キャラ祈願は天井(30連)でスカーク(すり抜けナシ)。
武器祈願は30連で息災、10連で蒼耀。
俺の勝ち!最高にハイッてやつだぁーッ!
スカーク強すぎてちょっとビビってます。
余った原石でマーヴィカの武器でも狙おうかな。(無謀)
シャーレの事務室は、静まり返っていた。
カーテン越しに差し込む昼下がりの光が、机の上に散らばる報告書を淡く照らす。
その中心で、俺はひとり、腕を組みながら目を伏せていた。
違法装備品。
アビドスで回収したそれは、通常のルートでは到底手に入らない――明らかに裏の流通を経たものだった。
「…どこから、こんなものを。」
誰にも聞かせるわけでもなく、ぽつりと呟く。
こうしたブツが流れてくる場所――心当たりがないわけではない。
いや、最も真っ先に浮かんだのは、あの場所だった。
ブラックマーケット。
流通ルートの裏側、闇取引、盗品、模造品、果ては兵器に至るまで。表では手に入らないものも手に入ると噂される場所。
連邦生徒会の手も届かない、犯罪の温床。
俺は静かに立ち上がると、ロッカーを開けた。
そこに掛かっていたのは、いつもの白ではない――黒のジャケットに、黒のパンツ。
目立つ髪もフードで隠し、内ポケットには戦闘用のナイフを隠す。刀を持っていけばすぐに俺の存在がバレ、間違いなく騒ぎになるからだ。
「…あまり気は進まないが。」
自分のような存在が目立っては意味がない。
今日ばかりは、“先生”ではなく、“調査員”として動く必要があった。
変装を終え、刀を静かにクローゼットの中にしまおうとした。
だがその瞬間、刀身がかすかに光を放った。
淡い、紫色のきらめき。
音もなく、わずかに震えるように――まるで、それが“何か”を訴えているかのように。
「…安心しろ。戦いに行くわけじゃない。」
誰に言うでもないその言葉は、静かな部屋に吸い込まれていった。
返事はない。ただ、刀の光はすぐに収まり、何事もなかったかのように静寂に溶けていった。
(できれば、そこにあってほしいものだが。)
そんな事を考えながらクローゼットの扉を閉じ、シャーレを後にした。
フードを深く被り、黒のジャケットを翻しながら、俺はブラックマーケットへと足を踏み入れる。
そこは、普段見る学園都市とは全く異なる別世界だ。
チンピラ、不良、傭兵風の生徒たち――あらゆる“はぐれ者”がこの場所に集まっている。
笑い声、怒号、取引の交渉…。耳に飛び込む全てが騒がしい。
俺は歩きながら、露骨な視線を何度も浴びる。
俺が何者かも、どこから来たかも――誰にも知られていない。だが、それでも分かるのだろう。
俺の存在を、周囲が敏感に察知するのが分かる。
視線が集まる。言葉は止まらないが、誰も俺に近づこうとはしない。
(変装の意味があったか怪しいな…。まぁ、顔が割れなければそれでいい。)
そう考え、俺はすぐに思考を変える。
(装備品……違法ルートの出所を探るには、まず“売っている店”を押さえなければならない。だが――)
ここは地図も案内もない、無秩序な市場だ。
どの道がどこに繋がっているのか、誰に聞けば情報が手に入るのか、すべてが霧の中にある。
(初動で迷っては、時間を食うな…。)
そう考えた矢先――不意に、肩口に強めの衝撃を感じた。
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マーケットの空気は今日も騒がしかった。
焼き物の匂い、ブレードの金属音、どこかで怒鳴る声。慣れ親しんだ喧騒の中を、アタシはいつも通り、親友のリサと歩いていた。
「なーに見てんだよ、あ?」
「ははっ、どうせビビってんでしょ。あんたが睨み効かせてるからさ。」
2人で笑い合ってた、その時だった。
ドンッ
誰かとぶつかった。
「はぁ? どこ見て歩いてんだ、テメェ……」
振り向いた先にいたのは、黒いフードを目深にかぶったヤツ。顔は見えない。背は高いが、細身で、武器らしいものは見えない。
一瞬、拍子抜けしかけたけど……その無反応が、逆にムカついた。
「何無視してんだよ! 舐めた態度取ってんじゃ――」
「すまない。」
――それだけ。
ポツリと落とされた低い声。
