最近、シャインポスト熱が再燃しています。
そして黄泉先生は出ません、再び。
キュウゥゥン………と電力が停止する音と共に、ロボットは行動を完全に停止した。
4本の腕をだらんと下ろし、動く様子は見られない。
みんなの活躍により、腕を動かすジョイントを破壊することができた。これでもうあのロボットは私たちを攻撃することはできない。
また、大したスピードも出せないようなので、タックル攻撃も不可能。
あとはもう一機を戦闘不能にするだけだ。
その時だった。
ドガァァァァン!!!
右前方から聞こえたとんでもない爆発音。ビルがガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。
続けて、激しい銃声。
その音からは、過去の戦闘の記憶が霞むほどの巨大な殺気を感じられた。
『せ、先生! 助けて!』
インカムに響くミドリさんの叫び声。
"ミドリさん、何があったの!?"
『なぜか分からないんですけど――急にロボットが暴れ出したんです! 』
あの爆発はロボットのロケット弾か。
私はすぐに向かう旨を伝え、みんなに状況を伝えようとしたところ――
「ハルト先生! 早く行くわよ!」
アルさんの声が聞こえ、顔を上げると、既にみんなは走り出していた。
"ああ!"
私は少しだけ笑みを浮かべ、彼女たちの背を追った。
「うわ、なんかヤバいね。」
アスナさんの雑なセリフ。しかしこの状況を確かに言い表していた。
絶えず放たれる弾丸。装填して即座に打ち出されるミサイル。その動きもどこか俊敏さを増していた。
ロボットが腕を振り回す度にコンクリートの外壁が紙のように引き裂かれていく。
ネルさんは問題なさそうだが、モモイさんたちは逃げるので精一杯な様子だった。
「アスナ先輩、カリン! モモイちゃんたちと交代しましょう!」
「「 了解!」」
「私たちも行くわ!」
アカネさんの言葉で3人は駆け出す。
それに続くようにアルさんたちも戦闘に参加した。
「うわぁーん!先生ぇー!」
"わっ!"
両手を広げて猛ダッシュしてくるモモイさんたち。勢いそのままに、3人は私に飛びついた。
"それにしても、なぜ急に暴れ出したんだ……?"
「恐らく『片方を先に倒すともう片方がめっちゃ強化されるやつ』だったんだよ! この類いのボスは両方のHPを調整しないとダメなの!」
早口で見解を述べるモモイさん。だけど、その推測があまりにも当てはまりすぎていた。
その時、ネルさんから通信が入る。
『アレはあたしたちC&Cがやる。アンタらはさっさとチビを助けに行け。』
こちらが返事をする前に通信は切れる。
姿は見えずとも、強い覚悟と私たちに託す思いが感じられた。
私はすぐに次の動きを指示する。
"みんな、あのロボットはネルさんたちに任せて先に進むよ!"
「いや……それは危険だ。」
背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのはウタハさん。その表情はどこか苦いものに感じられた。
「仮に私たちが迂回してタワーに向かおうとすると、攻撃対象を変更する可能性もある。なにせリオ会長がこちらを見ているからね。」
思わずハッとなる。
確かにこの戦いはリオに見られていると考えるのが妥当だ。となると、私たちが先に進もうとするとロボットに指示を出し、こちらに突撃してくる可能性も考えられる。
あの暴れているロボットに、先ほどと同じ作戦が通用するとも思えない。となると――
"あのロボットは、今ここで倒さなければならないってことだね。"
「その通り。」
「でも……どうやって?」
「ここは、私がやるよ。」
そう言ってウタハさんは口元を少し緩めた。
「隙を作ってさえくれれば倒せる。私たちエンジニア部が予算の半分を注ぎ込んで製作した――」
「この、『最新式遠隔スピーカー』があればね。」
スピーカー……スピーカー? その見た目はどう見てもミサイルだった。というか、どこから取り出したんだ?
その不安が露骨に顔に出ていたのか、ウタハはくすりと笑った。
「まぁ、見れば分かるさ。とにかく、動きを数秒だけ止めてくれ。このミサ……スピーカーで必ず倒してみせる。」
一瞬ウタハさん自身もミサイルと言いかけたのは気にしないでおこう。今はロボットを倒すのが先だ。
"みんな! 無茶かもしれないけど、ロボットの動きをどうにかして止めてくれ! ウタハさんが秘密兵器を用意してくれている!"
