本当の自分を知ると言えば、笠っちが思い浮かびました。
笠っちが神の目を授かるシーンは今でも見返すくらい好きです。
今回は不思議なくらい筆が乗りましたね。
[あなたはAL-1Sですか?]
画面に浮かび上がった一文。しかし、それは俺たちの思考を止めるには十分すぎるものだった。
「……アリス、今すぐにキーボードから手を離せ。」
「? は、はい……。」
ようやく頭が回るようになり、即座に俺はアリスに指示する。アリスは首を傾げるが素直にその場から離れた。
「これってアリスの……だよね?」
「AL-1S……? アリスはアリスで――」
[音声を認識、資格を確認しました。おかえりなさいませ、AL-1S。]
「音声認識つき!?」
電子音と共に文章が表示される。コンピューターとは思えないくらいに用意周到だ。いや、それよりも大事なことがある。
このシステムは『AL-1S』を知っている。これはアリスの正体を探る絶好の機会。この時を逃すわけにはいかない。
だが、その前に俺はアリスに尋ねた。
「……アリス、お前は自分を知りたいか?」
それがどんな結末を齎すかは分からない。ただ確かなのは、彼女が本当の自分を知り、悲しむような結末だけにはしたくない。だからこそ、その覚悟を尋ねた。
「アリスは――」
彼女は考える。俯く彼女の表情は、不安でいっぱいだった。
過去の自分を知るというのは恐怖でしかないだろう。なぜならそれを知った後、ずっと信じていた自分を自分だと信じられなくなる可能性があるからだ。
「アリスちゃん、無理に聞かなくてもいいからね?」
ミドリがアリスの背中に手を当てた。彼女が言うように、怖いなら無理に聞く必要はない。俺たちのことは考えず、お前が決めろ。
やがてアリスは顔を上げる。その顔は、何かを決意した表情だった。
「アリスは、知りたいです。本当は怖いですけど、知る必要があります。アリスがどうやって生まれたのか、何をするために生まれたのかを。」
「……分かった。お前の覚悟を見届けよう。」
アリスは強く頷き、再びコンピューターの前に立つ。そして――
「『AL-1S』について、あなたが知っていることを教えていただけませんか?」
ハッキリとした声で、尋ねた。その声に恐怖は感じられない。
しかし、画面の文は変わらず[AL-1Sですか]のままだ。加えて画面が少しずつぼやけてきた。
「あれ、どうしたのかな。」
「処理に詰まってるとか?」
モモイとミドリが話していると、ようやく新たな文が表示された。
[そうで…………蜷阪b縺ェ縺咲・槭???邇句・ウ縲∬ィ俶?繝??繧ソ辟。縺]
「ひゃっ!?」
「また文字化けだ。」
再びの急な異常に、ユズが小さな悲鳴を上げてハルトの背中に隠れる。
冷たい電子音が一瞬だけ鳴り、画面の文字はぐにゃりと歪んだ。
どうやらコンピューターの調子が悪いらしい。
長い間放置され、誰にもメンテナンスされていなかったせいだろう。
画面はそのままフリーズし、黒い静寂が室内に落ちる。
「……まったく反応しない。」
ミドリが呟いたその瞬間、暗転したモニターに再び光が走った。
[緊急事態発生]
突如現れた警告文に、モモイたちは思わず声を上げる。
[電力限界に達しました。電源が落ちると同時に消失します。残り時間51秒。]
「ええっ!?」
「ま、待って!せめてG.Bibleについて教えて!」
透かさずモモイが叫んだ。
ここまで来て何の成果も得られないのだけは、絶対に避けたい。
最優先事項――G.Bibleだけは手に入れなければならない。
[G.Bible……確認完了。コード:遊戯……人間、理解、リファレンス、ライブラリ登録ナンバー193、廃棄対象データ1号。残り時間35秒。]
[G.Bibleが必要であれば提案します。データ転送のため、保存媒体を接続してください。]
「ど、どういうこと!?」
テンパるモモイたちの代わりに、俺が冷静に問いかける。
「お前がG.Bibleのデータを保持している。そうだな?」
[その通りです。保存媒体を接続していただければ、速やかに転送いたします。]
「だそうだ。何か使えるものはないか?」
「きゅ、急にそんなこと言われても――あっ! ゲームガールズアドバンスSPのメモリーカードでも大丈夫?」
[……………………まぁ、可能ではあります。]
