宇宙世紀に転生し、自分から強化手術を望んだ異常TS少女の話   作:Xn

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第十八話:コロニーレーザーの攻防

宇宙世紀0088年2月。

ティターンズ内部の権力闘争はシロッコの台頭とリリア派の形成という新たな局面を迎え、彼らは水面下で激しい火花を散らしている。

 

シロッコは、バスク亡き後のティターンズの主導権を握るべく、ジュピトリスを拠点にその影響力を広げ、ついにはティターンズの過半数を掌握し、なおも勢力を大きくしていった。

 

しかし、そのシロッコの支配に真っ向から異を唱える勢力が、ティターンズの内部に光芒を放ち始めてもいた。

それが、リリア・アストレア率いる「リリア派」であった。

 

リリア派によって改名された旗艦アレキサンドリア級「エーオース」を中心に、サラミス改級巡洋艦、マゼラン改級戦艦を持ち、ガルバルディβ、ハイザック、マラサイのような多様なMSから成る部隊を擁するその集団は、数ではシロッコ派に劣るものの、ティターンズ内部で無視できない影響力を持つに至っていた。

 

そして、限定的なものではあるが、ジャミトフ・ハイマンの後ろ盾をリリア派は持っている。

それが彼らに一定の正当性を与え、シロッコが容易に手出しできない抑止力としても機能していた。

 

そんな緊張の中、シロッコはエゥーゴとの最終決戦を見据え、そしてティターンズ内での自らの絶対的な権力を確立するための布石として、依然としてティターンズが保有し続けているコロニーレーザー(グリプス2)の使用を決定した。

 

その最初の標的として彼が選んだのは、地球圏に帰還し、ティターンズにとって脅威となりつつあったアクシズだった。

シロッコは、ジオン残党であるアクシズの戦力をここで大幅に削ぎ、ティターンズの戦力を温存した上で、最終的にエゥーゴを叩くという二段構えの戦略を描いていた。

 

「リリア大尉。君には、エースとして、コロニーレーザーの護衛及び、アクシズとモウサへの照射シークエンスの最終確認任務についてもらう。

これは、ティターンズ暫定統治評議会からの正式な命令だ」

 

ジュピトリスの艦橋で、シロッコはリリアにそう告げた。

その言葉は、表向きはリリアの能力を評価するものであったが、その実、彼女の忠誠心を試す目的が滲んでいた。

また、スペースノイドを憎悪する勢力を内部に持つシロッコ派にとって、これは合理的な選択でもあった。

 

(シロッコ大尉、あなたはエゥーゴだけでなく、アクシズをも本格的に敵に回すおつもりですか。

もちろん、彼らを討つこと自体には異論はありません。

ただ、ジオン残党に与するものとはいえ、コロニーレーザーによってモウサに居るであろう非戦闘員をも巻き込んで無差別攻撃をすることは、私の信念に反する。

そして。シロッコ大尉、あなたは私を試しているのですね。この作戦に私を組み込むことで、私の忠誠心と、あなたの支配への服従度を……)

 

リリアは、シロッコの真意を正確に読み取りつつも、その命令を冷静に受け入れた。

 

そして、ついに離反へ向けた計画が動き始める。

 

 

 

数日後、コロニーレーザー(グリプス2)が、アクシズが展開する宙域へと、その巨大な砲口をゆっくりと向け始めた。

ティターンズの主力艦隊がグリプス2を護衛し、その中にはリリアのアストライアーと、彼女の指揮下にあるリリア派の艦隊も含まれている。

 

出撃前、旗艦エーオースのブリーフィング室は、作戦開始前の重苦しい緊張に包まれていた。

リリアは麾下の主要な指揮官とパイロットを前に、シロッコが目論む作戦の全貌を明かす。

 

「……つまり、我々はアクシズの居住区ごと、連中を焼き払うための手伝いをさせられると?」

 

一年戦争でジオンに故郷を焼かれた過去を持つ、筋金入りのベテラン艦長がつぶやく。彼の顔に浮かぶのは、復讐の快哉ではなかった。

 

すると、別の士官――ドゴス・ギア戦後にリリア派に合流した現実主義者の男が、腕を組んで反論した。

 

「ですが大尉、奴らはジオンの亡霊だ。ハマーン・カーンは、いずれ地球圏に牙を剥く。

アクシズに居住する非戦闘員たちは、その思想に同調し、我々連邦に反旗を翻した者たちに他ならない。

それを『民間人』と扱うのは甘すぎるのでは?