ただそれだけなのに、喉の奥に引っかかるような、変な感覚があった。まるで、息が止まったみたいに。
でも、それが余計に頭に来た。
「は?」
改造短銃を抜き、そいつの背中に押しつけた。
「テメェ、ナメてんじゃねぇぞ。死にてぇのか?」
引き金に指をかけた、その時だった。
「…騒ぐな。」
背後から、声がした。
今のは――アタシが今まさに銃を向けている“そいつ”の声だった。
背筋に冷たいものが走る。
頭が混乱していた。だって、声の主は、目の前にいるはずの“黒いフード”の男の――
――いない。
振り返ると、そこに“もう一人”の黒いフードが立っていた。…いや、“もう一人”じゃない。
目の前にいたはずのソイツが、そこに立っている。
ずっと前を向いていたはずなのに、移動したことに全く気づかなかった。
いつの間に、どうやって。
そんなことは考える前に理解できた。
こんなことができるのは、このキヴォトスには1人しかいない。
足が、地面に縫い付けられたみたいに動かなかった。
冷や汗が背筋を伝って流れていく。視界の端で、相棒のリサも青ざめた顔で固まってる。
あいつが――背後に“いつの間にか”立っていた黒フードの男が、ゆっくりと手を伸ばしてきた。
そして、アタシたちの口元にそっと指を添える。
「静かに。」
低く、静かな声。だけど、威圧なんかよりずっと冷たくて、逆らえない重みがあった。
「…騒ぎを起こしたくはない。」
思わず息を飲んだ。心臓が跳ねる。
間違いない。こいつは、本物の“死神”だ。
アタシたちは無言で、猛烈な勢いでコクコクと首を縦に振る。“死神”は、それを見てようやく手を離した。
「…お前たちに、頼みがある。」
殺されるわけじゃないのかと、一瞬だけ気が抜けた。けど、続く言葉で、また心臓がきゅっと縮む。
「このマーケットで、装備品を扱っている店を案内してほしい。端末や精密部品を含め、違法なもの全てだ。」
「…わ、分かりました!もちろんです!」
即答だった。
変なプライドなんか捨てて、アタシたちは全力で首を縦に振る。
“死神”は頷くと、まるで空気みたいにその場から歩き出した。
「…案内を頼む。」
振り返らず、そう告げられたアタシたちは――
(た、助かった…!)
安堵と緊張と、意味の分からない使命感に押されながら、“死神”の後ろを慌てて追いかけたのだった。
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人混みの中、俺は静かに歩を進めていた。背後からついてくる二人の足音も、もう慣れてきた。最初の怯えた様子は鳴りを潜め、多少の緊張は残るが、それでも口を開く余裕が出てきたようだった。
「そ、その……今日は、いわゆる“調査”ってやつなんですか?」
振り返らずに歩きながらの問い。声の主は先ほど俺にぶつかってきた少女の方――ユミとか言ったか。
「先日…暴動を鎮圧した際に、戦車や銃に違法の装備が施されていることが分かった。今日は、その調査に来た。」
「せ…『先生』って大変なんですね…。」
ブラックマーケットの通路は入り組んでおり、屋台、露店、古びた看板が入り乱れる。その喧騒に紛れて、妙な気配が紛れ込んでいた。
何かが背後をなぞったような感覚。
違和感は唐突だったが確かなものだった。
どこからか“見られている”。そんな直感。
不特定多数の目に晒されているこのマーケットで、それでも際立つ――何度も感じたことのある、執拗で、張りつくような眼差し。
俺は立ち止まり、わずかに眉をひそめる。
「……チッ。」
舌打ちが漏れた。
視線の主の顔までは見えないが、その“質”だけで分かる。
奴がいる。
「……どうかしましたか?」
背後から、ユミの不安げな声が聞こえる。
「…気にしないでくれ。」
不機嫌な表情のまま、俺はもう一度歩き出した。
通路がやや開けた先、他の建物よりも頭ひとつ――いや、ふたつほど飛び抜けて高いビルが、周囲を見下ろすようにそびえていた。
その無機質な灰色のビルは、他のどの店よりも異質で、どこか“生気”を感じさせなかった。
「……ずいぶんと、でかいビルだな。」
俺が小さく呟くと、リサが説明してくれた。
「あれは闇銀行です。色んな犯罪で入ってきた金は、全て違法な武器や兵器に使われているらしいですよ。なんでも”カイザーローン”と繋がってるとか。」
