床が砕け、視界から消えたプレナパテス。とっさにカードを使用した先生は振り向きざまに一閃。
青色のライトセーバーが紫色のライトセーバーにぶつかり、一瞬の拮抗。奇襲を防いだものの、先生は大きく弾き飛ばされて空中で一回転。
機転を利かせたアロナが足場(力場)を生成し、阿吽の呼吸で先生が着地。
身動きが取れず無防備になるはずの空中で体勢を立て直し、横から飛んできた銃弾を
それでもシロコは弾丸を浴びせ続ける。
薬きょうが彼女のひざ下で抜け出そうともがくシロコの身体に雨あられと降り注いだ。
先生は、引き続き銃弾を防ぎつつ、アロナが階段状に成形した足場を下りていく。
プレナパテスは最初の一撃を加えてから静観に徹し、もう一人の自分を待ち受ける。
先生はすかさず吠えた。
“高所をとったぞ!”
“あんたが憎い!”
プレナパテスは笑った。先生も笑った。
それは決して喜びや楽しさの表現ではなく、本質的には野生動物のそれと同じ。口角を上げて牙をむくその動作は、威嚇の所作だ。
そこに“高所”という単語も合わされば、
すかさず雄たけびを上げて跳躍、大上段に構えたライトセーバーを振り下ろして敵を頭から股まで真っ二つにした…… あの時の“選ばれし者”ならば。
だが、そうはならない。そうしてはいけないと、彼らの
そのまま両者は数秒にらみ合いに入り、均衡を打ち破ったのはシロコ。
リロードのタイミングで彼女は手りゅう弾を投げ、銃撃が途切れた段階でアロナが力場の階段を滑り台に整形。
フォースで先生を引き寄せようとしたプレナパテスの行動は失敗。
一手、無駄にしたプレナパテスに、滑り切った先生が迫ろうして、転倒。
その足元に転がるのは、ピンが
つまり、プレナパテスが引き寄せるつもりでいたのは、最初から先生ではなく、爆弾の方だった。
致命的な読み違えに気づいて、先生は顔をひきつらせ、シロコが声を震わせた。
「“先生”……!」
「うん。
“ああ。ここで仕留める。
「いい。大丈夫。一度やったなら二度目も同じこと」
いっそう暴れ出したシロコの上で、リロードを終えたもう一人のシロコが射撃体勢をとる。
真下に、もがいている自分がいるにもかかわらず、とても安定した姿勢。ブレ一つない。
かつて三発の弾丸で先生の命を奪った少女が、今再び同じ血で手を汚す。
救いがあるとすれば、今回彼女が狙うのは手りゅう弾の方だから、先生を直接攻撃するわけではないこと。
(救い……? なんで今さら。図々しいよ、私)
無意識にでもその言葉が浮かび上がって、シロコは目を細めた。わずかにそれた照準を補正する。
今度は雑念を振り払い、引き金を引いた。
「アロナ。これ以上の抵抗は無意味です」
「いいえ…… 諦めません!」
二人のアロナがシッテムの箱で互いの制御権を奪い合っている。
本船のハッキングなど、他の作業も並行しているプレナパテスのアロナに対して、先生のアロナはすべてのリソースをこの攻防戦に集中させているが、それでも互角とはいかず。
アロナガードで爆発の影響を軽減することはできそうもない。
先生自身の動きも、ライトセーバーをしまってフォースを使いだしたプレナパテスに封じられている。隙を見て逃げ出すことは不可能。
完全なチェック
(そう。運命は覆せない)
さく裂した手りゅう弾の破片が先生に迫るのを見て、シロコは目を伏せた。
そして、濃密な死の予感に、先生の脳内を埋め尽くす走馬灯。
──また通信障害か? ■■■■、少しはマスターとしての自覚をもて。
──弟だと思っていた!
──そのなの嘘だ! そんなことあるもんか!
──父さんを置いては行かない!
──責任を負うものについて、話したことがありましたね。
──大人として、騎士として、親として。その責任と義務を全うするというあなたの選択。以前はひどいことを言ってしまいましたね。ごめんなさい。
──許してほしいとは言いません。どうかお元気で。私のことは忘れてしまってください。
((いや、これは走馬灯ではない。この記憶は誰のものだ?))