この機に脅威を根絶やしにしなければ、いずれ我々が背中から撃たれることになる」

 

彼の言葉は、ティターンズの兵士として現実的な思考であり、室内の何人かが静かに頷く。

それに対し、別の若い士官が食ってかかった。

 

「だが、それではバスクが反抗的なスペースノイドを殺したやり方と変わらないではないか!

我々は、ティターンズの義を信じて大尉に続いたはずだ!」

 

議論は二つに割れ、室内は険悪な空気に包まれる。リリアは、その全てを静かに受け止めていた。

そして、ゆっくりと口を開く。

 

「あなたの言うことにも一理あります。アクシズは脅威です。彼らが我々の敵であることも事実。

ですが、信用を失いつつある我々が今ここで取るべき手段として、無差別攻撃が適切かは、一考の余地があります」

 

リリアは、反対意見を述べた士官の目を真っ直ぐに見つめた。

 

「思い出してください。ティターンズの理想の奥には『地球圏の守護』があったはずです。

その目的は、ジオンの悪夢を終わらせるだけでなく、そこに住む全ての人々の秩序と未来を守ることのはず。

しかし、いつしかその手段が目的とすり替わり、力に溺れ、かつての敵と同じ道を歩み始めた。

囁かれている30バンチの噂、バスクの暴走。それら全てが、我々の大義を汚してきたのです。

……この判断に異を唱えたい者もいるでしょう。今の私には、あなた方の気持ちが分かります。

ですが、ここはどうか私の信念を受け入れて頂きたい。 

もし、我々がここで再び無差別攻撃をしては、我々改革派は『守護者』としての正義を失い、破壊者として歴史に名を加えることになる。私は、それを許容できない」

 

彼女の言葉には、人間としての切実な願いが込められていた。

その瞳の意外なほどの純真さに、反対していた士官は少したじろぐ。

 

「大尉の理想は、この戦場では青すぎる。だが……いや、分かった。今はあなたの指揮に従おう。

ただし、これはあくまで『今回の作戦』に限っての話だ。

今後、奴らが我々の掲げる『新秩序』を知ってなお牙を剥くならば、その時は断固たる鉄槌を下すと、ここで約束していただきたい」

 

彼は、不満を隠しきれない様子ながらも、リリアの指揮に従うことを受け入れた。

 

リリアは静かに続ける。

 

「ありがとうございます。その点は無論、確約しましょう。

……我々の目的は、コロニーレーザーの照準をずらし、モウサへの直撃を回避させること。別にアクシズ本隊を救うわけではありません。

そのために、アストライアーと護衛MS、仲間の情報部で管制システムに妨害を仕掛けます。

これはシロッコへの明確な反逆行為と見なされるでしょう」

 

そして、彼女は艦隊の行動計画を続けた。

 

「エーオースと主力艦隊は、表向きはシロッコの命令に従い、グリプス2の護衛に加わります。

しかし、敵の『陽動』や『奇襲』への警戒を名目に、シロッコ派の主力艦隊とは意図的に距離を取ってください。艦隊同士の直接的な衝突と消耗は避け、あくまで戦略的な判断の範囲内での行動を望みます。

我々の究極の目的は、ティターンズの大義を守ることです。……そのために、また血を流すことになります。

しかし、シロッコとの対決を躊躇してはいけない。ここが最後の分水嶺です。」

 

彼女は、彼らの覚悟を確認するように、しかし力強く告げた。

指揮官たちは、リリアのその計画にリスクの高さを感じながらも、他に道はないと判断した。

 

 

 

照射準備は着々と進められ、グリプス2の管制室では、カウントダウンが開始されようとしている。

シロッコはジュピトリスの艦橋から、その様子を見守っていた。

 

一方でリリアは、事前に旧ジャミトフ派から得たティターンズ内部の暗号通信プロトコルや、シロッコ派閥の通信網の脆弱性に関する情報を元に、妨害工作の準備を整えていた。

 

(改修された現在のコロニーレーザーの管制システムは、ティターンズの技術の粋を集めたもの。

だが、未だ完全ではない。

アストライアーの高度な電子戦能力と、私の強化人間としての情報処理能力、そして仲間たちの協力があれば……。

照射タイミングを僅かに遅延させる。そして、照射ターゲットをアクシズの居住区から逸らし、被害を最小限に抑える)

 

「コロニーレーザー、エネルギー充填率90パーセント。最終ターゲットロックシークエンス、開始!」

 

管制室からの連絡が、ジュピトリスの艦橋に響き渡る。

 

(今です……!)

