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祖龍はどれだけ強さを盛っても良い。
そんな気がしますわ。
アストレア・ファミリア眷属達だけでなく、都市オラリオの中では一握りの存在である上級冒険者のリヴェリアやガレス、都市最強のオッタルでさえ白き龍の存在に圧倒され動くことが出来なかった。
「………………………と」
アストレアは未だに顔色が白く、エレボスはどうしたものかと思案を続けていた。
「…………ん……ぺ………と」
彼女たちから少し離れた場所にいるザルドとアルフィアは、冷めた視線を動けない彼女たちに向ける。
ザルドとアルフィアが他の者と違い冷静でいられるのは、白き龍が色々と加減している事を知っているからなのと、過去に黒竜に
無論、ザルドとアルフィアが過去に相対し敗走した黒竜と現在の状況では何もかもが異なる。
だが世界を知らぬ雛鳥であるアストレアの眷属に、無慈悲で理不尽な存在を知らぬ
自分たちがこれまで積み重ねてきた何もかもを無為にする絶対の存在との邂逅というのは。
「テ………ん………ぺス……と」
故に、この場で最初に動くことが出来たのは、絶望と邂逅し立ち尽くすしかない者ではなく。
絶望を塗り潰すほどの憎悪を心に抱える者であった。
「
父と母、家族3人で幸せに暮らしていた日々を壊された。
無力で幼い少女には、何も出来なかった。
少女は、誰かに救われなかった。
少女は、誰からも教わらなかった。
両親を救えなかったのは、決して少女が無力だったからではないと。
少女はそう至る事が当たり前のように復讐を誓った。
幸福を奪った
こうして、鞘を持たぬまま無垢なる刃は磨かれていく。
その刃の銘は『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。
美の神に匹敵する美貌を持ちながら、人形姫と蔑称を受ける程にほとんど表情が動かないと言われる少女の顔にははっきりと憎悪と殺意が宿っていた。
愛剣の柄を握り潰す勢いで力を込め、
「
アイズの纏っている風が黒く染まり、勢いを増していく。
アイズのスキルである『
「っ!?アイズ!!」
白き龍のあまりの存在感に、ほんの僅かな時間とはいえアイズから意識を逸らしてしまったリヴェリアが慌てて止めようとするが既に遅い。
怪物を、それも竜をアイズ・ヴァレンシュタインは決して許さない。リヴェリアは知っていたはずだった。出逢った頃と比べると最近では少しばかり落ち着いてきたアイズではあるが、その根底にある憎悪が消えていない事を。
身に纏う黒い風を爆発させるかのように推進力に変え、放たれた矢の如く凄まじい速度で白き龍へと飛翔する。
「リルッッッ!!!!」
主神であるロキに「必殺技の名前を唱えれば威力が上がる」と教えられ、ずっとそれを信じて来た。
事実、これまで風を纏い叫び放ったアイズの必殺技は数多のモンスターを屠ってきた。
「ラファーガッッッ!!!!!!!」
白き龍は確かに
だが、白き龍は己を決して
際限なく湧き上がる憎悪でアイズは気付いていなかったが、復讐姫で強化されたのは怪物が対象であるという発動条件だけであり、竜を対象とした発動条件は満たされていない。
そもそも、アイズ程度の
風を纏う魔法、憎悪の丈により怪物を屠る力が強化されていくスキル。
なるほど確かに、強大な怪物を屠るに相応しい力ではあるのだろう。
その程度であれば、風翔龍と呼ばれる古龍を知る白き龍を相手にするには全く無意味である。
「っ!?」
鋼の如き龍鱗と甲殻を持ち、風を操り嵐と共に姿を現すその姿から天候を操作出来ると人々にうたわれる風翔龍と比べたら、アイズの風などそよ風に等しい。
白き龍は己を貫こうとするアイズの必殺技に身動き一つ必要なく、胸元に放たれた一撃は体躯を覆う白鱗に傷を付けるどころか削ることすら出来ず、逆に自ら繰り出した技の衝撃によりアイズの腕の骨が砕け、肉が裂ける音だけが響いた。
「あ………ああああああああ!!!!
