死を識る者、日常に佇む   作:ツカッチ

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開拓者のみなさん、先生のみなさん、こんにちは。

ついに12月。
何とかしてクリスマスまでに完結させたい。


勇者救出作戦 その2

『本当にここに来るなんてね。……ハルト先生。』

 

ヴェリタスとの通信が唐突に掻き消え、代わりに響くのはあの冷たい声。

“本当に”と言いながら、その声音には驚きは一片もなかった。最初からすべてを見通していたかのような――そんな余裕。

 

次の瞬間、目の前の空間に青白い粒子が集まり始める。

粒子は線となり、輪郭となり、やがてひとりの少女の姿を結んだ。

 

調月リオ。

ホログラム越しでも刺すような、感情の起伏を封じ込めた目。

 

私はその視線を真正面から受け止めた。

 

"……リオ、君を止めに来たよ。"

 

『そう。』

 

投げ捨てられたような一言。

思いを伝えようとするこちらとは対照的に、彼女はまるで“感情そのもの”を拒絶しているようだった。

 

リオは一度、周囲の地形を確かめるように視線を巡らせ――再び私を見据えた。

 

『アリスの正体についてはあの時に教えたはずだけど、納得してくれなかったのね。』

 

"いや……君の不安は理解できたよ。私たちもキヴォトスが滅ぶ未来は望んでない。"

 

『……それは良かった。』

 

真偽はさておき、リオは一応その言葉を受け取ったように見えた。

 

実際、リオのアリスに対する不安はここにいる全員が理解している。彼女の行動は全て、キヴォトスを守るためにあるのだと。

 

だからこそ――彼女は一歩も退かない。

 

『では改めて聞くけど、なぜここに来たの?』

 

動機を問われたが、答えすでに胸の中にある。

私は彼女の目を見て伝えた。

 

"――1人で突き進む君を止めて、アリスさんを連れ戻すためだよ。"

 

その言葉が触れた途端、リオの眉が僅かに動いた。

敵意とも、失望ともつかない冷たい視線がこちらを射抜く。

 

"君の考えは理解した。でも、その行動には賛同できない。絶対に。"

 

『……だから貴方は先生失格なのよ。』

 

まるで呆れたように、見下すように吐き捨てる声。

本気でそう思っているからこその温度だった。

 

『アリスを私から取り返したところで、暴走の件はどうするの? 自分たちのためだけにキヴォトスを捨てるの?』

 

"それは違うよ、リオ。"

 

"私たちのためだけじゃない。これは君のためでもあるんだ。"

 

その瞬間、リオのまなざしがわずかに揺れた。

理解できない――いや、理解したくない、そんな拒否の色。

 

『……私のため?』

 

"そう。このままだと君はアリスさんを『処分』するところまで進んでしまう。そんな未来を先生である私が黙って見過ごせるわけがない。"

 

"もちろん予算横領の件は擁護できない。けれど、君がその先の一線まで越えてしまうのはもっと見たくない。今の君が進もうとしている道は――君自身が傷つく道だからだ。"

 

"私たちもアリスさんの未来を一緒に考える。君に「協力してほしい」んじゃない。君が1人で背負って壊れていくのを、黙って見ていられないだけだ。"

 

その言葉にリオの肩が小さく震えた。

ほんの一瞬、言葉を飲み込むように口元が動く。

 

――届いた。

わずかでも、彼女に届いている。

 

そう思ったのも束の間……。

 

リオは『はぁ……』と深く息を吐き、胸の奥にあった何かを押し殺すように、完全に表情を消した。

 

『……言いたいことはそれだけかしら?』

 

声は先ほどより低く、硬く、冷たい。

迷いではなく、決意の温度。

 

『ゲーム開発部、C&C、便利屋68、そして黄泉先生。これでもかと言うくらいの戦力が揃っているけど――』

 

一度視線を下げ、端末に触れながら告げる。

 

『ここは私の敷居。貴方達の好きにはさせない。』

 

"……!"

