毀剣終生伝   作:ジエンドオブザラストファイナル

8 / 11
8.独立

9月5日

 砂糖とバターたっぷりのケーキを食べるため、戦争を止めることになった。さすがに暇つぶしと面倒くさいの境界を越えてる感じがするけど、やるっきゃない。

 

 今日は手始めに、村を襲いに来た占領軍をぶちのめした。

 

 危なくなったら手を貸すつもりだったけど、必要なかった。パナピアとクロネの二人で楽勝。

 

 というのも帝国の連中、十年前より装備は良くなってる割に一人一人の練度が低くなってる。大王流と剣王流の使い手なら苦戦する方が難しい。

 

 戦いの後はけが人の手当てと話し合い。族長は話が分かる人で、戦いの終わらせ方にめどがついた。

 

 明日からもっと忙しくなる。早く寝よう。

 

 

 

9月10日

 日がな一日話し合い。以下内容メモ。

 

 停戦に必要なことは、大きく分けて二つ。

 

 一つ、落としどころを探る。死人が出ている以上ごめんして仲直りとはいかないものの、お互い全滅するまでやり合う訳にもいかない。どこで妥協するかを族長、有力氏族の人たちと打ち合わせ中。明日には結論が出るだろう。

 

 もう一つ、帝国を交渉の席に着かせる。こっちがもう一方的に蹂躙できる相手じゃなくなったことを分からせ、争いよりも話し合いが得であると思わせなきゃいけない。

 

 やることがたくさん。忙しい。

 

 

 

9月11日

 総督をぶち殺す。まずはこれが確定した。

 

 どうも獣人族に散々いばり散らしたみたいで、こいつだけは絶対許さんと族長たちが息巻いている。それさえ叶えば交渉に応じるという。

 

 殺さなきゃ気が済まないって気持ちはよく分かる。総督には死んでもらおう。

 

 その後は二択だ。総督の死を重く見た帝国が、獣人を深刻な脅威とみなして援軍をよこし、血みどろの絶滅戦争になるか。それとも、話が分かる後任がやってきて交渉の席に着くか。

 

 前者だったら仕方ない。責任をとって私が帝国を潰そう。

 

 とにかくまずは、総督をぶっ殺す。

 

 

 

9月12日

 朝昼晩と、占領軍が散発的に襲撃してくる。だけど初日にやってきた連中より士気も練度も低い。

 

 たぶん寄せ集めの新兵か何かだろう。私たち三人のうち一人が出張ればどうとでもなるから、寝る順番を決めて対応した。付け焼刃の大軍なんて大王流からしたらただの的だ。

 

 使い捨ての戦力を小出しにするあたり、総督は兵法を知らないアホなのか、それとも時間稼ぎがしたいのか。どっちしろこっちも立て直す時間が欲しいし、しばらくは付き合ってやろう。

 

 

 

 

9月14日

 族長たちに大王流を教え始めた。講師はパナピア。

 

 私たちの肩入れがなくても帝国と渡り合えるように、みんな物凄く真剣だ。加えて、大王流の膂力一辺倒な術理と、力持ちな獣人の特性が合致したのか、習得が異様に早い。

 

 徒党を組むなら、初段程度の腕前で十分かな。ひとまずそこを目標にしてもらおう。

 

 

 

9月20日

 占領軍の襲撃を何度か迎え撃って、情報源を手に入れた。捕虜だ。

 

 総督は高額報酬で傭兵を寄せ集めるのと並行して、大攻勢の準備を整えているみたい。見たことないほど巨大な大砲、一抱えもある弾頭なんかの目撃証言がたくさんあった。

 

 戦略兵器の類だろう。左遷された身でそんなものを用意するのは苦労するだろうに、頭が下がる。現物があるってことは、そろそろこっちに向けて進軍が始まった頃かな。

 

 どうしよう。パナピアにはまだ銃弾の捌き方しか教えてない。榴弾とか使われたら死んじゃう。

 

 どうしよう。

 

 

 

9月30日

 族長たちが占領軍を撃退した。

 

 まだ初段未満なのによく頑張った。今まで打ちのめされてきた分の恨みが相当溜まってたんだろう。逃げていく兵士たちの背中に嬉しそうな雄叫びを上げていた。

 

 なぜか私が感謝されたのには反応に困った。勝手に教わって勝手に強くなったのはあの人たちだろうに。

 

 ともあれ、これで戦力は十分。時間も残っていない。

 

 総督を迎え撃とう。

 

 

 

10月15日

 総督を殺した。パナピアが。

 

 さて、帝国はどう出るか。万一に備え、帝国を滅ぼす方法を考えておこう。

 

 皇族の血筋根絶やしとかでいいかな。

 

 

 

11月10日

 なんか女帝に感謝された。

 

 なんか獣人族は自治権を取り戻した。

 

 なんかよく分からんけど、全部うまくいったっぽい。

 

 これでおいしいケーキが食えるぜ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 反乱はその日に終わるはずだった。

 

 積み重なった憎悪が爆発して始まった、占領軍と獣人族の内乱。占領地を統べる総督は獣人族の完全な隷属を狙い、あえて戦いを長引かせ獣人族を心身両面で締めあげてきた。

 

 とはいえ、獣人族の町は中央街道を利用する商人たちが立ち寄る物流の要衝だ。これ以上争いを続けると、隷属を叶えた利益よりも損失の方が大きくなる。

 

 故に、その日差し向けた戦力は圧倒的だった。帝国の最新装備で身を固めた一個中隊が町になだれ込み、反抗的な戦力をことごとく射殺し、一族を治める族長を衆人環視の元で処刑する。そうして完全に獣人族の尊厳をへし折り、従順な家畜としての自覚を刻み込む。総督にとって最大の利益をもたらす形で反乱が終わる。総督はもちろん占領軍の誰一人さえ、その結末を疑わなかった。

 

 が、彼は知らない。

 

 理不尽な異分子が、いつの間にか敵に紛れ込んでいたことを。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「第一から第三小隊は族長の身柄を抑える。第四から第六は町を制圧し、反乱分子を殲滅しろ! 畜生共に身の程を教えてやれ!」

 

 丘の上の町へ馬を走らせながら、占領軍中隊長が激を飛ばす。中隊は気炎を上げ、作戦通り二手に分かれた。

 

 獣人の町への入り口は、西と東に一つずつ。連日の襲撃で門扉は吹き飛ばされている。櫓の見張りはおらず、いたとしても一方的に狙撃できる。占領軍の接近を阻むものは何もなかった。

 

 さとうきび畑を踏み倒し、西と東の入り口へ両隊が同時に殺到する。

 

 常ならば反抗的な獣人たちが、無謀にもその身一つで騎馬を止めようと襲い掛かってくるところだ。

 

 しかし今回は違った。

 

「なんだあのガキは?」

 

 西と東の小隊長がそろって訝しむ。

 

 焼け焦げた門扉の前に、少女が佇んでいる。抜き身の直剣を構え、占領軍を正面から迎え撃つ構えだ。

 

 その姿を認めた多くの占領軍が嘲笑する。非力な少女が一人で剣を構え、何ができるというのか。玉砕覚悟にしてもお粗末が過ぎる。

 