『はぁ!? さっさと行けっつったろ!』
"このままじゃジリ貧だからだ! ここは私の指示に従ってくれ!"
『チッ……! わーったよ!』
瞬間、銃声や爆発音が一層激しく空気を震わせた。
ロボットに向けての一斉攻撃が始まったのだ。
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あれから十数分が経過していた。
ロボットは未だ止まる気配を見せない。むしろ、さらに勢いを増しているようにすら見えた。
爆発の熱風が肌を焼く。息を吸うたびに喉の奥が灼けるように痛む。
「見た目にそぐわない俊敏さと、弾丸が通らない装甲……厄介すぎるね」
スピーカーの角度を調整しながらウタハさんが呟く。
なぜミサイルなのにスピーカーと呼ぶのかは分からないが、どんなに堅牢な装甲でも防げないとかなりの自信を持って話していた。
――だが、当てられなければ意味がない。
だからこそ、数秒でも動きを止める必要があった。
その時だった。
「きゃあ!」
「ハルカ!!」
回避先に撃ち込まれたミサイルが炸裂し、ハルカさんが爆風に呑まれる。
砕けたアスファルトと共に投げ出され、道路に強く叩きつけられる身体。
あまりの衝撃にすぐには起き上がれない。
そして――暴走状態のロボットは、それを見逃すほど甘くはなかった。
盾を掲げ、ハルカさんを叩き潰そうとしているのがすぐに分かった。
瞬間、冷気が私たちの背筋をそっと撫でた。
「待って!ハルカ――!」
アルさんが叫び、手を伸ばす。しかしロボットは止まらない。
――間に合わない。
誰もがそう感じた……その瞬間。
ギギ……
耳障りな金属音と共に、ロボットの動きが鈍った。
まるで見えない何かに縛られているかのように。力ずくで抵抗しているような、不自然な減速。
その隙に、アルさんがハルカさんを抱き寄せ、跳ぶ。
――次の瞬間、盾が地面を叩き割った。
まさに紙一重。
ほんの僅かに命が残った。
「ハルカ……!」
「………はっ! あ、アル様!」
「良かった……!」
アルさんは目を覚ましたハルカさんを強く抱きしめる。
状況がまだ呑み込めていないのか、ハルカさんは腕の中であたふたと身をよじらせていた。
私はすぐにロボットへと視線を戻す。
先ほどまでの俊敏な動きは影を潜め、誰の目にも分かるほど動作は鈍くなっていた。
「な、何が起こってるの!?」
「よく分からねぇけど――一旦ここから離れろッ!!」
ネルさんの一声に、戦闘中だった全員が即座に反応する。
散開していた仲間たちが、迷いなく私たちの元へと集まってきた。
「ハルト先生、バリアの用意を頼んでもいいかい?」
"わ、分かった! 全員、私の周りに集まってくれ!"
全員が一箇所に集結したのを確認し、私はいつでも展開できる状態を作る。
私はすぐに彼女の名を呼んだ。
"ウタハさん!"
「最新式遠隔スピーカー、発射!」
ドシュゥゥゥッ!!
ウタハさんがスイッチを押した瞬間、私は即座にバリアを展開する。
射出された“スピーカー”は矢のように一直線に飛翔し――
ドガァァァァン!!!
直撃。
白い閃光と爆風、そして黒煙が津波のように押し寄せてくる。
もしバリアがなければ、私たちは吹き飛ばされていただろう。
「……うん。とてもいい響きだったね。」
"スピーカーってそう言う……?"