 

"戦力"という言葉が出たところで、話し合いによる解決は不可能だと悟った。

そして、端末に静かに指が落ちる。

 

 

『アバンギャルド君、両機、発進。』

 

 

 

ウゥゥゥゥゥ―――――――――

 

 

端末をタップした瞬間、低いサイレンが街の奥から湧き上がる。

次の瞬間――足元が揺れた。

 

「ビルが、沈んでる……!?」

 

その光景を見て、一瞬思考が止まった。

2棟のビルが地面ごと滑り台のように沈下していく。

続いて、沈んだ跡地から別の二棟が押し上がるようにせり上がった。

まるで巨大な歯車が街そのものを入れ替えているかのようだった。

 

それはビルというより……巨大な格納庫。

鉄のシャッターが震えながら開いた瞬間――

 

空気が、揺れた。

 

5mはある2機のロボットが姿を現した。

それらはゆっくりと顔を上げ、赤い光を放つ。

 

四本の腕には、巨大マシンガン、ロケットランチャー、アサルトライフル、そして分厚い盾。

下半身は戦車のようなキャタピラーになっている。

ただ立っているだけなのに、エンジン音が鼓膜を震わせた。

 

そして――妙に無機質で安っぽい顔。

 

「な、何あのダサいロボット!?」

 

『見た目は重要じゃないわ。』

 

モモイさんのツッコミに、リオはすかさず返した。

反応が早すぎて、逆に本人も外見を少し気にしているのでは……と思ってしまう。

 

「あいつ、ミレニアムで暴れてたロボットに似てない?」

 

「ちょっと小さいけど、確かに似てるね。」

 

「へぇ、コイツが……。」

 

アスナさん、カリンさん、ネルさんが硬い声で言う。

その顔には、軽口とは裏腹に明らかな緊張が滲んでいた。

表情が一瞬で曇ったのを見て、背中が冷える。

 

ミレニアムで暴れたということは、黄泉先生が対峙していた相手。

ならば、黄泉先生が倒した前例がある……はずなのに。

 

「ということは……強度もアレと同じくらいということでは?」

 

アカネさんの一言に喉が鳴る。もう嫌な予感しかしなかった。

 

その疑問にリオが淡々と告げる。

 

『その通りよ。それと、4つの武器も本物だから。』

 

「うわ、面倒くさい!」

 

アスナさんが露骨に顔をしかめる。その言い方に笑いが混じっていない。

どうやら現場で本気で苦しめられたらしい。

 

――まさか、黄泉先生も苦戦していたのか……?

 

その考えが過った瞬間、背筋がぞくりとした。

そんなはずは……と思いたかった。

 

「ちょっと!4人だけで話してないで詳しく教えてよ!」

 

「よーするに、厄介な敵ってこと!」

 

「先生、指示をお願い!」

 

"や、やるしかない……!"

 

こちらの人数は多い。しかし、敵はC&Cの3人が嫌がるほどのロボット兵器。そして2機同時に現れたことで、完全に優位を取られている。

 

私たちは本当に、このロボットに勝てるのだろうか?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

弾丸の軌跡が空気を裂くたび、光の残像が走った。

――いや、あれは残像じゃない。黄泉先生が“速すぎてそう見えているだけ”だ。

 

展開したドローン群のカメラが一斉に警告を発する。

《対象ロスト》《追尾不能》《推奨:回避行動》

機械が見失うほどの速度。

高性能AIですら理解を諦める軌跡。

 

視界の端を黒い影が横切る。

次の瞬間、ドローンが2機――いや3機、時間差すらなく真っ二つに裂けて落ちた。

 

(……“あの時”より、圧倒的に速い。)

 

思い出すのはミレニアム襲撃時の動き。

あの時先生は『3割の力しか使っていない』と言っていた。たった3割の力で残像を残すほどの速度を出せていたのだ。

 

その時点で既に、キヴォトスの人間が到達できる限界を軽々超えている。

ネル先輩のように目で追える生徒はいたが――残像を残すレベルとなれば次元が違う。

 

そして、今の黄泉先生は――

ビルの壁を駆け上がり、空を支配するドローンを次々に斬り落としている。

刀が振るわれるたび、薄紫の軌跡が雷光のように走った。まるで『雲間放電』のように。

 

「……時間稼ぎにしては短すぎますね。」

 

思わず零れた独り言をかき消すように、端末が警報を鳴らした。

追加投入したはずの100を超えるドローン群がまたも全滅。

それに掛かった時間は20秒。

 

