加注文し、ひたすら朝まで粘る。

 最初は楽しそうだった天城さんも睡魔に敗れ、電車の始発が出始めた頃、彼女の肩を揺すって起こす。

 

「佐伯っ」

「何ですか?」

「好きって言って!」

「好きですよ」

「うへへぇ~~~♡」

 

 数時間前から、もうずっとこの調子。

 最初は僕も楽しかったが、このやり取りが三十回を過ぎた頃から作業と化した。

 

 はぁ……ったく、もう……。

 いきなり自棄になって家を飛び出して、電車で全然知らないところまで行って、告白した途端にこれだ。女心と秋の空とか言うけど、本当にそうだな。機嫌の寒暖差に、こっちが風邪ひきそうになる。

 

「あたしも好きっ♡ 大好きだよぉ~~~♡」

 

 ……まあ、でも。

 天城さんが笑ってるなら、何でもいいんだけど。

 

「佐伯の家に着いたら、皆に謝らなくちゃだね」

「ですね。一応連絡はしてますけど、心配かけたと思いますし」

「ぶ、無礼な女にうちの息子はやらんとか言われちゃったらどうしよ……!?」

「そんなこと言う親じゃないので、安心してください」

 

 一月二日、午前六時。

 電車の中はガラガラ。適当なところに並んで座り、大きく息をつく。温かな座席に、疲労ごと身体が溶けてゆく。

 

 車窓から朝日を眺め、目を細めた。

 ガラスに反射する僕は、徹夜明けで酷い顔だが、少しだけ大人になったような気がした。

 

「佐伯、大丈夫? ずっと起きてたんでしょ? 駅着くまで、寝てていいよ?」

「えっ? あぁ……いや、平気ですよ。ちょっと考え事してて」

「考え事って?」

「付き合うって具体的に何するんだろうなぁとか、親にどういう風に言おうかなぁとか、アパートの片付け面倒だなぁとか……まあ、そういうことを」

「か、片付け……そっか、そうだよね……」

 

 彼女の表情に、ふっと影が差した。

 

【不純異性交遊はしないこと】

 

 一人暮らしをする上で、守らなければならないルールの一つ。

 昨夜、僕はそれを破った。偶然でも、強要されたわけでもなく、自らの意思で。

 

「…………やだっ」

「はい?」

「やだっ! やぁーだぁー! 実家に帰っちゃやだーっ!」

「そ、そんなこと言われても……」

「だって、そうなったら一緒にいられる時間減っちゃうじゃん!? せっかく付き合えたのに、意味ないじゃんかよぉー!!」

「少し前まで僕を惚れさせて実家に帰す気満々だったのに、惚れたら惚れたで帰したくないってメチャクチャですね……」

「そうだよ! でも佐伯、そういうとこも丸っと含めて好きって言ってたしいいの! 有咲ちゃんはメチャクチャで自分勝手なの!」

「開き直った!?」

 

 僕の腕に抱き着いて、天城さんはギーギーと騒ぐ。

 気持ちはわかる。僕だって、ずっとそばにいたい。いたい、けど……。

 

「ダメです。約束は約束なので、僕は洗いざらい全て両親に話して実家に戻ります」

「……どうしても?」

「はい。家賃や光熱費を払ってくれているのは両親ですし、不義理はできません。他の兄弟たちにも、示しがつかなくなりますし」

 

 父さんの稼ぎはかなりいい方だと思うが、子どもの多さが全てを打ち消している。

 そんな中、僕は無理を言って一人暮らしをさせてもらっているのだから、ルールを破ったのなら素直に申告しないと。

 

「せっかく、恋人同士でお隣同士なのに……毎日イチャイチャし放題で、えっちなこともし放題なのに……むぅ……」

 

 ブツブツと下心丸出しの台詞を吐いて、どっとため息を漏らす。

 悲しそうに、残念そうに、その双眸は窓の外を見つめている。

 

「…………あっ」

 

 と、いきなり声をあげて。

 鞄を開いて中に目をやり、今度は僕を見てニタァと妖しく笑った。

 

「――諦めるのはまだ早いよ、佐伯♡」

 

 




 第2章、完結です!
 ここまでお付き合いいただきありがとうございます!

 書籍版1巻、そしてコミカライズの方もよろしくお願いします……!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

貞操逆転世界ならコミュ症でもクール系病弱美少年でいけるらしい 〜あっ!隠してやってた裏垢のエロ自撮りがバレたぁ!?〜(作者:しゃふ)(オリジナル現代/恋愛)

男女比1:20の世界で、気になっている無口な男の子の裏垢エロ自撮りを見つけちゃって情緒をぶっ壊される女の子たちの話。▼なお主人公くんはクール系を演じてるだけのただのコミュ症承認欲求モンスターである。▼ カクヨムにも投稿してます。


総合評価:1703/評価:8.14/連載:12話/更新日時:2026年02月22日(日) 00:04 小説情報

その転生者は見届ける(作者:街中@鈍感力)(原作:その着せ替え人形は恋をする)

『その着せ替え人形は恋をする』の二次創作です。▼ライトオタクな主人公が何故か着せ恋の世界に転生したお話。▼彼の目的はただ一つ、新菜と海夢の恋の行く末をリアルに見届けること!▼


総合評価:6314/評価:8.58/連載:67話/更新日時:2026年05月11日(月) 11:45 小説情報

胡蝶の夢、或いは不労所得の夢(作者:nyasu)(オリジナル現代/日常)

気付いたらTSタイムリープした主人公。▼なお、凡人だからそう簡単に楽は出来ない模様。▼書きたいもの書いてたら数日で日間ランキング載ってて、驚いた。▼誤字報告機能を使ってくれる読者のおかげなので感謝感謝。▼【挿絵表示】▼


総合評価:20759/評価:8.08/連載:155話/更新日時:2026年05月04日(月) 12:10 小説情報

貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。(作者:はめるん用)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

いつの間にかウマ娘の世界に転生した貴方は、何故か身に付いていたチート能力を駆使してウマ娘のトレーナーとなり大金を得て好き勝手に生きることを思い付きます。▼そして、いざトレーナーの資格を獲得し、これから中央トレセン学園で面接が始まるというタイミングで貴方は気が付いてしまいます。▼「そもそもチートあるんだから、わざわざトレーナーになって働かなくてもよくね?」▼さ…


総合評価:90415/評価:9.2/連載:223話/更新日時:2026年05月06日(水) 21:14 小説情報

ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた(作者:恒例行事)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

損耗率80%越えの異常職業、『肉壁』。▼冒険者パーティーの中でも最も粗雑に扱われる消耗品扱いの職業において絶対的な強さを誇るフィン・デビュラはドマゾだった。▼痛いのが気持ちいい。▼死ぬかもしれない恐怖がたまらない。▼日頃からアドレナリン&ドーパミン中毒で脳がぶっ壊れてる彼は出会った仲間を庇いつつ死なない程度の攻撃を受け続けることで仕事と趣味を両立させていたの…


総合評価:14592/評価:9.11/連載:144話/更新日時:2026年05月18日(月) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>