憎悪で思考が沸騰している影響で鈍くなってはいるが、それでも気絶しそうになる痛みを無視して、なおも白き龍を屠る意志だけは消さないアイズの姿に―――。
―――白き龍は僅かに眼を細め、アイズを赤雷で撃ち抜いた。
「アイズ!!」
赤雷に撃ち抜かれ、小さな体から煙を上げながら力なく地に落ちていく
「にゃ」「みにゃ」「に゛ゃ゛ぁ゛ん゛」
すると、何処からともなく現れた極東のニンジャにも似た格好をした3匹のアイルーが手際よくアイズの手当てを始めた。
「アイズ!大丈夫かアイズっ!!」
「喧しいぞ行き遅れ。死んではいない、治療ならこいつらがするから邪魔をするな」
アイズの傍へと駆け寄ろうとするが、アルフィアに止められる。
血に染まり、ズタズタに裂け骨が見えている痛々しい腕にテキパキと治療を施していくアイルーたち。アイズの容体は気にかかるが、碌にポーションも残ってない今はアルフィアの言葉を信じて任せるしかなかった。
「そんな事よりアレはいいのか?」
アルフィアの言葉に白き龍へ慌てて視線を向ける。気が動転していたとはいえ、意識をアイズに向け過ぎていた。
だが予想とは違い、白き龍は攻撃を仕掛けたこちらに敵意を向けるどころか、その場で大きく翼を広げ、深紅の龍眼を輝かせてこちらを眺めていた。
その姿はまるで―――。
『一番幼い少女が蛮勇であろうと、勇気を示したぞ』
『貴様たち年長者は、そのまま何もしないのか?』
『私に何を魅せてくれるのだ、冒険者よ』
―――そう、こちらに語りかけているようであった。
「すまない。アイズを頼む」
そうアイルーたちに声をかけるとリヴェリアは両手で顔を叩き、大きく息を吸った。
「これより私が指揮を取る!アストレア・ファミリアも猛者もそれでいいな!!」
わしには聞かんのかとボヤくドワーフの声が聞こえたが無視した。
アルフィアたちの態度も気になるが、先程ゴライアスを一撃で消し飛ばしたのに白き龍はアイズを殺さなかった。
その理由はわからないが、白き龍はこちらを殺す気はないのであろうと冒険者としての勘が告げていた。
一体何が起きているのかは全く理解出来ないが、大切な
先に仕掛けたのはアイズなのだから八つ当たりのような物であるが、白き龍には一矢報いなければ気が済まなかった。
文字通り、格の違う存在。その言葉がこの状況を示すのに最も適した言葉であった。
リヴェリアの指揮の元で行われた攻撃は、白き龍に一切通じなかった。
アストレア・ファミリアが連携して攻め、ガレスとオッタルが渾身の一撃を放ち、リヴェリアが
アルフィアとザルドは誰かが力尽きて倒れる度に後方へ運び、アイルーたちが治療を行っていく。
最後まで懸命に大剣を振るっていたオッタルも先程力尽きた。
「それで……どういうことなのかしら、エレボス」
「こいつに関しては、本当に説明が難しいんだがな……」
頭痛を堪えるかのような声で会話をする2柱の前にいるのは
1人はアルフィア、1人はザルド。問題はもう1人である。
「貴女は一体何者なの?」
アストレアの前に立っているのは自分の眷属たちとあまり歳が変わらない姿をした見目麗しい白い少女。
白い髪に白い肌、纏っているドレスも白く。唯一、瞳だけが深い紅色をしていた。
アストレアの見間違えでなければ、最後まで戦い抜いたオッタルが力尽き倒れた後、白き龍が光輝き少女へと姿を変えたように見えたが……怪物が人へ姿を変えるなど、実際に目にしても信じられなかった。
「ふふ。初めまして正義の女神様」
スカートを摘み優雅に礼をする姿は、この場所が先程まで戦闘が行われたダンジョンでなければ、少女の容姿もあって大変絵になったであろう。
「でもごめんなさい。あまり私が長居するのはダンジョンにも悪いから、自己紹介はまた今度にしましょう」
「此処にいる人たちを連れて
「ザルドとアルフィアは気が済んだら私のダンジョンに戻りなさい。アイルーたちは彼女たちの地上までの護衛として残すから、私は先に帰るわ」
それだけ言うと、少女はまるで散歩にでも行くように歩き始めた。
「そういえば」
くるりとこちらを向き、エレボスと視線が合わせられる。
「さようなら、エレボス。貴方の気はきっと変わらないと思うから、挨拶だけはしておくわ」
少女は今度こそ振り返る事なく、去っていった。
夜明け前の迷宮都市オラリオの空に、光の柱が立ち昇った。
正義の女神アストレアによって、邪神エレボスが天に送られた光である。
正義と悪との決戦は、正義の勝利に終わった。
闇派閥はその勢力を大きく削られ、残党は屈辱を噛み締め地下に潜るしかなかった。
生き残った都市の民衆と冒険者は、自分たちが勝ち取った結果に大きく歓声を上げた。
此処に、長く続いた暗黒期は終わりを告げた。
―――それが、極一部を除いた者たちにとっての真実だった。
復讐姫「汝は竜、罪ありき」
祖龍「違います」
復讐姫「…………えぇと」
祖龍「違います」
やりたいことやったし、ヒトが頑張る姿を直接見られたのでルンルン気分で帰宅する祖龍ちゃん。
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メモ代わりに書いてる『祖龍ちゃんダンジョン(仮)』設定資料あるけど、読みたい方います?
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設定資料とか読んでみたい
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別に気にならないから大丈夫