黄泉先生は軽く地面へ降り立ち、迷うことなくAMASへ向かう。

そしてやはり先生の速度には追いつけず、銃撃ではなく斬撃の音が重なる。無情にも次々と金属が砕けていった。

 

このまま全て斬り終えたら――次は私だ。

 

再び端末に視線を落とす。

"例の装置"が作動するまで、残り2分27秒。

 

――長い。長すぎる。

 

勢いに乗った黄泉先生を、あと2分以上もここに釘づけにしなければならない。

それも、私と後ろにいるAMASたちで。

 

「さすがに疲れたな。」

 

ダウト。

今のあなたは呼吸を乱しておらず、汗1つかいていない。そんな人間が「疲れた」と言うはずがない。

……せめて呼吸はもう少し上がっていてほしかった。

 

「次はお前が来るのか?」

 

鞘の先端がこちらに向く。

その問いの答えは肯定だ。しかし、どうやって攻めればいい?

 

追えない。

自分の目でも、AIによる補助でも。

あの速度を捉える手段なんて、今の私にはない。

 

冷や汗が頬を伝った、その時――

 

『ごめんなさい、トキ。ドローン部隊の追加はもうできない。』

 

『あと2分。厳しいかもしれないけど、貴女ならやり遂げてくれると信じてるわ。』

 

リオ様からの通信。

その声音が、私の胸の奥に確かな熱を灯した。

 

あの方は私を信じてくれている。

それなら、私はその思いに応えなければ。

 

「イエス、マム。必ず時間を稼いでみせます。」

 

四の五の言っている余裕はない。

ドローンの攻撃と合わせ、先生の死角を突く。

どんな形でも構わない。目的はただ一つ。

 

――装置が展開するまでの時間を稼ぐこと。

 

「まだ終わりではありません。限界まで足掻いてみせます。」

 

「……ならば、来い。」

 

私は大腿に装着していたホルスターから拳銃を手に取った。

黄泉先生も刀を軽く傾け、静かに構え直す。

 

タイムリミットまで残り2分。

どんな手を使ってでも、時間を稼いでみせる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

白い拳銃を構えたトキが、わずかに姿勢を低くする。

迷いはない。むしろ覚悟を固めた者特有の静けさが彼女の周囲にあった。

そして――

 

 

ダンッ!

 

 

「!」

 

トキがこちらへ向かって一気に駆け出した。

同時にトリガーを引き、弾丸が真っ直ぐ俺の眉間を狙ってくる。

 

俺は冷静に刃を振り、迫る弾丸を弾き落とした。

 

(ここに来て無策の特攻か?)

 

そう思った瞬間——

 

 

ダダダダダッ!

 

 

後方の機械兵が一斉に動き出し、銃口をこちらへ向けて火を噴いた。

 

「トキ、まさか――」

 

そんな言葉が口に出た瞬間、トキはニヤリと笑った。

 

まさか、自らも被弾しながら俺を潰すつもりか?

接近戦を仕掛けるトキだが、機械兵からの射撃は止まらない。

先に倒れるのはどちらか――あまりにも無謀な作戦だと思った。

 

だが、この考えがトキの手の内だということを俺は思い知ることになる。

 

飛来する弾丸は1つも彼女に当たらなかった。一方で俺の位置にはしっかりと弾丸が飛んで来る。

――いったい何が起きている? なぜトキは背を向けているのに"弾丸が来る場所が分かる"?

 

トキの蹴りと銃撃、機械兵から放たれる弾丸を避けながら考える。そして、1つの答えに辿り着いた。

 

「……お前の動きをロボットたちと共有しているのか。」

 

トキからの返答はない。

彼女の目はただ一点に俺を見据え、その場の空気すら切り裂くような集中をしていた。

 

完全に理解した。

トキは自分の次の動きの“予測ベクトル”を機械兵へ送り続けているのだ。

 

つまり、

トキは"今の自分の動き"を維持しながら、

"コンマ数秒先の自分の動き"を脳内でシミュレートし、

その情報をリアルタイムでロボットへ共有、

各ロボットのシステムAIに最適な射角を計算させ続けている。

加えて、弾丸がどのように飛んでくるのかをシミュレートの中に組み込んでいる。

 

