「お前たちこんな夜中まで何をしていた!!」
エクターの怒声が部屋を震わす。
「いやぁ、すみませんエクター殿、実は今さっきまでアルトリアと軽い剣の稽古をしていたんです。
そもそも最初に誘ってきたのは彼女からなんです、なんでも俺と剣で稽古をしてみたいと、俺も軽い運動ならと付き合ったのですが、いや〜これが思いの外熱中してしまいまして、気づけばこんな時間になっている。そして慌てて帰ってきて今に至るのです。
本当に申し訳ないです。」
「エクター、すみませんでした。以後このようなことがないように、夕飯前にはしっかりと帰ってきます。」
二人で頭を下げるしっかり誠意が見えるように。
「はぁ、俺も少し怒り過ぎた。だが今回は罰がいるだろう。なんせ俺だけでなくケイも心配させたのだから。」
そう言ってエクターは罰を告げた。
「お前たちの皿か肉を一切れずつ減らしておいた。もちろんその肉はケイに与えた、ケイは今回お前たちのことを一番に心配していた。口ではなんだかんだ言ってるがお前たちのことをわしより心配していたのだからな。今日なんて10分ごとにあいつらは大丈夫なんだろうか?と家の中をぐるぐる歩き始めほどだからな。」
「おい!親父あんま余計なことは言うなよな!
チッ!にしてもまさかアルトリアがラグネルを剣の稽古に誘うなんてな、世の中不思議があるもんだな。まぁ・・いいや、んじゃ親父、こいつらの生存も確認できたし俺はもう寝るわ。お前らもしっかり寝ろよ。またなラグネル。」
そう言って彼は自身の部屋へと戻って行った。
「そうだ、お前たちはまだ夕飯を食べてなかったよな?今だそう。」
そう言ってエクターは俺たちの夕食を取りに行った。
エクターが用意した夕食は非常においしかった。
この美味しさを増幅させているのがあの激しい試合での疲労感からか、はたまた肉の品質が良かったからなのだろうか、たぶんそれら全てを加味したからこそこの料理は普段の倍美味しく感じるのだろう
「おい、アルトリア、ラグネルを送ってやれもうこんな時間だしな。」
「いや、いいですよ、家はそこまで遠くはありませんから。」
「いや、これは礼儀だ、今日はアルトリアがお前をこんな夜の遅い時間まで拘束したんだ。なら送ってやるのがせめてもの礼儀だろう。」
「では、ラグネル、行きますよ。」
アルトリアはもう準備を整えたのか玄関扉の近くに立っていた
「エクター今日は夕飯ありがとう。また機会があったらその時はうちに呼ぶよ。」
「そうかそうか、それは楽しみにしておこう。それじゃあ夜道に気をつけて帰るんだぞ。」
俺はエスターに一礼してから玄関扉の近くにいるアルトリアと合流した。
こうして俺たちは一緒にエクターの家から出た。
帰宅中ラグネルは口を開いた。
「いや〜うまく行ったねアルトリア。まさか少しの小言に抑えられたどころか、ゲンコツすら回避できるとは・・・明日は雨でも降るんじゃない?」
そう言ってラグネルは安堵の表情を出す。
「なぁ〜にが上手いこと言ったねだ!ゲンコツを回避したところでお肉が一切れ減ってしまったじゃないですか!!しかもケイ兄さんは七切れも食べれたなんて・・・くぁぁ〜!羨ましいです!」
「おいおい、あまり食い意地を張るなよアルトリア、元々、君の肉は俺が勝ったことで俺のものでもあったんだ。だけど俺は少しでもエクターの叱りを短期戦で終わらせるべく、泣く泣く君の肉を奪わなかったってのにさ!おかげで君は一切れは残せたんだ、俺より遥かにましだろうさ。ほんとなんで君のあんな安っぽい挑発に乗せられたのやら。」
ふと後ろに意識を向けるとアルトリアの足音が聞こえなくなっていた。なんだ?と思いながらアルトリアの方へ顔を向ける………彼女は俯いていた。彼女が今どんな表情をしているのか髪に隠れてよく見えない、だがこれだけはわかる。彼女は今溢れる不安を噛み砕くような人間性溢れる顔をしているのだろう。
アルトリアは感情をこらえるように口から言葉を吐き出す。
「今日は迷惑でしたか?」
ラグネルは己の迂闊さを呪った。アルトリアは確かに孤独の中にいたのだ。誰とも競え合えず、誰とも語り合えず、誰にも本当の剥き出しの自分を見てもらえない、そんなコンプレックスを確かに抱いているのだ。
ラグネルは深呼吸して静かに語る。
「確かに今日の手合わせは俺からしたら、迷惑だった、だってしんどかったし。けど何も悪いことだけじゃなかった。君とのあの手合わせがあったからこそ今日の夕飯はいつもより格別においしかった。それは君もなんじゃないか?」
アルトリアは今日の夕飯を振り返る、確かに普段食べる夕食よりもおいしかった、それは肉があったことも関係するだろうし、友達と対等な手合わせできたことによる充足感であり自身の知らない感覚に出会えたことによるワクワクなどという、どれか一個の要因があるわけじゃないけど、そうですおいしかったんです!!これだけはどれほど言葉で飾り立てようと変わらない。たった一つの事実なんだ!
「俺も毎日は御免蒙るが、適度な頻度ならいくらでも付き合うとも。だからさ……もうあんな顔するなよな。お前は俯いているより前向いて馬鹿正直に走る姿が似合ってるのだからさ。」
私は咄嗟に返答ができなかった。だってそれは鮮烈に私のことを直視しているのだから。だから私は照れ隠しみたいなことを言ってしまう
「バカは余計です!!」
「なんだ。いつもの調子が戻ってきたんじゃないかい?」
なんだかこれからの生活はこれまでより充実するのではないかそんな予感が私に走っていく
「ラグネルこれからもよろしくお願いしますね!」
「あぁ・・・こちらこそよろしくお願いするともさ。」