死を識る者、日常に佇む   作:ツカッチ

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先生のみなさん、開拓者のみなさん、こんにちは。

エアライダーのチェックナイトの曲いいですよね。
C!O!CO2!


勇者救出作戦 その1

"要塞都市、エリドゥ……。"

 

ハルトがユウカの言葉を復唱する。

その声は、事務室の静けさに吸い込まれていくように細く震えていた。

 

皆の視線がホログラムに向けられる中、アカネが口を開く。

 

「『終焉に備える』というのは、アリスちゃんが暴走することでしょうか?」

 

たしかにリオはアリスを『キヴォトスを終焉に導く兵器』と呼んでいた。だが、リオという人物を思い返せば――

 

「――あらゆる事象に対応するため、だろうな。」

 

『はい。アリスの存在はきっかけの一つにすぎません。あらゆる危険、あらゆる混乱……考えられるすべての終焉に備えるために、エリドゥは設計されたと思います。』

 

ユウカの声は震えていない。それだけに、事実の重さが際立った。

 

合理主義者で、決めた道は揺らがない。

アリスという要因がなくても、キヴォトスの未来を危険視する彼女なら――“終焉に備える都市” という発想に行き着いてもおかしくない。

 

『ハルト先生、エリドゥの座標を送ります。』

 

ユウカが端末を操作すると、ハルトが手にしているシッテムの箱から着信音が鳴った。

 

"ありがとう、ユウカさん。"

 

『自分が正しいと思ったことをしたまでです。』

 

そう言った後、ユウカは改めて背筋を伸ばし、表情を引き締める。 先ほどまで硬かった顔が別の緊張で固められる。

 

『立場上、私が踏み込めるのはここまでです。リオ会長を直接止められるのは皆さんしかいません。』

 

『お願いします。どうかリオ会長の独り歩きを止めて、アリスを連れ帰ってきてください!』

 

その瞬間、事務室の空気が静かに変わった。

誰も言葉を発していないのに、全員の覚悟が同じ方向を向いたのが分かった。

 

 

 

「よし!アリスがいる場所も分かったし、早速助けに行こう!」

 

ユウカとの通信が途切れると同時に、モモイが勢いよく椅子を蹴って立ち上がった。

その声には希望と焦りが綯い交ぜになっていて、今にも走り出しそうな勢いだ。

 

だが、その肩をアルが落ち着いた声で制した。

 

「待ってモモイさん。気持ちは分かるけど、まだ出発はできないわ。」

 

「え、なんで?」

 

「向こうは私たちが必ずアリスさんを助けに来るって読んでるはずよ。そしてその対策も、万全どころか“過剰”なくらい整えているはず。」

 

アルの冷静な分析に続くように、カリンが真剣な表情で言葉を継ぐ。

 

「アルの言う通りだ。エリドゥにどんな防衛システムが仕込まれているか、どんな布陣が待っているか……誰にも予測できない。できることなら、あちらに気づかれず、中枢に近づきたい。」

 

「た、たしかに……。」

 

エリドゥの設計は謎に包まれており、細かく把握しているのはリオとトキのみ。

肩を落とすモモイ。だが、曖昧な情報のまま突っ込めるほど相手は甘くない。

 

アスナが椅子にもたれ、頬杖をついて呟く。

 

「でも……リオ会長が造った要塞だし、監視なんかガチガチに決まってるよ。普通に行ったら門前払いどころか、門の前で蜂の巣にされそうじゃない?」

 

彼女の言葉は冗談めいていたが、現実味は十分すぎるほどあった。

 

――そのとき。

 

俺のスマホが震え、画面が光った。

応答すると、青い光が宙で形を結ぶ。

 

『私たちをお呼びかな?』

 

映し出されたのは、見慣れた2人の少女。

ミドリの表情がぱっと明るくなった。

 

「ウタハ先輩! それに、ハレ先輩!」

 

『詳しい話は知らないけど、アリスがピンチだってことは黄泉先生に教えてもらったよ。』

 

ハレが涼しい声で話すハレに、モモイは身を乗り出して尋ねた。

 

「それって――また私たちと一緒に戦ってくれるってこと!?」

 

『友人が困っているんだ。あの時のように、エンジニア部は喜んで手を貸すよ。』

 

『私たちヴェリタスは別の件でリオ会長に用があるからね。あと、困ってる友達に手を貸すのは私たちも同じ。』

 

2人は胸を張って答える。その一言が落ちた瞬間、空気が変わった。

アスナが口元を緩め、ムツキは「心強い〜」と息を漏らし、ユズもほんのわずかに肩の力を抜いた。

 

