今回はユズと黄泉先生が「期待」について話し合うお話です。
他3人に比べてかなり短いです。でも、内容は頑張ったつもりです!
これがゲーム?
これを作った人の頭の中が気になる
本当に脳みそ詰まってるのかな?
これはゲームじゃなくて、ゲームに似たゴミだよ
私が初めて作ったゲーム『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプ。その評価は散々なものでした。
何十、何百ものコメントが寄せられて、その全てが私のことを刺してきて。いつか自分でゲームを作るんだって息巻いていた頃の自分を突き飛ばしたかった。
あんな夢をみなければ、夢なんて持たなければ、こんなことにはならなかったのかもしれないと、過去の自分を恨みました。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
そんな言葉を心の中で唱えても、何も変わりはしません。この世のすべてを敵に回したのだと思いました。
なのに――
『こんなに面白いのに、プロトタイプだけ作ってやめちゃうなんて!』
『続き、すごい気になってるんですよ!』
『 "テイルズ・サガ・クロニクル" 、すっごく面白かったです!』
私の作品を面白いと言ってくれた双子の姉妹に出会って。
「共にレイドバトルを始めるのであれば、私たちはパーティメンバーです!」
どこからともなく現れた、ロボット少女が仲間に加わって。
「まずは何が優先すべきことかを考えろ。」
常に冷静で、私たちが欲しいアドバイスをしてくれる先生が来てくれて。
「みんな、テイルズ・サガ・クロニクルをもっと愛してみよう。」
私たちと同じ目線に立って、背中を押してくれる先生が来てくれて。
そんなメンバーで作った「テイルズ・サガ・クロニクル2」はたくさんの人に高評価を貰えて、ミレニアムプライスの特別賞にも選ばれました。
生徒会からの廃部命令も取り消されて、これ以上なく幸せで……ゲームを作って良かったと、心から思いました。
それなのに……どうして私は今もロッカーに閉じこもっているんでしょう。
半月以上ここにいたから、ここが心落ち着く場所に変わっていたのもあります。でも、私たちを馬鹿にする人はこのキヴォトスにはどこにもいません。胸を張って外を歩いてもいいはずです。
……私はいったい、何に怯えているんでしょうか。
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「なるほど……。」
黄泉先生が、静かにそう呟きました。
ゲーム開発部の部室。モニターに向けて置かれたソファに、私は先生と並んで座っています。
……と言っても肩が触れるほど近くはなくて、私は背もたれの端に、少し体を縮こまらせるようにして座っていました。
部室には、私の声が消えたあともしばらく静けさが残っています。
モモイとミドリ、そしてアリスちゃんは、今は授業でいません。平日の午後という忙しいはずの時間ですが、黄泉先生はわざわざ来てくれました。
「成功しても評価されても、なぜか不安が消えない……。そう言いたいんだな。」
責めるでも、否定するでもなく。事実を確認するように、黄泉先生はそう言いました。
私は小さく頷きます。
「……はい。」
その声は、自分でも驚くくらいに小さくなっていました。
そこから数秒、黄泉先生は天井を見つめられました。その目はとても真剣で、一緒に悩んでくれているのが伝わってきました。
「外に出られない理由は、ユズの周りで “悪いこと” が起きているからではないんだな?」
「はい。」
「ふむ……。」
黄泉先生は室内をぐるりと見渡します。
すると、床のある場所に視線が止まりました。
「……そこに積まれているある封筒たちは?」
「ゲ、ゲームを遊んでくれた人たちが書いてくれた……応援メッセージ、です。」
黄泉先生はその中からいくつかの封筒を手に取り、手紙に目を通し始めました。
「"次の作品も期待しています"……か。」
その時、私の肩がビクリと跳ねました。完全に無意識だったのですが、どういうわけか心臓がドクドク鳴って、呼吸が速くなります。
「……なるほど、そういうことか。」
黄泉先生が私を見て言いました。
「ユーザーからの期待に応えられるのか不安なのか。」
「……ち、違います。期待されるのは……すごく、嬉しいです。」
私は震える声で反論します。それはまるで、私が応援されて嬉しくないみたいな言い方だったから。
ですが、黄泉先生はその思いを否定せずに言いました。
「ユズのその思いは本物だろう。だが、応えるとなると話は変わってくる。」
「期待に応えるということは、ユーザーが想像しているものをある程度超えなければならない。それができなければ……当然、評価は落ちてしまう。」
「ユズ、お前はそれが怖いのだろう?」
私は……答えられませんでした。黄泉先生が仰られたことに、強い共感があったからです。
新作ゲームを出す時、ユーザーは新しさを求めます。特に続編のゲームとなれば、前タイトルというハードルを超えなければなりません。それができなければ、当然失望され、見放されてしまいます。
今のところ続編を作るという話はありませんが、私たちは「ゲーム開発部」です。いつでも取り掛かれるように準備しなければなりません。