わずかに間を置いたその返答に俺は眉をピクリと動かす。その反応はまるで、露骨に嫌がっているようだった。言葉の間の“ため”さえも人間的で、俺は思わず眉をひそめた。恐らくAIだとは思うがどうも違和感が残る。
Divi:sion System……ますます怪しい代物だ。
そう考えている間にも、モモイたちは作業を進める。(なぜか)持ってきていたゲーム機をセットし、すぐにデータ転送が始まった。
[……保存領域が不足、既存データを消去します。残り9秒。]
「ちょっと待って!!」
唐突な表示に、モモイの悲鳴が室内に響いた。
「それセーブデータ消してない!? お願いだから消さないで! そこまで装備を整えるのホントに大変で――」
[残念、消去。]
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
あまりにも不憫……。モモイは大粒の涙を零し、その場で崩れ落ちた。ユズとハルトが寄り添うが、しばらく立ち直れそうにない。
それにしてもこのDivi:Sion System、随分と悪魔的な反応を見せたな。勝手に人のデータを削除しておいて、何が「残念」だ。アリスの正体より、こいつの性格のほうが気になってきた。
そんな中でも転送は進み、やがて[転送完了]という文と共にゲーム機の画面が青く光った。
そこに書かれていたのは〈G.Bible.exe〉。どうやら間に合ったようだ。
「お、お姉ちゃん!ユズ! G.Bibleだって!」
「ホント!? 今すぐ実行してみよう!」
悲しみに暮れていたモモイは、まるで何事もなかったかのように立ち上がり、ゲーム機を手に取る。
……情緒が忙しい奴だな。
「えーっと、これを開くには――って、パスワードが必要!? どうすればいいのさ!」
「大丈夫! パスワードならヴェリタスが何とかしてくれるはず!」
その案にユズも勢いよく首を縦に振る。
『それもそっか』と落ち着きを取り戻したモモイ。改めて〈G.Bible.exe〉と書かれたファイルを見つめる。
「G.Bibleが、ついにこの手に……!」
「これで『テイルズ・サガ・クロニクル2』が作れるね。」
ゲーム制作のスタートラインに立てたことを喜ぶモモイとミドリ。
だが、ユズの表情だけは少し沈んでいた。
「でも、アリスちゃんは……。」
その言葉で、全員がアリスへと顔を向ける。
「……結局、教えてくれなかったね。」
しんみりとしたモモイの声に、アリスは小さく俯く。目の前にあるコンピューターは完全に機能を停止してしまっていた。
覚悟を決めて臨んだのに、いきなり「電力限界」と言われては納得できるはずもない。悲しい結末ではなかったが、決して満足のいく終わり方でもなかった。
"あの……黄泉先生。先生の刀が電気を操れるのなら、それを利用してコンピューターを起動させることはできないんですか?"
ふと、ハルトがそんな提案をしてきた。
「……それはつまり、こいつの力でこのコンピューターを繋ぐ配線に電気を流せってことか?」
"はい。"
「おおっ、ハルト先生ナイスアイデア!」
確かに、それならコンピューターを起動できるかもしれない。しかし、それをやるには技術的な問題が1つある。
「電気には周波数がある。ここの周波数と同じものに調整できるほど、器用なことはできない。したがって無理だ。」
"た、確かに……。"
「そっか……。」
再び重い空気が流れる。期待を抱かせてしまった分、俺も少し申し訳ない気持ちになった。
それでも、彼女たちに伝える。
「……だが、必要な物は手に入れた。まずは何が優先すべきことかを考えよう。」
最優先の目的は達成した。次はG.Bibleのパスワードを解き、ゲーム制作に取り掛からなければならない。
「はい。ミレニアムプライスで賞を取れなきゃ、元も子もないですし。」
「ぶ、部活がなくなるのは嫌だから……。」
「アリスもお手伝いします!」
ミドリ、ユズ、アリスが次々に声を上げる。そして――
「よーし! それじゃあ私たちの部室に帰ろう!」
モモイの掛け声によって、再び場は1つになったのだった。
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廃墟でG.Bibleを見つけた翌日。私たちゲーム開発部は、ハッカー集団『ヴェリタス』の拠点へとやってきました。何やらヴェリタスの方からお話があるみたいです。もしかして、もうG.Bibleのパスワードの解析が終わったのでしょうか?