仲間が加わっていくたび、部屋の空気は“不安”から “覚悟” へと移り変わっていく。

アリス救出作戦――本格始動の音が、確かに鳴った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『エリドゥへの潜入方法だけど――ハッキリ言って、ゼロに等しいだろうね。』

 

「「ええ!?」」

 

ウタハは説明を始めるなり、話を締めるようなことを言い出した。

 

『リオ会長が自ら造った「要塞都市」なんだ。無策で近づけば間違いなくこっちがやられる。』

 

まさにアスナが先ほど話した通りのことだ。バカ正直に正面から攻めるのは自ら負けに行くようなもの。

しかしウタハはふっと笑い、話を続けた。

 

『でも、それはあくまで「普通に接近した場合」の話。私たちはエリドゥへの別ルートを知っているんだ。』

 

その言葉にこの場の全員が目を見開く。

俺も話の根幹が見えていなかった。

 

『要塞建設のための「人手」はリオ会長が造ったドローンで足りるかもしれないけど、「資材」となると話は変わってくる。』

 

その言葉で何となくウタハの作戦を理解する。そして、真偽を確かめるために尋ねた。

 

「……資材を輸送する無人列車か?」

 

『おお。さすがだね、黄泉先生。』

 

どうやら正解だったらしい。

俺の推測にウタハは満足そうに頷いた。

 

「なるほど!じゃあエリドゥにつながる路線さえ見つければ……!」

 

『ああ、エリドゥに行けるよ。その辺りは私たちエンジニア部に任せてくれ。』

 

「で、でも、どうやって運転するんですか?」

 

「それはもちろん――」

 

ムツキがそう言うと、なぜか俺に視線を向けてきた。

まさか俺に列車を運転しろと言っているのか……?

 

「……いや、俺にも不可能なことはある。」

 

『……そのために私たちヴェリタスがいるんだけどなぁ。』

 

「あ、ごめん!」

 

慌ててムツキが謝ると、ハレは小さく笑った。

 

『別に気にしてないよ。でも任せて。列車の制御くらい私たちにとっては造作もないことだからね。』

 

部屋の雰囲気がぐっと明るくなる。

エリドゥ潜入という大きな壁に、確かな突破口が開いたのだった。

 

 

 

"よし。それじゃあ、エリドゥに潜入した後の作戦を――"

 

ハルトが次の議題に移ろうとした時だった。

 

「なぁ、1ついいか?」

 

それまで黙って腕を組んでいたネルが、ゆっくり手を挙げた。

意外な人物の発言にハルトが目を瞬かせる。

 

"どうしたの?"

 

「即席で作り上げた作戦なんだが――聞いてもらいたい。」 

 

"うん。もちろんいいよ。"

 

ハルトは興味深げに頷き、他のメンバーも自然とネルに視線を向ける。

室内が静まり返ったのを確認し、ネルは口角をわずかに上げた。

 

「いいか? このゲームの勝利条件は『あのチビを奪い返す』ことだけの簡単な話だ。そこであたしは――」

 

「陽動作戦を提案するぜ。」

 

ほんの一瞬、空気が震えたのを感じた。

ネルは続ける。

 

「主な役割は3つ。最初にエリドゥに乗り込み、トキの相手をする班。チビを救出するためにタワーに乗り込む班。そして、チビ救出班を無傷で送り届ける班だ。」

 

「……ごめん、トキって誰?」

 

ネルの話が一旦終わったタイミングでモモイが静かに手を挙げた。言われてみれば、こいつは未だにトキの存在を知らない。

 

その問いに、ハルトが被せて尋ねる。

 

"たしか、リオと一緒にアリスさんの部屋にいたメイド服の子だよね?"

 

「はい。C&Cの新人で、普段はリオ会長のボディーガードを務めています。」

 

アカネの答えにモモイは「ふぅん」と頷く。

すると今度はカヨコが手を挙げた。

 

「ちなみに、誰がどの役割を担うとかって考えてるの?」

 

その問いにネルは「ああ」と軽く返した。

 

「まず、最初にエリドゥに突っ込むのは――黄泉センだな。」

 

何となく予想はしていたがな。まぁ何も問題はない。

ふと見ると、C&Cのメンバーたちが少し驚いた目でネルを見ていた。

やがてアスナが口を開く。

 

「意外だね〜。リーダーなら『あたしがトキと戦る』って言うのかと思ってた。」

 

「キヴォトス最強を使わないない手はねぇだろ。なぁ黄泉セン。」

 