カイザーローン――聞いたことのある名だった。
過去に見た資料では、キヴォトスで起こる犯罪の15%の盗品はあそこに流されていると書かれてあった。また、リサが言ったように銀行が犯罪を援助し、それで得た金で新たに武器を製造するという悪循環が形成されているらしい。
『先生』としては見て見ぬふりできない事案だが…ブラックマーケットは連邦生徒会の手が届かない。
ましてやどの自治区にも属さないため、シャーレの権限を利用した戦闘を行うこともできない。
だが…そんなことは、今はどうでもいい。
今はあいつらのために動かなければ。
荒廃した校舎、ゴーストタウン。
誰もが見捨てた土地を、それでも守ろうとしていた5人の少女たち。
あのとき交わした言葉が、胸の奥に浮かんだ。
『だってここは私たちの学校で、私たちの街だから。誰かに押しつけるつもりはないよ。』
あいつらのためにも、絶対に見つけ出してやる。
この腐ったマーケットの中で、違法装備を流した黒幕を、どんな手を使ってでも。
「先生、すぐそこにパーツ屋があります。」
「あそこは…主に戦車の装備品を扱ってる場所ですね。」
手がかりがあるなら、どこだろうと踏み込むだけだ。
カイザーローンのビルを一瞥し、俺は案内された店へと歩を進めた。
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「……ないな。」
最後の一軒を出て、俺は小さく吐息をついた。
ここまでに回った店は、ユミとリサが把握している全て。裏に顔が利く場所も含めて、隅々まで調べ上げたつもりだった。だが、目的の装備品の情報はどこにもなかった。
肩をすくめて見せたユミが「やっぱ情報、隠されてるのかもなぁ」と唸り、隣でリサも「先生が追ってる奴は、かなり手強いですね」とこぼした。
俺は2人に背を向けるように、マーケットの喧騒を眺めた。これ以上深く潜れば、また別の危険が待っている――今日はここが潮時だ。
「…ここまでだな。」
そう呟き、俺はユミとリサを見据えた。
「…お前たち、どこか美味い店は知っているか?」
2人が「え?」と同時に声を上げた。
「手伝ってもらった礼だ。俺が奢ろう。」
「えっ、いいんですか!?ラーメンとか!?」
「やったぁ!奢りだぁ!」
俺は小さく苦笑しながら、「ただし、食い過ぎるなよ」とだけ返して歩き出した。
そうして2人に連れられてやってきた店は、マーケットの隅にある場末の食堂。油で曇ったガラス越しに、外の雑踏がぼんやりと滲んで見えた。
チャーシューたっぷりのラーメンを夢中ですする2人。俺はこの後の行動を考えながら、スープを啜っていた。
ふいにユミが箸を止めた。
「先生は…どうしてアタシたちみたいな不良に優しくするんですか?」
その問いに、俺は少しだけ視線を上げて彼女らを見た。
「優しくしてるつもりはない。だが……」
言葉を選ぶように一呼吸置き、言った。
「お前たちは確かに不良だが、“生徒”だ。それに変わりはない。」
その言葉に、ユミとリサは目を見開く。
「こんな世界なんだ。この際、不良でもいい。だが――人の道を外れるようなことだけは、絶対にするな。」
そこまで言ったあと、俺は一拍おいて、声の調子をわずかに下げた。
「…万が一、道を踏み外すようなことがあったなら――」
言葉が空気を刺すように鋭くなる。
「その時は、俺と戦うことになる。」
そう言うと、2人は沈黙。表情が一気に強張った。
特に、ユミに関しては少し青ざめている。
(そういえば、こいつは背後から俺を撃とうとしたんだったな…。)
彼女たちの反応を見るに、俺の言葉はただの脅しではないと心の底から理解したようだ。
ならば、彼女たちは大丈夫だろう。
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ユミとリサと別れ、マーケットの喧騒を離れた俺は、人気のない路地を選んで歩いていた。
理由は…視線の主に会うためだ。
可能なら奴の顔は見たくないが、あまりのしつこさに行く他なかった。
路地裏の静けさが、鼓膜にまとわりつく。
人気のない薄暗い道を歩きながら、俺は気配の主に向かって吐き捨る。