ウタハさんの言葉にツッコミを入れている間に煙が晴れていく。
そして――見えた光景に思わず息を呑んだ。
外装どころか、内部の基盤と配線までもが溶解し、崩れ落ちていた。
私だけでなくC&Cの4人ですら若干引いているのが分かる。
「……それにしても、どうして急に動きが鈍くなったんだろうね?」
そんなモモイさんの呟きは、皆の疑問そのものだった。
あんなに暴れていた個体が唐突に弱体化するなんて、あまりにも不自然すぎるからだ。
と、その時――
『おーい!みんな聞こえるー!?』
インカムから元気な声が聞こえてきた。
ついさっきも聞いたのに、どこか懐かしく感じられた。
「その声、マキちゃん!?」
『その声、ミドリちゃん!?やった!繋がったよ!』
『やれやれ……。なんとかなったようだね。』
続けて聞こえたのは、初めて聞く落ち着いた声。
誰なのかと考えるよりも早く、モモイさんが声を上げた。
「えっ、もしかしてチヒロ先輩……!?」
『やぁ、ゲーム開発部。前は仲間たちがお世話になったね。そして――』
『初めまして、ハルト先生。』
続けて、視界の正面に青白い光が集束する。
やがてそれは人の輪郭を形作っていき――メガネをかけた1人の少女の姿となった。
『私はヴェリタスの代理部長、
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「今のロボット、もしかしてチヒロ先輩が……?」
モモイの質問にチヒロは笑って頷いた。
『「鏡」ってツールを覚えてる? それを使ってエリドゥのネットワークをハッキングしたんだ。』
――なるほど。
エリドゥの基幹ネットワークのコピーからロボットのシステムデータを抽出し、制御系統を狂わせることに成功した……ということか。
「でも、『鏡』はミレニアムの差押品保管庫に返されたんじゃ……。」
『実は、ユウカにダメ元でお願いしたら特別にって持ってきてくれたんだ。まさか彼女も“こっち側”だったなんてね。』
チヒロさんの説明に私は思わず息を呑んだ。
まさか、ユウカさんたちにも話そうと提案した黄泉先生の判断がこんな形でも繋がるなんて。
ありがとう黄泉先生。
ありがとうユウカさん。
『さぁ、関門は突破した。早くアリスを助けに行ってあげて。』
『私たちも、変わらず全力でサポートするよ。』
「うん! ありがとうヴェリタス!」
「よーし、行こうみんな!」
私たちは頷き合い、中央のタワーへと駆け出した。
まだ道のりは長い。
だけど――確かにゴールは見え始めていた。
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ヴェリタスの道案内によって、ついに私たちはタワーの入り口に辿り着いた。
天を貫くかのように聳え立つタワーは堂々と腰を据えているようで、壮観だった。
「ここに、アリスちゃんが……。」
ユズさんが呟く。
後はここを登り、リオを止めるだけ。ゴールは目の前だ。
そうして全員で入り口に向かって歩き出した、その時――
『まさか、ここまで辿り着くなんて。』
その声に全員の動きが止まる。
なぜならその声の正体は――リオだったから。
ホログラム姿で現れたリオは、私たちを見て小さくため息をついた。
『貴女たちが諦めの悪い性格なのは知っていたけど――まさかあの防衛システムを壊してまで進むとは思わなかったわ。』
そんなリオの言葉に、モモイさんたちは胸を張った。
「舐められちゃ困るよ会長! ヴァルキューレに連れて行かれたくなかったら、大人しくアリスを返して!」
「そーだそーだ!アリスちゃんを返した方が身のためだよ!」
「さらにはお気に入りのボディーガードもいないよ!」
『――トキなら、既に来ているわ。』
「「「……えっ?」」」
そのリオの一言は何かの虚勢だと思っていた。
しかし次の瞬間、それは紛うこと無き事実なのだと思い知らされた。
どこからともなく飛んできた1人の少女。
その格好と顔を見た瞬間、誰もが自分の目を疑った。
「な、なんで……?」
「なんで、トキがここにいるの……!?」
『何故……?そんなの簡単よ。』
リオは冷静に、しかしどこか勝ち誇ったかのように言った。
『あの人はトキに負けた。ただそれだけ。』
"――黄泉先生! 私の声が聞こえますか!?"