 

リリアは、アストライアーのコックピットで、コンソールを操作し、事前に味方の情報部と共に準備していた電子攻撃プログラムを起動させた。

 

「コロニーレーザー管制システムに、所属不明のジャミング波を検知!

ターゲットロックの精度に僅かなブレが発生!

しかし、照射シークエンスの継続は可能です」

 

やや緊張を含んだ報告がシロッコの元へ届けられた。

 

先のコロニーレーザーの照準が逸れて「故障」が発生した事件の後、バスクの指示のもとでティターンズはグリプス2のセキュリティシステムを大幅に強化しており、管制システムへの直接的な介入や、大規模な電子妨害は極めて困難となっていた。

 

リリアのアストライアーは、その特殊機能である高度な電子戦システムを、探知されにくいよう出力を絞りながらも、最大限の精度で稼働させていた。

機体から放たれる、巧妙に偽装された妨害電波は、コロニーレーザーの照準システムに、ごく僅かな誤差を生じさせようとしていた。

リリア派の技術士官たちも、遠隔から限定的なサイバー攻撃を試みていた。

だが、いずれも、強化されたセキュリティの前では効果は限定的だった

 

「……僅かな誤差、か。それなら、十分だ」

 

ジュピトリスのブリッジで、シロッコはリリアの意図をほぼ正確に読み取り、まるで盤上の駒の動きを眺めるかのように呟いた。

 

彼は、リリア・アストレアという「最高傑作」を手中に収めることを強く望んでいた。

彼女の特異な能力、そしてその魂に宿る未知の可能性と独自の行動は、彼自身の野望を実現するための重要な鍵となり得ると感じていたからだ。

 

しかし、同時に、彼のニュータイプとしての鋭敏な直感と推測力は、リリアが単なる操り人形に堕する気はなく、自らの意志で動く危険な存在であることも警告していた。

無論、彼女が、いつか自分に牙を剥く可能性も、十分に考慮していた。

それに、裏切りへの布石も既に打ってあった。

 

「ジャミングの発信源を特定! ……アストライアー、リリア・アストレア大尉の機体からです!」

 

オペレーターの報告に、シロッコの口元に、歪んだ笑みが浮かぶ。

 

(やはり、あの小娘、私の予測通り、いや、私の想像を超える執念を見せるか。

差し伸べられた手を拒み、自らの意志で動くと。面白い!

だが、この私に逆らったことを後悔させてやろうではないか。

この程度の妨害で、私の計画が頓挫するとでも思っているのか? 甘いな。

多少照準がずれようとも、損害を与えることはできる。それで十分なのだ。

お前がこれからしようという小賢しい抵抗すらも、私の壮大な『物語』の一部にしてやろう)

 

シロッコは、リリアの行動を「ティターンズへの反逆」と断定しつつ、コロニーレーザーの照射強行を命じた。

同時に、リリアの捕縛、あるいは撃墜を麾下の部隊に指示する。

 

 

――そして、コロニーレーザーが咆哮を始める。

 

一条の巨大な光が、宇宙の静寂を暴力的に引き裂く。

 

それがアクシズの艦隊に当たるとき、リリアの強化された感覚は、閃光と共に迸る『死の叫び』を知覚した。

それは、音のない絶叫の嵐。憎悪と絶望、そして断ち切られた生命の無念が、ノイズの奔流となって彼女の脳髄を直接焼き付けた。

 