 先頭の小隊が馬上で銃を構える。上下の揺れを計算に入れた熟練の照準で、少女の細い体に狙いをつけた。

 

 帝国はいつまでも投石や弓矢、剣で戦おうとする時代遅れとは違う。自負と優越感に口端を吊り上げ、一斉に引き金を引く。

 

 それが、帝国史に残る空前絶後の敗北の始まりだった。

 

「大王流・山断ち」

 

 東では、獣人の少女が剣を振り下ろす。

 

 かと思うと、兵士たちは空を飛んでいた。かつて山を断ち割った一撃を疑似的に再現した技により、割られた大地と共に空高く打ち上げられたのだ。発射された銃弾は消し飛ばされ、兵士たちは落下を待つまでもなく一人残らず絶命している。

 

「魔剣・発動」

 

 西では、獣耳を持たぬ少女の剣から、青々と輝く刃が伸びる。柄頭の魔石から明星のごとき十字の光条が放たれる。

 

「剣王流──」

 

 元の倍ほどに延長された輝く剣を構え、少女が踏み込む。

 

「脈断ち」

 

 輪郭が揺らぎ、消えた。

 

 一瞬の後、占領軍を追い越した真後ろに現れる。間を置かず、兵士たちは首から噴水のごとく血を吹き上げ、落馬した。

 

 緩急自在の高速歩法、朧ですれ違いざまに、相手の急所を突く剣王流の基本技を叩き込んだのだ。延伸された魔剣の刃は、複数の標的を精密かつ一斉に薙ぎ払うことができる。

 

 わずかに血で汚れた刃を振るい、残身する。背後では、主を失った軍馬が減速し、所在なさげないななきを上げている。

 

「えっ、終わり?」

 

 あっけない勝利に、東西を守った少女二人は同時に困惑の声を上げたのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 占領軍の軍勢に圧勝したことを受け、獣人族は色めきたった。パナピアとクロネ、そしてその師である先生の力があれば、帝国の支配を脱し、自分たちの国を取り戻せるのではないかと。

 

 これに待ったをかけたのは先生だ。

 

「無理です。向こうにもメンツがある。反乱起こされて自治権を回復されましたなんて認めるくらいなら、破れかぶれの全面戦争になります」

「ではどうすれば……」

「あっちの顔を立てつつ、有利な条件で和平を結ぶ。向こうが話し合いに応じるかは一旦置いといて、どこまで譲歩できるかを打ち合わせしましょう」

 

 そうして先生と族長、各氏族の長たちは、連日族長宅に集まって話し合いをしている。

 

 一方のパナピアとクロネは町の見張りと負傷者の手当て、それから有志を募って大王流の稽古を付けた。

 

 まともな戦力を増やす必要があるとの先生の指示で、二大流派のうち、獣人の優れた膂力を活かせる大王流を教えることとなった。横暴の限りを尽くした占領軍に一泡吹かせるのが待ち遠しいらしく、上達速度はクロネたちから見ても大変に速い。

 

 その間にも占領軍の襲撃はあったものの小規模かつ散発的で、クロネとパナピアが駆け付けると何の問題もなく鎮圧できた。その余裕ぶりと来たら、気を利かせたクロネが兵士を何人か生け捕りにして「今、総督さんは何してるの?」と勝手に情報を聞き出すほどだ。

 

 そのようにして明らかになったことは、総督側の体制が揺らいでいること。初日にクロネたちが圧勝した兵士たちが最精鋭だったようで、未熟な兵士と傭兵の寄せ集めしか残っていないらしい。

 

「よくやった、クロネ。ふーむそうかそうか……」

「えへへー」

 

 情報を受け取った先生がクロネを労い、族長たちとの話し合いを更に進め、初戦から一か月経った頃。

 

 話し合いの結論が出た。

 

「総督をぶっ殺す」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 西方植民地総督、バルグラ・レル・ガンドルドは帝国の第二皇子である。

 

 幼少のみぎりから父の仕事ぶりに憧れていた。未開の生活を送る外国を次々に切り拓き、帝国の優れた技術力と軍事力で現地民を教え導く。反抗的な土人たちも見捨てずに力の差を教え込み、帝国の寵愛を受け入れるよう調教する。外征と拡大こそ帝国の使命だと信じている。

 

『それは価値観の押し付けです。彼ら彼女らには独自の考えと文化がある。お父様は内政の方はともかく、外政については時代錯誤と言わざるを得ません』

 

 その信条に真っ向から異を唱えたのが妹、第一皇女だった。

 

 主戦派のバルグラと、反戦・協調派の皇女。先帝が年老いて継承権争いが本格化すると、二人は血で血を洗う派閥争いに身を投じ──結果として、バルグラは敗北した。

 

 皇位についた妹は軍事、外征の予算を内政に回し、民にも諸外国にもこびへつらい帝国の恥をさらしている。バルグラは皇位争いにおける致命的な失敗を指弾され、辺境植民地に左遷された。派閥の力は失われ、残ったのはわずか一個大隊の歩兵と騎兵のみ。

 

 だが、野心はまだ燃えている。

 

 幸い、植民地の住人は獣人族だ。知能も戦力も洗練された帝国人とは大きく劣る。重税を絞れるだけ搾り取って財を蓄え、剣王国とのパイプを持つある組織に流し、人脈と基盤を整えていく。いずれは獣人を使い勝手のいい兵士に調教し、私兵として使うのもいいだろう。

 

 そうして妹への報復を企みながら、獣人族をいたぶっていたある日。

 

 バルグラの二度目の挫折が始まった。

 

『剣王国に根を張っていた例の組織が、壊滅しました』

 

 部下からの報告に思考が止まった。

 

 隣国、剣王国の上層部ともつながりのある人身売買組織。武器や資金、人材の面でも取引のあるそれが、何の前触れもなく壊滅した。

 

 裏を取ってみれば、出てきたのは「毀剣」と呼ばれる剣士だ。その剣士は組織の末端から後ろ盾である自国の王族まで含め、根こそぎ皆殺しにしたという。

 

 バルグラは頭を抱えたが、諦めはしなかった。取引先は帝国内にもいるし、妹の治世に不満を覚える層もいる。そうした層に粘り強く働きかけ、味方を増やしていけばいい。ていうかそれしかない。

 

 勢力の基盤を失ってもめげずに野心を燃やしていたところ、更なる厄介ごとが重なる。獣人族の反乱だ。

 

 騒ぎを聞きつけた妹からは平和的な話し合いを促す書状が送られてきたが、知ったことではない。言葉を解するだけの畜生の分際で帝国人に逆らうなど言語道断だ。徹底的に痛めつけ身の程を分からせてやる。

 

 反乱はおおむねバルグラの予想通りに推移した。帝国の先進的な装備と戦術の前に、前時代的な畜生種族共はなすすべがない。適当になぶり殺しにしてから族長を処刑でもすればいい家畜になるだろう。

 

 そんな思惑が、跡形もなく砕かれる。

 

「総督! 獣人鎮圧に向かった第二中隊が全滅しました!」

「……ふぅー」

 