「依頼されていたデータの結果が出たよ。」
パソコンに向き合っていたハレ先輩が手を止め、リクライニングチェアを回して私たちの方へと体を向けます。
早くも結果が知れるとなると、自然と緊張してきました。お姉ちゃんやユズちゃん、アリスちゃんも顔が少し強張っているように見えます。
「私たちはこれまで、数多くのシステムやデータを復旧させてきた。今回も私たちができることは全力でやったよ。それを踏まえて言わせてもらうけど――」
「モモイ、あなたのゲームのデータを復活させるのは無理。」
「終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
お姉ちゃんが昨日と同じように膝から崩れ落ち、涙を流します。最初はどうでもいいと思っていましたが、毎日コツコツと積み重ねてきたお姉ちゃんの成果が一瞬で破壊されたと考えると、なんだか私まで辛くなってきました。
というか、あのゲーム機はゲーミングパソコンほどではないとは言えかなりの容量があったはずです。G.Bibleはいったい容量の何割を食べちゃったのでしょうか……。
逆を言えば、それだけ沢山の情報が詰まっているということ。お姉ちゃんのセーブデータは犠牲になったのです。未来へ進むための道……その犠牲に。
「……ところで、G.Bibleはどうなりましたか?」
「それならマキが作業中ですよ。」
私が尋ねると、ハレ先輩と一緒に作業していたコタマ先輩が教えてくれました。すると――
「おはよう、ミド! 来てくれたんだね!」
「マキちゃん!」
気さくに話しかけてきてくれたのは、まさに今話していたマキちゃんです。マキちゃんは手のひらを見せてきたので、私も手のひらを出してハイタッチしました。
「G.Bibleはどうだった?」
「ちゃんと分析できたよ。あれば間違いなく伝説のゲーム開発者が作った神ゲーマニュアル『G.Bible』だった。」
「ほ、ホント!?」
お姉ちゃんとは対照的に思わず飛び跳ねてしまう私。後ろに立っていたユズちゃんとアリスちゃんも両手でハイタッチを交わしていました。
「だけど……パスワードの解析はまだできていないんだ。」
「てことは結局見られないってことじゃん! ガッカリだよ!」
「お、お姉ちゃん……。」
さっきまで泣いてたのにいつの間にか復活してる……。いやそれよりも、頑張ってくれたマキちゃんに失礼だよ……。
「そんなこと言われても……! でも、方法が無いってわけじゃないよ。」
「えっ?」
「パスワードを直接解析するのは無理だけど、セキュリティファイルを取り除いてコピーする手段なら、きっとできると思う。」
おお……! 何言ってるかよく分かんないけど、とにかく見られる可能性があるってことだよね!
「そのためにはOptimus Miror System……通称『鏡』ってツールが必要なの。」
「それで……その『鏡』はどこにあるの?」
「………生徒会にあるの。」
「ふーん、生徒会に………生徒会!?」
思わず大きな声を出すお姉ちゃん。かく言う私も「えっ」と声を漏らしてしまった。
よりによって生徒会に……。 でも、どうして?