(これがコロニーレーザー。たしかアムロは、これを『憎しみの光』と評していた。

今回の攻撃は一年戦争時のソーラ・レイよりも規模は小さいが、それでも、今の私には、彼のその言葉の一端が理解できる。

この死の感覚に、悲しみを覚える、吐き気もする。

……だが、強化人間として戦闘に最適化された私の脳は、現実を冷静に処理しているのを感じる。

これが、本物のニュータイプの感性との違いか。

感じろ、この痛みを。そうしなければ、私は偽物ですらなく、本当にただの人形になってしまう)

 

照準は妨害の結果、アクシズの居住区である小惑星モウサからは逸れ、小惑星アクシズの一部と、展開していたアクシズ艦隊を掠めるに留まった。

 

それでも、その威力は絶大であり、アクシズの艦艇の一部は轟沈し、小惑星アクシズにも地表施設を中心に少なからぬ被害が出た。

だが、ハマーン・カーン率いる中枢部と居住区への直撃は避けられた。

 

リリアの非戦闘員を巻き込まない目的は達成されたと言える。

 

そして、シロッコ派からの迎撃が始まっては、リリア達もそう簡単には動けない。

その場にいたリリア派たちは、離脱を始めた。

 

――決戦の火蓋が、切られる。

 

 

 

その裏切りによる混乱の中、レコア・ロンドの駆るパラス・アテネが、リリアのアストライアーに迫る。

 

彼女は、シロッコの指示をいち早く察知し、リリアの「裏切り行為」を阻止しようとしていた。

パラス・アテネは、アストライアーにプレッシャーをかける。

 

「リリア・アストレア! あなた、自分が何をしているか分かっているの!?

これ以上、無用な混乱を招くつもり?」

 

レコアの声には、焦りと苛立ち、そしてどこかリリアの行動を理解しかねるような響きがあった。

二連ビーム・ガンから放たれた光が、アストライアーに襲い掛かる。

 

「レコア少尉! あなたが求める安らぎが、あの男の支配の中にあると本気で信じているのですか!?

それは偽りの救済です!」

 

リリアは、レコアの複雑な心境を察しつつも、強く問いかける。

かつてエゥーゴで抱いていた理想と、シロッコの強烈なカリスマの間で、レコアの心は揺れ動いているはずであった。

 

アストライアーは、パラス・アテネのビームを巧みにかわし、反撃の機会を窺う。

機動力ではアストライアーが上だが、パラス・アテネの装甲は厚く、決定打を与えるには懐に潜り込む必要があるだろう。

 

「あなたのような、理想ばかりを口にする強化人間には、あの人の覚悟は理解できないでしょう!

確かに、あの人は男だわ。そのエゴを感じる。

でも、シロッコの力だけが、この終わらない戦乱を終わらせられるとも考えられる。

愛されることも知らない、あなたのその中途半端な理想が、結果として多くの犠牲者を生むだけだと何故わからないの!?」

 

レコアの言葉には、シロッコへの傾倒と同時に、彼女の行動への理解不能な感情が滲んでいる。

 

愛されたことがない、その言葉は、強化人間としての歪んだ関係しか築けず、誰にも転生の真実も内心も明かせないまま戦い続けるリリアの孤独な心を、動揺させた。

かつてのロザミアの感情は追い詰められた末の産物であると彼女は感じており、リリアは、自分が愛されるに足る存在だとは到底信じられなかった。

 

レコアは、アストライアーの異常な機動性を正面から捉える愚を避け、パラス・アテネの重武装を最大限に活かす戦術を選択した。

 

シールドから放たれる無数の小型ミサイルと拡散ビーム砲が、巧みにアストライアーの退路を塞ぐ弾幕を形成する。

同時に、二連ビーム・ガンがその回避コースを予測するように、正確な射撃で追い詰めていく。

 

「くっ……! 火力が違う……!」

 

リリアは、アストライアーの機動性を最大限に活かし、ミサイルと拡散ビームの弾幕を縫うように回避するが、いくつかの爆風が機体を揺らし、シールドには直撃弾を受けてしまう。警告音がコックピットに鳴り響く。

 

しかも、その背後から、リリアを追撃しようとしていたシロッコ派のハイザックが2機、リリア派のMSの迎撃を突破して急速に接近してくる。

 

(このタイミングで……! いい判断です、だけど!)

