死を識る者、日常に佇む   作:ツカッチ

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開拓者のみなさん、先生のみなさん、こんにちは。

最近はカービィのエアライダーの動画ばかり見てる。Switch2持ってないけど。


精鋭、集結

『アリスちゃんが――攫われちゃった……!』

 

「……は?」

 

思考が一瞬、白く塗り潰される。

その名を聞いた瞬間、心臓が跳ね、喉の奥が詰まった。何か言わなければと思いながら、震える声を無理やり抑え込む。

 

「……誰だ、誰に攫われた?」

 

『ミレニアムの生徒会長に……!』

 

「っ……!」

 

その言葉が全てを繋いだ。

このロボット騒動――すべては“俺をシャーレから離れさせるための囮”だった。セミナーやC&Cの手に負えないレベルの防御を持つロボットを放って俺を呼び出させ、その隙にアリスを手中に収めるのがヤツの作戦だった。

 

犯人はリオで確定だ。民間人を巻き込まないようご丁寧に誰もいない空きビルを攻撃して。ミレニアムを治める長として"合理的"に。

 

「黄泉先生!ロボットが現れた瞬間を見たという市民から情報が届きました!」

 

「ユウカ、ノア。悪いが、すぐにシャーレに戻ってくれ。」

 

「えっ、どうしてですか?」

 

「まさか、別の巨大ロボットが……!?」

 

「それは違う。だが説明している時間はない。勝手だが、失礼する。」

 

「ま、待ってください先生っ!」

 

その声を背に、俺は地を蹴った。

体がふわりと宙を舞い、商業ビルの屋上に着地。勢いそのままにビルからビルへと飛び移る。

理性よりも先に、身体がアリスのもとを求めていた。

 

 

1分も掛からずシャーレ居住区に到着。正面にある門を潜るとそこには――ネルがいた。

彼女は入り口のガラス窓に寄り掛かり、静かに目を瞑っていた。やがてその目は開かれ、俺をじっと見つめる。

 

「……やっと戻って来やがったか。」

 

「なぜ、ネルがここに?」

 

「まぁ……色々あったんだよ。とりあえずついて来い。」

 

自動ドアを抜けてエントランスホールに立った瞬間、どっしりと重い何かが肩に伸し掛かった。

ネルの後に続いて歩く。案内されたのは自習室だった。

 

「ハルト先生、黄泉センが戻ってきたぜ。」

 

そこにはハルトが1人静かに座っており、真剣な眼差しでタブレットを操作していた。先ほどまで肩に伸し掛かっていた重たい空気は一切感じられなかった。

 

こちらに気づいたハルトはタブレットを起き、立ち上がった。

 

"先生、お帰りなさい。"

 

「……ああ。」

 

その声、その立ち姿から負の感情が感じられない。アリスが去ったことを気にもとめていないような、そんな気さえした。

 

「……じゃ、あたしは他のメンバーに連絡してくる。」

 

ネルがそう言って背を向け、自習室を後にする。去り際にハルトは「ありがとう」と感謝の言葉を述べた。

 

そして彼は静かに立ち上がり、俺の前に立つ。

本当に同一人物なのかと疑いそうになるくらいに落ち着いている。それが返って不気味だった。

 

"……アリスさんの正体を、リオさんに教えていただきました。彼女はただのロボットではなく、キヴォトスを終焉に導く兵器なのだと。"

 

"そしてアリスさんは――私たちを傷つけないために自ら死ぬことを決意し、ここを去っていきました。"

 

「そうか。」

 

俺はそう返事をするしかなかった。

やはりあの真実は、アリスが背負うには重すぎたらしい。「暴走したとしても必ず俺が助ける」と伝えたが、ただの言葉では彼女の奥底にある恐怖までは拭えなかった。そしてそれは彼女にとって深く大きな傷になってしまった。

 

かと言って、俺があの時アリスに真実を伝えていたとしても同じことが起こっていただろう。

アリスが『ロボット』というのは共通の認識だが『兵器』となれば話は異なる。誰かを傷つけるために生まれたなど、勇者を目指す彼女が受け入れられるはずがない。

 

どれだけ真実を隠そうと、いつかは公になる。アリスが『兵器』だったこともいつかは彼女の耳に入るはずだった。それが今だっただけのこと。

 

「それで……どうするつもりだ?」

 

そう尋ねると同時に、左手で刀の柄に軽く触れた。

 

