あれから読書に耽ていたラグネルはとうに朝日が昇っている事に気づき朝食を摂るためにも食堂へと向かっていた。
食堂に着いたラグネルは同志たちが何やら騒いでいる事に気づき近くの者に尋ねた。
「やぁ、今日もいい朝だね。
ところで先程から何やら騒がしいけど何かあったのかい?」
ラグネルに気づいた一人の同志は彼に状況を説明する。
「実は未だにアーサーとマーリンが姿を現さないんだ、いつもならこれだけ朝日が昇っていたらとうに食堂に現れているのにさ。
それでもしかしたら何かあったんじゃないかって不安になっていたんだよ」
ラグネルは彼の話を聞きすぐさまに原因に思い当たった。
(あぁ、、昨日は随分と熱が上がったからね。
仕方ない、これじゃあ進展は望めないだろうし、……ここは少しお節介しようじゃないか)
そう決定して同志の一人に提案する。
「なら、俺が彼女達の安否を確認してこよう。」
同志は天啓を得たような驚きと歓喜を持って答える。
「本当か!?なら頼む、俺たちじゃ尻込みしちまうからさ。」
ラグネルは周りの同志達からも好意的な返事ももらえた事もあり即座に行動に移した。
まずはアルトリアの部屋へと向かった。
ラグネルは数回ノックしたが返事なかった事もあり物は試しとドアを引いてみると………開いてしまった。
ラグネルは否が応でも最悪を想定してしまい勢いよく入室してしまう。
「大丈夫か!!?アルトリア!!」
彼は真っ先に彼女が眠っているであろう寝床へと歩みを速める。
そして彼の眼前には…………涎を垂らしたアルトリアがいた。
「うみゅぅ……そんなに食べれないですよぉラグネルぅ〜」
彼は彼女の寝言を聞きながら額に手を当てつつ安堵の息を吐く。
それと同時に沸々と彼女の危機感の無さな対しての怒りが湧きこめかみを強めに抑える。
(はぁぁぁーー……こいつは危機管理能力を母君の母体の中に放棄してきたのか?そもそもだこの時代において鍵を掛けるのは最低限の女として人としての自衛なのにも関わらずこいつは、、、、はぁぁー。
考えているだけでも脳が縮小しそうだ。)
しかし彼女の幸せそうな寝顔を見ていると不思議と怒りが薄れてしまい、そんな自分に呆れがこもったため息を吐きつつ、彼女のずれている毛布を綺麗に被せる。
「夢の中でも食い意地を張っているのかこの魔猪は、、、ふははっ」
彼は無意識に口元を緩ませながら『夢の質を良くする魔術』とを掛けて静かに退室し『鍵を掛ける魔術』を掛けて彼女の部屋を後にした。
最後にマーリンの部屋に向かった彼は再び数回ノックをして確認する。
返事は聞こえない。
彼はマーリンに限ってそんなことはないだろうと思いつつ物は試しにドアを引いてみると………またもや綺麗に開いてしまった。
ここでラグネルは原因を思い出した。
(あぁぁーそうだそうだ、、あの時マーリンを寝かせてから鍵を閉めようと魔術をかけた途端、、『バチっ!!』と弾かれた、、、しかしあのマーリンを襲うバカは居ないだろと思いそのまま部屋を後にして……今に至るってわけだね)
彼は自身の中で合点がいったことで爽快な気分で入室する。
すると彼の眼前には優雅に紅茶を飲む白髪の青年が佇んでいた。
「おや、今日もいい朝だねラグネル。」
彼はラグネルに席に座るように促す。
ラグネルは呆れ顔で座り、マーリンが用意した紅茶に手をつけた。
「白々しいなお前、大方は千里眼で知っているだろうに。
それにしても……お前しっかり眠れたのか?」
ラグネルはマーリンの安否を案じて尋ねる。
マーリンは歓喜に染まった微笑みを向けながら答える。
「君の懸念は杞憂さ、、夢魔はね基本睡眠が浅いんだ。
