メインヒロインより可愛いモブの田中さん   作:3pu

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第17話 中山君は良い人

 

『おはようございます、中山君。今日はちょっと遅いですね』

『まぁ、ちょっとな。ふぁ〜。とりあえず、おはよう、田中さん』

 

 私が中山君のお隣になってから二週間が経過しました。

 先ず報告としましては中山君とは仲が良くなれたと思います。

 どれほどかと言われれば説明が難しいですが、知り合い以上友人未満といった感じでしょうか?

 

『おっ、そのパンコンビニで新発売してたやつじゃん』

『はい。美味しそうなのでついつい買ってきちゃいました』

『ほーん、味の感想は?』

『ふわふわのパン生地が素晴らしくて、中にあるカスタードクリームが濃厚でとっても美味しいです』

『マジか大絶賛じゃん。俺も今度買ってみようかな』

『はい。是非、食べてみてください』

『あっ、クリームほっぺに付いてるぞ』

『なっ!?どこですか?』

『くくっ、大丈夫大丈夫。ウソだよ』

『っ〜〜!?中山君は意地悪です』

『すまんすまん。つい』

 

 とりあえず、今ではこのように軽い雑談を行えるくらいになっています。

 会話の途中、揶揄ってくるのだけはたまに瑕ですが。

 中山君が話題を見つけて話しかけてくれるので大変助かっています。

 とはいえ、遠巻きに眺めていただけの一年生の頃と比べたら凄まじい進歩だと言えるでしょう。

 

 その他の報告としましては、中山君について色々なことが分かったということでしょうか。

 先ず身長は百七十八センチで何と私よりも十八センチ高かったです。

 そして、体重の方は六十五キロとやや細めでした。

 何故こんなことを知っているのかと聞かれれば、身体測定の結果をたまたま見せてもらったからです。

 代償に私の方も見せることになってしまいましたが、中山君が紳士だったおかげで体重の方は何とか公開せずに済みました。

 一応プロポーションを維持するために頑張っているので、個人的には見られても問題ないとは思っていたのですが。

 それでも中山君に少しでも太っていると思われるのが嫌だったので見せずに済んだのは助かりました。

 そんなわけで、とにかく中山君はとてもスタイルが良かったということです。

 正直、これで顔も良いのに彼女さんが居ないというのは信じられませんが、中山君とお友達の話を聞いている限りだと今のところはまだ居ないようです。

 ですが、それは時間の問題でしよう。

 何故なら──

 

『よいしょっ。えっと、これを運んだ後は』

『委員長。ノートは俺が配っとくから。プリント仕分けとけよ』

『本当!?助かるよ中山君』

『別に自分のノートを取りに来たついでだ。気にすんな』

 

『……あー分かんねぇ』

『どこが分かんねぇんだ?一応今の範囲は解けたから教えるぞ』

『マジ?ここなんだけどさ』

『そこはなぁ──』

 

 ──中山君はとっても良い人だからです。

 私が困ってそうだなと思った時点で、中山君は既に側にいて手助けしていて、またその時に恩着せがましい様子もなく当たり前のように行っていました。

 一見、他人が困っていたら助けるというのは簡単なように見えて凄く難しいです。

 例えば、重い荷物を抱えているお婆ちゃんが道をヨタヨタと歩いているのを見て、重そうだなぁという感想を殆どの人が持つでしょう。

 ですが、ここから代わりに持ってあげよう。見ず知らずの他人に手伝いを申し出ようというのは中々出来ません。大抵が遠巻きに眺めて終わってしまうでしょう。

 私も一応助けると思いますが、それは冷乃ちゃんへの贖罪(しょくざい)という意味合いが少なからず含まれており、純粋な善意からとは言い難いです。

 けれど、中山君はそういう邪念が一切なく気が付いたらすぐ条件反射で動いているんです。

 これは中山君が人助けを当たり前だと思える素晴らしい人だからこそ出来る芸当。

 しかも、相手は可愛い女の子に限らず困っている人なら男子だろうと手を差し伸べるのです。

 その中には、助けられて好意を持つ人がいても何らおかしくはありません。

 いいえ、絶対何人かいるでしょう。

 その人達が動けば中山君はあっという間に彼女が出来るはずです。

 私がそんなことを考えていると、隣で鞄を漁っていた中山君が『あっ!?』と声を上げました。

 

『どうしました?』

 

 突然の大声にびっくりしながらも、私が何があったのか尋ねると中山君は『悪い。実は田中さんに会ったら渡そうと思ってた物があるのを今思い出したんだよ。はい、これ』と言って鞄の中からあるものを取り出しました。

 

『これは私の……』

 

 それを受け取ってみてると、私の手のひらに置かれているのはイルカのアクリルキーホルダー。

 私が冷乃ちゃんと初めて遊びに行った時の記念に買ったもので、つい昨日無くしてしまったはずのものでした。

 どうしてこれを中山君が持っているのか?

 疑問を持った私は中山君の方を見ると、彼は嬉しそうに鼻を人差し指で擦りました。

 

『昨日無くしたって話してただろ。で、何となく学校に行く途中に見たなと思って記憶を頼りに探してみたらたまたま見つかったんだよ』

 

 そして、中山君はキーホルダーを手に入れた経緯を軽い口調で語ってくれました。

 しかし、私は察してしまいました。

 何故、今日に限って中山君がいつもより眠そうにしているのかを。

 そして、遅い時間に登校してきたのかを。

 そう。

 多分、中山君は朝来る途中に私のストラップを探していてくれたのです。

 おそらくですが、昨日の帰り道も遅くまで。

 でないと、こんな小さなキーホルダーを見つけられません。

 

『ありがとう、ございます。これ本当に大事にしてたので凄く嬉しいです』

『そうかそうか。見つかって良かったな』

 

 私は思わず泣きそうになりましたが、何とか堪えながら精一杯の感謝を伝えると中山君は満足そうに微笑みました。

 

 私一人なんか為にそんな動いてくれるなんて、本当に中山君は良い人です。

 でも、それと同時に酷い人でもあります。

 だって、こんなことをされたら勘違いしちゃうじゃないですか。

 私が特別なんじゃないかって?

 どうしても、期待してしまいます。

 

(あぁ、本当に悪い人ですね中山君は)

 

私は心の中で中山君に悪態をつきながら、心地よい胸の高鳴りにしばらく身を委ねるのでした。

 

 

 

 

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