無駄に長く話す必要もない。俺の考えは既に定まっている。その何気ない行為が俺なりの意思表示であり、決意だった。

 

その思いを感じ取ったのか、ハルトは静かに口元を緩めた。

 

"先生と同じです。アリスさんを助けに行きます。"

 

その瞳には恐れも迷いもなかった。

目の前にいるのが過去のハルトだったらこうはならなかっただろう。アビドスと共に戦っていた頃から着実に成長しているのを感じた。

 

――アイツから見た俺も、似たようなものだったのかもしれない。そんなことを考えてしまい、思わず目を細めた。

 

「……すっかり見違えた。アリスを止められなかったことを悔やみ、立ち止まってしまうのかと思っていた。」

 

"悔しいかと問われたら当然悔しいですが……過去に指摘されたことを繰り返すわけにはいきませんから。"

 

あの頃とは違い、望み通りにいかなかったからという理由で自分が先生失格だと思い悩むハルトはもうどこにもいない。ここにいるのは過去に縛られず、先を見ることのできる立派な『先生』だ。

 

その時、ふと思い出した。

 

「話は変わるが……俺のコートはどうなった?」

 

アリスに預けていたコートの行方。もう2度と会えないという理由で返された可能性もあったが――

 

"まだアリスさんが着ています。先生と再会した時に、直接手渡すために。"

 

それを聞いた瞬間、胸の奥に小さな火が灯ったように温かさが広がった。ある意味コートの存在がアリスを守ったと言っても過言ではない。

するとハルトは少しだけ視線を伏せ、言いにくそうに口を開いた。

 

"実は――あのコートから声が聞こえたんです。"

 

「声……?」

 

"はい、大人の女性のような落ち着いた声でした。アリスさんからコートを受け取ろうとした時に『ダメだよ』って……。"

 

ハルトは、まだ何か言いたげに唇を結んでいた。

“声の正体について教えてほしい”――その気持ちは表情から嫌というほど伝わってくる。

 

実際『大人の女性』というヒントだけで答えはすぐに浮かんでいた。俺のコートと関連のある『大人の女性』は1人しかいない。

だが――それを今ここで明かすべき理由はない。

 

「恐らく、先代のシャーレ顧問だろう。」

 

"先代(・・)……?"

 

「詳しい話は全てが終わってからだ。まずはあいつらに全てを話す。」

 

言い切ると同時に踵を返し、自習室を後にする。

後ろから慌てながらもついてくるとハルトの足音が続いた。

 

アリスが助けを求めているのなら――俺たちも、あいつらも、立ち止まっている暇などないのだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

扉の前まで来ると、内側から微かな啜り泣きが聞こえた。

他には何の物音もしない。

アリスを守れなかったことが、彼女たちにとってどれほどの痛手になっているのかが一瞬で分かった。

 

俺は短く息を吐き、扉を軽くノックする。

 

「入るぞ。」

 

ガチャ、と扉を開けた瞬間、重い空気が肌に張りつくように覆いかぶさってきた。

6人全員がこちらを向く。赤くなった瞳を隠すように俯く者、表情を固めて立ち尽くす者――誰1人、普段の調子ではない。

 

俺は構わず部屋へと足を踏み入れた。

 

「そのままでいい。重要な話がある。」

 

俺がそう言うと、途切れ途切れに響いていた嗚咽も止まる。全員が必死に心を整えようとするのが分かった。

 

「今からお前たちに話す内容は受け入れがたいものかもしれない。それでも、伝えなければならない。」

 

「その話の内容は……?」

 

カヨコの声。俺はほんの数秒だけ目を閉じ、改めて覚悟を固めてから口を開いた。

 

「――アリスの正体についてだ。」

 

短い間が落ちた。

次の瞬間、俺とハルトを除く全員が息を呑む気配が、はっきりと伝わってきた。

 

 

 

俺は簡潔に、しかし避けては通れない真実を語った。

アリスが兵器である理由。暴走したアリスが齎す結末。機兵『Divi:Sion』との関係……。

言葉を紡ぐたびに、部屋の温度が一度ずつ下がっていくようだった。

 

説明を終えると同時に沈黙が落ちる。最初に声を上げたのはミドリだった。

 

「アリスちゃんは、兵器なんかじゃない……!」

 

それは誰かに向けられたものでもなく、自分に言い聞かせるためのものだった。

無論、アリスがキヴォトスを滅ぼすなど誰も信じていない。しかし可能性は確かに存在している。

 