ネルはニヤリと笑った。

たしかにアスナが言うように、彼女がトキと戦うつもりがないのは少し意外だったが、それは俺を信頼してくれていることの裏返しだ。

 

ならば、応えてやる他あるまい。

 

「任せろ。」

 

俺は、そう短く答えた。

それに呼応するかのようにネルも小さく頷く。

 

「他は言わなくても分かるだろ。」

 

急に説明を丸投げするのはネルらしいと言えばらしい。

まぁ、大体のメンバーは分かる。アリス救出のためにタワーに突撃するのはゲーム開発部とハルト。そこまで援護を便利屋とC&Cが請け負うということだろう。

 

なかなかいい作戦だと思う。問題は、指揮を執るハルトがどう見るかだが……

 

「ハルト、お前はどう思う?」

 

"とても良い案だと思います。後は細かい部分をこちらで調整すれば十分実現できます。"

 

「よし、決まりだな。」

 

ハルトからのお墨付きを得て得意気なネル。普段は“突撃脳筋”に見える彼女だが、本気を出せばこういう作戦を立てられるのがネルの強さだ。

 

しかしやはり、モモイたちは少し唖然としていた。

 

「なんか、ネル先輩すごく真面目だったね。」

 

「はぁ? あたしはいつも真面目だ。」

 

「いや、何て言うか……。」

 

言葉に詰まったモモイの後を、カリンがさらりと補った。

 

「……もしかしてリーダー、アリスのことが心ぱ「なわけねぇだろッ!?」

 

カリンの言葉に被せながら、ネルは勢いよく椅子から立ち上がり否定する。しかし彼女たちが口だけの否定を簡単に受け取ることは無い。

 

「アリスちゃんに残された時間はほとんどないもんね。リーダーが焦る気持ちもよーく分かるよ。」

 

「だから違うって言ってんだろ! てめぇらから殺すぞ!!」

 

「やべっ、みんな逃げろー!」

 

そうして事務室で鬼ごっこが始まった。

広い一室とは言え、無駄に大きい声が反響してさらに大きくなる。

 

「……アリスが危機的状況にあると言うのに、呑気に騒ぎやがって。」

 

小さくぼやき、制止しようと椅子を引いた時――

 

"ですが、なんだか結束力が高くなった気がします。"

 

ハルトの柔らかな声に、顔を上げる。

そこには、ほんの少し前よりずっと強く、明るい笑顔があった。

 

「……暗いよりは幾分かマシか。」

 

深くため息をつく。

騒ぎ声を嫌う俺だが、今回だけは特別に目を瞑ることにした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれからどれほどの時間が経ったのでしょう。視界を占めるのは無機質なコンクリートの壁と天井、そして冷たい鉄格子。

――あの日、目を覚ましてから何一つ変わっていません。

 

アリスが暴走した瞬間、私は全てを悟りました。

この後リオがどんな行動に出るのか。そして、その結果私たちがどんな対立を迎えるのかも。

 

だからあの日、私は彼に尋ねたのです。せめて――彼だけはアリスの味方であってほしい、と。

そしてその願いはきっと届いた。そう信じています。

 

リオに捕らわれたこと自体は気にしていません。意見が食い違った時点で、必然的にこうなることは分かっていましたから。

あなたは目的のためなら手段を選ばない。それは昔から誰よりも知っていたことです。

でも――今回は、目を背けたくなるほど苦しいのです。

 

なぜなら、あなたは今――1人の尊い命を切り捨てようとしているのですから。

 

『私を非難できるのは、このミレニアムで……いえ、このキヴォトスで、貴女だけでしょうね。』

 

……違います。私は非難しているのではありません。

あなたの“道徳心”に問いかけているのです。

 

アリスはミレニアムの生徒として迎えられました。それは紛れもない事実です。彼女と交流した生徒もたくさんいる。その生徒たちに、どのように説明するつもりですか?

「未来を守るために」――そのために今を捨てるのですか?

 

『誰一人、私のことを理解してくれないのね。……ただの一人でさえも。』

 

そんなの当たり前です。あなたは一度たりとも誰かを理解しようとしてこなかった。だから、誰もあなたについていかない。

 

あなたは私だけでなく――ユウカも、ノアも、ネルも、そして黄泉先生にも心を開こうとはしなかった。当然の結果ではありませんか?

