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本当にありがとうございます。
記念に間話をペタリ。時系列とかは適当なので……あまり気にせず読んでいただけると。
迷宮都市オラリオが誇る二大派閥のひとつフレイヤ・ファミリアの団長である『猛者』オッタル。
世界でも最高峰の実力を持つ冒険者であり、オッタルと同じ
そんなオッタルは……あまり察している者はいないが、実はかなり苦労人である。
彼の主神である美の女神フレイヤは我が儘で自由奔放な性格をしており、何か問題を起こすと美を司る神だけが持つ『魅了』の力で無理矢理解決させる事が多く。その度にギルドの長である金にがめついエルフの胃にダメージを与えたり、オッタルも「またですかフレイヤ様」と魅了で全てをなぁなぁにする姿にはちょっとだけ悩むこともある。
さらに、フレイヤは結構な頻度で「
フレイヤの傍で護衛を務める事が多いオッタルに嫉妬した眷属に度々襲撃を仕掛けられ、返り討ちにしたらしたで言葉でボロクソに罵倒され。
本人の性格的に
元々主神であるフレイヤに恩義があったり、美の神であるフレイヤに魅せられ入団した者が多いファミリアであるため、眷属たちも「フレイヤ様の為なら命くらい投げ捨てて当然だし、フレイヤ様を敬わない奴は許さん」という狂信者モドキが多数所属しているせいで、都市の住人や他ファミリアと問題を起こすなど日常茶飯事であり……そのような耳にする度に敬愛するフレイヤの威光に影が落ちぬか心配になる日々である。
自業自得な面は多々あれど、そんなファミリアの団長であるオッタルが苦労人である事には間違いではない……多分。
そして、今日も今日とてフレイヤの
朝からフレイヤに呼び出されたオッタルは、フレイヤの言葉にどう返すべきか悩んでいた。
曰く、『飛竜の卵』を使った美味しい料理が食べたい。
オラリオの外にあるダンジョンで採取出来る飛竜の卵、採取の難易度はかなり高いがその味は美食を数多く食してきた神をも唸らせると最近都市の神々の間で話題となっている。
採取の難易度の高さから市場に出回る事がほとんどなく、稀に市場に出された場合相当な高値で取り引きされている飛竜の卵を求め、一攫千金を狙った数多くの冒険者がダンジョンに挑み……親である雌火竜の怒りを買い、大怪我を負ったりその命を散らしている。
敬愛するフレイヤの望みであり、オッタルは基本的にフレイヤの望みに否を唱える事はない……ないのだが。
都市最強の冒険者であるオッタルならば雌火竜にも対応が出来るので、飛竜の卵の採取は特に問題ない。
だが、飛竜の卵を持ち帰って来たとして、誰がそれを料理するのか?という問題があるのだ。
美の神であり至高の美貌を持つフレイヤは、神々の宴だけでなく下界の様々なパーティーにも呼ばれ食事を振る舞われているのでかなり舌が肥えている。
そんなフレイヤを満足させられる料理の腕を持ち、尚且つ飛竜の卵という貴重な食材を任せられる知り合いが……オッタルには少ない。
具体的には、最低一週間は食事にファンゴかドスファンゴの肉が毎回出される。
ファンゴの肉は美味いので嫌いではないが、猪人にイノシシの肉ばかり出すという無言の抗議と無茶振りの報復をされるのはオッタルも嫌だ。
フレイヤ・ファミリアの元団長であり、現在は半脱退状態でオラリオに店を出しているミア・グランドに頼む?話を出した段階で「甘やかすなっていつも言ってんだろうが!!」とブン殴られるのがオチだ。
最早、オッタルに残された選択肢は………ひとつ。
「…………それで、俺の所に来たと?」
「あぁ」
「知ってる奴は知っているし、公然の秘密の様になってはいるが。俺は一応死んでる事になってんだぞ?そんな俺の所に都市最強の有名人が依頼し来るとか、目立つだろうが」
「それは………すまない」
「それ以前に、オラリオに敵対した大罪人の俺に大事な大事な主神のメシを作らせようとか、何を考えてんだ」
「………………他に頼める相手が、いなかったんだ」
