ブリテン解釈譚(完結)   作:ミルトントン

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時が経ち、俺たち一行はブリテンを放浪する旅に出ていた。俺は前を歩くアルトリアを視界に入れながらあの日を思い出していた。

 

(改めて考えると、結構行き当たりばったりだなこの旅。)

 

あの日の選定の儀は、混乱を極めていた。ある者はあの状況の神聖さに酔って彼女にひれ伏し、またある者は冷静さを取り戻せたのか

 

「この儀は仕組まれてる!」

 

などとやじを飛ばすなど。あの場に真に冷静な奴なんて、抜いた本人ぐらいじゃないだろうか。そこでマーリンは何らかの呪文を唱えたかと思えばいきなり杖を地面に当てたのだ。すると彼らは急に我に返り、今までの混乱を覚えていないのか彼らはそのまま選定の儀から去って行ったのだ。俺は訳がわからなかった。だがアルトリアはマーリンが何をしたのか知っているのか俺たちに説明してくれた。

 

「彼はあの場にいた者達の情動を一定の所まで下げたのです。だから彼らは冷静になれたのです。」

 

「なるほどな。にしても魔術なんてあやふやなものがまさか本当に存在してるなんてな、世の中本当に不思議なことがあるものだ。」

 

そう言ってケイはマーリンに視線を向けた。

 

「だが、待ってくれマーリンが何かしらの魔術を使って彼らを冷静にしたのはわかった。だけどなぜ彼らはこの場から去った?普通なら君かもしくはマーリンに状況の説明を求めるものだろう?」

 

そんな疑問を俺はアルトリアに告げる。

 

「それは……」

 

「その疑問は私から答えよう。」

 

そう言ってマーリンはいつのまにか俺の後ろにいたのか、アルトリアの返答に被せてきた。

 

「アルトリアにはまだ、大雑把な魔術しか教えてなくてね。あまり複雑な魔術は教えていないんだ。だってねぇ、君もアルトリアの気質はよく知っているだろう。彼女は基本、頭より運動だからね。この手のことは飲み込みが少し遅いんだ、だから今回は私から君の疑問に応えよう。」

 

俺は、別にどちらが答えようと問題なかったのでマーリンに先を促した。

 

「まず、彼らをこの場から帰した魔術は彼らの情動を下げた魔術を前提にして使用する別の魔術だと言うことは頭に入りておいて欲しい。」

 

「わかった」

 

「それでね、君の指摘は確かに正しい、彼らは冷静になれたらまずは私たちに説明を求めていただろう。だけどね、彼らは本当に剣を抜いたのがアルトリアだと認識できていたかな?もしかしたら剣を抜いたという強烈すぎる出来事に正確に認識できていなかったかもしれない、私の魔術はそこを少し引っ張ってきただけなんだ。つまり、彼らの頭の中では、剣を抜いたのがアルトリアか別の誰か判別がつかない状態なんだよ。そしてそんな状態になってしまえばそもそもの話、本当に剣は抜けたのか?もしかしたら見間違いじゃないのか?と事実を疑ってしまう。そこまで行ってしまったら、もう彼らは事実の追求より先に、考えることを放棄してしまう。こうして彼らは帰って行ったのさ。どうだい?理解できたかい?」

 

「とりあえず、お前が魔術の卓越者だと心から理解できたよ。なら、お前はあの呪文と杖を地面に当てるだけのそんな単純な行動だけで、複雑な魔術を使用したと言うのかい?」

 

「そうとも私ほどになれば、簡単な魔術は呪文を省略できてね、たぶん君が聞いた呪文は後者の方の呪文だろうね。どうだい?尊敬の念が溢れ出してくるだろう。君は飲み込みが早いからね、どうだい?私から魔術を学んでみないかい?今なら特別にお金は取らないよ。」

 

「そうだな……一応検討はしておく。そもそも魔術なんて概念、今日は初めて知ったんだ。そんな状態で魔術に触れるのは少し恐ろしいからね。けどその提案には感謝するよ、近いうちに答えは出す。それまで待ってもらえるかな?」

