ラグネルはアルトリアを観察しつつ辺りを見渡す
(げっ!あんなところに落ちてるよ)
幸か不幸か剣はアルトリアの左後ろあたりに落ちていたのだ。
だがやるべきことを把握したラグネルの行動は早かった。
(まずは剣の確保が最優先だな)
ラグネルはまず自身が弾かれた剣を拾うため走り出す。
だがそれを易々と見逃すアルトリアではない。アルトリアは走り出すラグネルに向かって剣を振るう。それをラグネルは
ー神がかった回避をする。
この回避はラグネルが振るわれる場所を捉えられたから避けれたのではなく、アルトリアなら走っている状態という隙だらけの状態を見逃すわけがない。そしてアルトリアならそんな敵にどのような角度でどれほどの速さで振るかを全て予想した上で回避できるところに移動したのだ。これはラグネルがアルトリアのことを理解し解釈したからこそできた神技なのである
アルトリアはまた未知の感覚に襲われた。
(なぜラグネルはあの位置から回避ができた?)
だが未知への困惑と同時に激烈な歓喜が彼女を襲う。
(でもやっぱりラグネルはすごいです!!まさかこんなに剣術ができるなとは!!こんなにできるなら早く挑めばよかったです!
そうだ明日から毎日やりましょう!!そうです、それがいい!私も楽しめてラグネルも楽しめる!私って天才なのでは!?)
悲報ラグネルの筋肉痛が常時発生!!!憐れラグネル、彼が素直に負けていれば肉を二切れ捧げるだけでこの地獄は回避できたというのに。やはりアルトリアはじゃじゃ馬である宿業から逃れられないのか!?
だが幸運なことにアルトリアが思考してしまった一瞬をついたラグネルは剣を拾うことに成功する。
「今のきみはまるで新しいおもちゃで遊ぶ子供みたいだ。つまり…俺はそのおもちゃだって言いたいのかいアルトリア!?それはあまりにも不名誉がすぎるとも!!
それにさぁ!!君はいつからそんなに偉くなったんだい!?だったら偉い君なら分かるだろう。この戦いがどれだけ不毛か。だからさぁ!早く参りましたラグネル様、どうか肉五切れを差し上げますのでお許しくださいってね。
うわっ!!危ないな君、本当に人間かい?もう魔猪だろう君!?」
アルトリアは激怒した、彼女にラグネルの話は全くと言って聞き取れなかったが、正気じゃない彼女でもわかった。彼は私をかなり目に馬鹿にしたと、故にあの小憎たらしい男をわからせなければと。
ラグネルはアルトリアの剣を受け流しながらも考える。
(俺はあくまでアルトリアの剣を受け流せているだけだ、だが俺にはあいつを落とせるほどの強烈な剣の技を持っているわけじゃない。ならどうするか、考えろ、頭を回せ、思考を止めるな!・・・・そうだこれだ!)
ラグネルは一旦距離を取る。
「アルトリア君にこの未知を……受け止め切れるかい?」
そして彼は駆け出す、アルトリアの真正面に
アルトリアが撃墜しようと剣を振るうだが、気づけば
ー倒れていたのは自分だ。
「俺はさ、ふと思ったんだ。君の一撃一撃に対応するからこちらが後手に回ってしまう。なら一度で二撃与えられたらさ…それっていくら人間離れした君でも避けれないし、絶対当たるよねってさ」
アルトリアは絶句した。
そんなことができていいのか。いいやできていいはずがない、それは本来実現不可能な技術であり人間が出していい技ではない。と、だが勘違いしてほしくないのは、ラグネルの技はかの佐々木小次郎のような超越的な技ではなく、ただアルトリアが反応するより速く、脳に信号を飛ばすより早く、本能的に二撃目を放ったに過ぎないのだから。故にこの技は燕返しの擬きの更に擬きに過ぎないのである。
この技を受けたことにより、アルトリアの疲労がピークに達したことで気絶した。
「ハァァ…こいつ気絶しやがったよ、これじゃあ肉が。」
とラグネルは項垂れた。ラグネルは律儀な人である、相手が気付かぬうちに済ますのではなくあらかじめ一報を出してから実行する。そんな生真面目さが彼の望まない形で発揮してしまった。
「まぁ仕方ない、過ぎたことを気にしてもしょうがないしね。問題はエクターになんと言い訳しようか。」
ここで思考を回すがすぐに結論を出す。
「いや無駄だだな。どの道ゲンコツが降るのは確定だ。ならここは短期戦で行こうか。」
そう決断して彼はアルトリアを俵担ぎでエクターの家へ向かう。