「…いつまでも隠れてないで、出てきたらどうだ。」
その声に応えるように、暗がりから影が現れる。
黒のスーツ。人のようで人でない質感の肌。右目の位置に走る発光部と、顔を裂くような深い亀裂。
――黒服。
ゲマトリアの一員。観察者であり、探求者であり、研究者。「持つ者が、持たざる者から搾取する」という、救えない思考の持ち主だ。
「お久しぶりです、黄泉先生。」
あの冷たく、抑揚のない声。
何年経っても変わらない、機械のような物言いが、神経を逆撫でする。
「…ずっと後をつけ回しやがって。何の用だ。」
こういう男と話すときは、感情を抑えた方が良い。
――それでも、こみ上げる嫌悪は隠しきれなかった。
「ククッ……”偶然にも”あなたの姿を見つけましてね。何かお話でも…と思いまして。」
チッ…何が”偶然”だ。常に俺を視ている奴がどの面下げて言っている。
…そう言いたいが、俺は黙して、じっと黒服を見据える。
「時に、黄泉先生。」
暗がりの中、黒服が意味深な声色で言葉を投げた。
「最近のあなたは……“アビドス高校”という学校の手助けをしているそうですね。」
その言葉に、俺はわずかに目を細める。だが、声に揺らぎはなかった。
「……それがどうした。」
「何のために、そのようなことを?あなたほどの力を持っている大人が、なぜわざわざ弱者の側に立つのです?」
黒服は静かに歩み寄る。
靴音すら響かないのが、かえって不気味だった。
「全ての頂点に立てるはずの“圧倒的な力”を持ちながら、あなたはキヴォトスを支配しようとしない。人助けばかりに時間を費やしている。」
その口調には、軽蔑すら混じっていた。
「まさに、玉座を捨てた愚者です。」
俺は応えず、ただじっと黒服を見つめていた。
視線は静かで冷たく、刃のような鋭さを宿して。
「……それだけではありません。」
黒服の声が少しだけ低くなる。
「桐山ハルト……あなたの同僚も同じです。彼は『シッテムの箱』を使い、キヴォトスの“権力”も“神秘”もその手に収めました。それほどの存在が、なぜあっさりとその全てを放棄するのか……私には到底理解できません。」
「実に愚かですね。自ら、世界の運命を握る機会を投げ捨てるなど。」
沈黙が一瞬、二人の間を満たした。
しばらくして、俺はわずかに口元を歪める。
「……そんなくだらない話をするために、俺を呼び出したのか?」
その声には明確な苛立ちが混じっていた。喉の奥から絞り出すような、低く沈んだ声音。それは、黒服の空虚な言葉に対する拒絶の意志そのものだった。
だが、黒服は相変わらず表情を変えず、乾いた笑みだけを浮かべている。
「いいえ、違いますよ、先生。」
声色は穏やかだが、その中には確かな狂気が混じっていた。
「“大人”が、どのような存在であるべきか……改めて、あなたに“正しいあり方”を教えるためにです。」
「……改めて、教える?」
俺はまじまじと黒服を見つめ、口元で笑った。
「ならば、俺からも改めて教えてやろう。お前の言う『正しさ』が、子供を支配し、搾取することだというなら――そんなものはただの腐敗だ。」
「大人とは――」
その言葉に、いつになく強い熱が宿った。
「子供たちを正しい道へと導く者のことだ。」
それは、俺の”大人”としての理念であり、”先生”としての理念でもあった。
静かに、だが確かに言い切ったその一言に、黒服の笑みが一瞬だけ歪む。
「導く、ですか……まるで聖人のような発言ですね。」
「フン…。俺が聖人に見えるか。」
「まさか、あなたは”死神”です。ただ……ククッ。」
黒服は一歩、踏み出す。
「そういう“幻想”を抱いたせいで、あなたは大切なものを失ったのでは?」
一瞬、空気が止まる。
その言葉は、明らかに俺の過去を狙い撃ったものだった。かつての相棒――“アイツ”のことを。
だが、俺はすぐに動じぬ瞳で黒服を睨み返した。
その声には微かな怒りと、それ以上の静かな決意が込められていた。
「…お前の言う通りだ、黒服。俺は多くを失った。」
言葉が重く、空気を沈める。
「仲間も、教え子も、守れなかった命も……いくつも背負ってきた。だからこそ――」
一歩、黒服へと近づく。
その眼差しは、真っ直ぐに奴へと向けられている。