 

リリアは、振り向きもせずにアストライアーのバインダー内蔵ビーム砲を後ろへ連射。

直撃を受けたハイザック2機は為す術もなく連続で閃光に包まれ、爆散する。この状況で殺さないことなど、彼女には不可能だった。

 

そして、それに続くレコアの追撃を避けたその時。

リリアは意識の片隅で、アストライアーの機体、そしてMSI制御コアから発せられる微かな「共振音」のようなものを感じ出した。

それは、ドゴス・ギア戦で感じたものとは異なる、より制御された、しかし確実に彼女の感覚を鋭敏にする何かだった。

敵機のミサイルの軌道が、まるで光の筋となって見えるかのようだ。

 

(このままでは、ジリ貧だ。レコア少尉という戦場の脅威を無力化してここから離れなければ。

今は、この感覚を信じる!)

 

リリアは覚悟を決めた。

アストライアーのスラスターを吹かし、わざとパラス・アテネのミサイルに左肩部アーマーを掠めさせ、ミサイルを爆発させる。

 

「なっ……!?」

 

レコアは、アストライアーの大胆な動きに一瞬だけ反応が遅れた。

リリアは爆風と破片を隠れ蓑にするように機体を急反転させてその隙を付く。

 

アストライアーは、パラス・アテネの懐に潜り込むと、バインダーに取り付けられた高出力ビーム砲を至近距離からパラス・アテネへ連射。

パラス・アテネは脚をもがれ、二連ビーム・ガンも破壊される。

 

「まだよ! あなたなんかに……!」

 

レコアは、残った腕部に内蔵されたメガ・ビーム砲で反撃しようとするが、リリアのアストライアーは既にパラス・アテネの背後に回り込んでいた。

 

「終わりです、レコア少尉! これ以上、シロッコ大尉の道具になるのはおやめください!」

 

アストライアーのビーム・ランサーが、パラス・アテネの腕とバックパックを正確に破壊。

 

戦闘能力を完全に奪われたパラス・アテネは、炎を上げながらコントロールを失い、虚しく宇宙を漂う。

 

「あ……ああっ……! シロッコ……私は……」

 

レコアは、絶望と同時に、どこか解放されたような複雑な表情を浮かべながら、意識を失ったようだ。

リリアは、彼女に、憐憫の情を覚えた。ロザミアの顔が浮かぶ。

 

(……この狂った戦場で、心が崩れ、誰かにすがるしかなくなった犠牲者を、私はこれ以上、生み出したくはない)

 

その感傷に、彼女は冷徹な戦術判断の仮面をかけ、言い訳をする。

 

(それに、シロッコ……あなたにとって有用だった駒が、こうして無様に漂う。下手に殉教者を与えるより、その光景を見せつける方が、あなたのプライドに対してはよほど効果的な一撃だ)

 

リリアはもはや脅威ではないと判断したパラス・アテネに背を向け、コロニーレーザーへと目をやりつつ、そして宙域を離脱した。

 

 

 

この戦闘の間に、アクシズの部隊はダメージコントロールを行い、迎撃態勢を整えつつあった。

 

そして、リリアとシロッコの間の亀裂は、もはや修復不可能なものとなった。

シロッコは、リリアを裏切り者として、全力で排除するだろう。

 

(これで、コロニーレーザーによる非戦闘員への無差別攻撃は一時的に阻止できました。

アクシズの戦力が減ったことも長期的には望ましいし、小惑星の損傷で、アクシズを質量兵器にすることもいっそう難しくなったはず。

……ですが、シロッコとの対決がついに始まる。コロニーレーザーもまたいつ撃たれるか分からない。砲塔はこちらを向くかもしれない。

そして、堂々と喧嘩を売られたアクシズも、ティターンズのこの混乱を黙って見過ごすはずがない。

勿論エゥーゴも必ず動いてくるでしょう。

いよいよ、最後の戦いが始まりますね。

そして、あのアストライアーの感覚。やはり、この機体は特別だ。私の意志に応え、力を与えてくれる)

 

リリアは、迫り来る最終決戦の予感に身を震わせた。

彼女はティターンズの中で、新たな嵐を巻き起こそうとしている。

その先にあるのが、混乱の末の破滅か、それとも新たな世界の夜明けか、それはまだ誰にも分からない。

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