先生とプレナパテスの脳内を埋め尽くした、かつての記憶と“存在しない”記憶。
まるで時が止まってしまったかのように、その場にいる誰もが、何もかもが──手りゅう弾の爆発さえ──動けない。
コォホォォォ、コォホォォォ……
そこに姿を現す人物が一人と一体。響き渡るのは機械的な呼吸音。
「儂は決して忘れないだろう」
その発言は、誰に向けたものか。
記憶を見せられた──あるいは見てしまった──二人には心当たりがあった。
けれど2人のシロコにはその文脈が理解できない。だが疑問をはさむ気にはならなかった。
一方にとっては、全身の毛が逆立つほどの濃密な神秘の気配。耐えるだけで精一杯。その実力差ゆえに口答えなど到底できない。
もう一方にとっては、どこか懐かしさを覚えつつも困惑の方が勝る気配。2人目のプレナパテスと言われても受け入れてしまいそうな親近感。声をかけたら銃を向ける気がなくなってしまいそうで、だから口を閉ざした。
各々の理由によって、四人が静観する中、闖入者の内、この場の誰よりも小さいものが先行して、シッテムの箱を拾い上げた。
今まで認識阻害系の神秘か迷彩によってはっきりしていなかったその姿が、箱に触れたことで明らかになる。
“R2!”
先生の呼びかけに応じ、R2D2は飛び跳ねた。振り回されるシッテムの箱。アロナたちが目を回している。
「やめないか」
R2の手──作業用のマニピュレータ──から箱が引きはがされる。
それがもう一人の闖入者の手に収まると同時、アロナたちが騒ぎ出した。
「あり得ません…… 三人目の同一人物だなんて」
「先生、黒服さんです! いったい、どのようにしてここまで来たのでしょう?」
かつてアビドスで遭遇し、“先生”と死闘を交えた男。元祖黒服曰く、黒服2号。
だが、“先生”とプレナパテスは彼の名を知っている。偽りのそれも本物のそれも。
“黒服。何をしに来た。同窓会にお前を呼んだ覚えはない”
「ダース・ベイダー。お前がいるなんてな。
「その言葉。そっくりそのまま、お前たちに返るぞ。若造ども」
息をぴったり合わせて皮肉の砲火を浴びせる2人。しかし、ベイダーの方が一枚上手だった。
口ごもって視線を逸らす2人の代わりに口を開いたのはシロコ達。それぞれの先生に話しかける。
「先生。あの人は? 前はいなかったはず」
「先生。黒服にしてはガタイがいい。あんな筋肉で研究者なんて無理」
「ククク。ひどい言われようですね。私のことではないから関係ありませんが」
R2から特徴的な笑い声。展開されたホログラムが映し出したのは、当然、黒服1号だ。傷は回復していないが、先生が前に会った時よりもうきうきしている。
「それでは準備が整ったことですし、改めてご紹介させていただきます。我々は旧ゲマトリア残党にして、その屍を踏み越えるもの。このキヴォトスに新たな
続きは未定。なので、この場でいくつかの設定を放出しておく。
タイトルのトリコロールが示す色は、赤・青・紫の3色。シスの赤、ジェダイの青、光(ジェダイ)と闇(シス)が合わさり最強に見える紫の組み合わせ。
また、先生とプレナパテス、ダースベイダーのスカイウォーカー3人組を示すことばとしてトリコロールを使ったという思惑がある。
それぞれのスカイウォーカーについて考えていた設定として……
先生は“選ばれしもの”としての役目を終えたスカイウォーカー。そのため、保有するミディ・クロリアンの量は皆無に等しく、フォースを使うには大人のカードの使用が必須。
プレナパテスは未だ“選ばれしもの”の役目に囚われ続けるスカイウォーカー。フォースを使うのに大人のカードはいらないし、常人なら廃人と化しているような状態でもフォースの意思によって生かされる。原作と違い、ふつうに喋っているのは“色彩”と“フォース”がせめぎ合って拮抗しているから、かもしれない(未定の設定)。
ダースベイダーは“選ばれざるもの”すなわち、役目を与えられなかったスカイウォーカー。連邦生徒会長に後を任せてもらえなかった先生ともいう。それは先生が後任者として不適格だったからではなく、先生に迷惑をかけまいとした会長の善意によるもの。その結果、新たな先生が招聘され、前任の先生は闇堕ちした。
もっとも、会長に失望したから暗黒面に堕ちたのではなく、自分一人を犠牲に(それが問題の先送りだとしても)キヴォトスを救った会長を“なんとしてでも”救うという決意から再び手を汚したという経緯がある。その方法をアトラハシースの箱舟に求めて、最終決戦に割り込んだ。彼にアロナはいないが、R2D2と黒服がその役割を代行する。
以上。