深い、、深い、、まるで泥のような眠りから意識を覚醒させたアルトリアは眠気を払拭するように、伸び伸びと両の手を天へと突き刺す。
彼女は閉ざされている帳を上げるように、気持ちのいい朝陽を浴びようと窓掛けを開く。
彼女の眼前には爽やかな朝陽ではなく白昼煌めく静寂を迎え入れた。
彼女の爽やかな気分は一転して強烈な危機感へと転化する。
彼女は瞬きの間に自身の身支度を整えて部屋を飛び出して、同志達が活動する一室へと駆け出す。
彼女は勢いよくドアを開けるのと同時に謝罪をする。
「寝過ごしてしまい申し訳ない!!」
彼女の入室に気づいたケイはアルトリアへと声を掛ける。
「お前今日休みだぞ。」
アルトリアは訳が分からないと言った顔でケイに疑問を投げかける。
「休み?…いえ、休むわけにはいかない、、、このブリテンには今も絶望に暮れている民が大勢居るのですから。」
ケイは額に手を当て、呆れ顔で話す。
「お前なぁ、その懸念も理解できるーーだがそれでお前が倒れたら元の木阿弥だろうが。
それにこれはラグネルからの諫言でもあるんだ、あいつ曰く『今は整理する時間が必要だからね』と言う事らしいからな、、、あいつの気遣いを無碍にするつもりか?」
アルトリアは渋々納得するように頷く。
「……1日程度でしたら、受け入れましょう。」
ケイはそんな発言を否定するように言う。
「いや、1日じゃない2日だ。これは俺も賛同するが、自分自身の思考の整理を1日だけで済ますなんてのは不可能だという事で余裕を持たせて2日にしようと追加案を提示してきたのさ。
…そういう事だからとっとと外にでも行ってきな。」
そう言ってケイはアルトリアを追い出すように背中を押した。
その目はどこか決意が籠ったような眼差しを宿している。
アルトリアはぽっかりと空いた時間を何で埋めようかと悩みながら当てもなく歩きだす。
彼女は歩きながらある名案を思いつく。
(そうです!ラグネルに会いに行きましょう!!)
そう思い立ったが吉日、彼女はラグネルを求めて練り歩く……けれど彼の自室にも食堂など手当たり次第に彼がいそうな場所へと向かったが……全てが不発に終わる。
彼女は近くの者にラグネルの所在を聞いた、、するとなんということか
彼はマーリンと市街へ赴いているではありませんか。
その事実に彼女のマーリンへの嫉妬心と自分を誘ってくれなかった事による寂しさなど、諸々の感情が内混ぜ、ドロドロとした形容し難い何かが宿る。
そして不幸にもテーブルにて雑談に耽る帰宅した彼等を目撃する。
アルトリアはその光景を目が捉えた刹那、瞬きの速さで彼等のテーブルに着く。
アルトリアは内に宿る激情をおくびに出さずいつもの顔で尋ねる。
「楽しかったですか?逢い引きは?」
瞬間ラグネルとマーリンは心から理解させられる、、目の前の少女が並々ならぬ怒りを抱いている事に。
ラグネルとマーリンはアイコンタクトを取って果敢に挑む。
「ふむ、君は何か誤解をしているようだ俺とこいつは普通に書店に行っていただけさ、、何もやましい事なんかしていないと誓おう。」
「そうとも、私達は健全な関係なんだ、、邪推するのは淑女としてどうかと諫言するよ」
彼女は彼等がその場凌ぎの為に用意した言い訳だと勘繰る。
「……ば……ばで…」
ポツポツと喋る彼女に聞き取れなかったラグネルは尋ねる
「えっ?なんて?」
アルトリアは顔に熱を帯びた、、さながらザクロの如く真っ赤にさせながら大きく口を開く。
「あっ、あ、あ、あな、貴方は私のば、ばばば、ば、バディ!!何でしょう!!何故私の側にいないのですか!!?」
ラグネルは呆れ顔で軽くため息を吐き、マーリンと近くに居たケイは揃って理解が追いついていないのか茫然としていた。
ラグネルは彼女の暴論に意義を申す。
「おいおい、いつから俺は君の愛玩動物に成り下がったんだい?
俺には俺の意思が合ってそれに基づいて実行するーー愛玩動物が欲しいなら奴隷でも買えば?」
痛烈なカウンターを食らったアルトリアは冷静さを取り戻せたのか自身の浅慮な発言に顔を暗くさせて謝罪の言葉を溢す。
「……すみませんでしたラグネル……私は、貴方の意思を蔑ろにしていた」
ラグネルもまた自身の幼稚さに嫌気がさしつつ、謝罪を受け止める。
「いいさ、俺も言い過ぎた。
それに、マイ・バディを不安にさせた要因は俺にもあるしね、機会があればどこかに出かけようじゃないか。」
アルトリアもまたいつもの穏やかな顔に戻り「ふふっ」と笑いながら答える。
「ええ、その日を心待ちにしてます。
……何なら今すぐでもいいですよ。」
マーリンはそれに待ったを掛けるように意見する。
「悪いねアルトリア、彼とはこの後、私の部屋にて読書を楽しむ予定があってね。」
アルトリアは不適な笑みを浮かべつつ答える。
「なら、私も参加しても良いですよね!たまには読書に勤しむの王の嗜みです。」
彼等の言葉の応酬をラジオにラグネルは優雅に紅茶を嗜む。
すると後ろから自分達に向かって尋ねるような声が響く。
「すまない、今時間は大丈夫か?」
その声の主はケイだった。
ラグネルはケイの眼差しから推測し、真剣な話だと判断した彼は今も言葉の応酬に邁進する彼等の頭上に愛の拳骨を落とす。
そして再びケイへと視線を向ける。
「それで、要件は?」
ケイはスラスラと意志を込めて語る。
「俺達もお前達の議論の席に加えて欲しい。」
ケイは堂々と言い切った。