 報告にやってきた部下へ手のひらを向け、大きく深呼吸。

 

 たっぷり一分は沈黙してから、やっと言った。

 

「続けてくれ」

「は。斥候によると、奴らは有段者を味方につけたようです」

 

 有段者。隣国、剣王国が誇る二大流派のうち、高い段位を有する者のことだ。

 

 軍勢としての強さを掲げる帝国とは対照的に、剣王国は個人戦力を突き詰める。有段者はその方針の権化と言える怪物で、一人が中隊規模の戦力を有するとされる。

 

 帝国と剣王国は一昔前に干戈を交えて以来、交易を通じて友好な関係を保ってきた。獣人の国を併呑した折も剣王国は不干渉を貫き、その後の占領政策にも一切の口出しはしなかった。今更になって首を突っ込んだところで双方に得がないのは明らかで、辻褄が合わない。

 

 しかし事実として剣王国の有段者が獣人族の味方をしている。経緯や思惑を云々している場合ではない。

 

 苛立ちに頬をひくつかせながら、呻くように尋ねる。

 

「どちらだ。大王流か、剣王流か」

「両方、一人ずつ……」

 

 バルグラが壁を殴りつけ、兵士は口を噤んだ。屋敷が揺れ、石造りの壁に拳型のへこみが穿たれている。

 

「くそ、クソクソクソぉっ!!」

 

 執務机を蹴り飛ばした。本棚の本をすべてかきだし、重厚な窓ガラスをたたき割り、カーテンを引き千切る。顔を真っ赤にして目につくものすべてに当たり散らす。

 

 一人でも厄介な有段者が二人現れ、手勢の中で最も練度の高い第二中隊を全滅させた。こんなバカなことがあるか。

 

 妹に負けて以来、すべてがうまくいかない。知性のない畜生共に反乱を起こされただけでも十分な恥なのに、このままではどこからか湧いて出た化け物のせいでまたも敗北してしまう。

 

 負けるくらいなら──バルグラはためらわず、決断した。

 

「おい」

 

 地獄の底から響くような声と眼光に、立ち竦んでいた部下の肩が跳ねた。

 

 構わずバルグラは命じる。

 

「傭兵を募れ。質はどうでもいい。とにかく畜生共にけしかけて時間を稼げ」

「は、はっ。時間といいますと……」

 

 衝動的にこぶしを振るい、壁を殴りつける。

 

 血走った目で兵士を睨みつけ、鼻息を荒くしている。

 

「我々が装備を調達するための時間だ。有段者相手に豆鉄砲では話にならん。焦るあまり戦力の逐次投入を繰り返していると思い込ませるんだ」

 

 総督府に支給された装備は植民地の統治に必要十分な量と質を揃えているが、相手が有段者ではまるで足りない。あらゆる伝手、派閥の生き残りを総動員して準備を整えなければならない。

 

「……り、了解しました」

 

 なりふり構わないバルグラの言い分に気おされながらに、部下はどうにか答え部屋を辞した。

 

 一人になったバルグラは、憎悪に満ちた目を窓外に向ける。そのはるか先に生き残った獣人族の町がある。

 

「皆殺しだ」

 

 筋が通らない、とわずかに残った理性が訴えている。そんなことをしても自分たちが損をするだけだ。民なくして統治はできない。

 

 しかしそれが分かっていても、バルグラにはもう耐えられなかった。理不尽に理不尽が重なってまた敗北の屈辱を味わうくらいなら、いっそあらゆるものを灰燼に帰す。

 

 こうして無敵と化した総督が、刃向かうものすべてを吹き飛ばすため、暗躍を始めたのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 総督をぶっ殺す。

 

 結論が出てからの先生の動きは迅速だった。むしろ迅速過ぎるほどで、パナピアと七名の獣人の若者を指名して馬車に乗せ、ろくな説明もないまま町を出た。

 

 なぜそこまで急ぐのか、どこへ向かっているのか。当然の疑問に、先生は馬を繰りながら答えた。

 

「時間切れだ。これ以上動きが遅れると負ける」

 

 焦りの根拠は、クロネが捕えた捕虜の情報だ。

 

 初戦に全滅させた一個中隊が相手方の精鋭だった。だとすれば、それよりもはるかに劣る傭兵と新兵の寄せ集めを断続的に送ってくるのは筋が通らない。なんらかの策を実行するための陽動か時間稼ぎと考えられる。

 

 策の内容は不明だが、こちらの新戦力を前提としているなら生半可なものではない。剣王国が誇る二大流派の達人が対処できない内容となると、長射程高威力の大砲を用いた飽和攻撃の可能性がある。

 

 もちろん可能性の話だ。そんなことを実行すれば、占領軍は勝利できる代わりに得られるものが何もない。戦争の目的は相手方の殲滅ではないのだ。

 

「逃げを打ってる可能性もある。だとしても、総督がヤケクソ起こして仕掛けてこない保証はねえ。どっちにしろ総督はぶっ殺すの確定なんだから、万が一への対処込みでこっちから攻め込むんだよ。分かった?」

「たぶん分かったわ!」

 

 力強く頷くパナピアと、獣人族の若者たち。彼ら彼女らは総督に家族を殺された恨みがあり、戦意の高さのおかげか大王流はすでに初段まで習得している。主戦力のパナピアをフォローするために連れて来た人材だ。

 

「私は基本的に何もしない。頑張れよ」

 

 先生は首を捻って荷台を一瞥し、静かに激を飛ばした。パナピアを筆頭に、獣人の若者たちが力強く頷く。先生の実力は疑うべくもないが、総督と決着をつける役目は獣人族のものだ。たとえ先生でもそこは譲れない。

 

 と、そこまで考えてパナピアは気づいた。やろうと思えば、先生はパナピアたちを置いて一人で総督を仕留めにいくこともできたはずだ。なのにこうして獣人族を引き連れてきたということは──胸がいっぱいになって、パナピアは先生の背中に抱き着いた。

 

「なんだよ。暑苦しいぞ」

「ありがと、先生」

 

 先生は一拍間を置いて、「ふん」と鼻を鳴らす。

 

「知らねえけど受け取ってやる。どういたしまして」

 

 このとき、パナピアは誓った。

 

 戦いが終わり、故郷の情勢が落ち着いたら、必ず先生への恩を返す。命の限りを尽くして報いることを。

 

 そうして決意を新たにしたパナピアと、恨み骨髄の獣人族たちを乗せて馬車を走らせ、三日後。

 

 総督率いる占領軍と会敵した。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 会敵は唐突だった。

 

 なだらかな丘を越えた先の盆地に、三つの塔が建っていた。よく見るとその塔は荷車に乗せられ、それぞれ五頭ずつの馬に引かれている。それを囲うように騎乗した兵士たちがひしめいていた。進軍中の総督軍だ。

 

 盆地に障害物はなく、丘を越えると同時に双方は互いの姿を認める。

 

「やっべ」

 

 先に動いたのは総督だった。三つの塔が緩慢に倒れ、先端をパナピアたちの馬車に向ける。

 

 先生のつぶやきと、塔の先端に空いた穴から、パナピアにもやっと塔の正体が分かった。

 

