ブリテン解釈譚(完結)   作:ミルトントン

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時刻は早朝を迎えた。アルトリアとケイは重い瞼を擦りながらも目的地へと歩みを進めた。彼らは数分の時間を掛けて目的地に辿り着いた、そこには既に二名の先客がいた。

 

「マーリン、二人が来たよ」

 

「やあ二人とも今日もいい朝だね、こんな日には小粋な朝食でも摂りたくなるけどそれはまた別の機会に回そうか。」

 

「それにしてもラグネルはいつ頃にここへ?」

 

「昨日はなかなか寝付けなくてね、君たちより少し早めに出ただけさ。それになんだかんだで君も寝つきが悪かったんだろう?」

 

「ええ…少し考え事をしてしまって、けれど支障が出るほどの問題ではないです。」

 

「にしてもこんな朝早くに集まってどこに行くかって話だよな。おいマーリン、目的地は決まっているのか?」

 

「そんなものあるわけないだろう、この旅は何か明確な目的があって動くのではなく適当にこのブリテンを周って人助けをしつつ仲間を集めついでに名声を高める…それらの要点さえ抑えておけばどこに向かおうと構わないのさ。けれど流石に最初は目的地を決めてから行こうか、そして次からは町で聞き込みをして決めよう」

 

こうして彼らは結構適当な、されど確かに意味があるそんな放浪旅を始めた。

時は戻り現在へ

 

彼らアルトリア率いる義賊たちはとある街に滞在していた。彼らは今日までの疲れを癒すため足繁く酒場に通っていた。他にも鍛錬に充てるものもいれば次へ向かう目的地を決めるための聞き込みをしている者もいるなど様々な活動をしていた。その中でアルトリアは自身に割り振られた宿の部屋で思考を巡らせていた。

 

(私たちは今日まで旅を続けてきた。時に苦難や罵倒を受けたこともありましたがそんな中でも確かに感謝されることや祈りを授けてくれた人もいました。けれどここ最近はなぜか、この旅に……いや私自身の理想になぜか違和感を感じてしまう。私たちは確かに人々に感謝されることしてきました、これは事実でしょう。けれど同時に私たちのことを『偽善だ』『そんなことでこんな国が変わるもんか』と罵倒する声があることも確かに事実です。……私の理想とは本当に……皆を……民を……幸福にするのでしょうか?わからない…思考が宙に浮いているような、確かな輪郭が帯びない。あぁ…こんな自分に嫌気がさしてしまう。私は一体どうすれば)

 

コンコン、部屋にノックの音が響く。

 

「私だ、もうすぐ夕飯の時間だからね起きてるか確認しようと思って訪ねたのさ。」

 

「わざわざありがとうがとうございます。今ドアを開けます。」

 

マーリンはアルトリアの声音と何か思い詰めているような顔から何かあったのではと推測する。

 

「アルトリア……何かあったのかい?私でよければいくらでも聞こう」

 

アルトリアは誰かに話せばこの悪循環を壊せるのではと思いマーリンを中へ入れた。

アルトリアは罪人が神父に懺悔するように、誰かに赦しを求めるように、その重い口を開いた。

 

「私は最近この旅が……自身の理想が本当に正しいのかわからなくなってしまうのです。人々は私たちの助けに感謝してくれます。けれど私たちの助けに『偽善だ』『まやかしだ』などと罵ってくる。私は人々を幸福にしたい……けれど人々はあまりにも私を見つめ返してはくれない。もしかしたら私の理想は人々を幸福似するのではなく、より悪化した混沌を招いてしまうかもしれない……そう考えるとなんだか地に足がつかなくなり、体から力が抜けてしまうのです。……マーリン、私はどうすればいいのでしょう。」

 

マーリンは絶句した、まさか今まで理想に従順だった彼女がこんなにも悩んでいたとは…しかし彼の中にあるのはアルトリアへの罪悪感とか民に対する義憤とかそんな単純なものじゃない、彼の脳内を占めたのは偏に『私の脚本が崩壊してしまうのでは?』という不安感だけだった。彼は歴とした人でなしだ…だからこそ彼女の悩みや苦しみを言葉で理解していても所詮は上っ面だけに過ぎないのだ。だって人間だって読み物のキャラの心情に理解を示すことはあっても本気で共感したり自分ごとのように受け止めたりなんてしないだろう?それとマーリンの心情は限りなく同じだ。だからこそ慰めの言葉も薄っぺらなものになってしまう。

 

「大丈夫だよアルトリア、今がダメでもいつかは君の理想を真に理解してくれる民が出てくるさ。だからまずは英気を養わないとね!ほらほら、おすすめの料理店があるんだ早速向かおうじゃないか。」

 

そう言ってマーリンはアルトリアの手を掴んで宿を出る。アルトリアの顔に影を落としながら。

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