やがてあまりにも重たい沈黙に耐えきれなかったのか、ムツキが手を挙げた。

 

「黄泉先生。先生が言ってた『オーパーツ』って結局なんなの?」

 

それはアリスが兵器である理由と共に伝えた言葉。大昔に作られたという説明はしたが、それだけで彼女たちが納得できるかと言われたら、できないだろう。

 

とは言え『無名の司祭』や『忘れられた神々』など、無駄に言葉を増やして話が脱線するのも面倒だ。だから、簡潔に答えた。

 

「一言で表すなら、この世界をひっくり返せるような力を持つ物たちのことだ。コイツのようにな。」

 

そう言って刀を見せると、コイツは鞘を薄紫に光らせ、小さな稲妻を走らせた。まるで堂々と胸を張るかのように。

喜ばしい話をしているわけじゃない。俺が軽く睨むと光は申し訳なさそうに静かに消えていった。

 

「今の回答で十分か?」

 

「うん。つまりアリスちゃんの暴走って、黄泉先生が無差別に街を襲うってことでしょ?」

 

「……あくまでもオーパーツはこの刀だが、その認識で構わない。」

 

その瞬間、室内の全員が息を詰めた。

俺がキヴォトスに牙を剥く姿を思い浮かべたのだろう。険しい表情が走る。

 

「……ミレニアムの会長さんがそんな選択をした理由も頷けるわね。」

 

アルが絞り出すように呟いた。その言葉に、ミドリとユズの拳がぎゅっと震えたのを俺は見逃さなかった。

 

アルもそれに気づいたのか、すぐに続けた。

 

「だけど、あの行動はさすがに許せない。アリスさんの“優しさ”に付け込んで、自分が消えればいいだなんて思わせるやり方は……絶対に。」

 

2人を思い詰めないための言葉かもしれないが、その声には確かな怒りがあった。

 

"アリスさんが暴走した時、まるで人が変わったように感じた。その理由を見つけられれば2度と暴走しなくなるかもしれない。"

 

「そうだよ!他の方法は必ずある!」

 

アルに続くようにハルトとミドリが声を上げた。

絶望の中で希望を見いだそうとするその気持ちは痛いほど分かる。だからこそ、言わなければならない。

 

『先生』としては是非とも避けたい発言だが、『キヴォトスを守る人間』として言う他なかった。

 

「それを見つけられなかった場合はどうする?」

 

俺の短い問いかけは、炎に水を浴びせるような静かな一撃だった。

 

“よ、黄泉先生……!せっかくいい感じにまとまり始めたのに……!“

 

「アリスを助けに行くことには賛成だ。しかし、『暴走』というリスクを野放しにすることは、キヴォトスを守る者として承知できない。」

 

“う……。“

 

「それは、たしかに……。」

 

ハルトとムツキが肩を落とす。先ほどまで温まりかけていた空気が、再び冷え込むのを感じた。

 

この勢いを止めるような真似はしたくない。だが、現実から目を逸らし、感情に身を任せるのはリスクでしかない。そのためにも伝えなければならなかった。

 

――その時だった。

 

「暴走とか関係ないよ。」

 

突然、背後から声が響いた。その声は聞き覚えがあり、とても懐かしく感じられた。

 

「あ……ああ……!」

 

ミドリの瞳からボロボロと涙が溢れ出る。絶望で翳った表情が、徐々に光を取り戻した。

 

その声の正体は――

 

「お姉ちゃん……!」

 

この3日間眠り続けていたはずのモモイが、しっかりと自分の足で立っていた。

 

彼女は胸に手を当て、強く、まっすぐに言う。

 

「話は全部聞いたよ。みんなでアリスを助けに行こう!」

 

その言葉に特別な理屈は無い。ただ仲間を取り戻しに行く――その一点だけをまっすぐに見据えた声だった。

だが、その単純明快な一言が、ミドリたちにとって“希望”となったのは間違いない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お姉ちゃぁぁぁぁん!!!」

 

「ただいま、ミドリ。」

 

ミドリは勢いよく姉へ飛び込み、その胸に顔を埋めて泣いた。

モモイもまた、その小さな身体をしっかりと抱きしめ返す。

ユズも近づき、そっと2人を抱き寄せ、喜びを分かち合った。

 

仲間の帰還に、休憩室の空気がいっきに温かくなる。

するとモモイの後ろから、ひょこっとグレーの髪が顔を出した。

 

