宇宙世紀に転生し、自分から強化手術を望んだ異常TS少女の話   作:Xn

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第二十話:渦の中で

リリアは主戦場に迫る。

 

その宙域ではエゥーゴのエースたちが、シロッコ派のティターンズMS部隊と激しい戦闘を繰り広げていた。

その中に、一際鋭いプレッシャーを放つ機体があった。カミーユ・ビダンのΖガンダムだ。

 

カミーユは、戦場を縦横無尽に駆け巡り、周囲の敵機を次々と撃破していた。

 

その時、彼のニュータイプ能力が、リリアのアストライアーから放たれる、異質で強力なプレッシャーを捉えた。

それは、以前ダカールで感じたものよりも、さらに禍々しく、そしてどこか悲しみを帯びたプレッシャーだった。

 

(あの碧いMSは……またお前か!

しかしこのプレッシャー、なんだ? 強引に世界を捻じ曲げようとする、独善的な意志。

それが、これほどの死の匂いを振りまいているのか!)

 

カミーユの感情が、言葉にならない想念となってリリアの脳内に直接響いてくる。

 

「カミーユ・ビダン……! 私もまた、この戦いを終わらせるために来た!

シロッコを止めたい! 私はあなたの敵ではないはずだ!」

 

リリアもまた、強化された感応力でカミーユに応える。

 

だが、カミーユの研ぎ澄まされた感性は、彼女の言葉の奥にある悲痛な覚悟と、矛盾と、そして彼女がその小さな身体に背負い込む死の気配を、あまりにも鮮明に感じ取ってしまった。

彼に流れ込んでくるのは、ロザミアの感情か、あるいは名も知らぬ兵士たちの無念か。

目の前の少女の瞳の奥に、孤独の影を見た気がした。

このままでは、彼女は壊れるかもしれないと彼は判断する。その前に、無理にでも「止める」。

 

Ζガンダムのビーム・ライフルが、アストライアーを狙い撃つ。

その弾道はリリアの回避パターンを先読みしているかのようだが、狙いの先は機体の戦闘能力を奪うための急所へと正確に集中していた。

 

アストライアーのコックピット内部で、MSI制御コアがカミーユの放つ強大なニュータイプ圧に呼応するように、不気味な高周波音を発し始める。

リリアの脳裏には、膨大な「情報」とカミーユの感情が、嵐のように流れ込んできた。それは、彼女の意識を乗っ取ろうとするかのような、危険な奔流だった。

 

(くっ……! この力、この速さ、これが、カミーユの力……!)

 

リリアは、やむを得ず応戦の構えを取った。

 

アストライアーの機動性はΖガンダムに負けないはずだが、カミーユのニュータイプ能力とΖガンダムの力は、リリアの予測をしばしば上回った。

 

Ζガンダムのビームがアストライアーを掠める。

リリアは、アストライアーの指向性ジャマーを駆使し、Ζガンダムのセンサーをかく乱しようとするが、カミーユはアストライアーの位置を的確に捉え続け、追撃の手を緩めない。

 

ウェイブライダー形態に変形したΖガンダムが、アストライアーの死角から強襲を仕掛け、一撃離脱戦法でリリアを翻弄する。

 

アストライアーもビーム・ライフルで応戦するが、ウェイブライダーの高速機動とカミーユの予測能力により、決定打など与えられない。

 

「お前は……お前は、一体何なんだ!? その力で、その悲しみで、何をしようとしているんだ!」

 

カミーユの相手を理解しようとする悲痛な叫びが、リリアの心を揺さぶる。

 

(この純粋さが羨ましいというのが本音です。でも、私は、私のやり方で、この世界を変えるしかない……!

たとえ、それが納得されないものでも!)

 

アストライアーは、再び機体を巧みに操り、MS形態に戻ったΖガンダムとビーム・ランサーで激しい格闘戦を繰り広げる。

ビーム同士が激しくぶつかり合い、高熱の火花が宇宙空間に散る。

Ζガンダムの動きは、宇宙を泳ぐように自在で、予測不能。アストライアーの左肩部アーマーがビーム・サーベルで浅く切り裂かれ、リリアは衝撃で歯を食いしばる。

 

「ちいっ!」

 

リリアは、カミーユの才能に圧倒され、一瞬、撃墜される寸前まで追い詰められる。

Ζガンダムのビーム・ライフルがアストライアーのメインカメラを捉えようとしたその時、リリアはアストライアーのスラスターを巧みに操り、辛うじて直撃を回避。

しかし、機体は激しく回転し、コントロールを失いかける。

 

(このままでは……!)

 

アストライアーのトリッキーな動きと、リリアの強化人間としての反射神経も、カミーユを翻弄してはいた。

しかし、カミーユもまた、Ζガンダムの性能を限界まで引き出し、アストライアーに食らいつく。

そして、リリアは、カミーユの純粋な想いに触れるたびに、強化人間としての副作用である頭痛と、心の奥底に押し込めていた罪悪感に苛まれる。

 

(この痛み……この苦しみ……これが、ニュータイプが感じる世界なのか……)

 

 

だが、その時、戦場に割って入るように、金色のMS――百式が姿を現した。シャア・アズナブルだ。

百式は、ビーム・ライフルを構え、その一撃で両者の間に割って入るように威嚇射撃を行った。

 

「カミーユ、少し頭を冷やせ!