駄目だこいつと呆れたように首を横に振るのは、アイルーフェイクを被り肉球柄のエプロンを身に付けたムキムキマッチョの男。
つぶらな瞳の可愛らしいアイルーフェイクから渋いオッサンの声が聞こえて来るのは、かなりミスマッチである。
フレイヤからの依頼を解決する為に、悩みに悩んだオッタルが訪れたのは数年前に開店した料理店『アイルーキッチン』。
従業員のほとんどがアイルーであり、オラリオの外にあるダンジョンの食材を使った珍しい料理を出す事で有名な店で、オッタルと話しているのはアイルーキッチンで調理を担当している数少ない人間の従業員の男である。
「まぁいい。だが、俺がお前らのホームに足を運ぶ事は出来んから……フレイヤが店まで食いに来るなら作ってやる。材料の飛竜の卵は持ち込みになるがな」
「いいのか?」
てっきり断られると思っていたオッタルであったが、意外にも依頼を受けてもらえるらしい。
「当然条件は出す。最近、モンスターを相手にしてばかりで人を相手にしてないんだ。回復薬はこちらで用意してやるから、鍛錬に付き合え」
男が出した条件はオッタルにとっては悪くない所か、かなりの好条件である。
一度だけ勝利出来たとはいえ、かつて何度も負けた相手であり………何より、
その事実に、オッタルの心に火が灯る。
敬愛する主神の望みを確実に叶え、万全で挑まねばと決意を固めた。
「ちなみに、
その言葉に、オッタルの心に灯った火が一瞬で消えかけた。
「去年と同じで、甥っ子と少しの間とはいえ離れなきゃならん事にイライラしてたから……多分、今年もなぶられるぞ」
毎年の事なのだから、いい加減受け入れて欲しいものだとしみじみ話すアイルーフェイクに、オッタルも全面的に同意した。
去年は延々と魔法を撃たれ、倒れる事さえ許されなかったのだ。
あれは本当に辛かったので出来れば今年は遠慮したい。
都市最強と呼ばれるオッタルにも出来るなら逃げ出したい辛い物くらいある。
回避不可能な未来に僅かにオッタルの心が重たくなった。
「アストレア・ファミリアかロキ・ファミリアの連中を連れて行けば、的が分散したりしないだろうか」
「無理だろ。仮に連れて行ったとしても大体の奴らはレベル差もあって魔法一発で沈むぞ」
「……………そうか」
微かな望みを託すように絞り出された言葉はアイルーフェイクにあっさりと否定された。オッタルも多分無理だろうと理解はしていたが、やはり現実は非情であった。
敬愛する女神の望みを叶える為に、覚悟を決めるしかなくなった瞬間である。
そんな悲壮な覚悟を決めたオッタルを見るアイルーフェイクの瞳には少しだけ憐れみの色が光っていた。
数日後、アイルーキッチンにとある女神が飛竜の卵を使った料理を目的に来店した。
女神は提供された料理に大変満足し、自分の望みを叶えてくれた眷属を改めて誇りに思い、感謝を伝えた。
なお、その眷属のステイタスを更新した際、耐久の数値が爆上がりしている事に気付いたが、普段から無茶をする子だし本当に仕方がないわねと微笑ましい気分になったとか何とか。
この世界のオッタルさんはちょっとだけ苦労人。本人の自業自得な面が大きいとかは言ってはいけない。
『アイルーキッチン』
都市オラリオにある料理店。
外のダンジョンの食材を使った珍しい料理を出す事や、従業員のほとんどがアイルーなので有名な店である。
表に出ている従業員はほとんどがアイルーだが、実は暗黒期に爆増した孤児を雇い食材の下準備や開店前の掃除などをさせている。
また、空き時間にはアイルーやアイルーフェイクらが文字の読み書きや簡単な計算などの教育、希望した孤児には冒険者になる為の訓練も行っている。
アイルーキッチンのオーナー
「金を渡したり、施しを行う事だけが慈善事業ではない。雇用を生み出し金を稼がせ金を使わせる。社会に参加させて経済を回させる。そういうのが大事。将来、孤児たちが成長して冒険者になったら私のダンジョンに挑んでもらい、私はそれをアイルーキッチンの料理を片手に眺める……完璧な計画」
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