 

「おや?思っていたより好感触だ。いいねその危機感。それにその誠実さ…実にいいよ。もちろん大丈夫さ、私はいつでも受け付けるよ。ああ、楽しみだね。柄にもなくワクワクしてる自分がいるよ。」

 

「そう言ってもらえて、こちらとしてはありがたいね。」

 

「それでマーリン、あいつらを返らせた方法はわかった。ならこれからどうするんだ?一旦解散か?」

 

そうケイが尋ねる。

 

「いいや、思い立ったが吉日今から出発しよう。」

 

「おい、自分の中で完結するな。俺たちにもわかるように話せ。」

 

「これはすまない、まず無事アルトリアは剣を抜くことができた。けどそれだけじゃあまだ足りない。彼女が剣を抜いたことをもっと周りに知らせないと、それに人望も必要だ。それもこのブリテンに住む人々からの熱烈な期待がだ。そのためには、このブリテンを巡り、困っている人々を助けて人望を集める必要がある。だからこそ私たちは今すぐにでもこのブリテンを旅する必要があるのさ。」

 

「でも、それって恐ろしいほど時間がかかるよ。それも一ヶ月、二ヶ月とかの話じゃない。1年だったら2年はたまたそれ以上か…何なら10年ぐらい見積もったほうがいいんじゃない?そんなのあまりにも途方がない。……アルトリアはあくまで平民だ、別に先代王の血を引き継いでる訳じゃない。もっとわかりやすく誰もが認めてくれる確かなものが必要だろう。お前が言ってる事はあまりにも夢物語だ。」

 

「そうだとも、その指摘は確かに事実だ。だけど、君は言ったよね、先代王の血を引き継いでる訳がないと。ふふっ……なら、もし彼女がただの平民じゃなくて、確かなものを持っていたとしたら……それは大幅な旅の時短になるだろう。」

 

「おい…おいおいおい、その言い方、お前…まさか!」

 

「そう!そのまさかさ彼女こそ先代第八十三代ブリテン国王ウーサー・ペンドラゴンの血を色濃く引き継ぎし者。次期第八十四代ブリテン国王アルトリア・ペンドラゴンその人である。」

 

俺もケイも絶句した。今まで平民だと思っていた奴が実は王族だった。なんて…

 

「待て、アルトリアが王族ってのはわかった。だけどこいつが王になるのは不可能だ。代々ブリテンの王は男にしかなれない。しかしこいつは女だ。いくら今ブリテンが混乱しているとは言え、流石に女を王にするのは周りが反対するだろ」

 

とケイが指摘する。そうだ、確かにアルトリアは女だ。これは絶対でありひっくり返せない事実だ。だけどケイ……あんたは忘れてる。アルトリアの師匠であり導き手が誰なのか。

 

「そうだとも、確かにアルトリアは女だよ。だけど私の魔術にはね認識を操作する事だって造作もないんだ。例えばアルトリアの性別を女性ではなく男性と思わせる事だってね。まぁ、君たちは例外だとしてもね。」

 

ケイは唖然としていた。それはそうだろう。なんせもう彼がアルトリアが王になることを否定する材料がないのだから。もし仮にあってもあの用意周到な魔術師のことだどんな対策だってしてみせるだろう。ホント頭痛がするよ。

 

「はぁ、ならせめてエクターにはせめて話をさせてやって欲しい。なんせアルトリアの義理の親でもあったんだ。流石になにも言わずに去るってのは礼を欠きすぎているだろう。」

 

「マーリン、私からもお願いします。せめてエクターに感謝を伝えてから旅立ちたい。これは…私が王になるために必要なことなのですから。」

 

「もちろんいいとも、確かに旅の始まりは早いほうがいいのは事実だけど、別れを告げるのが必要な事もまた事実なら、集合は明日の早朝にしよう。それまでにしっかりと話してきなさいアルトリア。」

 

そう言って、俺たちは一時解散した。

 

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