時は無情にも過ぎ去る。あれから時は経ち、とうとう俺たちの番に回った。順番は俺、ケイ、アルトリアの順だ。…別に俺が抜いしまっても構わないだろう?俺は自身が持つ全ての力を用いて持ち手を引っ張る。
(おっも!!こっちは全力の全力で引っ張ってるってのに、なんなんだこの剣は!?この剣岩どころか世界の裏側まで刺さってるのかってぐらい、びくともしない!だが…ここで折れたら今日いっぱい敗北感に襲われてまともに眠れないだろう!そんなのは御免蒙る!なら……本気を出すしかないな、まぁ今も本気なんだけどね。だから…持ち堪えてくれよぉぉ俺の体ぁぁぁ!!!)
周りは唖然としていた、彼の鬼気迫るよう気合い、掛け声、姿勢全てが周りの熱量を超えていた。故に皆が期待する。あいつなら抜けるのでは!!とだからこそ皆が応援する。
「いけー!」「抜いちまえぇ!」「おまえなら抜ける!」
皆が彼を励ます。この光景にケイはこめかみを抑え、アルトリアは茫然と彼を見つめ、マーリンは背後に宇宙を背負った。
10分後。
ラグネルは倒れていた。原因は至って簡単だ。彼は気合を入れすぎたあまり脳に血が上りすぎて気絶したのだ。それに周りは少し肩透かしを食らったが、それでも、彼の頑張りは彼らにもしっかりと伝わっていた。
「惜しかったな坊主!」「また次頑張ろうぜ!」「お前の熱量、尊敬するわ」
彼らはラグネルを頑張りを称えた。そこに悪意はなく、彼への賛美しかなかった。こうしてラグネルの番は終わり、ケイの番となった。
ケイは心底めんどくさいという顔を全面的に晒す。
(あの、アホがぁ!あいつが無駄に張り切ったせいで次への期待値が跳ね上がったじゃねぇか!……よし。棄権しよう。そうだ、それがいい。)
「すまんアルトリア、今日は調子が悪くてな、こんな調子じゃまともに引っ張ることすら無理だろうから俺は棄権するわ。頑張れよアルトリア。」
そうして彼はラグネルの看病に回った。そうしてようやく回ってきたアルトリアの番。彼女は内に生まれた不安を押し殺しながらそれらを顔に出さず平然とした顔で剣へと進む。その姿はどこか神秘的でありながらも確かな力強さを感じさせた。そうして彼女は剣の前に立つ。彼女は数回深呼吸をして、力強く抜こうとしたその時、背後から待ったがかかった。
「アルトリア、本当に剣を抜くのかい?それは君が誰かかから強制された行動じゃないのかい?今一度よく考えて欲しい、その剣を抜いたが最後君はもう二度と後戻りは出来なくなるぞ。大丈夫さ別に剣を抜かなくったって君は君なんだ。こんなどん詰まりのような国のために君が君自身を捧げなくたっていいんだ。だから……」
「いいえラグネル、私は多くの人々が理想を求めていることを知っています。飢饉も戦争も孤独も皆は無くなって欲しいとそう願っている。なら私はなるべきなんだ、この国を変えるために、皆が幸せになれるように、だから私は剣を抜きます。この国の王となるために。」
「はぁ〜〜そこまで言われたら逆にこっちが悪いみたいだ。いいよ、君はそういう奴だ。だからこそ馬鹿正直に進めばいい。その先が暗雲立ち込める世界だとしてとね。」
そう言って彼はケイの横に戻って行った。アルトリアはマーリンから何か言いたげな様子を感じ取った。
「なんですか?マーリンあなたも何か言いたいことがあるのなら言えばいい。普段の躊躇いのなさはどこに行ったのですか?」
「いや〜、本来私が言うべきなことを全部ラグネルに取られちゃったからね。やっぱり彼興味深いね、この国の人間とは思えないほど思慮が深い。アルトリアいい友をもったね。」
「ええ、そうです。彼は私の自慢の幼馴染ですから。では、行ってきます。」
そう言って彼女は剣の前まで再び戻り、先ほどより力強く剣の持ち手を握りしめる。そして、鞘から剣を抜くように彼女は自然に剣を抜いた。周りは彼女のその姿にどこか神聖さを感じずにはいられなかった。まるで剣が意志を持って彼女に答えたかのようなそんな神々しさを感じられた。そうして彼女は告げる。
「我が名はアーサー・ペンドラゴン!!この国を救う王だ!」
彼女の宣言はこの場にいた人々の脳を悉く焼き尽くした。