 あれは大砲だ。町を焼き払うための兵器を今まさに運んでいる最中だった。先生の予想は正しかったのだ。

 

 そして、それほどの大火力を誇る大砲が自分たちに向けられている。先生は前進を続けているが、距離は目測で二キロ弱あり、こちらの間合いに捉えるにはあまりに遠い。

 

 理解するやいなや、パナピアは御者席から馬車の屋根に跳び乗った。

 

「おい何してる!」

「砲撃を迎え撃つわ! 剣王流の礫払いなら──」

「おバカ!」

 

 今こそ身に着けた技を使うときと意気込んだものの、先生は叱責とともに下へ降りるよう身振りで示す。

 

 パナピアが意図を図りかねる間に、第一射が始まった。

 

 三門の大砲が火を吹く。音はなく、煙と閃光が砲身を覆う。

 

 一瞬の後、馬車を覆うように無数の火花が弾けた。

 

「は、えっ?」

 

 その火花は、礫払いで弾丸を切り払ったときのそれと似ているが、量が桁違いだ。馬車を中心としたドーム状に、まるで橙色の被膜が形成されたように映るほどの閃光。少なくとも数百発の弾丸が切られたのだろう。

 

 それを成したのはパナピアでも、車内でいまだに目を白黒させている獣人族の若者たちでもない。

 

「大人しく伏せてろ」

 

 先生だ。片手で手綱を握り、もう片方の手に折れた直剣を握っている。

 

「榴散弾だ。あれの防ぎ方はまだ教えてねえ」

 

 榴散弾。数百発の鉄球を弾殻に詰め、標的の頭上で炸裂させる対歩兵用の砲弾だ。

 

 当然、パナピアでは対処できない。剣王流の礫払いは相手の目線と殺気、銃口の向きを見切ることで弾道に刃を先回りさせる技だ。数百発の鉄球の雨を降らせる戦術兵器は想定されていない。

 

「近づくまでは手伝ってやる」

 

 言うや否や、第二、第三射。先生は折れた剣──毀剣を無造作に振るい、そのたびに馬車は輝く閃光に覆われる。腹の底から震える爆音が、遅れて獣人たちの耳を劈く。

 

「い、一体何が……?」

 

 車内の獣人たちは夢を見ているような気分だった。すさまじい砲撃を受けていることは分かるが、それを折れた剣で軽々と捌いている先生は、完全に理解不能だ。

 

「いいから、準備しなさい! 敵はすぐそこよ!」

 

 先生のデタラメさに慣れたパナピアが激を飛ばすと、獣人たちはめいめい武器を取り、戦いに備える。

 

 馬車は順調に総督軍へ接近する。徐々に砲撃の閃光と爆音のズレが小さくなっていく。総督にとっても不意の遭遇だったのだろう、道中に罠の類はなく、ただ榴散弾による砲撃のみだった。

 

 やがて砲撃が止む。

 

 馬車の正面に総督軍の陣容が迫る。騎乗した兵士たちが横一列に並び、長銃の銃口を向けている。

 

「横づけするぞ。こっからはお前らの出番だ」

「上等っ! みんな、準備いいわね!」

 

 おう、と獣人たちが威勢よく答える。

 

 先生は楽し気に唇を歪ませ、前進を止めない。兵士たちの一斉射撃を虫を払うように切り払って、軍勢に突っ込んだ。

 

 悲鳴と銃声。巧みに手綱を操り、軍勢に対して馬車を横づけする。停止するのを待たず、乗降口からパナピア率いる獣人族が飛び出し、白兵戦が始まった。

 

「積年の恨み、今ここで晴らす!」

「恥知らずの侵略者共! 一族の痛みを思い知れ!」

 

 戦況は、獣人族の圧倒的優勢だ。金属鎧と銃器で武装した帝国兵たちが、なすすべもなく蹂躙されていく。

 

 元より獣人族は膂力に優れ、白兵戦では無類の強さを誇る。それに対し帝国は間合いの外から一方的に射殺する戦術で有利を取ってきたが、剣王国の剣術を学んだ獣人たちに銃撃は通用しない。弾丸は躱され、切り払われ、狙いをつける一瞬の隙に距離を詰められ、兵士たちは紙のごとく斬り裂かれていった。

 

 瞬く間に数を減らす占領軍。

 

 このまま押し切れるかと、パナピアたちが甘い期待を抱いたとき、決死の反抗が始まった。

 

『なめるなクソ畜生共がっ!』

『イカサマ剣法使いやがって! こっちにも帝国式銃剣術があるんだよォ!』

 

 銃身に短剣を取り付けた長銃を、槍のように薙ぎ払い、突く。射撃が通じないとようやく理解が及び、捨て鉢の接近戦に打って出た。

 

 その動きは拙い。銃器の性能に優れた帝国には白兵戦の機会が少なく、そのための銃剣術を真剣に学ぶ者はほとんどいない。

 

 とはいえ、今まで右往左往するだけだった兵士たちが、死を省みずヤケクソの抵抗をしてきた。この急変に対応できず、ついに獣人族の一人が銃剣に貫かれる。

 

「ぐっ、クソッたれが……っ!」

『死ね獣野郎!』

『人間様に逆らうんじゃねえ!』

 

 ここぞとばかり寄ってたかって、帝国兵たちは倒れ伏した獣人をめった刺しにする。

 

「大王流・鬼貫きっ!」

 

 寄せ集まった兵士たちを、パナピアの剣が貫く。神速の突きを受け、兵士たちの上半身が血煙へ変じた。

 

 倒れた仲間に駆け寄るが、全身をくまなく突かれてとうに絶命していた。

 

 遠巻きに囲む帝国兵たちを睨みつけるが、兵士たちは恐れず銃剣を向けてくる。

 

『怯むな! 所詮は棒きれを振り回す未開の土人! 我ら帝国に敵う道理はない!』

『薄汚い畜生共が! 家畜らしく飼われていればいいものを!』

 

 帝国語の罵倒を、パナピアは不幸にも聞き取ることができた。

 

 幼い頃から、家族や親せきの話す言葉とは別に、帝国の言語を学ばせられた。単語の意味一つ間違うたびに鞭打ち一回。気持ち悪い笑みを浮かべた帝国兵が早口で何かまくしたて、聞き取りを間違えるとまた鞭打ち。歴代皇帝の名前を一つでも間違うと鞭打ち。パナピアだけでなく、獣人族すべてがこういった理不尽を強いられてきた。

 

 ふつふつとした怒りが総身を満たす。握りしめた直剣を、直観的に逆手に持ち替え、足を広げて大きく前傾の姿勢をとる。

 

「殺す」

 

 パナピアの姿が掻き消える。慌てて周囲を見渡す帝国兵。

 

 かと思うと、兵士たちの頭部が消失し、一斉に倒れ込んだ。パナピアは兵士たちの背後に現れ、また消える。別の兵士たちの体の一部が吹き飛んだ。

 

 仕組みは単純だ。怒りで箍の外れた脚力で駆け回りつつ、大王流の技を放っているだけ。戦いが終われば腱や筋繊維に後遺症が残るだろうが、構わない。ここですべてを出し切る腹積もりだ。

