ブリテン解釈譚(完結)   作:ミルトントン

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マーリンside

 

ただ一言『これから食事でもどうだい?』と誘えばいい…けれど何故か彼を前にするとそんな簡単なことすら口から出てきてはくれなくなる。

 

…異常だ、こんな感覚は生まれて初めてだ。

 

しかし私は気になって仕方ないんだ、彼の人間性の最奥を……そして彼のエゴを思想を在り方を、それらを含んだ全てに魅了されて仕方ない……ここまで個人に入れ込んでしまうなんて昔の私からじゃ想像もできないよ。

 

けれどね…この緊張感も何故か胸の底から湧いてしまう期待と好奇心も全てが愛しく感じてしまうんだ、なんせ灰色だった世界に彩りが宿るようにこれからのブリテンに心が弾んで仕方ない。

 

だからこそこの誘いははじめの一歩に過ぎない、これをきっかけに彼を理解していき果てには人をブリテンを知るためにも……個人的には彼ともっと仲を深めるのもやぶさかではないけどね、しかし彼にはアルトリアという幼馴染がいる故にあまり二人きりの時間は作れないのでは?……いや杞憂だね、なんせアルトリアは誰もが知るほどの多忙者なのだからさ。

 

……取り止めのない思考もここまでにしてそろそろ夕食の時間だ、彼が自室にいることも確認済みだし早速誘いに行こうか……もし断られたらどうしようか、いや彼はそういう誘いを断るようには見えないし…いやこんなのは私の主観的空想にすぎず彼本人ではないのだから…ブツブツブツブツ

 

そんな要領のないことを考えているとあっという間に彼の自室の前に辿り着いてしまっていた。

 

私は内心唖然としてしまった何せいつもの何倍も早く着いてしまっていたのだから、私は未だまとまらない思考をかき集めてひたすらに話すべきことをまとめるように必死に脳を動かす。

 

そんなことをしているうちにドアは開かれ部屋の家主が私の眼前に立っていた。

 

「何しているんだお前?」

 

彼は私の様子を訝しむように見つてくる。

 

そんな彼に私は今の今まで考えていた誘い文句や美辞麗句は完全に引っ込んでしまい鸚鵡返しのように彼に質問を返すことしかできなかった。

 

「そっ、そういう君は何をしようと外へ?」

 

何故か吃ってしまった自身に羞恥と自己嫌悪を抱いてしまう。

 

「ただ単に水を飲みに行くだけさ、なんせ時間も忘れて没頭してしまっていてね。ハァ、気づいたらこんな時間になっていたってわけさ」

 

よかった、何か予定があっての外出とかじゃなくて……

 

「そういうわけだからさ、失礼するよ。」

 

そう言って去ろうとする彼……の手首を反射的に掴んでしまった。

 

「なんだい?まだ何か用でもあるのかい?」

 

何故か思考よりも先に本能で掴んでしまった…それは今ここで誘わないとこんな絶好の機会は二度と訪れないという危機感からなのかはたまたただただ彼とまだいたいという仄かな独占欲なのかは断定できないがただ一つわかることがある……それは今誘わないと後々後悔してベットで自己嫌悪に苛まれるということだ。

 

「こっ、こっ、これから一緒に夕食とか食べにゃいかい!!?」

 

おわった…何故私はここぞという時に取ってしまうんだ!?普段ならこんなミスはしないのに……しかもにゃいかいって重いっきし噛んじゃっているじゃないかぁ。

 

私はもし断られてしまったらという不安を表に出さないようにポーカーフェイスを決めつつ彼の返答を待つ……しかし彼からの返答は未だ聞こえてこない。

 

不思議に思った私は彼の顔を覗き込んで見ると……

 

「クッ、クック、ハヒャ、ハッ、ハハッハハッ、にゃいかいっ…やばい思い出したらまたツボが、フヒッ」

 

彼は笑いのツボにハマっていたようだ、私は彼の様子に呆然としてしまった。

 

「ふ〜、ああやっと治った…まずは謝罪を、すまないマーリン。」

 

彼はひとしきり笑ったのか落ち着きを取り戻したようだ。

 

「お前はあの一言を出すために多くの時間をかけ心身を費やしたことだろう、それを笑ってしまったのはお前への侮辱と同義だ。殴ってくれても構わないなんせそれだけのことをしたのだから」

 

彼は先程までの姿が嘘のように真摯に私に向き合った、私も時間によって緊張感も落ち着いてきたことから冷静に応えることができた。

 

「いや、別に殴りはしないさ確かにあの吃りようはどうかと思うしね。…それより返答が欲しいな」

 

「そうか…お前がいいのならこの話は終了だ。そしてお前からの誘いだが別に問題はない……ないが、今気づいたがお前と二人で食事をするのは初めてじゃないか?」

 

私の内心は歓喜と達成感と不安からの解放で一杯だった。何せこれでやっと一歩踏み込めたのだから

 

「やったね!!楽しみだなぁ、君と食事を共にするだけでいつもより何倍も彩りがよく感じるよ」

 

彼は苦笑しながらもどこかワクワクを隠しきれないのか弾んだ声で答える

 

「おいおい、俺と食べるだけなのにそんなプレッシャーを与えないでくれよ。」

 

私は彼の軽口に答えながらも少し歩みを遅らせつつ食堂へと向かって歩みを進める。

 

 

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