重賞ウマ娘、球界へ   作:eeffdd

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重賞ウマ娘、指導者と対面する

野球転向をトレーナーさんに表明してから、早いもので1か月が経った。

今日はその“本格的な第一歩”だ。

私はトレーナーさんと一緒に、北関東にあるとある独立チームの練習場へ向かっていた。

 

「いやぁ~、トレーナーさんには色々と動いてもらって悪かったね!」

 

「全然悪いと思ってない顔してんな!」

 

「んー……まぁ、感謝はしてるよ?ほんとに」

 

おかげで、私はようやく“野球選手”としてのスタートラインに立てる。

だから、感謝の気持ちはあるんだよ、顔に出てないかもしれないけど。

 

「ブレイザー、この1か月で衰えてないだろうな?」

 

「当たり前じゃん。毎日バッセン通ってたし、素振りもしてたし、あと、リハビリ中の友達にも手伝ってもらって捕球練習してたし!」

 

「ターフで何してんだよ……。野球の練習に付き合える娘なんていたのか?」

 

「マックイーンが暇そうだったからね!」

 

トレセン学園一のト●●チことメジロマックイーン。根は真面目だけど、ああ見えて暇な時は意外と付き合ってくれる。

 

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練習場に着くと、芝のグラウンドに照り返す太陽と、白球の音が出迎えてくれた。

 

「ブレイザーちゃん!初めまして!ムネサワシャインです、よろしくね!」

 

「本物のシャインさんだー!よろしくお願いしまーす!」

 

私は思わず声を弾ませて、シャインさんと握手する。

背丈こそ私の半分くらいだけど、握った手のひらは硬くてしっかりしていて、ちょっと驚いた。

 

「ブレイザーちゃん、結構練習してるみたいだね!ガチで来てくれてお姉さん、嬉しいよ〜!」

 

涙目になりながらも笑顔なシャインさん。テレビで見た通りのウマ柄で嬉しいな~

 

「何回か手のひらの豆潰れた気がするし、努力はしてます!」

 

「元地方のウマ娘だからな。野球だけで皮膚が硬いわけではないかもだぞ?」

と、トレーナーさんが何気なく突っ込んでくる。

 

「失礼なトレーナーさん!私、まともにケンカしたことなんてないからね!?」

 

「大丈夫ですよ、ブレイザーちゃん。カワヌマさんも、ちょっと言い過ぎですよ!」

 

と、シャインさんも笑いながらフォローしてくれる。

和気あいあいの空気の中で、シャインさんが真顔になって話を切り出した。

 

「さてと。今日は、入団テストを兼ねて練習参加してもらいます。問題なければ、そのまま紅白戦にも出てもらう予定です!」

 

「今日中に試合!? いきなり実戦か?」

と、トレーナーさんが目を丸くする。

 

「はいっ!当初は“ドラフト直前の公開練習”くらいの話だったんですけど、URAとEBL事務局で協議して、一定の条件付きで許可が出たんですよ!」

 

「そんなお偉いさんまで話が行ってたのか……?」

トレーナーさんの顔が一瞬で青ざめる。まあ、無理もない。

 

「で、条件って?」

 

「簡単に言えば、“身バレ防止”ですね!GⅠウマ娘が引退前に野球練習なんてしてたら、目立ちますから」

 

そう言いながら、シャインさんは紙袋を渡してきた。見た目以上に重くて、手を突っ込むと……なんか見覚えのあるものが。

 

「顔と髪形を隠すだけでも、ウマ娘はかなり印象変わるんですよ。今回は“変装”して出場してもらいます!」

 

袋から取り出したのは――

 

「……え、トラのマスク?」

 

目の前にあるのは、まさにバラエティ番組かお祭りで使われそうな、有名プロレスラーのそれ。

でも、シャインさんは本気の顔でうなずいている。

 

「い、意外とバレませんから!ほら、プロレスラーとかも、素顔知られてない人多いでしょ?」

 

確かにそうだけど……。

私はマスクを見つめながら、ちょっとだけ未来の不安を覚えた。

けど、それ以上にワクワクしてる自分もいるんだけどね。

 

「ま、最終的にバレなきゃ大丈夫よね!」

 

そう納得して、私は”虎”になった。

 




マックイーン「…誰かが噂している気がしますわ」
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