何せ人間とは違い夢魔の睡眠は脳を休めることだけに特化したものだからね、、、けれど何故か今回の睡眠はいつもより眠りが深かったんだ。」
マーリンは子供のように唸る。
ラグネルはそんな彼の姿を見て微笑する。
マーリンもまた釣られて微笑しながらも要件を促した。
「それで、君の要件はなんだい?」
「要件がなければ会いに来てはいけないのかい?」
ラグネルは妖艶な雰囲気を出しつつ問い返す。
「用がなければ会えないなんて、そんな法は生憎ブリテンでは敷いていなくてね。
あえて言うならこれは理屈ではなく引力ってやつさ。」
ラグネルは呆れた顔をしつつ顔の仄かな赤みを逃すように両手を上げた。
「降参だ、、、よくもまぁ揃いも揃って歯の浮いた言葉を流暢に言えるものだよ。」
マーリンは喉を鳴らすようなに笑いながら答える。
「はははっ、こればかりは私に軍配が上がるからね。」
ラグネルはようやく赤みが引いたのか本題に入る。
「同志達がお前達の安否を心配し過ぎるあまり食堂で項垂れていたところをお節介で確認しに来ただけさ。
けれどその様子じゃ特に心配する必要は無さそうだな。」
マーリンは納得したのか軽く頷いた。
「なるほどね、そして君の側にアルトリアが居ないということは彼女はまだ夢の中というわけだ。」
ラグネルは同意するように頷く。
「そういうことさ、
さてこれで彼らの悩みも晴らせたことだし、この後はどうしようかな。」
ラグネルが後の予定を思案する中マーリンが疑問を呈する。
「アルトリアは起こさないのかい?」
「ああー………うん、起こさないでおこう、何せ彼女の内心は創世記が如く変化の連続だったんだ。
この辺りで整理する時間があっても良いだろうさ。
俺からアルトリアの事は報告しておくからお前も早めに顔を出しておけよ。」
そう言って部屋を後にしようとするラグネルの腕をマーリンは反射的に掴んでしまう。
マーリンは掴んで理解する、己の浅慮な行動に。
彼は怪訝な顔をしながらマーリンを見つめる。
(……私はいつもいつも、、どうして後先考えずに行動してしまうのか………こうなったらもう勢いにまかせるしかない!!)
「きっ、ききき、き君はこれから何かよていとかあったりするのかな!?」
ラグネルはほうけた顔を晒してしまう。
マーリンは即座に畳み掛けるように言葉を投げ打つ。
「もしなければ以前約束していたお、お、おで、おでで、、、お出かけをしよう!!!」
ラグネルはようやく情報を処理できたのか冷静になった頭で先程までの誘いを振り返る。
(………こいつ本当に夢魔なのか?、、、、あまりにも生娘すぎる。)
しかしラグネルは真剣なマーリンを前にして茶化し言葉を出す事はせず、どうせ予定も無く暇な事もあり軽く承諾する。
「お前とのお出かけは何かと飽きないしね、喜んで受けよう。
……それにしても最近やけにお前と一緒だよな、、、まぁお前との団欒は知見が深まるからさしたる問題はないけどさ。」
そう言いながら不思議そうな顔をするラグネルを見つめながらマーリンは内心歓喜に染まりきっていた、何せ自身の興味の半数を占めるだろう彼が自身との関係に不満を抱いていないどころか喜びを見出してくれているのだから。
マーリンは口元の緩みを隠しつつ話す。
「それじゃあ、報告が終わり次第早速行こうじゃないか!」
ラグネルははしゃぐマーリンを子供のように思いながら返答する。
「なら早く支度をしろ、時間は待ってはくれないのだから。」
こうして急速に支度を終えたマーリンはラグネルと共に自身の部屋を後にした。
……アルトリアは未だ食事に夢中のようだ。