ブリテン解釈譚(完結)   作:ミルトントン

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3ー4 探りと邂逅

時は少し遡り、ラグネルはアグラヴェインと対面していた。

 

ラグネルは手の平を口元に当て、暫しの間沈黙を生み出した後、考えが纏まったのか口を開く。

 

「俺の目的?そんなものは単純さ“アーサー王の理想の成就“それこそが俺の本懐さ。」

 

アグラヴェインは堂々と宣言するラグネルの様子に疑念が増す。

 

(……嘘は言っていない、だがそれだけが真実ではないのもまた事実。……それに、貴方の『それ』はまさに…)

 

ラグネルは熟考するアグラヴェインに煩わしさを抱く。

 

(心底面倒臭いねーーそもそもの話、このブリテンに腹に一物を抱えていない奴が居るのかというねーーハァ〜〜どうしたものか…)

 

アグラヴェインは重い口を開く。

 

「……貴方の在り方は余りにも空虚だーーいや…むしろ『虚無』と言っても過言ではないーーそれほどまでの歪みを持つ貴方の願いが“アーサー王が掲げる理想の成就“だと?……いいや、それが全てじゃないだろう……貴殿には本当に願いがあるのか?」

 

ラグネルはアグラヴェインの突然の暴露に暫しの間固まる、それからようやっと情報を処理できたのかラグネルはいつもの人当たりの良い顔は影に潜みーー暗い、昏い、溟いーー伽藍堂の嘆きが顔を覗く。

 

アグラヴェインの背筋に冷たいものが走り、マーリンは笑みを深める。

 

ラグネルは冷笑を溢しながら、手の平で目元を覆うように翳す。

 

「……キモチワル、、理解しすぎだろ。」

 

アグラヴェインは強がるように己を鼓舞するーーでないと、彼の気迫に飲み込まれてしまうのだから。

 

「……なに、貴方と似たような御仁が親族にいる身としては否が応でも理解させられるものだ。」

 

マーリンはある程度の心当たりを見つけたのか、納得したように「ああ〜〜確かに、一人心当たりがいるね」と溢す。

 

ラグネルは興味なさげに適当に「ふぅーん」と相槌をする。

 

「……まぁ、いいさ、過ぎたことは考えないのが主義だからね。さて、貴殿の疑問に応えようではないか、『俺の願いとは』、それは……」

 

アグラヴェインは「ゴクリっ」と固唾を飲み込む

 

「『俺の願いとは』……さぁ?知らないよそんなもの」

 

アグラヴェインは思いのよらない答えに空いた口が塞がらなくなる

 

「おいおい、このブリテンでそこまで客観的に己を俯瞰できている奴が何人いるよという話さ、そして俺もまた例外ではなかったということさ。」

 

「な、な、なんだ、その答えは、答えになっていないではないか」

 

ラグネルは妖しく微笑む

 

「当たり前さ、俺は貴殿が思う以上に複雑なのさ。…まぁ、いつかは見つけられると良いけどね」

 

アグラヴェインは重いため息を吐いて呆れが籠った視線をラグネルに向ける。

 

すると突然食堂に伝令兵がやってきた。

 

「食事中申し訳ありません!ラグネル殿はおりませんでしょうか!?」

 

ラグネルは自身の名が呼ばれていることに気づき、いつもの人当たりのいい顔で兵に応える。

 

「俺がどうしたんだい?」

 

「ええ、それが先日から行方不明になっていたアーサー王が先程帰還されたようでして、なんでも発見者の方がラグネル殿に会いたいと望んでいるそうなのです。」

 

ラグネルは内心(これは、好機だ!)と素早く半断を下し、伝令兵に発見者の元へ案内するように促した。

 

それから無事応接間に辿り着いたラグネルは伝令兵に感謝を伝えて引き下げた。

 

「コンコン」「どうぞ」「失礼するよ」

 

そう言って入室したラグネルは自身との面会を希望する発見者の姿を見て呆然とする。

 

なにせそこには稀代の大魔女であるモルガンが佇んでいたからだ。

 

「…おいおい、まさか貴殿が王の発見者だったとは…」

 

「ほぅ、貴様がラグネルか」

 

モルガンは彼を値踏みするようにジロジロとラグネルを観察する

 

「いやー、そんな熱烈な視線を向けられると照れてしまう」

 

彼は軽口を言いながら促されるまま彼女の対面に座る

 

「ふっ、戯言を。せめて赤面の一つや二つ見せずしてどうする。」

 

モルガンはお淑やかに笑う。

 

「さて、彼も来たことだ。貴様はもう戻っていいぞアルトリア。」

 

モルガンはしっしっと埃を払う様に手を振る。

 

アルトリアは睨みながらモルガンに警告する。

 

「もしラグネルに傷一つでもつけてみろ、貴様をエクスカリバーの鯖にしてやる。」

 

そう言い残して彼女は退席していった。

 

モルガンは腕を組みながら呆れの籠ったため息を吐く。

 

「はぁー、随分と過保護な王様ですこと。」

 

「まぁ、そこもまた長所さ。」

 

ラグネルは微笑する。

 

それから軽い雑談をしながらお茶菓子を突き合う。

 

「それにしても、貴方との雑談はなかなかに良いものですが、それではいささか物寂しいというものーーそろそろ、己の腹のうちを曝け出しあいませんか?……我が同胞。」

 

ラグネルは先程までの人当たりの良い青年の様な顔つきは鳴りを潜み、深い幽い溜息と共に無機質な能面を曝け出す。

 

「……ハッ、いいとも、その誘い受けようじゃないか。」

 

そうして両者はただただ静かに互いの眼を覗き合う時間が続く。

 

 

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