黄泉先生のチャンネルに合わせ、声を上げて何度も呼びかけるが――返事が来ることはなかった。
その結果が私たちを一層不安に駆り立てた。
いないはずのトキがここにいて、彼との通信が繋がらない以上、あちらでアクシデントが起きているのは本当なのだろう。
だけど、"黄泉先生が負けた"なんてことを信じられるはずがなかった。
そしてそれは、モモイさんたちも同じだった。
「う……嘘だ! 黄泉先生が負けるはずない!」
「そうだよ! 逃げて来たんじゃないの!?」
「いったいどんな卑怯な手を使ったの!?」
何かの間違いだと食ってかかる。
それでもリオは落ち着いていた。
『悪いのは彼よ。あの時確かに忠告したはずなのに、油断していたからこうなったの。』
それ以上私たちは何も言えなかった。
その時、リオの視線が私に向けられる。そこにいるリオはホログラムのはずなのに、あの時以上に冷たく感じられた。
『そして――次のは貴方の番よ、ハルト先生。』
"……!"
『変数として機能し、私の計算を狂わせた貴方の指揮能力を奪い――この争いに終止符を打ちましょう。』
その言葉に私は思わず身構える。
続けてリオはトキに指示を出した。
『――トキ、現時刻を持って〈
「……よろしいのですか?」
『さっきも言ったけど、彼女たちは諦めが悪い。ここで計画を無に帰させるわけにはいかない。』
「イエス、マム。」
そう言うとトキは突然メイド服を脱ぎ捨て、スポーツウェア1枚になった。
そして細身の端末を取り出す。
指先で側面のスイッチを弾くと、蒼白い光が走った。
「パワードスーツシステム〈アビ・エシェフ〉、起動!」
蒼白い光は霧のように広がり、トキの身体を包み込んでいく。
その光は粒子となり、肌に“吸い付くように"張り付いた。
瞬間、空気が重くなった。
見えない圧が、肺を内側から押しつぶすように迫ってくる。
そして――光は装甲へと変貌した。
脚部から腕部へ。背中から胸部へ。
一枚ずつ“組み上げられていく”鋼鉄の装甲。
ガシュン、という鈍い衝撃音。
最後に戦術用ゴーグルが装着される。
静寂。誰もが息を忘れていた。
そこにいたのは――メイドではない。
私たちを殲滅せんとする“兵器”だった。
トキの両腕から伸びているのは、三連銃身のガトリングガン。その砲口はゆっくりと回転を始め、低く唸るような駆動音を響かせる。
さらに彼女の肩部には、左右一対のレーザーキャノンが展開されていた。蒼白い光が内部で収束し、いつでも撃ち出せる状態へと移行していく。
「……ハルト先生、あなたがエリドゥを去ると言うのなら、あなたへの攻撃はしません。」
静かな声。けれどそれは警告ではない。
通告だった。
「でなければ――」
ガトリングの回転速度が一段階跳ね上がる。レーザーキャノンの発光が眩く強くなる。
そして――
「全員 、死にます。」
私たちに訪れるであろう結末が、静かに告げられた。
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「し、死ぬ……!?」
モモイさんが思わず一歩後ろへ下がる。
『死ぬ』という言葉が本気かどうかは分からない。
だが、冗談には到底聞こえなかった。
空気が重く沈む。
炎のはぜる音、遠くで崩れ落ちる金属音すら、やけに大きく感じられた。
「ハッ、その武装に相当な自信があるみてぇだな。」
ネルさんが口角を吊り上げる。
だがその指は――わずかに引き金へとかかっていた。
そんな中、私はリオに質問をする。
"……リオ。もし私がここを離れると言ったら、誰も傷つけないでくれるのか?"
一瞬だけ、風が止んだ気がした。
『ええ。それでも向かって来るのなら容赦はしないけど。』
"そっか……。"
そう呟き、小さく息を吐く。
あちらの狙いは私。トキがこうして武装を身に着けた以上、戦闘は避けられない。
どのような速度で動くのか、どのような能力を持っているのか、何も分かっていない。トキが言った「全員死ぬ」というのは、強ち間違っていないのかもしれない。
「先生……。」
誰かが不安を顕に言った。
私の身を案じて言ってくれたのだとすぐに理解した。
"……ごめん、みんな。"
故に、私は一言謝る。
これからみんなを危険な目に合わせてしまうことを。
私はホログラム越しのリオを真っ直ぐ見据え、声を上げた。その冷たい視線に負けない熱い視線で。
"このまま帰るつもりはない。アリスさんを返してもらう!"