「やっほーみんな!」

 

陽気な声が弾む。どういうわけか、アスナがいた。

ふと俺はハルトとネルのやり取りを思い出す。そういえばネルは「他のメンバーに連絡してくる」と言っていた。その狙いはおそらく――

 

「モモイちゃんたらずっとドアの前にいてさ!何してるんだろーって思ってたら、カッコよく登場したかったんだね!」

 

「ちょっ、アスナ先輩!それは言わない約束でしょ!」

 

「あっ、忘れてた!みんな今のは忘れて!」

 

「もう遅いよ!」

 

2人の漫才に、笑顔と笑い声が広がる。モモイがいるだけでここまで変わるものなのか。

ムードメーカーの大切さはいなくなって初めて気づくと言われるが、その通りだと実感した。

 

「またお会いしましたね、黄泉先生。」

 

アカネとカリンが姿を見せた。つい30分ほど前に会って以来だ。

 

「ミレニアムの方は片付いたのか?」

 

「追撃とかも無かったし、ユウカの指示で『防衛システムの不具合』として処理することになった。それでミレニアムの市民が納得するかは別だけど。」

 

「聞けば、ロボットのデータにも何の痕跡も残っていなかったらしくて。結局、誰がこのような事件を起こしたのか全く分からないとのことです。」

 

そして2人は「お手上げです」と言うように肩を竦めた。

しかし、セミナーの目すらも掻い潜るとは、流石はミレニアムのリーダー。データを扱う技術は頭1つ抜けているらしい。だが――

 

「……その犯人の目処は立っている。」

 

「「 えっ。」」

 

2人は目を見開いた。

 

「その犯人は、いったい――」

 

「この後お前たち全てを話す。ユウカとノアを含めてな。」

 

ミレニアムでユウカとノアに答えを言わなかったのは、あいつらを混乱させないためだった。

犯人がリオだと言えば、流れでアリスのことも世間に知られてしまう。急いでいたというのもあるが、アリスの居場所を守るためにもあの場で教えるわけにはいかなかった。

 

「黄泉先生、ちょっといい?」

 

横からモモイが近づいてきた。

立ったままの彼女が俺に手招きをするので、その意図を汲んでしゃがむと――

 

「このおバカさん!」

 

「!?」

 

「モ、モモイちゃん!?」

 

頭頂部に軽い手刀が落ちてきた。

痛みはほとんどない。だが、なぜ叩かれたのかが理解できず、思わず視線を上げる。

 

モモイは頬をふくらませ、きゅっと眉を寄せていた。

 

「方法とか責任とか、そんなのは今はどうでもいいの!誰かが犠牲になって終わるエンディングなんて、バッドエンドにも程があるんだから!」

 

指をぴしっと突きつけながら、モモイは続けた。

 

「もちろん、先生の立場からしたらリスクが残ることは無視できないと思うけど――私はこんな身勝手なお別れ認めないよ!ていうか私はさよならの言葉も聞いてないし!」

 

迷いのない真っすぐな瞳。覚悟を決めた、ハッキリした声。普段の騒いでいるモモイではなく、強い意志を纏ったモモイがそこにいた。

 

「……モモイの言う通りだな。アリスを救い出さない限り、対策を練ることもできない。」

 

アリスが暴走する条件は1つとは限らない。ましてや俺たちだけでその条件を見つけられるかも分からない。

 

導き出される答えは1つ――今は立ち止まる時ではない。

 

「気づかせてくれたこと、感謝する。」

 

「どーいたしまして!その代わり――チョップしたのは許してほしいな?」

 

「そこはちゃんと怖かったんだね。」

 

両手を合わせてお願いするモモイの様子を見てカヨコがツッコんだ。再び休憩室に笑い声が上がる。

どうやら力が弱かったのは俺に一撃入れるのが怖かったかららしい。

 

モモイの言葉に背中を押されたのか、休憩室の空気は先ほどまでの重さを完全に脱ぎ捨てていた。

涙の跡を拭ったミドリも、頷くたびにいつもの明るさを取り戻している。

 

俺は全員の表情を確認してからハルトに視線を向ける。ハルトもこちらに一度視線を向け、静かに口を開いた。

 

"それじゃあみんな、隣のシャーレに移動しよう。"

 

少しだけ息を吸い、続ける。

 

"ここからが本番だ。アリスさんを取り戻すための作戦会議を始めよう。"