正確すぎる距離感。

シミュレーションと寸分の狂いがない動き。

そして、それを“実戦で”やってのける胆力。

 

……ハッキリ言って頭がおかしい。

戦闘に関してだけは、天才なんて言葉ですら生ぬるい。

 

(……本当に1年生なのか、こいつ。)

 

そんな疑問すら自然に浮かんでくる。

どんな鍛錬を積めばそんな動きが可能になるのか――いっそ聞いてみたいほどだ。

 

再び、トキの左足が弧を描き俺の頭部へ迫る。

俺は受け止めず、左へ回避。そこへ彼女の動きに合わせて放たれた弾丸が、わずかな隙間を縫うように飛び込んできた。

冷静にバックステップでかわす。

 

着地と同時に顔を前へ向ける。だが――そこにトキの姿は無かった。

上か? 左右か?いや、違う!

 

「下か!」

 

気づいた瞬間にはもう遅い。

俺の懐には、歯を食いしばり、渾身の拳を固めたトキが滑り込んでいた。

 

「うううううッ!」

 

振り抜かれる拳。

だが、その拳が俺の腹に届く直前――

 

ガシィッ!

 

「……!」

 

俺は反射的に腕を掴んでいた。

紙一重。あと0.2秒遅ければ、確実に致命打になっていた。

 

掴んだ拳からは信じられないほどの力が伝わってくる。

やはり1年生の細腕とは思えない。むしろ戦士のそれだ。

 

「……惜しかったな。」

 

そう告げると、トキの眉がわずかに動いた。

驚きか、悔しさか――あるいはどちらもか。

 

だが、掴まれたままでも彼女は諦めない。

首元へ膝蹴りを叩き込まんと体をひねる。

 

その膝もすれすれで回避し、俺はトキの腕を放す。

わずかに距離が空いた。

だが、トキはすぐには追撃してこなかった。

 

彼女自身、今の“ギリギリの攻防”に呼吸を整えているようだった。

俺は彼女にある質問を投げる。

 

「……なぜ、拳銃を使わなかった?」

 

あのタイミング、俺は反応できていなかった。拳銃であれば間違いなく俺を戦闘不能にできただろう。

トキは一度端末へ視線を落とし、白い拳銃を丁寧にホルスターへ納めた。

 

「先生を撃つなんて、私にはできません。」

 

変なところで生徒らしいことを言う。

敵対している状況で、甘いことを言っている暇は無いと思うのだが。

 

「お前たちからすれば、何としても俺を戦闘不能にしたいのではないのか?」

 

トキは首を横に振る。そして淡々と言った。

 

「先生を戦闘不能にする方法はあなたを撃つ以外にも存在します。現に、こうやって話している間にも"時間"は進み続けているのですから。」

 

……時間? 何を企んでいる?

右足を半歩下げ、いつでも動けるように重心を落とした、その瞬間――

 

 

ギャルルルルッ!!

 

 

爆音とともに、一台のオープンカーがドリフトで広場へ滑り込んできた。誰も乗っていないことから自動運転だろう。

進行方向に立つ俺は跳躍し、かすめるように着地する。

 

その一瞬の隙に、トキは迷いなく車へ飛び乗った。

 

「チェックメイトです。私たちはここで失礼します。」

 

彼女を乗せた車はそのまま走り去る。周りにいたロボットたちも一緒に撤退して行った。

 

「……………は?」

 

あまりに唐突な逃走劇に思考が一瞬だけ固まる。

だが次の心拍が鳴る前には、俺はもう車を追って走り出していた。

 

ロボットたちが器用にバック走行しながら、俺に向かって弾丸を浴びせてくる。

追う側の俺には相対速度が上乗せされる分、弾速が速く感じられる。

目の集中力を最大まで高め、一発ずつ確実に刀で撃ち落とした。

 

(……少しずつ距離を詰めている。このままタイヤを斬り裂けば――)

 

その時だった。

 

 

ズァァァァッ!!

 

 

地中から突然、巨大な壁が迫り上がった。

思わず足に力を込め急制動。壁の前、わずか1mで停止する。

 

迂回しようとした瞬間――左右、そして背後からも同じ壁が突き上がった。

 

四方を囲まれ、天井が閉められ、俺は完全に閉じ込められた。

 

高さは20m近い。

横も無駄に広い箱状の空間。

 

(……こいつで俺を捕らえたつもりか?)