「俺はこの答えに辿り着いた。守るべきは何か。大人がどうあるべきか。お前たちの言う、”死神”として。」
その言葉に、黒服は初めて怪訝な表情を浮かべた。
「『死は終わりではない』。よく覚えておくといい。……まぁ、お前には一生かかっても理解できないだろうがな。」
そう言い放つと、俺たちは沈黙に包まれた。
大通りから不良たちの喧騒が聞こえてくる。
しばらくして、黒服が「ククッ」と笑った。
「やはり…あなたとは気が合わないようです。」
路地裏の薄明かりの中で、黒服がひときわ冷えた声で呟いた。それに対し、俺は背を向けたまま答える。
「当たり前だ。」
吐き捨てるような声音には、微塵の迷いもなかった。
数歩、静かに歩いたあと、ふと足を止めて言葉を続ける。
「ハルトとも……お前は、気が合わないだろうな。」
そう言ってから、振り返ることもなく歩みを再開する。
その背中を見送りながら、黒服の口元には、わずかな笑みが浮かんでいた。
「……ククッ。やはり、面白い人です。」
そして、俺の背が完全に闇に溶ける直前――
黒服はぽつりと呟いた。
「…”あの方”も、お喜びになられることでしょう。」
風が吹き抜ける。静寂。
「……何か言ったか。」
「クックック。いえ、独り言です。」
笑いを含んだ声が後ろから返ってくる。
そうして黒服は、路地裏の暗闇へと姿を消した。
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黒服との対話を終え、路地裏を出る。
奴の顔を二度と見たくないと思いながらも、胸の奥に残るのは嫌な汗の感触。
奴は別れ際に何かを呟いた。独り言だと言っていたが、謎の引っかかりを覚えた。
追及しようとも思ったが、既に消えていたため、それは叶わなかった。
「……行くか。」
ジャケットの裾を直し、変装が崩れていないことを軽く確認してから、人気の少ない路地を抜けてメインストリートに出る。
シャーレに帰ろう。そう考えた、その時だった。
前から、見知った顔が歩いてくる。
ホシノ、ノノミ、シロコ、セリカ、そしてハルト。
よりにもよって、アビドスの連中とここで鉢合わせするとは。
「……ここで何をしている?」
自然とそんな言葉が喉までこみ上げるが、俺はその声を飲み込んだ。
今の俺は“黄泉”ではない。変装中のただの男だ。声をかければ、無用な疑念を生むだけだろう。
気づかれるわけがない――そう思いながら、目線を逸らして通り過ぎようとする。
しかし、その瞬間。
「……黄泉先生?」
ホシノの声が背中に飛んできた。
心臓がピクリと跳ね、思わず足を止める。
「…なぜ、気づいた。」
顔は隠していた。歩き方も、身のこなしも変えていた。
それなのに、なぜ――
まるで、彼女だけは最初から気づいていたような口調だった。
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再び戻ってきたブラックマーケット。
先程と同じ道を歩いているはずなのに、今回はやけに騒がしい。
いや、俺の隣にいる面々のせいか――。
「ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんはどうしてブラックマーケットに来てたの?」
ホシノがニヤニヤしながら聞いてくる。
「……違法装備に関する調査だ。」
少し間を置いて答える。どうしても口が滑らかに動かない。原因は…言わずとも分かるだろう。
先ほど、俺は「ここでは“黄泉”と呼ぶな」と告げた。
この市場に名が知れた死神がいるなどという噂が流れれば、大きな騒ぎを引き起こすことになる。
自分の立場と場所を考えての発言だった。だが、それがこの意味不明な空間を作ることとなるとは、思いもしなかった。
「うーん、何かいい呼び名はないかなぁ。」
ホシノが顎に指を添えて唸る。「そんなに悩むことか」と疑問を浮かべていた、その時――
「じゃあ、お兄ちゃんで!」
ノノミが、太陽みたいな笑顔で爆弾を投げ込んできた。
「……は?」
思わず素っ頓狂な声を漏らしそうになるのを必死に堪える。だが、俺の目は間違いなく点になっていただろう。
「ちょっ…もっとマシな呼び名があるでしょ! なんでお兄ちゃん!?」