「この前ユウカが急に押し入ってきて没収されたの!『不法な用途の機器の所持は禁止』ってさ!」
「『鏡』だけでなく、いろいろ持って行かれましたね……。私の盗聴器まで……。」
「あの算術使い、ヴェリタスにまで……!」
元々ユウカに恨みのある私たち。まさかの再登場に不満が溜まっていきます。コタマ先輩の口から何か聞こえた気がしましたが、気の所為でしょう。
「ち、ちなみにその『鏡』って、危険な物なの……?」
ふと、ユズちゃんが尋ねました。本当に危険なものであれば、生徒会が没収することに納得できなくもないですが。
この質問に反応したのはハレ先輩でした。
「そんなことないよ。ただ暗号化されたシステムを開くのに最適化されたツールってだけ。ただ……世界に1つしかない部長が作ったツールだから……。」
「ヒマリ先輩が……?」
「ヒマリ……?」
アリスちゃんが初めて聞く名前に首を傾げました。そう言えば、アリスちゃんはヒマリ先輩に会ったことはなかったですね。
「天才ハッカーで、ミレニアムで3人しかいないとされる学位『全知』の持ち主なの。いつも車椅子に乗ってるから、すぐに分かると思うよ。」
そう教えてあげると、アリスちゃんはコクコクと頷きました。ちょっと可愛い。
「でも……危険じゃないのにどうして取られちゃったの?」
お姉ちゃんが尋ねると、ハレ先輩たちは揃ってコタマ先輩へと視線を向けました。まさか、犯人はコタマ先輩……?
「わ、私はただハルト先生のスマホのメッセージ内容を確認したかっただけです。決して不純な動機ではありません。」
「誰が聞いても『不純だ』と答えると思いますけど……。」
思わず呆れてしまう私……。これは私たちの感覚がおかしいのでしょうか?
「コホン……。話を要約すると、私たちは『鏡』を取り戻したい。それに、G.Bibleのパスワードを解くために、あなたたちも『鏡』は必要……。そうでしょ?」
「なるほど……。呼び出された時点で予想はしてたけど、だいたい分かったよ。」
……それは本当に予想できていたのでしょうか?
そんなことよりも2人はいったい何の話を――。
「さっすがモモ!話が早いね!」
「目的は一緒なんだし、旅は道連れってね!」
マキちゃんまで……!?
いや……なんとなく私も理解できた気がします。ものすごく不安ですが……。
「共にレイドバトルを始めるのであれば、私たちはパーティメンバーです。」
アリスちゃん! せめてアリスちゃんはこっち側であってほしかったかな!? ていうかもうレイドバトルって言っちゃってるよ!
「話は纏まったね。それじゃあモモイ、同盟を組もっか。」
「うん! ヴェリタスとゲーム開発部で生徒会を襲撃しよう!」
ちょっ……!私とユズちゃんは何も言ってないんだけど!? なんかもう握手までしちゃってるし!
私たち、この先どうなるの――!?
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「……ここまでは筋書き通りってわけか。」
カーテンが完全に閉められた薄暗い会議室。その場には俺とヒマリ、リオが再び一堂に介していた。机の真ん中に置かれた拡声器からはヴェリタスの拠点での会話がそのまま聞こえてくる。
まさか、コタマから取り上げた盗聴器をこんな形で再利用するとはな。
「ええ。でも、ここからは私にも予測できないわ。」
「ふふ……。私たちの作戦通りに事を運べるというのは、なんだがゾクゾクしますね。」
ヒマリの言わんとしていることは分かるが、その表情で言われると少し引いてしまう。どうやら天才にも欠点はあるらしい。
「では、改めてここからの作戦を簡単におさらいするわ。」
リオはヒマリに目もくれず話を進める。そのブレない姿勢は俺としてもありがたい。
「生徒会を襲撃してきたゲーム開発部とヴェリタスの同盟に対し、こちらはC&Cを出す。その戦闘でアリスがどう行動するかを観察するわ。」
「これまでに集めたデータと合わせて、私とヒマリが正体の結論を出す。それが今回の作戦よ。」