 

 戦いはなおも獣人の優勢が続く。青々とした盆地の草原が、みるみる赤黒く染まっていく。

 

 そうして数十分後。

 

「はあ、はあ……」

 

 佳境を迎えた。

 

 生き残ったのは九名。豪奢な装飾鎧をまとった馬上の大男と、その護衛の五人の兵士。獣人側はパナピアと二人の若者だが、パナピア以外は満身創痍でいつこと切れてもおかしくない。パナピアも限界を超えた反動が来ており、体の各所が軋みを上げている。

 

『十年前だ』

 

 装飾鎧の男──総督が、わなわなと震える声で言った。

 

『十年前のあの日、すべてが狂った。手勢を失い、獣臭い辺境に飛ばされ、挙句にこのザマだ。第二中隊、砲兵隊──数少ない手札もすべて失った。これほどの失態、どうあがこうと取り返しがつかん』

 

 総督はひらりと馬から下り、槍のように長大な銃剣を片手で構える。狙いは、パナピアたちの誰からも外れている。

 

『だからこそ』

 

 目尻が裂けんばかりに血走った目を見開いて、告げる。

 

『せめて貴様らだけは、絶対に殺してやる』

 

 その目に燃えるのは純粋な憎悪だ。利害や後先の一切をかなぐり捨てた、とにかく眼前の敵を消すことだけに専心する狂気が、総督を駆り立てる。

 

 長銃が火を吹いた。パナピアたちは見向きもしない。銃口はあさっての方向を向いており、礫払いを使うまでもない。

 

 そのはず、だった。

 

「何だと……」

「一体これは……」

「そんな……っ!?」

 

 生き残った二人の獣人が倒れた。驚愕に目を見開き、すぐに光が失われる。

 

 銃弾が、背後から二人の心臓を貫いていた。

 

 まさか後ろの兵士たちの死体の中に生き残りが紛れていたのか。

 

『はぁっ!』

「こんのっ!?」

 

 わずかに総督から視線を切った矢先、総督が突っ込んできた。

 

 銃剣による鋭い突き。剣王国にはない、帝国の術理に裏打ちされた連続突きは重く、疲労した腕で受けるのは危険だ。半身になり、一つずつ丁寧に躱しながら、反撃の機会をうかがう。

 

 突き、薙ぎ払い、突き、突き──動きが止まった。銃剣の引きに合わせてパナピアが前へ出る。

 

 総督の顔が醜い笑みに歪んだ。

 

「……っ!?」

 

 銃声。本能的に体を捻り、横へズレる。

 

 肩に衝撃を受け、前へつんのめった。少し遅れ、焼けた鉄棒を突き刺したような痛みが肩に迸る。

 

「な」

 

 何が起きたのか、考える暇はない。

 

 総督が銃剣を振り上げ、接近してくる。力の限りの振り下ろしを転がって避けつつ、地面を掌底で弾いてどうにか立ちの姿勢へ。

 

 総督の攻めは終わらない。あさっての方向へ向け、二度、三度と銃撃。

 

 とっさにその場に伏せる。カンカン、と高い金属音と同時、背後、側面から銃弾が飛んできた。

 

 うつぶせのパナピアに、総督が下段突き。同様に転がって避け、間合いの外で体勢を立て直す。

 

『ちょこまかとォ!』

 

 そのわずかな間隙に、総督は次に備えていた。長銃の弾倉を取り換え、弾を再装填。そうして再び銃口をあさっての方向へ向け、背面、側面からの変則射撃を行おうとする。

 

 その銃口の先を目で追うと、兵士の死体がある。正確には、死体が身に着けた金属鎧の曲面だ。

 

 それを見て、不可解な射撃の正体が分かった。

 

「跳弾……!」

 

 弾を固い曲面や凸面に当て、弾道を自在に変えている。本来ならこの草原に弾を跳ねさせるほどの物はほとんどないが、今は兵士の武具、防具がいくらでもある。

 

 総督はほくそ笑んだ。剣王国の達人に銃撃が通用しないのは知れたこと。帝国式銃剣術は、その前提を逆手に取り、意識外からの変則射撃で一撃必殺を狙う。当然、実行には高い技量が不可欠だが、幼少から銃剣に親しんできた総督には造作もない。

 

 たとえ仕組みが露見したとしても、複雑な軌道変化を初見で見切ることは不可能。この優位がある限り、疲労とダメージの蓄積したパナピアの不利は覆せない。

 

 とはいえ勝ったところで、総督の権勢は地に落ち、もはや再起は夢のまた夢なのだが──一人でも多くの獣畜生を殺せるなら、総督はもうそれでよかった。

 

「は、はは、ハハハハッ!」

 

 壊れた笑いを零し、跳弾で不意をつき、隙あらば刺突と薙ぎ払いで攻め立て、パナピアを追い詰めていく。その気迫と猛攻たるや、護衛の兵士五人が手出しできないほど激しく、間断がなかった。

 

 パナピアは防戦一方に追い込まれ、徐々に動きが鈍る。野生の勘で致命傷だけは避けているが、出血と痛みで体はどんどん重くなる。

 

 突破口が見えない。相手の弾道を読むことができず、どうしても体勢を崩される。どうにか跳弾の軌跡を見ることができれば──

 

「おバカかてめーは!」

 

 ふと、獣人の聴力が叱責の声をとらえる。

 

「何ごちゃごちゃ考えて受けに回ってんだ! 大王流はそうじゃねーだろ! ビビッてんじゃねーよ駄猫が!」

「虎だっつってんでしょーが!」

 

 反射的に言い返し、ぼやけた思考が澄み渡った。

 

 そうだ。相手の気迫と、変則的な技に呑まれかけていた。

 

 大王流は、相手の動きに合わせない。相手が何をしようと関係ない。

 

「はぁっ!」

 

 総督の射撃の直前、左右へ不規則にステップを刻む。側面からの跳弾が頭をかすめ、背面からの跳弾は腕を貫く。

 

 しかし利き腕は無事だ。足も無傷。続けて三、四、五発目が発射されるが、前後左右へランダムに動くパナピアをとらえきれない。

 

 五発撃てば再装填の隙ができる。強気に前へ出た。

 

 総督は拳銃を取り出し、発砲。跳弾ではなく、直接パナピアを狙っている。礫払いで無効化し、前へ。

 

 拳銃を投げ捨て、銃剣で迎え撃つ総督。

 

 それが致命的な失策だった。パナピアは大上段に剣を振り上げ、力任せに振り下ろす。

 

「大王流・山断ち」

 

 人外の膂力による一撃が、草原を断ち割る。総督の体は肩口から脇腹の下を消失させ、地に落ちた。

 

 多少の被弾をしようが、相手の技に対応できようができまいが、大王流は一撃必殺。正面から技を叩き込むことさえできれば、負けることはない。

 

 技を放った勢いで前に倒れ、勢い余って一回転、仰向けに寝転がる。全身の痛みと疲労で一歩も動けない。

 

 重たい瞼を閉じそうになっていると、快晴の空が広がる視界にひょっこりと、見慣れた灰色の少女が顔を出した。

 