 

もし誰かに認めてほしいのなら、その硬い殻を破り、自ら歩み寄ってください。誰かが迎えに来てくれるなどという甘い幻想を捨ててください。

 

それが怖いのなら――

 

何のために、私がいるんですか?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あの子はいつもそう。

私のことを「陰気」だとか「浄化槽に浮かぶ腐った水」だとか罵ってくる。本当に遠慮のえの字もない。

久しぶりの再会だったはずなのに、開口一番が罵りだなんて。そのワードセンスには、呆れながらも感心してしまう。

 

だからこそ思っていた。

あなたなら、アリスという“危険性”を理解してくれると。

私の手を取って「それが必要なら手伝う」と言ってくれると。

 

でも、違った。あなたはアリスを「兵器」ではなく「かわいい後輩」なんて呼んだ。

その時の私は本気で耳を疑った。

 

私を認めようとしないあなたなら、私の考えを理解してくれると信じていた。

なのに、あなたは――

 

『リオ、あなたがやっていることは本当に忌むべき事です。』

 

どうして、こうなるのかしら。

これらは全てキヴォトスを守るために必要なこと。アリスに限らず世界を滅ぼす可能性はいくらでもある。もしそれが“発生してから”では遅いの。

だからこそ私は未来に起こる脅威を防ぎ、迎撃するための要塞「エリドゥ」を造った。

 

黄泉先生がいるから何? どんなにあの人が強いとはいえ、全ての命を守ることは不可能。そしてその責任を彼に押し付けることもできない。

 

だったら最初から危険を排除すればいい。この考えに至るのはごく当たり前のことではないかしら?

 

『誰もあなたを理解してくれないことを知っても尚、その道を貫くのですか?』

 

……ええ。ええ、当然よ。

理解されるために選んだ道ではないもの。

 

例え誰もついてこなくても。

例え世界が私を悪と断じても。

例えあなたが背を向けたとしても――

 

私は、この選択が“正しかった”と言い続ける。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ここが、エリドゥ……。」

 

地上へ続く階段を上りきった瞬間、熱のない風が頬を撫でた。

見上げれば、灰色の空に突き刺さる人工の街並み。キヴォトス中枢のビル群にも引けを取らない、冷ややかな無機質の塔が整然と立ち並んでいる。

 

その周囲を取り囲むのは巨大な金属壁。100メートルを優に超えるそれは、まるで大地に打ち込まれた“杭”。

都市を脅威から守るための防護壁のようであり、都市そのものを閉じ込める牢獄のようでもあった。

 

そして、中央にそびえる主塔。

アリスが収容されているとされるその塔は、こちらを見下すように迷いなく天へ突き立っている。

 

「――始めよう。」

 

階段の最後の一段を踏みしめた、その時だった。

 

『お待ちしておりました、黄泉先生。』

 

空気が震え、薄紫の光が目の前に形を成す。

その正体はトキ――だが、影の落ちない身体はホログラムだ。

 

「映像とは言え、そちらから顔を出すとはな。」

 

『お客様をお迎えするのはメイドの務めですので。』

 

丁寧に、教本のような所作で一礼する。

しかし次の瞬間、周囲の温度だけが一段下がった。

 

「して、何の用だ?」

 

『あなたたちはエリドゥに入ることを許可されていません。どうか速やかにお帰りください。』

 

「……メイドの務めはどこへ行った?」

 

声色は変わらない。むしろ美しいほど整った抑揚のまま、彼女は淡々と告げた。

 

『他の方々に迷惑をかける無礼なお客様を帰すのもまた、メイドの務めです。』

 

ホログラム越しでも、瞳の奥に揺らぎは一切ない。

彼女は“命令”だけを見ている。

 

俺はゆっくりと、刀の柄へ指を添えた。

 

『ここエリドゥはリオ会長の領域。会長の計算によると、あなたたちの勝率は1%にも届いていません。』

 

「……0.1%でも勝率があるなら何も問題ない。」

 

刀を鞘ごと抜き、静かに構える。もはや言葉を交わす余地は無い。

 

「これ以上の話し合いは無意味だ。来るなら来い。」

 

切先をホログラムの中心――トキの喉へ向けた。

 

彼女はごく小さく息を吐いた。

それは覚悟を固める者特有のわずかな呼吸。

 

『……仕方ありませんね。』

 

ホログラムが崩れ、光が散る。

同時に低い重低音が空気を震わせた。

 

空気を切り裂くドローンの羽音。

地上走行型機械兵の駆動音。

次々と影が形を成し、無数のカメラが空と地上から俺を包囲した。

照準の赤点が霧のように増えていく。

 

そして――

 