C&C、正式名称は『Cleaning&Clearing』。4人のエージェントで構成された部活で、普段はメイド服を着ている。戦闘能力は言うまでもなく、ミレニアムでトップ。キヴォトス全体で見ても高い位置に立つ逸材たちだ。
今回の作戦に俺は参加しない。いや、手を出さないと言ったほうが正しいか。前にリオに言われたが、俺が戦闘に混ざると正確なデータが取れなくなる可能性があるらしい。そのため、俺は2人と共に戦闘を見届ける立場になった。
だが、この胸にはモヤがかかっている。ここまであいつらと共に行動してきたのに、この作戦だけ参加しないのは、はたして正しいのだろうか。
「……黄泉先生?」
「……っ。 どうした?」
リオに呼ばれてハッとする。顔を上げると、リオの不思議そうな表情が映った。
「そのセリフはこちらのものだと思うのだけれど……何か困りごとかしら?」
「いや、何でもない。廃墟での出来事を考えていたところだ。」
言い訳にそう言うと、ヒマリが何かを思い出したように口を開いた。
「そう言えば先生。昨日の廃墟での話を聞かせてほしいです。」
「ヒマリ、それは話が終わってからにしてくれるかしら。」
そんなやり取りを耳にしながら、俺は決心した。一度呼吸を挟み、2人を視界に映す。
「……リオ、ヒマリ。この作戦、辞退してもいいだろうか。」
「……それは、どういうことかしら。」
リオの声が一段低くなる。
しかし、俺は1ミリも圧されることなく話を続けた。
「お前たちを裏切るつもりはない。だが、あいつらを裏切ることもできない。」
「俺はゲーム開発部に協力すると決めた。だから俺は最後まで共に戦わなければならない。」
ヒマリは特に表情を変えなかったが、リオは露骨だった。細められた瞳が鋭く光り、言葉よりも強い圧を放つ。
「……彼女たちの側につくのに、私たちを裏切らないというのはどういうことかしら?」
「俺はアリスたちと別行動をとる。データ採取の邪魔はしないと約束する。」
そう言って、俺は深く頭を下げた。
ハッキリ言えば、苦しい言い訳だ。裏切りは"あの日"が最初で最後だと、そう決めたはずなのに――また、同じことを繰り返そうとしている。
沈黙。
やがて、リオの声がその静寂を破った。
「……あなたらしいわね。」
リオの声は元に戻っていた。
俺はゆっくりと顔を上げる。見れば、彼女の口角は少しだけ上を向いている。
「そのお願い、特別に飲んであげるわ。」
「……感謝する。」
再び俺は頭を下げる。ヒマリがくすっと笑ったのが聞こえた。
「とは言え、タワーの中をウロウロしてC&Cの誰かに気づかれるのも面倒ね。………。」
「1つ提案なんのだけれど、いいかしら。」
リオは軽く目を閉じ、しばし考え込むような仕草を見せた。
やがて、指先で軽くテーブルを叩く。
「俺にできることなら、何でも。」
当然、俺は肯定する。
「作戦中、"彼女"の相手をしてほしいの。」
そしてリオは軽く手を2回叩いた。すると――
「失礼します。」
『ヒュッ』と風を切る音が聞こえたかと思えば、1人の少女が現れた。その立ち姿には異様な静けさと緊張感が漂っている。
その容姿はアイボリー色の短髪に、透き通るような青い瞳。そして――身に纏っているのは、メイド服。
「……メイド服?」
思わず小さく呟いた俺をよそに、リオが淡々と紹介する。
「彼女は飛鳥馬トキ。私専属のボディーガードよ。」
「黄泉先生、始めまして。飛鳥馬トキと申します。」
トキは、まるで機械のように正確な所作で一礼した。その瞳の奥に、かすかに揺れる光が見えた気がした。
つづく
リオのキャラがちょっと……いや、かなり違うように感じられるかも知れませんが、許してください。
それはそうと……リオとヒマリはゲーム開発部たちとC&Cをぶつけてアリスの正体を解き明かすつもりだったみたいですが、それで本当に分かるものなんですかねぇ……。有識者の方、教えてください。
次回 第六話 抗う者たち