「お疲れ。後は任せて寝とけ」

「おね……がい……」

 

 普段は口が悪いくせに、こういうときは憎まれ口の一つも叩かない。先生らしい言い草に安心して、パナピアは意識を手放した。

 

「さて。おいそこの人たち」

 

 教え子が目を閉じると、先生は生き残った兵士たち──総督の護衛五名に声をかける。

 

 五人は目に見えて慌てだし、一人が先生に銃を向け、もう一人がそれを制止し、もう一人がその争いをたしなめ、とてんやわんやしている。

 

 先生はそんな彼らの態度は気にせず、懐から封をした手紙を取り出し、彼らに近づいていく。

 

「えーと……『私、戦わない。あなたたち、これを渡す、あなたたちの王に』」

 

 両手を上げ、たどたどしい帝国語で話しかけると、五人はまじまじと先生を見返す。その視線は先生から、徐々にその手の手紙に移っていく。

 

『それはなんだ?』

「親書ってなんだっけ……『手紙。獣たちの王から、あなたたちの王へ』」

 

 総督を倒しても、本国とやりとりをしなければ争いは終わらない。この手紙は停戦交渉を呼びかける第一歩だ。

 

 五人の護衛はそっと先生に歩み寄り、ひったくるように手紙を受け取ると、警戒の目つきで睨んでから駆け足で姿を消した。

 

 後には、眠るパナピアと先生に馬。それから、夥しい死体と血の海が残されている。

 

 死臭に満ちた草原をぐるりと見渡して、先生は呟いた。

 

「骨が折れるな、これは」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 この後、先生はパナピアの応急手当を終えると、獣人たちの遺体の一部を回収。帝国兵の死体を集め、ささやかに弔いを済ませると、獣人族の町へ凱旋し、総督軍との戦いは獣人族の勝利に終わった。

 

 褒めたたえられるパナピアと、泣いて死を惜しまれる若者たち。勝利に湧き立つ町を他人事のように眺めながら、先生は次の段階に思いを巡らしていた。

 

 すなわち、停戦交渉か、絶滅戦争かだ。総督を殺されたことで本国がどう出るのか、予想がつかなかった。

 

 本国とは距離があり、親書が届いて反応があるまでは相当の時間があくものと思われた。

 

 ところが予測とは裏腹に、ひと月足らずで返答が届く。

 

 帝室の正式な封蝋の押された書簡の内容は、指定の日時、場所で話し合いに応じる、というものだった。

 

 

 

ーーー

ーーー

 

 

 

 停戦交渉の会談は獣人族族長の邸宅で行うこととした。日時と場所を一任するとあったので、こちらの本拠地、向こうにとっては敵の真っただ中を指定したのだ。どうせ会談では丁々発止のやりとりをするのだから、場所を決める段階で吹っ掛けて主導権を取っていけ、という先生の入れ知恵だ。

 

 ところが帝国の特使はあっさりと要求を聞き入れ、族長の邸宅へ足を運ぶことになった。

 

 半信半疑で指定の日時を迎えると、町の入り口に華美な装飾の施された五頭立ての馬車が乗りつける。儀礼服を着込んだ護衛に伴われて降りてきた男たちは洗練された所作で横に並び、迎えに出てきた族長たちと慇懃に挨拶を交わした。

 

「特別使節団代表、××と申します。このたびはお招きいただき感謝の念に堪えません」

「獣人族族長、××・ビースティアだ。こちらこそ、ご足労誠に感謝する。互いに実りのある話し合いになることを期待している」

「ええ、もちろんですとも」

 

 使節団は流ちょうな大陸共通語を話している。場所の指定もそうだが、獣人側に奇妙なほど歩み寄りの姿勢を示していた。

 

 使節団は未だ破壊の痕が残る町を通り、族長の邸宅へ向かう。道中、憎悪に染まった獣人たちの視線を浴びても彼らはどこ吹く風で、貼り付けたような笑みを崩さない。程なく短い道程を終え、護衛と共に邸宅へ入って行った。

 

 先生とクロネが見届けたのはそこまでだ。種族の未来を決める会合に、あくまでも善意の協力者である二人が口を挟むことはない。あとは族長とパナピアはじめ、種族の中心人物たちの役割だ。

 

「大丈夫かなぁ……急にケンカになったりしない?」

「どうでもいいだろ。どう転んでも後始末はつけるんだから」

 

 不安げに物陰から邸宅を見やるクロネとは対照的に、先生は心底気を抜いている。壁にもたれ、緩み切った顔で空を見上げていた。

 

 そうして正午から始まった、種族の行く末に関わる重大な会談だったが、わずか二時間足らずで終了した。邸宅からパナピアが矢のように飛び出してきて、離れたところから見守る先生とクロネに対し、両腕で大きく丸を作ったのだ。使節団はこの後族長の邸宅で歓待を受け、明朝に帝国へ会談の結果を持ち帰る手はずだ。

 

 パナピアの様子からして相当に首尾よく終わったと思われたが、結果は先生の予想を上回っていた。

 

「マジかよすげーな」

 

 停戦における諸条件を取り決めた書状を読み終え、先生は目を丸くした。

 

 簡単に表現すれば、獣人族の要求がすべて通った。獣人族は国としての自治権を取り戻し、帝国はこれを認める。統治の名のもとに行われた非人道的な行為を公式に謝罪し、賠償金を支払うなどなど。交渉ごとのお約束として、最初にふっかけた無茶苦茶な条件を向こうがすべて承諾した形だ。

 

 およそ駆け引きと呼べるものはなく、獣人族が出した要求の細部を詰めるのが話し合いの大半だったという。

 

 族長の私室に招かれ、書状をじっと見つめる先生に、族長がおそるおそる尋ねる。

 

「先生、やつらの思惑は一体……?」

「一つはしっぽ切りでしょうね」

 

 総督を務めていた第二皇子バルグラは、対外過激派の筆頭。今の皇室の主流派である穏健派に敗れ、左遷されたとはいえ、過激派の思想はまだ生きていた。占領地での圧政は、そうした思想の受け皿、はけ口として機能していた。

 

 が、今回の敗北で過激派がほぼ死滅したのをいいことに、帝国はすべての責任を総督になすりつけた。死人はしゃべらない。獣人族との軋轢はすべて、ごく一部の派閥の暴走によるもので、帝国は友好を求めている。そうした考えを反映したのが書状である、と先生は当たりをつける。

 

「つまり、虚言ではないと?」

「おそらく。念のため、大王流の鍛錬は続けてくださいね」

 

 無論です、と首肯する族長を尻目に先生は部屋を出る。長い廊下を歩きながら、腕を組んで思案に暮れる。

 

 解せない。

 

 今の皇室にとって、しぶとい過激派は頭痛の種だった。始末する好機として利用されたのは分かる。

 

 とはいえ、交わした停戦条約は獣人族に有利過ぎる。帝国の面子や手間を考慮していない。まともな使節団ならまず突っぱねる内容だった。

 

 先生の脳裏に、遠い昔に読破した歴史書の何冊かがよぎる。しかしそれらの知識と照らし合わせてみても、帝国の甘い態度は不可解なままだ。

 