リリア・アストレア大尉、だったかな。

君の目的は何だ? シロッコに反旗を翻したという情報は掴んでいるが」

 

シャアは、冷静に状況を判断し、ノイズ混じりのオープンチャンネルを通じてリリアに問いかける。

 

リリアは、シャアの介入に一瞬戸惑いながらも、カミーユとの戦闘を中断し、百式と対峙する。

 

「クワトロ・バジーナ大尉……。私の目的は、ティターンズの浄化と再編、そしてシロッコの排除です。

そのためには、あなたたちエゥーゴの力も利用させてもらいたいというのが本音です」

 

「……今の我々の共通の敵はシロッコだというのは確かだ。一時的にだが、目的は一致していると言えるかもしれんな」

 

シャアは、リリアの言葉の裏にある野心を感じ取りつつも、共通の敵であるシロッコを打倒するため、一時的な共闘も視野に入れているようであった。

 

 

しかし、会話は続かなかった。

 

戦場の支配者となるべく、ハマーン・カーンのキュベレイとその配下のガザCが、圧倒的なプレッシャーと共に彼らの前に姿を現したのだ。

 

純白の機体から、無数のファンネルが分離し、Ζガンダム、百式、そしてアストライアーに向けて一斉に襲い掛かる。

 

「シャア、Ζガンダム、そして、あのときのティターンズの小鳥よ。

お前たちの茶番は終わりだ。

この戦場の主導権は、我がアクシズがいただく!」

 

ハマーンの冷たくも力強い宣言と共に、キュベレイから放たれるプレッシャーが戦場を支配する。

その禍々しい気配に、カミーユの研ぎ澄まされた感性が鋭く反応し、理解しようと無意識にその心へと触れた。

 

瞬間、カミーユの脳内に、氷のような拒絶の意思が叩きつけられる。

 

『――よくも、ズケズケと人の中に入る。恥を知れ、俗物!』

 

「ぐっ……!」

 

強烈な衝動に、カミーユは思わず呻き、Ζガンダムの動きが僅かに乱れた。

 

その隙を逃さず、キュベレイから無数のファンネルが、まるで生きているかのように分離し、三機のMSに向けて一斉に襲い掛かる。

 

キュベレイのファンネル、そしてガザCは、三機のMSを巧みに分断し、それぞれに激しい攻撃を仕掛けてくる。ビームの雨が三者の退路を塞ぐ。

――しかも、戦場にはシロッコ派もいる。

 

ハマーンにとって特にリリアがメインターゲットのようだ。

ファンネルは、アストライアーの周囲を高速で飛び回り、死角から次々とビームを放ってくる。

 

リリアは、キュベレイのオールレンジ攻撃に翻弄され、アストライアーの機動性をもってしても、ファンネルの猛攻を完全に回避することは難しい。

アストライアーはビーム・ライフルで1基をなんとか撃ち落とすことに成功するが、それだけでは焼け石に水であった。

ビームがアストライアーの装甲を掠め、警告音がけたたましく鳴り響く。

アストライアーのバインダーがファンネルのビームで損傷し、機体のバランスが僅かに崩れる。

 

(これがハマーン・カーンの力!

強化された私でも、完全に捉えきれない……! それにこのプレッシャー、流石という他ない!)

 

アストライアーの指向性ジャマーも、キュベレイの高度なサイコミュ・システムの前には効果が十分出ない。

リリアは、強化人間としての能力を限界まで引き出し、予測と反射神経でファンネルの攻撃を凌ぎ続ける。

 

アストライアーのビーム・ライフルとバインダーのビーム砲を同時に斉射し、ファンネルの弾幕を強引にこじ開けようとするが、ハマーンはそれを嘲笑うかのように、キュベレイ本体を巧みに操り、リリアの攻撃を回避する。

 

カミーユのΖガンダムやシャアの百式も、周囲のシロッコ派やアクシズのMS部隊との激しい戦闘に巻き込まれている。

 

Ζガンダムはウェイブライダーに変形し、ガザCの包囲網を突破しようと試みるが、ハマーンはそれを許さない。

 

戦場には、ティターンズの量産機、エゥーゴのMS部隊、アクシズのガザCといった多種多様なMSがいる。

そこは、ビームやミサイルが絶え間なく飛び交い、爆炎が宇宙を赤く染め上げる地獄となっていた。

 

「フン……これで役者は揃い、舞台は十分に温まったか。

エゥーゴも、ティターンズの小娘も、互いを意識しすぎるあまり、この大局を見失っている」

 

ハマーンの目的は、必ずしもこのエース三機を撃破することではなかった。

むしろ、彼らのような突出した戦力を互いにぶつけ合わせ、戦場全体を修復不可能なほどの混沌に陥れることこそが、消耗したアクシズを率いる彼女の描くシナリオだった。

 

「しばらくは、この嵐の中で勝手に戦い合うがいい」

 

ハマーンは、三機に向けて最後の牽制となるファンネルの一斉掃射を浴びせ、彼らが回避行動を取る隙に、キュベレイを反転させた。

 

「陣形を再編。事前の指示通り、一部部隊は引き上げるぞ。

最大戦力はシロッコ派だ。まずは、あの木星帰りの男の艦隊から、その勢力を削ぐ!」

 

純白の機体は、戦場全体を支配するべく、アクシズ艦隊の中核へと戻っていく。

 

残されたリリア、カミーユ、シャアは、ハマーンという嵐が去った後も続く戦乱の中で会話もできず、改めてそれぞれの敵を見据えていく。

戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

原作とは異なったメールシュトローム作戦を機に、四つの勢力が入り乱れる。

 

リリアの行動は、この最終決戦の行方に、そして宇宙世紀の未来に、どのような影響を与えるのだろうか。




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
感想も色々いただいており、皆様がこの物語を読んでくださっていることを実感しております。
それが正直なところプレッシャーになることもありますが、なんとか完結させられるよう頑張ります。
物語は最終章に突入しております。
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