エクターはこうなることを知っていたのか。落ち着いた様子で話し始めた。
「俺がマーリンからアルトリアを預かった時からこうなる事は何となく予想はできていた。だから、俺から一つだけお前たちに言っておく。
辛くなったらいつでも帰ってこい。この家はいつでもお前たちの帰りを待っているのだからな。」
アルトリアは最大の感謝を込めて、言葉を告げる。
「ありがとうございます、エクター。私はみんなが幸せになれるような理想を叶えるために…みんなの期待を背負って、絶対に王になって見せます。」
「安心してくれエクター、このじゃじゃ馬の面倒はしっかり見るともだから安心して待っていてくれ。」
「お前は昔からどこか達観していた節があったからな、この家はアルトリアだけじゃなくお前の帰りも待っていらのだからな。だからお前ら無理はするなよ。それとケイお前はどうするんだ?」
「んなの当然、ついていくに決まっているだろ。こいつらだけに任せてたら、ブリテンなんてすぐ傾くわ。それに……こいつらだけにブリテンを任せて俺だけのうのうと生きていくのはおかしいだろ。だからこいつらのことは任せてくれ親父。」
「そうか、それは安心だな。ならもう俺から言うことはないな。今日はゆっくり休めよお前ら。」
そう言ってエクターは自室へと戻った。アルトリアとケイは各々の自室へと戻って行った。俺は夜の道を歩きながら思い耽る。
(もう、引き返せないな。俺もケイも…アルトリアも。だけど俺は割り切れているようでその実まだ未練がましく、あの頃を懐かしんでしまう。)
「けど、もう後戻りはできないんだ。ならこれからは過去じゃなくて未来を見つめないとな。」
だからこそ、これは訣別だ。過去との……いいや、だめだ。それはだめだろう。それじゃあ、俺が壊れてしまう。だからこそ…これは過去との訣別ではなく超克でなくてはならない。故に。
「そこにいるのだろうマーリン。」
「おや?気づいていたのかい?」
「あくまで直感でだけどな。お前ならこんな状況を間近で見ないはずがないと思っているからな。だがいるのなら都合がいい少し手伝って欲しいことがある。」
「なんだい?特別サービスで請け負おうじゃないか。」
「なら、少しの間でいいここら一帯に誰も認識できなくなる魔術を施して欲しい。」
「それぐらいなら、ちょちょいのちょいだ。けど本当にいいのかい?それをしてしまえば君はもう戻れなくなるよ。」
「大丈夫さマーリン。確かに、もうここには戻ってこれないだろう、だけど、ここでの思い出も、経験も…全て覚えている。なら、これはもう休ませやらないとな。」
そうして俺は自身がかつて過ごしていた家を燃やし尽くした。俺にはこの家が何を思っているのかなんて、全くわからない。けど、安心したような顔をしていたらいいなと思ってしまう。そうして激しく燃えていく家をただただ見つめる。そうして、かつての拠り所はただの灰に成り果てた。俺はマーリンに頼む。
「この灰を空へ飛ばしてくれないか。これもここにずっと居たんだ、ならもう自由になってもいいだろうさ。」
「……任せたまえ。うんと遠くに運んであげよう、もう二度とここに戻れないようにね。」
そう言って彼は穏やかな、けれど確かな力強さをもった風を吹かせる。
それらが風に乗って飛んでいくところを目に刻む。
「それじゃあ、私は先に集合場所に行っておくとしよう。」
「ああ…俺もすぐ向かう」
俺はもう何もない場所を見つめながらそう彼に告げた