「先生!」

 

 与えられた客室で頭を捻っていると、クロネとパナピアが入ってきた。後ろには眼帯の少女と、ニコニコ微笑を浮かべる女性の二人を伴っている。

 

「なんだ、誰だそいつら」

「分かんない。先生にどうしても会いたいっていうから」

「妙な真似したらただじゃおかないからね」

 

 よく見ると二人は詰襟の儀礼服を纏っており、腰には軍刀、胸のホルスターには武骨な拳銃を携えている。使節団付きの護衛の恰好だ。

 

 パナピアの牽制を受けても眼帯少女は無表情を貫き、女性の斜め後ろに影のように控えている。一方の女性は柔和な笑みを崩さず、先生の前に出た。銀髪碧眼のおそろしく整った顔立ちだ。

 

「お前、どこかで……」

 

 ふと、先生の記憶が刺激された。

 

 帝国の大都市、暗い路地裏。十年前のことだ。大人たちに追い回されていた女の子が、ちょうどこんな顔をしていた。

 

「あのときの子供か」

「思い出していただけましたか」

 

 女はぱあっと花が咲くような笑顔を浮かべ、淑女がスカートをつまむような仕草をしてから、思い直したように紳士的な一礼をしてみせる。

 

「皇室親衛隊が一人、マーシャ・ディールですわ。お見知りおきを」

「同じく、セントウだ」

 

 優雅な女、マーシャの振る舞いとは反対に、眼帯少女、セントウの名乗りは武骨で簡素。所属を考慮するなら、セントウの方がらしい態度だろう。

 

「私は先生って呼ばれてる、よろしく。ふうん、親衛隊か」

 

 皇室親衛隊は、帝国の皇族に仕える選りすぐりの兵士たちのことだ。高性能な兵器で全体としての戦力を追求する帝国軍とは違い、個としての戦闘力を突き詰めており、実力は剣王国の有段者に匹敵すると言われている。国の重鎮を擁する使節団の護衛としては妥当だろう。

 

 ただ、違和感がある。

 

 足運び、視線、息遣い、重心の位置。セントウはすべてにおいて隙がなく、洗練された武力が見て取れる。後ろからパナピアが殺気を飛ばしているのに気づきながらも悠々と受け流していて、実力は明らかだ。

 

 反面、マーシャは素人そのものだった。鈍感なのか、パナピアの威圧には気づかず能天気な微笑を保っている。

 

 訝しむ先生に、マーシャはとてとて歩み寄る。

 

「またお会いできて欣快に堪えませんわ、先生! 十年前のあの日から、貴女様への感謝を忘れた日は一日とてありませんのよ!」

「えっ、知り合いなの?」

 

 クロネが声を上げた。据わった目つきのパナピアも興味が引かれ、わずかに殺気が揺れる。

 

「十年前、帝国でゴタゴタがあったって話をしたろ。そんときの子」

 

 武者修行で帝国に渡り、軍に志願したものの門前払いを食らい、先生が失意に暮れていたとき巡り合ったのがマーシャだった。彼女はなぜか武装した大人たちに追い回されており、先生は鍛錬のため強い方の敵に回った。

 

 それからマーシャは先生に付きまとい、帝国語でしきりにまくしたてていた。その間も武装集団の襲撃は止まず、ひたすら相手をするうちマーシャは姿を消していたのだ。

 

 話を聞いたクロネとパナピアは、遠い目をする。

 

「十年前から先生は先生だったんだね……」

「外国で何を大暴れしてんだか……ま、事情は分かったわ。脅かして悪かったわね」

 

 パナピアは剣に添えていた手を離した。

 

 マーシャが首を横に振る。

 

「警戒なさるのは当然ですもの、気にしていませんわ。──改めて、先生」

 

 深々と頭を下げるマーシャ。手入れの行き届いた銀髪がさらりと垂れる。

 

「私の命を救ってくださり、本当にありがとうございました。この御恩は一生忘れません」

 

 この気持ちを伝えるために、大陸共通語を身に着けたのだろう。綺麗な感謝の言葉に、万感の思いが込められていた。クロネとパナピアは胸を打たれたようで、微笑ましく見守っている。

 

 一方、先生は一つの推論にたどり着き、瞠目する。

 

 そもそも十年前に巻き込まれたあの争いは何だったのか。なぜ使節団の態度がこうも甘いのか。素人くさいマーシャの振る舞い、偽りのない感謝の念──違和感が一つずつ繋がっていく。

 

「どういたしまして。ところでマーシャ」

「はい!」

 

 マーシャの胸元、ホルスターに収まった拳銃を指さして、

 

「撃鉄起きてるぞ」

「……えっ?」

 

 何を言っているのか分からないとばかり、首を傾げるマーシャ。

 

「危ないっつってんだよ。暴発したら胸に穴あくぞ」

「ぼっ、暴発!? たいへん! ど、どれが撃鉄でしょうか……セントウ……?」

 

 おっかなびっくり銃を抜き、矯めつ眇めつする。

 

 素人丸出しの仕草に先生は天を仰ぎ、クロネとパナピアはぽかんと口を開ける。頼られたセントウは頭が痛そうに額を抑えた。

 

 やがてマーシャは涙目で銃口を覗こうとするので、セントウが銃をひったくった。

 

「何するのセントウ、危ないわ!」

 

 慌てて取り戻そうとするマーシャの手を躱し、セントウが非難がましい目で先生を見やる。

 

「……」

「そう睨むな。嘘だよ、ウソ」

「う、ウソ? どうしてウソを!?」

「お前の兄貴から、こんな風にからかってやると面白いって聞いてな」

「まあ! バルグラお兄様ったら、死してなお私に嫌がらせをするなんて! 腐った性根もそこまでいくと称賛ものですわ!」

 

 むーっとマーシャが頬を膨らませて言うと、一同が沈黙した。

 

 奇妙な緊張感にマーシャは眉をひそめ、「あっ」と声を漏らして口をふさぐがもう遅い。そのころにはクロネとパナピアも言葉の意味と状況に理解が追いつき、冷や汗を流している。

 

 どうにか場を取り繕う言葉を探すマーシャに対し、先生は無慈悲に言った。

 

「てめー、女帝だろ」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 十年前、帝国内で静かな、しかし血みどろの争いが起きていた。病に臥せった皇帝の後継者争いである。

 

 意気軒高な皇子たちに比べ、第一皇女にはさほどの意欲がなかった。蝶よ花よと愛でられてきた皇女には、巨大な帝国を率いる将来など想像もつかなかったからだ。皇子たちも皇女の無気力を見抜き、相手にしなかった。

 

 が、あるとき風向きが変わる。最有力候補である第二皇子の弱みを、皇女が偶然掴んだからだ。

 

 帝国と隣国の剣王国に股をかけ活動している巨大な犯罪組織。皇子はこの組織とつながり、自らの派閥を拡大するのに利用していた。敵対する者は汚い金で抱きこむか、あるいは暗殺者を差し向ける。組織に便宜を図り、無辜の民が巨大な権力に食いつぶされていく。

 

 許せない。こんな外道が父の後を継いでいいはずがない。

 