刹那――空気が、張り裂けるように張り詰める。
『そう。――トキ、始めて。』
「イエス、マム。」
トキはただ命令をこなす機械のように、レーザーキャノンの銃身を私たちに向ける。
未知なる兵器との戦いが――
逃げ場のない場所で、今、始まった。
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トキは高く飛び上がり、チャージしていたレーザーを解き放った。
刹那、2本の光の矢が降り注ぐ。ネルさんたちC&Cは瞬時にその場から離れ、私は他のみんなを守るためにバリアを張った。
スドォン!!
バリア越しに伝わる衝撃。ホースから放たれる水を手で弾く時のように、バチバチと火花を散らしているのが見える。
自分を一瞬で蒸発させられるであろう光がすぐ目の前に迫っている。あのレーザーを食らえば、みんなと違い私は即死するだろう。
しかし、恐怖は微塵もなかった。
今の私にあるのは――トキとリオを止め、アリスさんを助けるという思いのみ。
黄泉先生がいない今、怯えている暇などどこにもない。先生として自分ができることを精一杯やるだけだ。
刹那――一足先にビームから逃れたC&Cの4人がトキに向かって弾丸を飛ばした。威嚇射撃のような、広い範囲にばら撒く攻撃。
トキはビームを止め、飛来する弾丸に向き合う。
しかし、彼女はその場から動こうとしなかった。
ガガガガガンッ!!
あれだけ大きな武装を身に纏っているにも関わらず、トキは最小限の動きとガトリングガンを盾にしていなす。
その様子はまるで、弾道がすべて“見えている”かのように見えた。
そして、攻撃をした4人へと視線を落とした。
「テメェの相手はこっちだぜ。」
「先生には指一本触れさせません。」
「トキちゃん!さすがにおイタが過ぎるよ〜!」
「……そんな可愛い言葉で済ましていい事ではないけどね。」
どんな力を持っているのか不明な兵器を前にしても談笑できるほどに余裕があるらしい。
恐怖は無かった私だが、談笑となると話は違ってくる。
多くの戦場を共に乗り越えてきた4人だから、冷静でいられるのだろう。
すると、バリアの中にいたアルさんが一歩踏み出した。
「ハルト先生、バリアを解除して!私たちも一緒に戦うわ!」
"! ああ!"
彼女だけでなくムツキさんやモモイさんも、トキと戦う覚悟を持っていた。
アロナに呼びかけ、バリアを解いたその時――
「――手ェ出すな!」
ネルさんの鋭い声がこだました。
ただ声を荒げたわけではない。リーダーとしての迷いのない判断を感じた。
「お前らは邪魔だ、先に進め。」
「でも……!」
ネルさん……いや、C&Cの4人はそれ以上何も言わなかった。もう既に、トキと戦う準備ができている、
作戦は今も続行中。止まるわけにはいかなかった。
"みんな、先に進もう。4人が黄泉先生の代役だ。"
黄泉先生に任せていた『トキを足止めする班』。
その役はたった今、C&Cに託された。そしてその判断は全員が受け入れた。
「……チビを頼んだ。」
"ああ、任せてくれ。"
ネルさんの短い言葉を背に受け、私たちはタワーに向かって走り出す。
その後ろで、機械とは思えない不気味な唸り声のような駆動音が響いた。
「先には進ませな――」
「テメェの相手はあたしらだっつってんだろうが!」
再びネルさんの大声、そして銃声。
何が起きているかは分からない。しかし、振り返らない。
この場はC&Cに託したのだから。
「まさか、先輩を撃てないなんて甘いことを言うんじゃねぇだろうなァ!?」
「殺せるものなら殺してみやがれ!あたしらは死んでも死なねぇぞォ!」
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その啖呵が夜の廃墟に響いた直後だ。
あたしたちはその兵器との力の差を身をもって味わっていた。
……ああ、弾が切れる音は嫌いだ。それは仕事に時間を使ってしまっている証拠だからだ。
可能であればどの仕事もマガジン1本で終わらせたい。だが、こういう敵と戦うのは必然的に時間を取らされる。
「チッ……。」
カチ、と乾いた感触が指に伝わった瞬間、舌打ちをひとつ打つ。 腰のマガジンポーチに手を伸ばすが、残っていたのは1本だけ。
腕がやけに重い。呼吸は荒れて、喉の奥がひりついている。鉄の味がずっと口の中に残りっぱなしだった。
地面には焦げ跡とクレーター。
壊れたビルと、溶けたガラス。……それと、赤い水たまり。
多分、あたしのだ。
ふくらはぎが熱を持ってる。
さっき掠めたレーザーが、ちゃんと肉を焼いていたらしい。
それでも立てている。
だから、まだ戦える。
『……リーダー、大丈夫?』
インカムから聞こえるアスナの声、その声はどこか弱々しかった。
「ハッ……時間を稼げって言われただけだろ。楽勝じゃねぇかよ……。」
笑おうとしたけど、喉がひくっと引きつってまともな声にはならなかった。
空気が震える。
頭上から機械の駆動音。
羽音みてぇな、空気を裂く嫌な音。
あたしは視線を上げる。
とっくの昔に太陽は沈み、星が散りばめられている。
そんな綺麗な夜空に浮かんでいる影――トキ。
あいつはまだ無傷だ。
兵器にも傷ひとつ付いちゃいない。
……つくづく、イライラさせやがる。
テメェの武装のエネルギーは無限なのかは知らねぇが、こっちは有限なんだぜ?
