ブリテン解釈譚(完結)   作:ミルトントン

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第1章 理想はまだ願いを持たない

私には理想がある。夢がある。やりたいことが、なしたいことがある。

それに際限は存在せず、ふとしたときにはすぐ考えてしまう。でもこんな風になってしまったのは私だけの原因ではない、ないはずだと思いたい。

 

—-私には、ちょっと意地悪で捻くれてる、だけどどこか安心できる拠り所みたいな幼馴染がいる。

 

彼の名はラグネル。私のお隣に住んでいる男の子であり、私の理想にいつもけちをつけてはダメ出しをする。

 

やれ、この考えは民の意思が反映されていない。

やれ、これでは騎士が思考停止する。などなど

 

とにかく彼はダメ出ししてくる。

そしてその度に私は彼に食ってかかる。

 

「そんなことないもん!この考えはみんなを幸せにするんだ!今はダメでも必ずいつかは受け入れてくれるんだ!なんでそんなに否定するの!?」

 

その度に彼は少し憐れむような顔をして、こう言う

 

「お前の理想は人には高潔すぎるんだ。とてもではないが人間が受け入れれるはずがないんだ。」

 

と子供に言い聞かせるように今が見えていない人を諭すように彼は落ち着いて語る。

 

私はその言葉の意味も真意もわからなかったが、ただ彼が私の身を案じてそう言ってくれていることはなんとなくでわかった。だけど頭ではわかってても心は違う。心はどうしても彼の考えを受け入れてはくれず。衝動的に考えなしなことを言ってしまう。

 

「ふんだ!もうラグネルのことなんて知らない!!幼馴染なんてやめてやる!!」

 

そして私は走り出す行先もわからないままに。ただ、ただがむしゃらに走る。その度に帰り道もわからない場所に行き着いてしまう。そこで私はいつも強烈な後悔に苛まれる。

 

「なんでわたしあんなこと言っちゃのぉ!!もぉ!私のバカ!考えなし!!」

 

私は確かに彼のことをすぐ否定してくるし、意地悪で、捻くれてるやつだとは思ってる。けど同時に彼は私が唯一この理想を語っても真剣に返してくれる人であるのだ。ケイ兄さんは絶対否定してきて反論すら許してくれないだろうし、マーリンはまだ何考えてるのかよくわからないから話せない。だけど、彼だけは私を否定しないで受け止めた上で返してくれる。私はそれがなによりも嬉しい。私をしっかり見てくれている。私と対等であろうとしてくれる。昔まで剣術でケイ兄さんに負けていた私が、ある日ケイ兄さんに勝ってしまった。その日は心の中で歓喜したものだ。

 

(やった!ついにケイ兄さんに勝てました!)

 

その日の私の心の中は満足感でいっぱいでした。ですが今ではマーリンの卓越した指導力の賜物か彼に負けることがなくなってしまった。今でも連勝記録は更新されている。それに対して私はひどく悲しくなってしまった。別に剣術に驕りを持ってるわけじゃない、ただ、普通の剣術をして、勝つか負けるかのひりつき、勝負の後のお互いに所感を伝え合って切磋琢磨する。

そんな剣術がしたかったのです。

ふと魔が刺してしまいある日彼に剣術で勝負しようと持ちかけたことがある。普段は誰彼構わず挑むなんてことはしない。だけどその日だけは何故か彼と競ってみたいという気持ちが芽生えてしまったのだ。しかしその日のことは今も鮮明に思い出せるほどに強烈だった。

確か彼はこちらを訝しみながらこう言っのだ。

 

「自分の得意なことでしか張り合えないなんて、本当にアルトリアは子供だなぁ。」

 

と私はすぐさまバカにされてると感じて即座に反論する。

 

「ふーん?ラグネルも自分の得意なことでしか勝負できないんですね!まるで子供だね!!」

 

彼の額に青筋が走る。

 

「いいとも、その挑発受け取ったよ。だけどただの勝負では物足りない、賭けをしよう。」

 

(賭け?)

 

このとき私は彼を怪しんだ、普段の彼ならこんな結果がはっきりとわかってることをするとはとてもではないが思えないからだ。だけどこの時の私は彼と勝負できることに喜びを感じた。だから簡単に引き受けた。

 

「いいよ!何を賭けるの?」

 

彼はニヤリと笑う。

 

「アルトリアは今日の夕飯が何か知ってるかい?」

 

「夕飯?」

 

「そうかそうか!知らないのでは仕方ない…なら教えてあげようじゃないか、俺は優しいからね。

そう!!なんと今日の夕飯には肉が出るんだ!それも5切れもだ。すごいだろ、なんせ今日エクターが動物を捌いている所を発見してね。あれは絶対今日の夕飯に出す用の肉だろう、間違いなくね。そして賭けは敗者はこの5切れのうち2切れを勝者に渡す。どうだい俄然やる気が湧いたんじゃないかい?」

 

「な…な…なんだって!!!」

 

この時の私は安易に彼との賭けを承諾した自分を殴りたくなった。なんせ私が数少ない幸せを感じれる瞬間こそ肉を食べることなのだから。

 

「おやおや?もしかしてアルトリアは自分が不利になった途端に勝負から降りるのかい?」

 

「こ…こいつ!!いいよいいよ受けてやろうじゃん!」

 

「ふふっ、そう来なくては。じゃあ今日の夕飯前にいつもの場所で会おう俺は少し剣を振ってくる。」

 

こうして私たちの仁義なき戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

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