ブリテン解釈譚(完結)   作:ミルトントン

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第二章 裸の王と語り部たち

アルトリアはあの日を境に頻繁にラグネルに意見を求めるようになった、何せアルトリアにとってラグネルは貴重な現実というある種人間の理不尽さを深く理解している人間なのである…だからこそアルトリアはラグネルを毎晩自室へ誘い議論を白熱させていた。なぜなら普段の彼女はかなり忙しい身であるからだ。彼女は早朝から稽古を始めて朝食前に済ませれるように調整している、そして昼まで仲間から受け取った情報の精査を行うそこから夕飯までは次の旅先での活動を計画立てる…だからこそ彼女の唯一の自由時間は食事の時と夕食後から就寝までの時間しかない、だからこそあの日アルトリアが遅刻したと知った仲間たちは驚愕に陥っていた、何せ普段の彼女は無遅刻無欠席を貫く真面目な風紀委員のような人なのだから。

 

そうして彼らの議論を包み込む暗闇がやってくる。

 

ラグネルはあの日から前より頻繁に訪れている彼女の部屋の前に訪れていた。

 

(この部屋に来る回数もだいぶ増えたものだ……しかしいまだに彼女の危機管理能力は発達していないのか?なぜ男と二人きりの密室にいて何の嫌悪も示さないとは、まったく何度苦言を呈そうと彼女は決まって『ラグネルにそんなことする度胸はないでしょう……そもそもあなたにそういう情動ってありますか?』なんて宣ってくる…まぁ、あながち間違ってないのが痛いところだけどね。)

 

そんな無益なことを考えつつドアをノックした。

 

「ラグネルだけど入って良いかい?」

 

「ええ、どうぞ。鍵は空いていますので」

 

ラグネルは呆れた顔をしつつドアを開けて彼女の対面に座る。

 

「君に乙女の恥じらいが宿るのはいつになるのやら。」

 

「相手がラグネルですから、そんな心配は杞憂というやつです」

 

「はぁ…まあいいか俺が君を襲う可能性より君に襲われてしまう方の可能性が高いからね、なんせ俺はもやし君は猪だからね力の差も歴然だ。」

 

「何ですか!私はそんな暴力女ではありませんよ!……はぁ……いいです、時間は有限なのですから…早速始めましょうか。」

 

そうして彼らの議論は夜が更けるまで続いた。

彼らは議論を終えて雑談をしていた。その姿はさながら情事を終えた恋人同士がピロトークをするように。

ラグネルは何でもないような顔をしながらとんでもない爆弾を突っ込んだ。

 

「なぁ……アルトリア、俺は最近柄にもなく悩んでいることがあるんだ。聞いてくれないか?」

 

「ええ、いいですよ。私でよければぜひ貴方の靄を晴らす一助にさせてください。」

 

アルトリアは内心は歓喜と優越感に包まれていた…何せ普段飄々としていて掴みどころのない彼が私に悩みを打ち明けてくれることに嬉しさを多分この国で私だけが彼の悩みを聞けていることの優越感の両者を感じずにはいられないからだ。

 

ラグネルはアルトリアに目を合わせて話す。

 

「悩みってのは君のことなんだアルトリア…最近俺たちは頻繁にここで議論を交わしていたよね、けどそうして議論を重ねていくうちにふと思ってしまったんだ……君は俺のこの理不尽の権化である人間性という貴重な視点を求めてるのかそれとも俺個人を求めているのか……こんな初恋を拗らせたような生娘みたいなこと考えてしまう。嫌になるよ、ホント…どっちだろうと君のためになるだろうに…それでも気になってしまったんだ。

だから今答えてくれ、君はどちらを選ぶ?」

 

アルトリアは先程まで抱いていた俗な感情を抱いていた己を恥じた、彼は最初から真剣だったのに己はただただ喜びと優越感に染まってしまっていたのだから。しかし悩みの原因がまさか自分だったことに彼女は驚きを隠せなかった、しかしすぐ冷静に帰れた彼女はすぐ返答をしようと口を開こうとする、しかし彼女の口は意思に反するかのように固く閉ざされたままだった。

 

「……」

 

「……そうか、すまないねこんな答えずらいことを聞いて。……今日はもう解散にしようか。」

 

そう言って彼は退出した。

彼女は彼が去った部屋中でただただ己に絶望と自己嫌悪に囚われていた。

 

(……………なぜ…私はあの時……答えることができなかった……私は……本当に彼を……彼個人を……わからない……わからない)

 

彼女は朝が迎えるまで絶望と自己嫌悪と自問自答を続けていた。

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