少しは顔を顰めやがれってんだ。
それでも、1つだけ分かっていた事がある。
「どうしたオラァ! あたしたちは死ぬんじゃなかったのか!? まだまだピンピンしてんぞォ!!」
黄泉センとは違う、あたしよりも強い奴に会えた事が嬉しかった。
例えそれが武装によるガワだけのものだったとしても、あたしを追い詰められる奴はそうそういねぇ。
久しぶりに味わう感覚に興奮していた。
死ぬかもしれねぇって時に、あたしはワクワクしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……まだ、戦うおつもりですか。」
大通りのど真ん中。
トキがゆっくりと降下し、地面に降り立った際に、ヤツは言い放った。
あ? 何言ってんだこの新人は。
戦いをやめる選択肢がどこにあるんだ?
「ハッキリ言って勝負はついています。大人しく諦めるのが正解かと。」
「あたしたちに『死ぬ』と言ったかと思えば、今度は諦めろだァ? ふざけてんのか?」
「……私とて、殺したくて言ったわけではありません。誰にも傷ついてほしくないからこそ言ったのです。」
「ハッ。そんな兵器に身を包んで、ガンガン撃たれてる側からすれば説得力がねぇんだが。」
あたしはトキの説明を皮肉で返す。
先に対話の選択を捨てたのは、テメェのご主人サマだからな。
「それに、諦めてねぇのはあたしだけじゃねぇんだぜ?」
「――ッ!」
刹那、トキの足元で爆発が起きる。ゴーグルをつけていなかったせいか、トキは反応が遅れた。
慌ててその場から離れるトキ。そこにさらに、スナイパーの弾丸が飛来した。
「クッ――!!」
トキは紙一重でそれを避ける。
……惜しかったな、カリン。
仲間たちがあたしのもとに集まってくる。
揃いも揃って血だらけ傷だらけでみっともねぇ。
まぁ、生きてるだけマシか。
「トキちゃん。悪いけど、そう簡単には諦めないよ。」
「依頼を遂行することが何よりも優先だからね。」
「私たちの諦めの悪さ。その身をもって味わってください♪」
傷1つないトキに対してこちらはボロボロだが……まだまだやれそうだ。
「先輩方………………分かりました。これで終わりにしましょう。」
長考の末、トキがガトリングを構える。
あたしたちも重い身体に鞭打つように銃を構えた、その時だった。
引き金にかけていた指が動かない。
いや――動いた感覚がない。
音が、消えていた。
風も、振動も、鼓動の音さえも。
——気づいた時には、世界から色が消えていた。
つづく
トキがホタルに見えてしかたがないんですよね。
というか、メカに身を包む少女=ホタルになりかけています。
ホタルと言えばですが、スターレイルの次のストーリーは彼女がフォーカスされるそうですね。
そして何より!我らが黄泉さんが刀を抜いていたーッ!!
ワクワクしない理由がありませんね!
一方の原神ですが…お父様可愛い、コロ×サン尊い、あんのクソ野郎!でしたね。
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