重賞ウマ娘、球界へ   作:eeffdd

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主人公はメイクデビューから5年、この時は高校2年生です。


重賞ウマ娘、グランプリに敗れる

記念が終わって、私はいつものように控え室へ戻ってきた。

勝てなかったなーっていう気持ちはあるけど、それよりも妙に落ち着いてた。

だって、前からレースはこれで最後かもしれないなって、どこかで分かってたから。

 

先に控え室で待ってたトレーナーが、少し緊張した顔で私の方を見ている。

あれ、なんか言いにくそう?

 

「ブレイザー、本当にお疲れ様。今日のレース、いい走りだった。」

「ありがと。でも勝てなかったね。」

「まあ、そうだな…。でもお前、十分頑張ったよ。」

 

今まで、短距離マイルで長距離レース初めてだったしね。

にしてもトレーナーの言い方が妙に柔らかい。嫌な予感がする。

 

「それでさ、ブレイザー。これからのことなんだが…」

 

ほら、やっぱり来た。

 

「引退して、ドリームトロフィーシリーズに進むことになると思う。」

 

トレーナーの言葉が、静かに控え室に響いた。ふむふむ、なるほどね。

わざわざ距離適性のない有に出て、得意なマイルや短距離に戻るわけにいかないしなぁ。

年齢的には続けれなくもないけど、同年代の実績あるウマ娘もほぼ引退だろうしね。

そうか、引退か。まあ、だいたいそうなるよね。

でも、私の心はもう別の方向に向いてた。どうせなら私の好きなようにやりたいしね。

だから、私はいつもの調子で言った。

 

「いや、それはないな。」

 

「…え?」

 

トレーナーが目を丸くする。

たぶん、無理にでも現役続行するって思われてるのかも?

違うんだけどね。

 

「だってさ、私、野球やるから。」

 

一瞬、静寂。三女神がいるなら驚いてそうな気がする。

今までに見たことのない顔のトレーナーが狼狽えてる。

 

「…いや、待て待て。野球?お前、何言ってるんだ?」

「いや、そのまんまだよ。野球やりたいの。」

「ちょ、待て。レースは?ドリームトロフィーシリーズは?」

 

トレーナーが慌ててる。珍しいなー。でも、私も本気だから引かない。

 

「だってさ、トレーナー、今まで言ってたじゃん。『好きなことを全力でやれ』って。」

「それは言ったけど、それレースの話だろ!」

「レース限定なんて言ってなかったよ?」

 

トレーナーが頭を抱え始めた。やっぱりこうなるよね。でも、こればっかりは譲れない。

私は少し笑いながら言った。

 

「だってさ、親父がずっと言ってたんだよ。『お前、外野手なら最強だ』って。」

 

「…それ、親父さんの冗談だろ?」

「そうかもしれないけど、実際イケるだろうしね?あとさ、トレーナーもイチリツミラクル大好きだったじゃん?」

 

トレーナーの眉がピクリと動く。やっぱり引っかかると思った。

 

「…いや、そりゃ現役時代は応援してたけど。お前がプロ野球選手目指す話とは別だろ!」

「同じだって!それに私は失敗するつもりは全くないから。」

「レースに後悔はないから、次の夢を掴みたい。応援してくれない?」

 

トレーナーが深く溜め息をつく。

勝手に決めてごめんだけど、これだけは曲げられないのだ。

長らく渋っていたトレーナーだったが、しばらく考え込んで息を吐いた。

そして、トレーナーは私の肩をポンと叩いて言った。

 

「分かった。やれ、ブレイザー。ただし、俺の知らないところで野球界の伝説にでもなってこい。」

 

「任せといて!」

 

そのやり取りを終えたら、なんだか気持ちが軽くなった。

もう私の走る道は、競馬場じゃなくて野球場に続いている。楽しみだなあ、次のステージが。

 

とは言ったものの…

私、小学生以来ちゃんと野球してないし、ドラフト指名されないよな。

普通に準備期間はいるよね~。

 

私はぽつりと口にした。

「とりあえず、トレーナー、野球関係の知り合いとかいない?」

 

「お前、そこはノープランなのかよ…!」

 

トレーナーが両手で顔を覆った。控え室には再び、静かな時間が流れる――。

 




ドラフト会議まで…約1年

リュウデンブレイザー
ダート/芝の短距離、マイルで活躍。G1、Jpn1含む重賞13勝。
赤みのある栗毛で、跳ねた耳に野球ゲームのキャラ風の髪飾りをしている。長身で筋肉質。
父は元地方トレセン学園トレーナーで、母は野球好きな元競走ウマ娘。
快活で明るい性格だが、かなりマイペース。
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