トキが“本物の身体”で姿を現す。

メイド服の裾を揺らし、堂々と立つその姿には一切の怯えがない。

 

「黄泉先生。ここから先は、私たちが全力で足止めさせていただきます。」

 

瞬間、全ての銃口が火を噴いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

列車は静かにトンネルを走る。地下鉄ということもあり外の景色が見えるわけじゃないけど、返ってそれが適度な緊張感を保っていた。

 

現在私たちは黄泉先生と別れ、次の駅へと向かっていた。彼にエールを送るくらいに賑わっていた車内は静寂に包まれていた。

それは不安から生じるものではなく、各々が決意するための静寂。この戦いに必ず勝利し、アリスさんを連れ帰るという決意だ。

と、その時――

 

『みんな、そろそろ着くよ。ここはもうエリドゥの内部だから注意してね。』

 

列車をハッキングし、運転していたハレさんがアナウンスした。どうやら私たちが降りるエリドゥの地下駅が見えてきたらしい。

列車は少しずつ減速を始め、やがて暗い駅に到着した。

車両のドアが開き、私たちは地下駅に降り立つ。無音に等しいその駅はどこが不気味だ。

 

『この先を行けば地上に出られる。マキとコタマがモニタリングしてるけど、十分注意して進んでね。』

 

「「「 了解!」」」

 

そうして出口に向かおうとした、その時――

 

 

「な、何あれ!?」

 

 

モモイさんの甲高い声が駅内に響いた。

全員が指さす方向へ視線を向けると、1輪のタイヤの上にのっぺりとした頭を取り付けられたロボットがいた。

みんなは即座に銃を構えるが、ロボットは動く気配がない。

 

ウタハさんがゆっくり近づき、よしよしと頭を撫でた。まるで動物を可愛がるかのように。

 

「なかなか可愛い子だね。迷子なのかな?」

 

「いや……こいつはAMASだ。」

 

「AMAS?」

 

ネルさんの言葉にミドリさんが首を傾げた。

かく言う私もAMASは知らない。彼女たちの会話にそっと耳を傾けた。

 

「リオ会長が造ったロボット兵たちのことです。」

 

「恐らくここを監視していたんだな。だが……」

 

「動きそうにないね。」

 

向こうにも似たようなロボットがあるが、それらも動く気配は見られない。ただその場で沈黙している。

すると、再びハレさんから通信が入った。

 

『既に周りのAMASたちは制圧が完了してるよ。ついでに言えば、周辺のネットワークも私たちがハッキングしてる。』

 

どうやら私たちのことがバレないように、先手を打ってくれていたらしい。

 

「ハレ先輩、そういうのは早く言ってよ〜。」

 

『ごめん。でも、他のAMASたちは変わらず動いてるから気を付けて。』

 

ハレさんたちヴェリタスに感謝の意を贈りつつ、地上へと急ぐ。

すると――遠くから銃を連射する音や爆発音が聞こえてきた。かなりの数がいるのか、立て続けに爆発している。

 

「……黄泉先生。」

 

ユズさんが心配そうに銃声、爆発が起きている方を見つめる。恐らく今の彼はトキさんに加え、とんでもない数のロボット兵を引きつけている。

 

私たちも止まっている暇はない。

 

"黄泉先生なら負けないよ。今のうちにタワーに向かおう!"

 

「は、はいっ!」

 

彼女の背中を押し、再び走り始める。今のところまだ敵の攻撃は無い。陽動作戦が上手く効いているのか……?

そう考えた時だった。

 

『待ってください。何か変です。』

 

コタマさんが言った。私は何も分からなかったが、やがてそれは顕著に現れた。

 

『あ、あれ? な……か通し……が……』

 

「は、ハレ先輩!?」

 

通信に砂嵐が混ざり始め、やがてヴェリタスのみんなの声が聞こえなくなった。

代わって聞こえてきたのは、全く別の声。

 

『ヴェリタス……貴女たちだったのね。流石はヒマリの後輩なだけあるわ。』

 

"その声っ……!"

 

聞こえてきたのはあの冷たい声。

アリスさんを連れ去った、ミレニアムの会長……!

 

"調月リオ……!"

 

『本当にここに来るなんてね。……ハルト先生。』

 

 

つづく




ヒマリとリオの関係、めちゃくちゃ好きです。
今回書いた独白の中には個人的な解釈もありますが、願わくば、互いを想い合っててほしい。

話は変わりますが、ゼンゼロのダイアリン引けました(30連)。しかし、編成とか使い方は何も知りません。

   次回 第六話 勇者救出作戦 その2
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