 

刀を抜き、迷いなく一閃。

断面は綺麗に割けた。

 

だが。

 

割けたはずの壁は、ゆっくりと……本当にゆっくりと“元の形”へ戻っていった。

 

「……?」

 

もう一度、全力で一閃。

結果は同じ。斬れるのは表面のわずか数m。

奥にある“核”のような部分までは届かない。

 

「……面倒な檻に入れてくれたな。」

 

ため息が漏れた、その時。

 

『作戦成功です。』

 

背後から声がした。

振り向くとそこには、ホログラムのトキが立っていた。

メイドらしい丁寧なお辞儀。そして相変わらずの無表情……かと思われたが、少しだけ口角が上がっていた。

 

「……して、これはいったい何だ?」

 

壁を見上げながら尋ねる。

天井のライトが眩しく、自然と目を細めた。

 

『これは「終焉を齎す者」を一時的に閉じ込めるためにリオ様が用意した――〈再構結界(リコンストラクション・バリア)〉です。』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

"ロケットが来る!みんな下がって!"

 

2機のロボットが同時にロケットランチャーをこちらに向け、躊躇うことなく発射した。

白い煙を吹かして道路に着弾。炎と黒煙が高く舞い上がった。

 

ここまでの戦闘でビルのガラスは割れ、道路には穴が空き、至る所で炎が上がっている。

 

「何なのあいつ! 全っ然近づけないんだけど!」  

 

モモイさんが叫ぶ。

全く先に進めない現状にイライラを募らせていた。

 

3種の武器を装備している点で厄介なのに、それが2機並んでいる。

挙げ句はこちらの攻撃は特殊外装によって弾かれ、全く効果がない。C&Cのみんなが嫌な顔をする理由がよく分かった。

 

「……とりあえず、どちらか片方を落としたいね。」

 

「ど、同感です。でもどうすれば……?」

 

「あの硬い装甲さえ何とかできれば勝ちは見えるはずなんだけどね。」

 

「あーもー!黄泉先生助けてよー!」

 

ウタハさんの意見にユズさんとカリンさんが同意した。

その隣ではモモイさんが叫び始めている。

 

何とかして作戦を考えなくては。

まずは黄泉先生がどのように対処したのかを尋ねてみた。

 

"アカネさん、黄泉先生はどうやってアレと似たロボットを倒したか知ってる?"

 

「えっと……たしか腕の付け根と首を刀でズバンと……。」

 

"そ、そっか……。"

 

うーん、そう来たか。それは黄泉先生にしかできないやつだね。

でも逆に言えば――そこが弱点ということだ。

 

ならば狙うべき箇所は決まった。

 

"腕のジョイント……ここさえ落とせば動きを奪える。"

 

「ですがあの装甲、普通の攻撃じゃ全く効きませんよ?」

 

ミドリさんが不安そうに尋ねる。

 

"そう、普通じゃ無理。でも――みんなならできる。"

 

私は全員に通信を繋ぎ、一気にまくし立てた。

 

"まずムツキさん、アカネさん。2人が持っている爆弾で“外装”を壊してくれ。" 

 

「任せて! ムツキちゃん特製、新型爆弾のお披露目だぁ!」 

 

「弾丸一発との破壊力は桁違いですから、装甲も剥がせるかもしれませんね。」

 

"次にアルさん、カリンさん。爆発の直後、露出したジョイントを速やかに撃ち抜いてくれ。"

 

「了解した。」

 

「責任重大ね。分かったわ。」

 

成功するかどうかは正直未知数。

けれど、誰一人として迷いの声をあげなかった。

 

"目標は左のロボット! 準備、急いで!"

 

『はーい先生! 私たちはどうすればいいの?』

 

重役の4人に指示を出すと、アスナさんの元気な声が届いた。残った8人にも指示を出す。

 

"アスナさん、ハルカさん、カヨコさん、ウタハさんは左のロボットの注意を引いてほしい。モモイさん、ミドリさん、ユズさん、ネルさんは右を頼む。"

 

8人からも賛成の意を得て、実行に移る。

私は読み通りに事が進むように祈り、顔を前に向けた。

 

もう迷っている暇はない。

アリスさんを助けるためにも、この二機を突破しなければ。

 

"装填中のロケットランチャーが発射されたタイミングで作戦開始だ。"

 

みんなが一斉に頷く。

緊張が空気を震わせるほど高まっていた。

 

直後、二機のロボットがロケットランチャーの弾を装填し、こちらに照準を合わせた。

そして――

 

 

バシュゥ――!!