そう考えた時に、どうしてもあのコメントたちが頭を過ぎるんです。テイルズ・サガ・クロニクル2を作っている時は、そんなことなかったのに。
「またあんなコメントを見るのは、嫌です……! 誰かに見放されるのは嫌です……!」
それが、心の奥底にあった不安の正体。
乗り越えたと思っていた過去がこんなカタチで襲いかかって来るなんて、思ってもみませんでした。
そんな時、黄泉先生が言いました。
「ユズは、強いな。」
「えっ……?」
言葉の意味が分からなくて、聞き返します。
私は強くなんて……
「それを“怖い”と自覚して言語化することは、とても簡単なことじゃない。」
私は思わず顔を上げます。
「多くの人間は不安を感じても正体が分からないまま押し殺す。あるいは、誰かのせいにして終わらせる。」
「だがユズは違う。“自分は何に怯えているのか”を、ちゃんと掴もうとしている。それは弱さではなく、作り手としての強さだ。」
その時、ドクンと胸が鳴りました。
それは不安ではなく、勇気。先生に褒められたことで、力が湧いてくるような感覚がありました。
「それに、勘違いするな。」
黄泉先生はそっと私の両手を取って、優しく包み込みました。
突然のことで体が熱くなりますが、先生は止まることなく言葉を続けました。
「今回は俺が話を聞いているが、新たなゲームを作る日が来たら、仲間に思いを全て打ち明けろ。あいつらなら必ず全力で応えてくれる。」
その話を聞いた時、だんだん目の奥が熱くなって……気づけば涙が溢れていました。
黄泉先生の言う通りです。私には心の底から信頼できる仲間がいます。
モモイ、ミドリ、アリスちゃん。3人は私より、何倍も強い心の持ち主です。みんながいてくれたら、何も怖がる必要はありません。
「それでも――どうしても不安なら」
先生は、私の目をまっすぐ見て言いました。
「俺たちを呼べ。前みたいにまた一緒に作ればいい。……手伝うくらいなら、いくらでもやる。」
「……っ…! はいっ……!」
そうして黄泉先生は手を離します。
その瞬間、なんだかとても寂しく感じて――気がつけば私は、先生に抱きついていました。
「私っ……!頑張ります……!」
「ああ。ユズなら乗り越えられると信じている。」
先生の声はどこまでも優しくて、暖かくて、つい腕に力が入ってしまいます。すると、先生は優しく背中を撫でてくれました。
背中に感じる大きな手。まるで私の不安を取り除いてくれるかのようでした。
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それから私は黄泉先生とお喋りを楽しみました。
今更ながら2人きりで話すのは初めてのことだと気づき、ほんの少しだけ緊張していました。相談していたときは何とも思わなかったのに、どうしてでしょうか。
色々お話を聞いていくうちに、やっぱり黄泉先生は大人なんだなって思います。
一歩引いた視点、どんな時でも焦らない冷静な思考。多くの生徒……いえ、キヴォトスに住む全ての人々に信頼されている理由がよく分かります。
「どんな期待にも応えられる黄泉先生が羨ましいです。」
期待のされ方が私たちとは全く異なりますが、黄泉先生ほど信頼できる人はこのキヴォトスにはいないでしょう。
すると――黄泉先生は少しだけ驚いたような顔をして、やがていつもの顔に戻りました。
その一瞬の表情が気になっていると、先生は私に視線を向けて口を開きました。
「……昔は期待どころか、歓迎すらされていなかったがな。」
「えっ……?」
「今でこそ『先生』と呼ばれるが、昔は『先生』になること自体を反対されていた。」
「そっ、そうなんですか!?」
一瞬なんの話か分からなかったのですが、それが黄泉先生の過去の話だと気づいて思わず大きな声を出してしまいました。
黄泉先生はあまり過去の話を好まない人というのは耳にしていましたが、まさか私に話してくれるなんて……。
「どうして、その話を私に……?」
「俺にも誰かの期待に応えられない時があったことを分かってもらうためだ。」
その言葉を聞いて、私はハッとしました。
先生は続けます。
「もう数え切れないほど失敗した。それでも俺は歩み続けた。どんな期待にも応えられるのは、そんな過去を背負っているからだ。」
「初めから期待に応えられるヤツなんていない。それでも期待に応えたいというのなら、全力で取り組め。」
「はいっ!」
黄泉先生の言葉は胸の奥にゆっくりと沈んでいきます。怖さが消えたわけではありません。でも――逃げたいと思う気持ちは、確かに薄れていました。
期待されることは、怖い。
けれど、それ以上に。
期待に応えたいと思える今の自分を、少しだけ誇らしく感じていました。
完
ブルアカやってないのにストーリーを履修してるから自然とおすすめにケイたちが流れてくる。
てか、ケイ可愛すぎません?
コロンビーナ引きました。本人も武器もしっかりすり抜けました。
……最近マジでガチャ運悪い。スターレイルの爻光と火花が引けるか超不安です。
さて、これでゲーム開発部の4人が終わりました。次回からはC&Cの5人を書いていきます。
トップバッターは、やはりネルちゃんです。