 

「「「 はい!」」」

 

返事は力強く、迷いがなかった。

その声に押されるようにして、俺たちは休憩室を後にする。

 

そして全員でシャーレの事務室へ向かい――アリス救出作戦の本格的な話し合いが始まるのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『今の話、本当なんですか……?』

 

震えた声で問いかけるユウカのホログラムが、淡い光を揺らす。

それが誤報であってほしい――その気持ちは痛いほど理解できる。だが、もう起こってしまっている以上、否定のしようがなかった。

 

「ロボットの件は俺の推測だが……確定だろう。」

 

返すと同時に、ユウカとノアは深く俯いた。

同じセミナーで働き、トップとして信頼してきたリオが想像もしない行動に出た。受け入れられなくて当然だ。

 

『過去の会長の行動にはなかなか突発的なものもありましたが、まさかそんなことをするなんて……。』

 

『……ノア、今回のはそんな次元じゃないわ。』

 

静かに告げるユウカの声には、怒りと悔しさが混じっていた。

信じていたものが壊れる音が、そこにある。

 

『アリスちゃんの存在を消すなんて、いくらなんでも度が過ぎてる。どんなにアリスちゃんを危険視しているとしても、そんなの許されるはずがない。』

 

『……そうだね。相手が先輩だとしても、怒る時は怒らないと!』

 

ノアの表情にも覚悟が宿る。

 

二人は顔を見合わせ、小さく頷き合うと――真っ直ぐこちらを向き、深く頭を下げた。

 

『黄泉先生、私たちにもどうか協力させてください!』

 

「ああ。寧ろその言葉を待っていた。」

 

断る理由もない。ましてや同じセミナーの人間だからこそ、リオの動きを素早く追うことができるはずだ。

 

「早速だが、お前たちにはリオの居場所を特定してもらいたい。できるだけ早くに。」

 

『分かりました、すぐに取りかかります!』

 

最後に『失礼します』と告げ、2人の通信は途切れた。

ホログラムが消え、部屋に静寂が落ちる。

 

それから十数分後、ユウカから連絡が届いた。再びホログラムとして姿が映し出される。

だが、今回はユウカだけだった。

 

『リオ会長の居場所が分かりました!』

 

「えっ、もう見つかったの?」

 

アルが思わず声を上げる。

ユウカはわずかに眉を寄せ、苦い表情を浮かべた。

 

『それは……非常に分かりやすかったと言いますか……。』

 

その声音から、強い衝撃と落胆が伝わる。アリスの件以上に、目をそらしたくなる真実に触れたのだと分かった。

 

少しの沈黙のあと、ユウカは告げた。

 

『実は、リオ会長がセミナーの予算を横領しているのが発覚したんです。』

 

「「「 ……え?」」」

 

静まり返る事務室。誰一人として予想だにしていなかった真実が明かされた。

ユウカは続ける。

 

『セミナーのデータベースから削除された――意図的に隠蔽されたような痕跡があるデータを調べたところ……』

 

『予算の一部に不透明な流れを発見。それを追跡することに成功しました。』

 

「うわぁ……真っ黒だ。」

 

「完全にラインを超えてんじゃん……。」

 

あのムツキとアスナが完全に引いている。彼女だけでなくネルやユズ、あまり感情の変化を見せないハルカでさえも同じような表情をしていた。

 

――そして、ノアがここにいない理由が理解できた。

信じていた先輩が“犯罪者”として浮かび上がった現実を、受け止めきれなかったのだろう。

 

『……そして、辿り着いた場所がこちらになります。』

 

ユウカの言葉とともに、一枚の画像が映し出される。

無数のビル群。その中心に、見たこともない巨大なタワーが天を突くようにそびえていた。

 

"これは……都市?"

 

『コードネーム「エリドゥ(Eridu)」。リオ会長が秘密裏に建設していた――』

 

『「終焉に備えるための要塞都市」だそうです。』

 

 

つづく




リオはどうやってエリドゥを建造したんですかね。とても一度の横領ではできない規模の広さなんですが。
そして、横領は立派な犯罪です。ダメ絶対です。

話は変わりますが、原神運営はどうしたのでしょうか。条件有りとは言え、まさかキャラ強化をしてくるとは。しかも命ノ星座まで……。
この調子なら、璃月、稲妻、スメールキャラの強化も期待できそうですね。

     
    次回 第五話 勇者救出作戦
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