 

 

ロケットが発射された瞬間、私は叫んだ。

 

"作戦、開始!!"

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ハルカちゃん、いっくよ〜!」

 

「はいっ!アスナ様!」

 

真っ先に飛び出したのはアスナさんとハルカさんだった。

2人を先頭に、カヨコさんとウタハさんも左のロボットへ突撃する。

 

ロボットがこちらへ銃口を向けるよりも早く、アスナさんが横へスライドしながらアサルトライフルを連射した。

視線は最初に攻撃したアスナさんに向けられるが、すぐさま反対側からハルカさんの散弾が装甲に叩き込まれた。

 

「隙だらけだよ。」

 

カヨコさんは物陰からハンドガンを撃ちながら一歩前へ。

ウタハさんもお供――通称"雷ちゃん"と共に、ロボットへ正確な攻撃を重ねた。

 

左右から交互に注意を引くように攻撃を加えることでロボットは狙いを定められず、その場で振り返るように動きを狂わされていた。

 

――狙い通り。

やつの“注意”は完全に逸らせている。

 

 

その瞬間を待っていた影が、ビルの屋上で同時に動く。

 

「アカネっち、準備オーケー?」

 

「はい。いつでもいいですよ、ムツキさん。」

 

ムツキさんとアカネさんが、三階建てのビルの屋上から屋根の縁に立つ。

眼下で暴れるロボットの肩まで、ちょうど数メートルといったところ。

 

「じゃ、行こっか!」

 

ムツキさんが笑う。

次の瞬間、二人は迷いなく飛び降りた。

 

ヒュッ――!

 

体勢を崩さず一直線にロボットの肩に着地。

衝撃を靴底で殺し、そのまま滑り込むように膝を曲げた。

 

「設置完了!」

 

アカネさんが装甲とジョイントの境目に爆弾を貼り付ける。

 

「じゃ、ばいばーい!」

 

ムツキさんは爆弾に手を触れながら、軽く敬礼。

二人はロボットの背中方向へ同時に跳躍して離脱する。

 

直後――。

 

 

ドゴォォォォォン!!!

 

 

白煙と火花が爆ぜ、ロボットの肩が大きく揺れた。

分厚い外装が爆風で吹き飛び、内部のジョイントが露出する。

 

"は、剥がれた!"

 

私は思わず声を上げた。

 

露出したジョイントに、すぐさま2つの影が照準を合わせる。

 

「目標確認。」

 

アルさんの落ち着いた声。

 

「こちらも確認。」

 

カリンさんはスナイパースコープ越しに、わずか数センチの弱点を正確に捉える。

 

呼吸を整える必要すらない。

この2人の射撃はもはや“作業”に近い。

 

カチッ――

 

2人の指がほぼ同時に引き金を絞った。

 

 

ダダァーンッ!!

 

 

2発の銃声が重ならず、しかし限りなく近い時間で鳴る。

高速の弾丸が一直線に飛び――

 

 

ガギィンッ!!

 

 

ジョイントの中心を貫いた。

火花が散り、ロボットの左右の腕がガクンと垂れ下がる。

支えを失った関節は制御を失い、そのままぶら下がった。

 

"決まった……!"

 

私は思わず拳を握る。

予想外のアクシデントもなく、作戦は完璧に成功したのだった。

 

 

つづく




トキちゃんの性能がかなり強くなっちゃったかな…?と思いましたが、ネルたちと4対1やってたので(たぶん)気にしなくてもいいですよね。


話は変わりますが――ついに!原神の祈願で「掴みし明光」の演出を拝む事ができました!
思わず叫びそうになりました!大学の食堂で友達とやってたので、ある意味危なかったです。

ちなみに、引いたのはドゥリンです。
その流れでウェンティ祈願を引いたら10連で七七が来ました。
ありがとう、七七ちゃん!(?)


   次回 第七話 勇者救出作戦 その3
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