セリカが真っ赤になってツッコむが、すでに遅い。
「お兄ちゃん、こっちに珍しいお菓子売ってますよ!」
「お兄ちゃん、たい焼き食べたい。」
「お兄ちゃ〜ん、おじさん疲れちゃった。休ませて〜。」
洪水のように「お兄ちゃん」が押し寄せてくる。
俺の隣では、ハルトが必死に笑いを堪えていた。
……何がどうしてこうなった。
「…騒がしい奴らだ。」
そうぼやきながらも、妙に居心地の悪くないこの賑やかさに、どこか救われたような気がした。
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雑多な喧騒が響く通りを、アビドスの生徒たちは楽しげに歩いていた。
ホシノ、セリカ、ノノミ、シロコ、そしてハルト。俺も彼女たちの少し後ろを歩いていた。やや目立たぬように、フードを深く被って。
アヤネはオペレーターとしてアビドス高校に残っているらしく、声だけではあるが楽しそうに話していた。
「お兄ちゃん、このカバンどう思いますか? 見た目はアレだけど、機能性は抜群なんですって!」
ノノミが振り返って、ニッコリと笑いながら俺に問いかけてきた。
“お兄ちゃん”という呼び方には未だに慣れない。だが、ここでは正体を伏せて行動する以上、致し方ない。
「……防弾素材のカバンか。前に突っ込みがちのシロコにでも持たせるか。」
「わぁ☆いいですね!」
「いらない。」
ノノミが嬉しそうに頷き、シロコは正面から断った。
ふと、隣を歩いていたハルトが声を落とし、小さく呟いた。
”楽しそうですね。先生。”
「…馬鹿を言うな。こっちはわけの分からん呼ばれ方をして困ってるんだぞ。」
”…でも、私はどこか嬉しそうに感じます。”
俺はそれに返す言葉を見つけられず、視線を逸らした。
そんな時、ハルトが話を切り出す。
”話は変わりますが……1つ、お伝えしておきたいことがあります。”
「…なんだ。」
俺が振り向くと、ハルトは少しだけ視線を伏せ、数秒の間を置いてから口を開いた。
”2時間ほど前、アビドスが襲撃を受けました。”
「!」
思わず立ち止まる。
ついに、新たな刺客が現れたか。
”便利屋68…。黄泉先生はご存じですか?”
「…もちろんだ。ゲヘナ学園の風紀委員会にも目をつけられている”厄介な”奴らだな。」
一瞬、脳裏に赤いジャケットの女がよぎる。
俺の警告など、奴らには通じはしないだろう。
「だが、お前たちがここにいると言うことは、無事勝ったのだな。」
”はい。まぁ、よくわからない勝ち方でしたけど…。”
ハルトが肩をすくめた。
大方、アルの奴がしくじったのだろう。ドジなところは昔から変わらない。
「…油断するなよ、ハルト。奴らは依頼遂行のためならどんな手でも使ってくる。」
”はい…!”
素直にうなずくその姿に、ほんの少しだけ安堵する。
彼は、戦う覚悟を持った者の目をしていた。
ふと前方を見ると、ホシノがたい焼きを頬張りながら歩いていた。
「2人とも、せっかく来たんだから少しは楽しもうよ〜。観光だよ観光。」
「もう、ホシノ先輩。ブラックマーケットは危ない場所って言われたでしょ。」
セリカが呆れたように言う。だが、他の連中も笑っている。たい焼きが異様に似合う空気だ。
「たまにはいいじゃん。お兄ちゃんもさ、少しは笑ったら?」
「……この格好の俺が笑ったら、それはそれで不気味だろう。」
「たしかに!」
「そこは否定する流れじゃないの?」
そんな平穏な空気の中、不意に遠くから怒号が響いた。
人混みのざわめき――この空気には不似合いな気配だ。
「……騒ぎだな。」
俺が声を落とすと、全員が歩みを止めた。
「何か事件かな?」
ホシノが眉を寄せてたい焼きを口に咥える。
「行くぞ。巻き込まれる前に、状況を見た方がいい。」
俺の言葉に、アビドスの生徒たちはうなずいた。
こうして、平穏だった観光は、再び嵐の中へと踏み込んでいくのだった。
つづく
最近は凍結がすごい強化されてますね。
果たして氷砕きはいつ強化されるんでしょうか。
スターレイルでは銀狼の強化が決まりました。
弱点付与は1枠目の属性確定。必殺が全体攻撃化。
良いですね良いですね。
ゼーレ、鏡流、刃ちゃんの強化も待ってます。