 決断し、皇子を追い落とすため活動を始めるが、当然皇子は容赦がない。すぐさま刺客を差し向けられ、あわや不慮の事故に見せかけ殺されるかに思われたとき、彼女が現れたのだ。

 

 刃毀れだらけの剣を振るう、灰髪の少女が。

 

 それから始まった帝都全域を巻き込んだ逃避行は、皇女の対外融和思想のきっかけとなった。最新装備に身を包んだ刺客たちによる不意打ち、包囲殲滅、狙撃など、個人に向けるには過剰な暴力を、白い少女は刃毀れだらけの剣で迎え撃つ。悪い夢のような蹂躙劇だったが、少女は特別な生まれでもなんでもない、帝国へ武者修行に来ただけの一般剣王国民に過ぎなかった。

 

 剣王国は唯一、帝国の外征を退けた過去を持つ小国。皇子たち対外過激派は帝国こそが世界に冠たる覇権国家と謳い、いずれは剣王国さえ帝国の威光にひざまずく、というのが彼らの掲げる理想だった。

 

 無理に決まってんだろ。ただの一般人がこれなのに。

 

 ていうか、下手に戦争とかしたら今度こそ負ける。その代償を支払うのは罪のない帝国臣民たちだ。

 

 そうして融和と協調の方針を固めた皇女は、逃避行を続けながら仲間を募り、連絡を取り合い、悪事の証拠を集め、兄と関係の悪い派閥を取り込んで、後継者争いを制するに至った。

 

 といっても兄の派閥を完全に潰すことは難しく、不穏分子をまとめて辺境植民地へ追いやったまでは良かったが、その後の問題に頭を抱えた。現地民との軋轢だ。

 

 融和的に統治させるなら他に適任がいるが、かといって兄を国内においておけば何をしでかすか分からず、頭を悩ませていた折、決定的な報せが入る。

 

 兄の死。獣人族の反乱を支援する、剣王国の灰髪の少女が対話を求めていると。

 

 すぐさま使節団の派遣を手配し、側近の何人かが胃痛で倒れる中、護衛の一人に身をやつして、十年前の恩を返しに足を運んだのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「寝物語を思い出すなぁ。助けた動物が、姿を変えて恩返しにやってくるやつ」

「……」

「停戦交渉がやたらこっちに有利だったの、女帝の差し金だろ。それは礼を言っとく、ありがとう。普通に一番楽な結末だ」

「……」

 

 マーシャ──改め、女帝は固く口を閉ざしている。これ以上ボロを出すまいと必死だ。

 

 現時点では、彼女が本当に女帝である証拠はない。先ほど口を滑らせたのは言い間違いやブラフの類と言い張ることができる。先生もマーシャの正体に確証があるわけではなく、確信しているのは高い地位にあることと、停戦条約の内容について根回ししたことの二点のみ。沈黙は賢明な判断だった。

 

 が、先生は追撃の手を止めない。

 

 意地悪そうににんまり笑って、パナピアに目を向けた。

 

「どうするよパナピア? 敵方のトップがそこにいんぞ。うまく運べばおもしれーことになるかもな?」

 

 マーシャとクロネが目を剥いた。

 

 帝国での皇族の地位が高いのは論ずるまでもない。パナピアがその気になれば、マーシャを人質として今後の帝国との外交にいくらでも利用できる、と先生は唆しているのだ。

 

 さりげない動きでセントウが女帝を庇う位置につき、腕を交差させるようにして、拳銃と軍刀に手を添える。室内の緊張感が否応なく高まっていく。

 

 はたしてパナピアは、

 

「先生、意地悪言わないで」

 

 ため息をつき、先生を睨む。

 

「マーシャはわざわざ危ない橋を渡って、先生にお礼を言いに来たんでしょ。その上私の故郷のために動いてくれた。こんないい子にひどいことをしたらバチがあたるわ」

 

 先生はつまらなそうに鼻を鳴らし、口を噤んだ。マーシャがセントウの肩に手を置くと、セントウがしぶしぶ構えを解いた。張り詰めた空気が弛緩する。

 

 クロネとパナピアが視線を交わし合い、マーシャたちに声をかける。

 

「さ、お礼は伝えたんだから帰るわよ」

「偉い人がここに来ちゃダメだよ……帝国人はみんな敵! って言ってる人もいるんだから」

 

 マーシャは目を逸らし、胸の前で指をもじもじさせながら、

 

「何のことでしょう。私はただのマーシャ。使節団の護衛ですのよ。こちらのセントウとは同期ですし銃の使い方は忘れただけですし、バルグラお兄様は、えっと、そのう……」

「あんたもう黙った方がいいわよ」

 

 憎き帝国のトップがこれでは嫌いになりきれない。どうか本当にただの護衛であることを願いつつ、パナピアはクロネと共に、マーシャを使節団の元へ送り届けた。

 

 その際、使節団は一斉に肩の荷が下りたように胸をなでおろし、そのうちの一人は倒れた。原因はやはり、胃痛だったという。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 こうして獣人族の反乱は、獣人国の自治権回復という形で幕を下ろした。賠償金を初めとした復興支援の約束も取り付け、獣人国は帝国のもう一つの隣国として永く発展していくことになる。

 

 その立役者となった剣王国の女剣士、毀剣こと先生は、クロネを連れて剣王国への帰途に就いた。パナピアは族長の娘としての仕事が期待されており、情勢が落ち着くまでは残留する。

 

 なお、仕事の内訳のほとんどは大王流の指導だ。帝国と対等な関係を保つための重要な武器として、有望な若者たちに大王流を普及、指導していく。たとえ再び帝国の横暴に晒されても、大王流があれば一方的な打擲は避けられるだろう。

 

 別れ際、パナピアは先生を強く抱きしめて、言った。

 

「これでさよならじゃないから。落ち着いたら、きっとまた会いに行く。一生かかってでも、先生への恩は必ず返すから」

「だったら約束してくれ」

 

 緩い力で抱き返し、パナピアの耳元で先生が囁く。

 

「時が来たら、クロネの味方をしろ。友だちとして末永く支えてやってほしい。その後、お前は幸せになれ」

「分かった」

 

 抽象的な物言いだが、先生は誰かを不幸にする約束はしない。言下に承諾した。

 

 先生と体を離し、クロネとも抱き合う。

 

「クロネ。もしも助けが必要になったら、手紙でもなんでもいいから教えるのよ。全部後回しにして絶対助けに行く」

「パナピア……うん。パナピアも、また帝国にいじめられたら言うんだよ。先生と、今度はヒミカも引っ張って来てお手伝いするから」

 

 直接言葉を交わすより、剣を交えることの方が多い二人だった。互いの体を抱いて別れを惜しみ、やがて息を合わせたように体を離し、見つめ合い、強がりの笑みを浮かべる。先生はそんな二人の様子を、まぶしそうに目を細めて見つめていた。

 

 そうして挨拶をすませ、獣人族総出で町を送り出され、数か月にわたる帝国でのゴタゴタが終息するのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

1月20日

 帰ってきたら孤児院が城になってた。

 

 何がどうしてこうなった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。